オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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ジュニア級 8月イベント結果〜8月トレーニング選択

 

 


 

 

【投票結果】

 

ペンギンアルバムに一口差し出す

 

 


 

 

パクリとひと口。

 

 

「あっ……」

 

 

悲しそうな声。

 

 

「……」

 

 

パクリとひと口。

 

 

「あぁ……」

 

 

悲しそうな声。

 

 

(うん、無理だ)

 

 

その繰り返しがサナリモリブデンを追い詰めるにはそうかからなかった。

具体的にはモンブラン1個を食べ切った辺りまで。

そこが限界である。

 

サナリモリブデンがスプーンを動かし、栗のクリームで作られた小さな山を崩す度に、ペンギンアルバムが切ない声を漏らすのだ。

その小柄な体を小さく縮めて震えながらだ。

しかも大きな目は徐々に潤んできている。

 

端的に言って哀れましい。

この状態でまともにスイーツを食べ続けられるのはよほど他人に興味がない者か、あるいは特殊な性癖の持ち主だけだろう。

サナリモリブデンはそのどちらでもなかった。

全く味が分からず、滑らかで優しい甘さのはずのクリームがまるで砂でも噛んでいるような心地ですらある。

 

モンブランの空き容器をポリ袋に放り入れ、サナリモリブデンは次を手に取らずに口を開く。

 

「……アル、流石に食べにくいよ」

 

「う、そ、そうだよね、ごめんね……」

 

幸い、ペンギンアルバムはそれで素直に離れてくれた。

机に座るサナリモリブデンから距離を取り、ベッドに腰掛けてそっぽを向く。

 

それを確認して、これならばとサナリモリブデンはバームクーヘンが一切れ入った袋を開けた。

 

「はむ……」

 

「っ……!」

 

「…………もぐ」

 

「……っ! ~!!」

 

サナリモリブデンの視界の隅でペンギンアルバムが身悶える。

耳がピクピク震え、尻尾は布団をバタバタ叩き、視線がチラチラ向けられる。

 

(うん、無理だ)

 

率直に言って、食べにくさはわずかも減っていなかった。

それでも早く消してあげるに越したことはないと食べ進めるが、ペンギンアルバムが発する重圧のせいで喉の通りがひどく悪い。

スイーツとセットで入っていたミルクティーがなければ喉を詰まらせていたかも知れないほど。

 

「ごめん、アル。まだ食べにくい」

 

「うっ! ご、ごめん、そうだよね、そりゃそうだよ……」

 

そうして先程のやり取りが焼き直された。

サナリモリブデンがそっと指摘すると、ペンギンアルバムは慌てて立ち上がる。

そして部屋の中に視線をさまよわせるが、良い移動先が見つからないようだった。

まさかクローゼットに収まっていろなどとも言えない。

 

「えっと、私ちょっと自主トレでもしてくるからさ! 居ない間に食べちゃっててよ! ね!」

 

となればその辺りが無難な選択だろう。

ペンギンアルバムは誤魔化すような笑みを浮かべてドアを開け、廊下へと出ていった。

 

「……」

 

サナリモリブデンはそれを見送る。

 

ペンギンアルバムの食欲を笑おうとは思わなかった。

入学当初からしばらく、彼女が山ほど偏った食事をし、モリモリ甘い物を頬張っていた姿をサナリモリブデンは良く知っている。

思うさま、好きなだけ。

そういった表現がピタリと合うほどの食いっぷりであったのだ。

 

対して今はどうか。

食事は量こそ減ってはいないがバランスを重視して品目多く、脂肪になるだけの甘い物は断ち、欲望を抑えに抑えて耐えている。

ただただレースのためにだ。

これを笑う気には流石になれなかった。

見つめるだけで良く済んだものだと称賛こそすれど、決してバカになど出来ない。

 

(キーには後でちょっと言っておこう)

 

