オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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ジュニア級 9月イベント結果~未勝利レース距離選択

 

 


 

 

【投票結果】

 

自分の線香花火に集中する

 

 


 

 

(……いや、やめておこう)

 

だが、サナリモリブデンはその考えを放り捨てた。

 

線香花火の命は短い。

輝いて、瞬いて、ふつりと落ちる。

その儚さをわざわざ縮めたいとは思わなかった。

 

ゴミとして捨てられていてもおかしくなかった線香花火を、折角友人たちが自分のためにと共に楽しんでくれている。

そんな時間をただ真っ当に楽しもうとサナリモリブデンは決めた。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

他の二人もそれぞれの手元に意識を集中し、息さえ止めている。

サナリモリブデンもそれに倣い、静かに火の玉を見つめた。

パチパチと音を立てて火花は踊る。

膨らんでは小さくなり、弾けてはまた大きくなる。

 

「……」

 

それはとても静かで、穏やかな時間だった。

終わってはほしくない。

もう少しだけ長く。

賭けとは全く無関係な部分でサナリモリブデンは小さく願った。

 

だが、何事にも終わりはある。

 

 


 

 

【分岐判定】

 

難度:70

参照:賢さ/136

 

結果:90(成功)

 

 


 

 

「───んぁっ!?」

 

どこか間抜けな声。

同時にぽとりと、火の玉がひとつ地面に落ちた。

 

「嘘でしょ!? そんなバカな、この私が……!」

 

脱落者はソーラーレイだった。

この勝負の言い出しっぺ。

得意満面で私が勝つと言っていたその顔は今や茫然としたものに変わっている。

一体どれだけ自信があったというのか。

 

彼女の敗北は無理からぬことであった。

ソーラーレイには落ち着きが少々欠けている。

彼女なりによく集中してはいたのだが、他二人に比べればいささか花火の扱いが雑だった。

その差が結果となって出たのである。

 

悔しがるソーラーレイをよそにサナリモリブデンとペンギンアルバムの勝負は続く。

二人ともにより深く、その集中の度合いを高めていく。

 

 


 

 

【分岐判定】

 

難度:70

参照:賢さ/136

 

結果:50(失敗)

 

 


 

 

「あっ……」

 

そして結果はそう間を置かずに出た。

 

サナリモリブデンの口から小さな落胆の声が漏れる。

彼女の手にあった火の玉もまた地面に落ちていた。

輝きを失ったヒモだけが寂しく揺れ、決着の形を示している。

 

「へっへっへ、私の勝ちぃー」

 

「く、この……顔がにくったらしいのよアンタ……」

 

優勝者、ペンギンアルバム。

彼女はにんまり笑い、敗者のソーラーレイがぎりぎりと歯噛みする。

どちらでもなかったサナリモリブデンはその真ん中でふっと頬を緩めた。

 

「ふふ。罰ゲームの命令、なんにするの?」

 

「さーてどうしようねぇサナリン。何かこいつにやらせたい事ある?」

 

「あ、ダメよ! 命令権は優勝者だけなんだから! そこんとこはキッチリしなさい!」

 

「はいはい。ん-、私生活でもキッチリさせてやろうかなぁ、命令で」

 

「……それは許してもらえない?」

 

「掃除、そこまで苦手?」

 

花火の残骸をバケツに入れ、火の後始末もしっかりと。

そんな事をしながら、三人の会話は弾む。

彼女たちの顔はどれも明るく楽しげだ。

 

夏の終わり際の、線香花火がほんの四本ばかりの小さな花火大会。

それでも、確かに大事な思い出としてサナリモリブデンの記憶に刻まれた夜だった。

 

 


 

 

【イベントリザルト】

 

友好:ペンギンアルバムの絆+5

友好:ソーラーレイの絆+5

成長:賢さ+15

獲得:スキルヒント/集中力

 

集中力/スタートが得意になり、出遅れる時間がわずかに少なくなる

 

スピ:202

スタ:135

パワ:189

根性:156

賢さ:136 → 151

 

 


 

 

そうして日常を繰り返した先に。

勝負の日はやってくる。

 

