オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
スタミナトレーニング
いざスタミナを鍛えようという時。
トレセン学園においての現在の主流はプールトレーニングだ。
スタミナとはつまり、心肺機能の強度を指す。
肺で効率よく酸素を取り込み、心臓でそれを全身に送り出す。
この能力が高ければ高いほどスタミナがあるという事になる。
そして心肺機能を高めるためにはプールはとにかく適任なのだ。
水中では、水圧により胸部が圧迫され肺は普段よりもその容積が小さくなる。
この状態で運動を行おうとすると、体は不足する酸素を求めて自然と肺を広げようと動く。
水圧をはねのけるために、陸上での運動時と比べより力強くだ。
この時に呼吸筋と呼ばれる胸部と腹部の筋肉群に大きな負荷がかかり、そして当然筋肉は負荷をかけると少しずつ強化されていく。
呼吸筋が強ければ強いほど肺の動きも大きくなる。
つまり、一度に取り込める酸素量が増加するのだ。
こういった理屈で、ウマ娘のスタミナはプールで鍛えられる。
「息継ぎの間隔が短くなっていますよ。浅く何度もではいけません。深く大きく、動きながらも深呼吸を意識してください」
プールサイドからの郷谷の声に応じ、サナリモリブデンは息継ぎの頻度を変える。
大きく吸い、大きく吐く。
息苦しさから浅く小さい呼吸を何度も繰り返したくなるが、それでは意味がない。
直感的な肉体の要求と実際の効果との間にあるギャップに苦労しながらも、サナリモリブデンは懸命に指示に従う。
「そう。とてもいい感じです。その調子でいきましょう!」
上手く指示に乗れた時、郷谷は分かりやすく明るく声を上げ、笑顔を見せる。
それはサナリモリブデンにとって嬉しい事だった。
頑張れば褒められ、上手くやれば喜ばれる。
これが嫌いな者はそうはいない。
サナリモリブデンもまた同じく、一声かけられるごとにモチベーションを漲らせていく。
水をかく腕、蹴る脚にも力が入る。
プールの利点はここにもあった。
水泳とは全身運動だ。
体のほぼ全てに均等に負荷がかかり、均等に動作する。
ウマ娘の肉体のバランスが整い、弱い部分が徐々に補われてくる。
特に、意識して鍛えなければ脚と比較して貧弱になりがちな上半身が育てられる効果は大きい。
これが走りにもたらす恩恵は決して小さなものではない。
また、均等に負荷がかかるという事は、つまり一か所に負荷が集中しないという事。
自然とケガの発生率も極めて低く抑えられる。
何かと故障に泣かされる事の多いウマ娘にとってはもちろん嬉しい事だ。
プールトレーニングとはこのように利点だらけの優れたメニューなのである。
……唯一、そもそも水泳が苦手な者には向かないという問題はあるが。
それでも中央トレセンのみならず、全国のウマ娘教育機関には例外なくプールが備えられている程度には有用な設備として知られている。
サナリモリブデンもまたその恩恵に十分にあやかり、プールの水流に抗って肺を鍛え上げるのであった。
【トレーニング判定】
結果:成功
「はい、お疲れ様です。今日はここまでにしておきましょう」
「うん」
プールから上がり、サナリモリブデンは頷いてから軽く頭を振った。
水泳中はまとめられていない芦毛から水が飛び散り、照明の光を受けてきらりと輝く。
「サナリさんは」
そこから数歩の遠さ。
水のかからないだけの距離を開けて待っていた郷谷が言う。
「プールだといつも気持ちよさそうにしてますねぇ」
「うん。泳ぐのは割と好きな方だと思う」
それにサナリモリブデンは肯定を返した。
口の端がほんの少し持ち上がっている。
はた目にも機嫌が良いとはっきりわかる仕草だ。
「トレーナーは?」
「ふふ、私も好きですよ。気が合いますね」
「そっか。うん。いいよね、水」
「えぇ、とても。実はスキューバなんか趣味にしてまして。自前で道具も揃えてるんですよ」
「思ったよりすごい好きだった」
サナリモリブデンは目をぱちくりさせた。
彼女自身はスキューバには詳しくない。