悪気ゼロでぽわぽわ微笑むスイーツの贈り主の顔を思い出し、サナリモリブデンはそう決める。

次からはペンギンアルバムには渡さないように。

もし自分に贈るにしても見えないところで。

その程度の要求を通す説得ぐらいは友人としてすべきだろうと考えた。

 

それはともかく、今はスイーツを消費しきらねばならない。

ひとりきりとなった部屋の中で、サナリモリブデンは再びスイーツに向き合った。

次に開けるのはロールケーキだ。

生クリームたっぷりの手のひらサイズ。

 

これで3個目だが、サナリモリブデンとてウマ娘。

日々の食事量はヒトミミを優に超えている。

コンビニスイーツの3個や4個程度はさしたる負担にもならない。

 

プラスチックのスプーンを差し込み、すくってひと口。

ようやく落ち着いて味わえた甘味は、スイーツ漁りを趣味とするキーカードが薦めるだけはある上質さだった。

 

生クリームはコッテリと甘く、それでいて溶けるような舌触り。

よほど上等なミルクを使っているのか後味にしつこさがなく、サッパリと歯切れも良い。

スポンジにも隙がない。

フワフワとした柔らかさはそれだけでも幸せを感じさせるほど。

だというのにクリームを包み込むことで互いに一段上の美味に変わる。

 

ほお、とため息が漏れるほどの出来栄えだった。

 

「ほわぁ……」

 

そう。

実際に食べていない、見ていただけの者からさえため息が漏れるほどの。

 

す、とサナリモリブデンが部屋のドアに顔を向ける。

……閉まり切っていない。

ほんの少し、ギリギリサナリモリブデンの手元を覗くのに必要な分だけドアが開いている。

 

「……アル?」

 

「ゔっ」

 

もちろん、容疑者は1人だ。

サナリモリブデンはそっとロールケーキのゴミを捨て、どうしたものかと頭を抱えた、

 

 


 

 

それから数分後。

サナリモリブデンはペンギンアルバムにスプーンを差し出していた。

 

「はい、あーん」

 

スイーツを与えるためである。

 

「い、いやいやいや! ダメだよサナリン! 折角我慢が続くようになってきたんだから!」

 

しかしペンギンアルバムはこれを拒否した。

首をブンブン、両手をパタパタ振って拒絶する。

その様子はまるで注射を拒否する子供のようだが、決定的な違いがひとつある。

 

どれだけ否定しても本音が隠しきれていないのだ。

激しい動きの中、視線だけはまっすぐに残ったババロアに注がれている。

 

「うん。アルは頑張ってきたよね。私も良く知ってる」

 

「だ、だったら誘惑しないでよぉ……!」

 

「でももう限界なんでしょ?」

 

ぐう、と唸ってペンギンアルバムは沈黙する。

実際問題、彼女はどこからどう見ても限界を迎えていた。

甘味に対する飢餓状態である。

スイーツ食べたさの余り、他人が食べている様から目を離せなくなるなど流石に度が過ぎていた。

 

サナリモリブデンとしてももう見ていられない。

これ以上我慢させるくらいならば無理矢理にでも食べさせる方が良いだろうという考えに至るのは致し方ないところだ。

明日以降、ペンギンアルバムのタガが緩むようなら自分の責任として再度引き締めがなるまで面倒を見るとも決める。

 

そのためにサナリモリブデンは、努めて優しく語り掛ける。

 

「ひと口だけ。今日食べるひと口ぐらい、許されていいと思う」

 

「でも、でもさぁ……」

 

涎を垂らし、瞳孔を半ば開きながらペンギンアルバムはなお抵抗を試みる。

彼女の理性はやめておけと止めている。

だが本能は真逆の意見を声高に主張しているのだ。

 

今すぐあの甘味の塊を貪りたい。

口いっぱい頬張りたい。

心ゆくまで味わい尽くしたい。

頭の中がそんな欲求で満たされていく様が、サナリモリブデンにもよくわかる。

 

「……大丈夫。アルの頑張りは私も知ってる。ご褒美がないとおかしい」

 

それを後押しするように、サナリモリブデンは囁く。

 

