高度育成高等学校奉仕部   作:碧河 蒼空

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勝ち筋

「一之瀬さん、ここは一体何なのかしら?」

「ここは奉仕部の部室で、由比ヶ浜さん達は奉仕部の部員だよ」

 

 一之瀬の連れてきた女子生徒が一之瀬に問うと、一之瀬は奉仕部について説明を始めた。••••••てか本当に何も言わず連れてきたのかよ。

 

「とりあえず掛けたらどうかしら?」

 

 雪ノ下に促され、一之瀬とDクラスの二人は椅子に座った。雪ノ下は新しく紅茶を入れると、それを来客三人の前に置く。

 

「••••••つまり、私達が須藤君の潔白を証明する手伝いを由比ヶ浜さん達に依頼する訳ね」

 

 一之瀬から話を聞いて、彼女から堀北と呼ばれた女子生徒がそう理解したようだ。

 

「それは難しいのではないかしら?」

 

 しかし、そんな堀北とかいう女子の言葉を雪ノ下は否定する。

 

「••••••理由を聞かせてもらえる?」

「由比ヶ浜さんから大体の事は聞いてるわ。相手に怪我を負わせているにも関わらず加害者はほぼ無傷らしいじゃない。それで正当防衛が認められるはずが無いわ。完全に白とはならないでしょうね」

 

 雪ノ下が言う通り、正当防衛が認められる条件はかなり厳しい。

 正当防衛について、刑法には“急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。”とある。今回の場合はやむを得ずにした行為であるかが問われるだろう。

 相手に怪我まで負わせる必要があったのか?そもそも、腕っ節に頼らず、逃げることは出来なかったのか?

 

「それに須藤君だったかしら?彼が今回の件で反省し素行を改めない限り同じことを繰り返す事になるわよ」

「それについては同意見ね。だけど、私達が目指すのは飽くまでも無罪を勝ち取ることよ」

 

 雪ノ下の指摘に堀北も同意するが、それでも彼女は妥協する意思を見せない。

 

「えっと••••••そうだっ、ヒッキーは良い案無いの?」

 

 険悪な空気が流れ始めようとしたところで由比ヶ浜が俺に話を振ってきた。

 あの由比ヶ浜さん。あなた結構えげつない事した自覚あります?

 

 この部屋にいる全員の視線が俺へと向いた。

 

「問題ってのは問題にするから問題になる。逆を言えば問題は問題にしない限り問題にはならないんだ」

 

 今回の事件で俺の考え得る限り唯一の勝ち筋を提示する。

 

「ねえ、由比ヶ浜さん。彼は何を言っているのかしら?」

 

 ••••••提示したつもりなんだが、堀北は胡散臭い者を見るよう視線をしていた。解せぬ。

 雪ノ下と一之瀬は俺が続きを話すのを待っている様子。

 綾小路とかいう男子生徒はというと、彼の表情からは何も読み取れない。ただ、こちらをじっと見つめるばかりだ。

 

「えっと••••••ヒッキー、どういうこと?」

 

 由比ヶ浜に続きを促され、俺は再び口を開いた。

 

「そもそも今回どうして停学だ何だの話しになったと思う?」

「え~っと••••••須藤君が相手を怪我させたから?」

「違うな。少し昔話をしようか。これは俺の友達の話なんだが••••••」

 

 そういうと雪ノ下の視線が急激に温度を下げた。由比ヶ浜も微苦笑を浮かべるが気にしない。

 

 あれはそう。小学生だった友人が休み時間に本を読んでいた時の事。ページをめくった際に栞が滑り落ち机の外側に落ちていったんだ。栞の行方を目で追うと、近くで立ち話をしている女子の足元へと舞い降りる。その栞を拾い上げようを椅子から降りて屈んだその時。

 

 --おいっ、ヒキガエルが○○さんのパンツを覗いてるぞっ!

 

 そいつの声を切っ掛けにクラス中の生徒が友人の事を一斉に攻め立てたんだ。

 彼の名前は今でも友人の絶対許さないリストに刻まれている。

 

「実際に何があったかなんて関係ない。誰かが声を上げた瞬間に問題が問題となるんだよ」

「つまり、比企谷君は被害者が学校に訴えを起こしたから問題になったと言いたいわけね」

 

 流石は雪ノ下。理解が早い。

 

「そうだ。だからCクラスの訴えさえなければ今回の問題は問題でなくなる。美人局でも何でも良い。相手の弱みを握って学校への訴えを取り下げさせるんだ」

「あなたって人は••••••よくもまあそんなこと思い付くわね」

 

 雪ノ下が呆れる様にそう言った。

 

「にゃはは~••••••でも、あの龍園君が取り引きに応じるかな?クラスメイトを切り捨てる事だってあるんじゃないかな?」

 

 何とも言えない表情をした一之瀬がそんな指摘をするが、見当違いも甚だしい。

 

「何であの王様と交渉する気でいるんだよ。訴えを起こしたのは被害者本人だろ。ターゲットはそいつだ。王様に相談しようとしたら掲示板に晒した上で学校に訴えると脅してやればいい」

「うわぁ••••••」

 

 俺に話を振った張本人であるはずの由比ヶ浜が引いていた。何でだよ••••••。

 

 結局、奉仕部は依頼を受ける方向で話が纏まり、あらゆる選択肢を模索しながらも、まずは少しでも須藤とやらに有利となる情報を集めることとなった。

 

 

 

 

 

 

 ~Other side~

 

「綾小路くんは一之瀬さんや奉仕部の事どう思うかしら?」

 

 堀北 鈴音と綾小路 清隆が特別棟を後にすると、堀北が綾小路に問い掛けた。

 

「さあな。他のクラスに伝手が無いから何とも。だけど、一之瀬に関しては100%の善意でないことは確かなんじゃないか?一之瀬一人なら兎も角、そうでないならクラスを動かしたりはしないだろうからな」

「確かに••••••」

 

 綾小路の言葉を受け、堀北は顎に手を当て思考を廻らせる。

 

「奉仕部の方はこれから判断すれば良いんじゃないか?少なくともさっき雪ノ下と比企谷が言ってたことに間違いはないと思うぞ」

「それもそうね」

 

 返事をすると堀北は口を閉じた。

 暫く歩いてから綾小路はある提案をする。

 

「やってみるか?美人局」

「死にたいの?」

「••••••いや、何でもない」




以前、ヒッキーに小林と呼ばれた小橋 夢ですが、アンジャッシュの児嶋のようにバリエーション豊かに名前をいじる事が出来そうですね。

大橋、中橋、古場、小板橋••••••。

小橋『小橋です!小橋の名前は小橋です!』
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