持っている知識といえばテレビのレジャー特集で見た程度のものだ。
それでもウェットスーツや酸素ボンベなど、費用や手入れに手間のかかるものをわざわざ用意するのは相当だろうとわかる。
「楽しいの? スキューバ」
「それはもう! 海の中に潜ると本当に色んなものが見えまして。魚なんかの生き物はもちろん、海底の地形を見ているだけでも面白いものですよ」
「へぇ……」
郷谷はいかにもウキウキと語った。
その様にサナリモリブデンは想像する。
水底のゴツゴツした岩場と、そこをちょこまか動き回るカラフルな魚達。
海藻も生えているかも知れないし、サンゴやイソギンチャクもあるかも知れない。
空想の中ではどんな環境を描くも自由だ。
「クラシックとシニアでは合宿で海にも行きますし、興味があるならサナリさんもやってみますか?」
「ん……」
サナリモリブデンは少し言葉に詰まる。
夏合宿。
来年以降に行われるそれは、ウマ娘のトレーニングにおいて重要な意味をもつとされる行事だ。
そこに参加する時期にレジャーを楽しむ余裕があるかはまだ分からない。
未勝利戦から抜け出せていなければタイムリミットが近く、遊ぶどころではないだろう。
シニア級の夏合宿にいたっては、その時に学園に籍を残せているかさえまだ確定していない。
「うん。ちょっと興味ある。やってみたいかな」
「わかりました、覚えておきますね。合宿が近くなったら暇を見てライセンスを取りにいきましょう。1週間もかかりませんから」
だが、だからこそサナリモリブデンは頷いた。
郷谷の提案は、それまでに必ず勝利させてみせるという意気込みの表れだろう。
ならば応えるのが専属契約を交わしたウマ娘の心意気と言うもの。
「……ウミガメとか、見れるかな」
「亀は私もまだ会ったことありませんねぇ……」
もちろん、単純にただ楽しみというのもあったようだが。
【トレーニング結果】
成長:スタミナ+30/根性+20
スピ:142
スタ:105 → 135
パワ:149
根性:136 → 156
賢さ:136
【ランダムイベント生成】
イベントキーワード:「スルメイカ」「コンビニスイーツ」「狂気」
「ふしゅるるるるるぅ……」
トレセン学園。
その寮の一角にて不穏な唸り声が響いていた。
「どうどう」
「ふしゃー!」
などと表現すると大袈裟だろうなぁ、とサナリモリブデンは心中でこぼした。
なんという事はない。
ここはサナリモリブデンの自室。
そこで同室のペンギンアルバムが荒れているというだけのことである。
それも別に深刻な理由ではなかった。
「もー! あの子は毎度毎度なんなの!? こっちがどんだけ苦労して食欲我慢してると思ってんのさぁ!」
「うんうん。アルは頑張ってるよね。えらいよ」
食に関する事。
というか正確には、体重に関する事が原因だ。
先日のダイエット騒動が記憶に新しいように、ペンギンアルバムの悩みは体重の増えやすさだ。
彼女は脂肪をため込みやすい体質であり、少し油断をするとぶくぶくと太ってしまう。
そうなるともちろんレースにも悪影響が大きいため、最近は特に食べるものに気を使っている。
「ほら落ち着いて。これでも噛むといいよ」
「あむ……もむ……」
以前は常態化していた間食もほとんどなくなった。
たまに手を伸ばしてもチョコやクッキーなどは決して手を付けない。
低カロリーで脂肪分の少ないものばかりだ。
たとえば今は。
「……うぅ、噛めば噛むほど味が出る……おいしい……でも欲しいのは甘さなんだよぅ……」
あたりめだ。
するめともいう。
そこらのコンビニのおつまみコーナーで売っている定番の品で、高タンパク低カロリー。
そして噛み応えがあり、少量で長く楽しめる点が売りだ。
食事制限中にはぴったりの逸品である。
ただ、それもペンギンアルバムの欲求を抑えられるほどではない。
何しろ、今の彼女の目の前にはあまりにも目の毒な品々が並んでいるためだ。
ババロア。
バームクーヘン。
ロールケーキにモンブラン。
そのどれもに新作とのシールが貼られたコンビニスイーツの群れである。