控室にて、サナリモリブデンは最後のチェックを行っていた。

運動着の状態を確かめ、ゼッケンの固定具合を検める。

芦毛をポニーテールにまとめるリボンを、走行中に外れないように固く結び直す。

もちろん靴もだ。

ヒモの緩みはもちろん、裏返して蹄鉄も確認する。

 

「結局、他の蹄鉄は試しもしませんでしたねぇ」

 

それを横から見ていた郷谷が、ぽつりと呟くように言った。

その声に、サナリモリブデンはこくりと小さくうなずく。

 

「うん。私の脚にはこれが一番合うから」

 

「地元の小さな製作所さんのもの、でしたね」

 

頷くサナリモリブデンから靴を受け取り、郷谷はしげしげと蹄鉄を眺める。

それは一般的なメーカー製の物ではない。

サナリモリブデンの地元にある小さな金属加工所の手製の品だ。

彼女の希望で蹄鉄はそこから取り寄せて使っているのである。

これは一度決めたら決して曲げないこだわりに該当する部分で、サナリモリブデンはせめて他の蹄鉄も試走くらいはした方が良いとの郷谷の勧めにも頑として首を縦に振らなかった。

 

結局、話し合いの末には郷谷が折れた。

物が水準を満たしていないなら郷谷とてなんとしてでもサナリモリブデンの意思を曲げにいっただろう。

だが、それは一流企業の製品と比べても見劣りしないだけの逸品だった。

どころか、サナリモリブデンのみが使用するという前提ならばわずかにだが優越するとさえ言って良い。

郷谷は角度を変えながら何度も覗き込み、指先で叩いて反響音を聞く。

 

「いつも通り丁寧な作りです。職人魂を感じますねぇ。メイドインジャパンの鑑みたいなものですよこれは」

 

「ん。おじさんの腕は世界一」

 

「今度私もご挨拶に伺わないといけませんね。ずっとお世話になるでしょうし」

 

「なら、その時は羊羹を持っていくといいと思う。好きみたいだから」

 

「いい事を聞きました。覚えておきましょう。さて……」

 

蹄鉄の確認を終えた郷谷は、サナリモリブデンに向き直った。

 

「今日の調子はいかがですか? サナリさん」

 

「ん……」

 

その問いに、サナリモリブデンはすぐには答えなかった。

代わりに目を閉じて、深く息を吸い、吐く。

全身に一度力が籠り、ゆっくりと足先から順に抜けていく。

そうして確認を終えてから呟くように言う。

 

「悪くないと思う。力は出し切れる。……やれる」

 

「えぇ。今のサナリさんならやれます」

 

サナリモリブデンのその認識を郷谷も後押しする。

背中に手を添え、ぽんと軽く叩く。

 

「今日は、今日こそはサナリさんに不利はありません。実力は伯仲しています」

 

触れただけでも分かるレースへの興奮。

それが過度なものにならないよう、郷谷は努めて静かに語り掛ける。

背を撫ぜる手も、穏やかに、優しく。

 

「実力を出し切れれば勝機は十分です。焦りだけは禁物ですよ。決して自分の走りを見失わないで下さい。一度のミス程度でしたら取り返す余裕はあるはずです」

 

応えるように、サナリモリブデンも静かに頷いた。

 

「大丈夫。分かってる。ありがとう、トレーナー」

 

「はい。ではそろそろ行きましょうか。パドックの時間です」

 

最後にもう一度だけ強く背を押してから、郷谷はその手を離す。

サナリモリブデンは立ち上がり、力強く踏み出した。

 

ジュニア級、9月、未勝利戦。

その開始はもう間もなくだ。

 

 


 

 

■ サナリモリブデン

 

【ステータス】

 

スピ:202

スタ:135

パワ:189

根性:156

賢さ:151

 

馬魂:97

 

 

【適性】

 

芝:C(1/20)

ダ:F(0/10)

 

短距離:B(1/30)

マイル:B(4/30)

中距離:B(0/30)

長距離:B(0/30)

 

逃げ:A(1/50)

先行:B(0/30)

差し:A(4/50)

追込:C(0/20)

 

 

【スキル】

 

冬ウマ娘○(冬のレースとトレーニングが少し得意になる)

冷静(かかりにくさが上がり、かかった時に少し落ち着きやすくなる)

 

未勝利戦 距離選択

  • 短距離
  • マイル
  • 中距離
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