高度育成高等学校奉仕部   作:碧河 蒼空

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雑に前回のあらすじ。

・Bクラスが金田を保護。
・八幡がイマジナリー雪ノ下と会話する。
・試験終了直前に八幡がリタイアする事に決定。


困惑する金田

 特別試験二日目。

 俺は金田から隠れることなくキーカードを端末装置に読み込ませ、スポットの占有を行った。その事に金田は驚く様子を見せており、彼からは戸惑いも見て取れる。

 

「あの••••••良いのですか?僕にリーダーを明かすような真似をして」

「あー、ダイジョブダイジョブ」

 

 金田にそこを突っ込まれはしたが、教えてやる義理はないので適当に答えておいた。

 

 俺達Bクラスはこの拠点以外に5ヶ所のスポットを占有している。拠点の占有を終えた俺はスポットの占有へと向かう。俺達の占有したスポットやその道中には食材が手に入るエリアもある為、収穫班も一緒だ。

 

 学校の試験が行われる会場とはいえ、ここは無人島。場所によっては急斜面はあるし、崖やなんかもあった。足元に気を付けながら、事前に探索班によって選定されたルートを俺達は歩く。

 

 到着したスポットはさつまいもが自生しているエリアだった。収穫班の一部はここから別行動となり、さつまいもを収穫した後に拠点へと戻る事となる。

 

 俺は端末装置にキーカードを読み込ませ、他の収穫班と共に次のスポットへと向かおうとした時だった。草値を分ける音と共に誰かがこのスポットに近付いてくるのに気付いた。俺だけでなく、周囲に居た者達も音の出所を注目する。

 

「あれ?ヒッキーじゃん」

 

 茂みを掻き分けて出てきたのは由比ヶ浜と、暴力事件の時に証拠写真を提供した眼鏡の女子だった。名前は確か佐倉だったか。

 佐倉は自分達が注目されている事に気付くと由比ヶ浜の後ろへ潜むように下がった。

 

「あっ••••••」

 

 蚊の鳴くような声を出した由比ヶ浜の視線の先にあるのは俺の右手にあるキーカード。

 

「太丈夫っ、見なかったことにするから!」

 

 こっちが何も言っていないのに、由比ヶ浜はキーカードから目を反らせて弁明を始めた。

 

「別に気にしなくて大丈夫だぞ。俺は試験が終わる直前にリタイアする予定だし」

「え?どうして?」

「Cクラスを追い出された生徒を一人保護しててな。そいつにリーダーがバレた時のためだよ」

「ヒッキーのとこも?うちにもCクラスの女の子がいるよ」

「••••••やっぱりな」

 

 DクラスにもCクラスが潜り込んでいるとなれば、奴らの狙いも見えてくる。あの王様は一謀を巡らせている疑いが強まった。

 

「やっぱりって?」

「Cクラスはリーダーを見破って俺等からポイントをかっ攫おうって算段じゃないかって事だ。クラスを追い出されたってのも作戦の一貫だろうよ」

 

 ピンときていない由比ヶ浜に教えてやると、彼女は憤慨する。

 

「何それっ、人の好意に付け入るような真似っ」

「だけど確証がない以上、奴らを放り出すわけにもいかない。んで、最後に俺がリタイアしてリーダーを交代する。そのペナルティ分のポイントをスポット占有で稼いでる訳だ」

「ほえ~」

 

 由比ヶ浜は感心した様子を見せた。てか“ほえ~”ってCCさくらかよ。

 

「そっちのクラスの様子はどうだ?」

「良い感じだよ。最初は喧嘩みたいになったけど、今はちゃんと協力し合えてるよ。ただ••••••」

 

 由比ヶ浜の話によるとDクラスの生徒一人が初日早々にリタイアしたそうだ。体調不良という話だが、その話を信じる者はいないとの事。つまり、仮病だ。

 きっとそいつは今、悠々自適にあの豪華客船のサービスを教授していることだろう。羨ましいことこの上ない。

 

「駄目だよ~」

「••••••何だよまた急に」

 

 拠点を探している時同様、急に横から声を掛けてきたのは、収穫班の一人として同行していた小林(・・)だった。彼女は着ているジャージの裾を受け皿にして芋を抱えている。

 

「今、羨ましそうにしてた」

 

 彼女の細められた瞳が疑念の視線を俺に向けた。

 

「実際、羨ましいからな。てか小林は何しにきたんだ?」

「だから小橋だってば!って、ほらっやっぱり!」

 

 誰のせいでリーダーなんかやってると思ってんだ。お前など小林で十分だ。

 

 由比ヶ浜が俺と小橋のやり取りをポカーンと見ていた。

 

「あ、置いてきぼりにしちゃってごめんね~。由比ヶ浜さん、よかったらお芋持っていってよ~」

「えつ、良いの?ありがとう!」

 

 由比ヶ浜はさつまいもを受け取ると、小林がしていたようにジャージの裾で抱える。

 

「そっちの子も今持ってくるから待っててね~」

 

 小林は佐倉に渡す分のさつまいもを取りに行った。

 

「ほんじゃあ、俺は次のスポットに行くわ」

「うん。お芋ありがとね」

 

 由比ヶ浜に別れを告げると、俺はさつまいも担当を除いた収穫班と共に次のスポットへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 二日目の夕刻。佐倉愛里は昼間の出来事について綾小路清隆に相談していた。

 

「綾小路君はどう思う?」

「比企谷の言ってることに嘘は無いと思うぞ。どちらにせよ、昼間に堀北が一之瀬と同盟の継続を確認したところだ。リーダー当てで比企谷を指名することは出来ない」

「そうなんだ。じゃあこの情報は役に立たないね。ごめんね」

「いや、そんな事はない。また何かあったら教えて欲しい」

 

 綾小路は須藤の事件を通してBクラスの気質を何となく感じ取っていた。綾小路の見立では、Bクラスは善意を根幹にした団結を武器にし、物事に正攻法であたるクラスである。愛里からの情報のようなルールの抜け穴を突くような事を考えるイメージは無い。••••••一人を除いて。

 

 比企谷はBクラスでの影響力は強いのだろう。

 

 ーー思っていた以上に役にたつのかもしれないな。Bクラスは。




本来、さつまいもは収穫後に追熟させることで甘くなります
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