入学から一ヶ月。今日は最初の10万ポイントを除いた初めてのポイント支給日だ。
俺は起床してすぐ携帯で現在所有するポイントをチェックした。確かに昨日よりは増えているが、10万ポイントが付与されたにしては数字が低すぎる。
ポイントの変動履歴を確認すると、振り込まれた額は65,000。
······思ってたより減点されてるな。
授業以外も自室の外では素行から気を付けていたんだが······思っていたよりも小テストのウェイトが大きかったか?
予想以上に少ないポイントについて思考を巡らせながら朝食の用意をしていると奉仕部のグループチャットにメッセージが入った。
由比ヶ浜結衣『ポイントが振り込まれてないんだけど2人は?』
まさか由比ヶ浜は0ポイント?······いや、いくら由比ヶ浜の学力がお粗末だからって0なんて事は······。
雪ノ下雪乃『私には94000ポイント振り込まれていたわ』
比企谷八幡『俺は65000だ』
由比ヶ浜結衣『そうなんだ。クラスチャットを見てもみんな振り込まれれてないみたい······』
Dクラスだけシステムトラブルでポイントの支給が遅れてる?······いや待てよっ。
俺はとある可能性を確かめる為にクラスチャットを開く。クラスチャットの通知をoffにしている為、気付かぬうちに多くの未読メッセージが溜まっていた。
柴田颯『なあ、俺65000ポイントしか入ってないんだけど』
網倉麻子『あ!それ私も!!もしかしてみんなも?』
小橋夢『私も65000。学校のミスかな?』
当たって欲しくない予想が当たってしまい、俺は頭を抱える。
全てのメッセージに目を通すことなくクラスチャットを閉じて奉仕部のチャットを開いた。
比企谷八幡『俺のクラスも全員65000ポイントしか支給されていない······。多分、雪ノ下のクラスは全員94000ポイントなんじゃないか?』
雪ノ下雪乃『なるほどね。学校は個人でなくクラス単位で評価を出しているのね』
由比ヶ浜結衣『えっ、じゃあDクラスは0ポイントって事!?』
雪ノ下雪乃『十分にあり得る話ね』
比企谷八幡『ホームルームで先生から説明があるんじゃないか?』
雪ノ下雪乃『そうね。考えるのはそれからにしましょう』
由比ヶ浜結衣『う、うん······』
グループチャットが一区切りついたので俺は朝食を食べて学校へ向かった。
二人とチャットをしていた分、いつもより遅い時間の登校となった。
教室の扉を開けると中がいつもより騒がしい。きっとみんなポイントについて話をしているのだろう。ただ、まだ多くの者からは危機感が感じられない。
俺は席に座ると寝た振りを始めた。今から騒いだところで先生の話を聞かないと意味がない。まあ、そもそもクラスに話す相手なんていないんだけどね。
周囲の喧騒をBGMにし過ごしていると、やがてチャイムが鳴って先生が入ってきた。
教壇の横にいつもは見られない大荷物を置く。
「ホームルームを始めるけど、私が話す前にみんなから質問があるんじゃないかな?」
礼が終わると先生はまずそう切り出す。
学校側から弁明や説明すらなく質問から入るという先生の態度から、65,000ポイントの支給がミスでも何でもなく正規のものである事が窺えた。
「先生よろしいでしょうか?」
「はい一之瀬さん、何かな?」
「ポイントが65,000しか振り込まれていないのですが、これは学校のミスでしょうか?」
この1ヶ月でクラスの中心人物となった一之瀬が代表して今日支給されたポイントについて質問をする。
「いいえ、振り込まれたポイントに間違いは無いわ。言ったでしょ?100,000ポイントは入学時点での君達の評価って。この1ヶ月で君達は評価を65,000ポイントまで落としたってこと」
先生の言葉に抜き打ちテストの時以上の動揺がクラスに蔓延した。
「······理由をお聞かせ願えますか?」
一之瀬は尚も食い下がるが、それもポイントのためではなく、これ以上クラスメイトの不安を広げないための様に思えた。流石はクラスの中心人物なだけある。
「心当たりある子いるんじゃないかな?授業中の私語や居眠り、携帯をいじったり。この前の小テストの結果ももちろん反映されてるよ。あ、約束通り個人の成績には反映されないから安心してね」
そういうと先生はホワイトボードに何やら書き始めた。
・Aクラス 940cp
・Bクラス 650cp
・Cクラス 490cp
・Dクラス 0cp
「この学校はクラスの成績がポイントに反映されるの。これが四クラスのポイントね」
順位はアルファベットの早いクラスから並び、かつポイントの差が顕著に出ている。これは偶然に起きた事なんだろうか······。
「僕からもよろしいでしょうか?」
「何かな?神崎君」
「この順位の並びやポイント差がハッキリと表れたことに理由はあるのでしょうか?」
同じ疑問を抱いた、切れ長の目をした物腰のお堅そうな男子が先生に質問をした。
Aクラスが真面目に授業を受けていてDクラスがそうでなかった。そんな単純な話では無いだろうし、そんな答えは求めていないことくらい先生も分かっているはずだ。
「この学校は優秀な生徒からクラスを割り振ってるの。優等生はAクラスへ、そうでない生徒はDクラスへ」
4クラス中、二番目。つまり少なくともBクラスの生徒は真ん中よりも上な訳か。
······何故か先生がこっちを見て笑っていた。嫌な予感しかしない。
「だからこそちょっとだけガッカリかな。Aクラスとまではいかなくても優秀な子がそろってるはずなのに、この学校について質問しに来たのが比企谷君一人だけなんだから」
ちょっと何言ってくれてんのこの人!?
これではクラスメイトからすれば、俺は自分一人だけ難を逃れようとしたクズ野郎じゃないか。
「比企谷?」
「誰だっけ?」
しかし俺の特技の一つ、ステルスヒッキーのおかげで俺の存在はクラスメイトから認知されていない様子。ただ一人だけこちらに視線を向ける一ノ瀬帆波を除いて。
「
つまりAクラスの座をかけて3年間切磋琢磨しろという事だろう。
だが、馬を走らせる為に人参をぶら下げる様に、人を動かすのにも餌が必要だ。
そんな俺の予感通り先生は今日一番の爆弾を投下した。
「この学校では多くの生徒がAクラスを目標に死に物狂いで競い合うの。何故なら学校に希望の進路を叶えてもらえるのはAクラスで卒業する生徒だけだから」