引き続き、評価をよろしくお願いいたします。
~前回のあらすじ~
坂柳が雪ノ下に接触。1枚の写真を雪ノ下に見せると、雪ノ下が激おこ(死語)。
空気が重い。
会議用テーブルの上に置かれているのは、紅茶の入ったカップが三つと一枚の写真。そこから視線を少し上げると雪ノ下と由比ヶ浜がいつもとは違った様相を見せていた。
雪ノ下は表情だけ見れば穏やかであるが、不思議とそこには温度が感じられなかった。俺の分の紅茶が用意されているのはせめてもの情けか、それとも腰を据えて話そうという意思の現れか。横でむくれている由比ヶ浜が可愛く思える程に、俺は雪ノ下に戦慄を覚えている。
どうしてこんな事になっているのか。その原因はテーブルに置かれた一枚の写真にあった。
「あなたと一緒に写ってる彼女、Cクラスの子よね?まさかとは思うけど、あなた彼女にDクラスの情報を渡してはいないわよね?」
「いや無ぇよ。事件だって実質Dクラスの勝ちだったじゃねぇか」
「この写真に写っているのはそう疑われても仕方の無い事だと言っているの」
言いたいことは分かるが、他クラスとの交流なんて俺と椎名に限ったことではない。何なら俺等だって別クラスの集まりだ。
「それで、彼女とはどういった関係なのかしら?」
「••••••何だよ藪から棒に」
俺と椎名の関係がいったい何だと言うのだ。
「一応、あなたの言い分を聞いておこうと思ったの。もう一度言うけれど、あなたは裏切りを疑われても仕方のないことをしたの。それだけよ。ええ、それだけ」
••••••本当にそれだけか?まあ、それを問いただしたところで雪ノ下は答えないだろう。
「ただの読書仲間だよ。こいつお勧めの本を読んで感想を言い合ってる。だから、お前が言うような関係じゃねぇよ」
「あなたが?彼女と?どうして?」
••••••やけに突っ掛かってくるな。
「周りにそういうの出来る奴がいないんだとよ。そんでまあ、こいつの紹介する本はどれも面白いし、何だ••••••。つまりそういうことだ」
雪ノ下のにらみつけるを受け続けた俺から発せられる言葉は尻すぼみになっていった。俺の防御は限界まで下がっているに違いない。今、物理攻撃を受けたら一溜りもないだろう。
「そう。なら、次はこの本を読みなさい」
そう言って雪ノ下は鞄から出した一冊の文庫本を俺に差し出した。
「お、おう••••••いいのか?」
雪ノ下の唐突な行動に戸惑う俺は彼女と本の間に視線を往復させる。
「構わないわ。さっき読み終えたもの」
雪ノ下の意図が読めないが、特に断る理由もない。てか、これを拒否したら雪ノ下の機嫌が更に悪くなるだけだ。選択の余地は無かった。
「それじゃあ暫く借りるわ••••••って、これ英語じゃねぇかよ」
表紙のタイトルや作者を見ると、そこに書かれている文字は日本のではない。試しに開いてみるが、アルファベット以外が全く見付からなかった。
「あなたならその位の英語は読めるはずよ」
••••••いやまあ、確かに読めないことは無さそうだけど。
表紙をめくって英文を読み進めるが、雪ノ下の言う通り、難解な言い回しはされていない様。
「••••••私だってあなたの前で本を読んでるじゃない••••••」
ただ、雪ノ下の呟きが俺の集中を乱した。
「私も何か本を読んでみようかな~?なんて••••••。そうだっ、ヒッキー何かおすすめの本教えてよ!」
一人疎外感を感じたのだろうか。由比ヶ浜が俺に本を紹介するよう言う。
「え、ああ••••••」
由比ヶ浜でも読める本となると••••••。
「かいけつゾ■リなんてどうだ?」
「それ子供向けの本だよね!?もーっ、そうやってまたバカにしてー!」
由比ヶ浜が俺の所まで来るとポカポカ肩周りを叩いてきた。
「いててっ。分かった分かった、ちゃんと用意するから••••••」
「ほんと?約束だからね」
由比ケ浜は身を乗り出して念を押してくる。彼女の湿度を帯びた視線が俺の死んだ目をとらえて離さない。俺は気まずさに堪えきれず視線を反らした。
「分かったから、ちょっと離れてくれ••••••」
俺と由比ヶ浜の間に大きな距離は存在していない。それに気付いた由比ヶ浜はスッと身を引いた。
「えっと、ごめん••••••」
「いや••••••別に謝る事でもねぇよ」
俺から視線を外した由比ヶ浜は前髪をいじる。
「••••••ヒッキー。本、楽しみにしてるね」
由比ヶ浜ははにかみながら踵を返し、さっきまで座っていた椅子に戻った。
小恥ずかしくなった俺は雪ノ下に借りた本へと視線を落とす。
まったく。諸悪の根元となった写真を雪ノ下に渡した柳坂とかいう48グループみたいな奴には、誰かとすれ違いざまに足を引っ掛けられて転ぶ呪いを掛けてやろう。そう心に誓い、本を読み進める事で気を紛らわすのだった。
修羅場回を書くはずが気付くとイチャイチャ回になっていました。