「ゆるさない……! 今度という今度は許さないからねキーちゃん……!」
「どうどう」
これらはペンギンアルバムが言うところのキーちゃん、キーカードというウマ娘が持ち込んだものだ。
サナリモリブデンとペンギンアルバムの共通の友人の1人で、ペンギンアルバム同様に食べるのが大好き。
にもかかわらず肥満とは無縁の体質。
怒れる青毛は友人にして不倶戴天の敵と言ってはばからない、そんな相手だ。
当の睨まれているキーカードはぽやぽやとした性格の少女であるので一方通行の敵意ではあるのだが。
ともかく、これらのスイーツはキーカードからのおすそわけであった。
彼女の趣味は新作コンビニスイーツの食べ比べであるらしい。
そしてその中で特に美味しかったと判断したものを親しい相手に容赦なくプレゼントする習慣を持っている。
年頃の少女にとってはありがたくも恐ろしい話だ。
「うぅ、食べたい……少しだけ……1個だけなら……」
被害をもろに受けたペンギンアルバムは一撃で瀕死に追い込まれている。
くりくりした愛らしい大きな瞳を食欲にギラギラ光らせてスイーツを見つめる様は、サナリモリブデンをしてちょっとのけぞらせるほどの迫力があった。
「……まぁ、1個だけならいいんじゃないかな。我慢しすぎるのもストレスでしょ」
それに負けたわけでもないが、サナリモリブデンは提案する。
体重を気にしすぎる余りに過大なストレスを抱えてはかえって心身のバランスを崩しかねない。
普段の食事量は上手く抑えられている以上、スイーツの1個程度は大した問題でもないだろう。
「う、ぐ、だ、ダメだよサナリン。こういうのはその1個から壊れていくんだから。堤防だって小さなヒビから崩れるんだよ?」
だが、ペンギンアルバムの決意はどうやら固い。
絞りだすような声で提案を蹴り、ギギギと音がしそうな動きでスイーツから顔をそらす。
大した精神力だ。
3時になれば手が勝手に動き、戸棚から無意識にお菓子を取り出して頬張る。
そんな過去の姿を知るサナリモリブデンとしては感嘆に息が漏れそうなほどの変化である。
「……よし、サナリン。これ食べちゃってよ! な、なくなっちゃえば誘惑もなにもないからさ!」
そうしてペンギンアルバムはスイーツの群れをサナリモリブデンへと押しやった。
受け取り、サナリモリブデンは確認する。
「いいの?」
「い、い……いい、よっ! た、食べちゃって!」
「苦渋にまみれてる……」
ペンギンアルバムの肯定は血を吐くような勢いだったが、ともかくそういう事になった。
食べてほしいというならそれでいいだろう。
元々所有権の半分が与えられている事もあり、サナリモリブデンは遠慮なく蓋を開ける。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
「………………………………食べないの?」
「とても食べにくい……」
が、スプーンを手に取ったところで動きが鈍る。
何しろ、すぐ近くからものすごい目つきでペンギンアルバムが凝視してくるのだ。
元々目力が強いタイプではあるが、今日はひときわ力強い。
いっそ狂気さえ滲んできかねない鋭さで彼女はスイーツを睨んでいる。
このままでは、甘味を楽しむどころではなくなりそうだが……。
サナリモリブデンの行動
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ペンギンアルバムに一口差し出す
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ペンギンアルバムにするめを投与する
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別の場所で落ち着いて食べる
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食べるのをやめ、他の知り合いに譲る
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むしろ見せつけるように美味しく頂く