「それに、今まで頑張ってきたんだから明日からも頑張れる。そうでしょ?」

 

甘い甘い誘惑は、じわじわとペンギンアルバムに染み入っていく。

 

「我慢のしすぎは体にも心にも良くない。今のアルにはスイーツが必要だと思う」

 

そうして最後の一押し。

 

「だから、ね? ひと口だけ。ひと口だけ食べて、また明日から頑張る活力にしよう」

 

サナリモリブデンは小首を傾げて微笑んだ。

 

【挿絵表示】

 

慈愛の笑みを浮かべてサナリモリブデンがスプーンを差し出す。

そこから漂う香りが最後のトドメだった。

 

パクリ、とひと口。

その瞬間、ペンギンアルバムは喜びを爆発させた。

 

「~~~~~~!!!」

 

言葉を発する余裕さえない。

全身を震わせて涙を流し、甘酸っぱく柔らかいババロアの食感を全霊をもって堪能する。

 

「……おいしい?」

 

「おいひぃ、おいひぃよぉー!」

 

問いかけに答えたペンギンアルバムの顔は幸福感に満たされていた。

これまで必死に耐えに耐え、我慢を積み重ねただけその味は至福のものなのだろう。

その余りの幸せっぷりに、サナリモリブデンもつい追加でスプーンを動かす。

 

「もうひと口、食べる?」

 

「う゛ぅ゛ん゛っ」

 

「すごい必死」

 

だが、それはペンギンアルバムが今度こそ断った。

反射的に頷きかけた首を途中からぐりんと横に振っての拒否である。

 

「だ、だめ、これ以上は我慢できなくなっちゃうから。もう大丈夫。ありがとうサナリン」

 

「そっか、うん。アルはすごいね」

 

サナリモリブデンの言葉は本心からの称賛だった。

となれば再びすすめるのは無粋というもの。

サナリモリブデンは素直に引き下がり、残ったババロアの処理に取り掛かる。

 

「……」

 

それに対し、ペンギンアルバムはちらちらと見るだけだった。

先ほどまでのように唸ったり震えたりはしていない。

あのひと口は確かに効果があったようだ。

飢えは随分と和らいだらしい。

 

サナリモリブデンはその事実に内心で安堵する。

ペンギンアルバムはこれで安定するだろう。

異常なほどの食への執着は当分鳴りを潜めるはずだ。

 

 

レースのために締める所は締めなければならない。

けれどやりすぎもまたメンタルを崩す事になる。

 

(次に調子をおかしくしてる様子があったら、またひと口何か食べるように誘っておこう)

 

そんな事を一人心の中で決め、サナリモリブデンはババロアを残さず平らげたのだった。

 

 


 

 

【イベントリザルト】

 

友好:ペンギンアルバムの絆+10

獲得:スキルPt+40

 

スキルPt:200 → 240

 

 


 

 

【7月トレーニング選択】

 

スピードトレーニング / スピード↑↑↑  パワー↑↑

スタミナトレーニング / スタミナ↑↑↑  根性↑↑

パワートレーニング  / パワー↑↑↑   スタミナ↑↑

根性トレーニング   / 根性↑↑↑    スピード↑  パワー↑

賢さトレーニング   / 賢さ↑↑↑    スピード↑  根性↑

 

適応訓練:ダート   / ダート経験↑↑↑ スタミナ↑  パワー↑

 

 


 

 

■ サナリモリブデン

 

【ステータス】

 

スピ:142

スタ:135

パワ:149

根性:156

賢さ:136

 

 

【適性】

 

芝:C(1/20)

ダ:F(0/10)

 

短距離:B(1/30)

マイル:B(4/30)

中距離:B(0/30)

長距離:B(0/30)

 

逃げ:A(1/50)

先行:B(0/30)

差し:A(4/50)

追込:C(0/20)

 

 

8月のトレーニング

  • スピードトレーニング
  • スタミナトレーニング
  • パワートレーニング
  • 根性トレーニング
  • 賢さトレーニング
  • 適応訓練:ダート
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