オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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ジュニア級 9月 次走選択

 

 


 

 

【固定イベント/初勝利のご褒美】

 

 


 

 

ハンバーグであった。

焼きたてあつあつ。

ゆらゆらと上がる湯気はなんとも食欲をそそり、つやつやのデミグラスソースは見ているだけでも高揚を誘う。

 

しかも3枚重ねであった。

良く磨かれたピカピカの大皿の中央にドカンと鎮座するそれは迫力満点。

 

そこにオマケというかトドメとばかりに人参が丸ごと1本突き刺さっているのだ。

断言しても良い。

ウマ娘ならば誰もが二度見した後でよだれを垂らしながら財布の中身と相談を始めるご馳走である。

 

「さぁどうぞ、今日はたっぷり好きなだけ食べてください」

 

「……い、いいの? 本当に?」

 

それはクールな無表情系ウマ娘、サナリモリブデンとて同じことだった。

普段は冬の日陰のように静かな瞳が今日ばかりは見開かれ、キラキラと輝いている。

対面に座った自身のトレーナー、郷谷に問いかけながらも特上にんじんハンバーグから視線を外す事さえできない。

 

ここはトレセン学園近くのちょっとお高いレストランだ。

土地柄上学園の生徒が利用する事も多く、ウマ娘向けのメニューの充実ぶりが特徴だ。

そしてこのハンバーグは、その中でも最も高級かつ最大の人気を誇る逸品なのだった。

 

「えぇ、もちろんですよ。お祝いなんですから、遠慮なんてする必要はありません」

 

「……うん。ありがとう、トレーナー。……いただきます」

 

本当に食べてもいいのか。

これだけのものならば相当値が張るのではないか。

そんな遠慮をサナリモリブデンも抱いてはいた。

 

だがそれを脇に置き、ナイフとフォークを手に取る。

とてもとても美味しそうで、なんとしても味わってみたかったのがひとつ。

そしてもうひとつ。

ニコニコと微笑む郷谷が本当に、この上なく嬉しそうだったためだ。

 

1月に契約を交わし、6月の敗戦を乗り越え、そして初めての勝利を手にしたこの9月まで。

これだけの月日を共に過ごせば互いの人となりはそれなりに理解できている。

変に遠慮しても残念に思わせてしまうだけ。

お祝いのハンバーグを美味しく食べて幸せを満喫することが彼女の本心からの望みだと、サナリモリブデンももう知っていた。

 

「……!」

 

そうして肉にナイフを差し込んだ瞬間、サナリモリブデンは驚く。

断面からあふれ出した肉汁の量と、その芳醇さにだ。

閉じ込められていた香りがふわりと広がり、まだ口に入れてさえいないのに濃密な味を楽しんだ錯覚さえ覚える。

 

本当に美味しい一流の料理とはどうやら食べる前から美味しいらしい。

サナリモリブデンはその衝撃にごくりと唾を飲み込んでから、ゆっくりと切り取った一切れを口に運んだ。

 

そして───。

 

 


 

 

「───っ?」

 

「あぁ、おかえりなさい。サナリさんは結構早いタイプなんですねぇ」

 

サナリモリブデンの意識が戻る。

どこからかといえば、天国からだ。

 

気付けば彼女の目の前の皿からはハンバーグが消えている。

あまりの規格外の美味に、無我夢中、茫然自失で食べきってしまったのだ。

食事中、どうやって食べたのか、どのような味だったのかさえ思い出せない。

 

だが、それを残念に思う気持ちはない。

サナリモリブデンの心中を満たすのは圧倒的な満足感だけだった。

言葉に表すなら、そう。

 

「…………トレーナー」

 

「はい、なんですか?」

 

「今、世界中のすべてに感謝したい気持ち」

 

「これ初めて食べた子は大体皆さんそう言いますねぇ」

 

そういうものらしかった。

 

 


 

 

【イベントリザルト】

 

成長:ALL+5

獲得:コンディション/絶好調

 

スピ:212 → 217

スタ:145 → 150

パワ:199 → 204

根性:166 → 171

賢さ:161 → 166

 

絶好調/次のレース時、能力がすごく上がる状態。レースが終わると解消される。

 

 


 

 

「さて、お腹も膨れたところで今後の話をしましょうか」

 

「ん」

 

食べ終わった皿が下げられた後、郷谷はそう切り出した。

サナリモリブデンはノンアルコールのシャンパンで唇を湿らせ、こくりと頷く。

今彼女たちが利用しているのはしっかりとした壁で仕切られた個室だ。

ゆったりと話をするにはちょうど良い空間である。

 

「まずはもう一度。本当によく頑張ってくれました。初勝利おめでとうございます、サナリさん」

 

「ん……トレーナーのおかげ。ありがとう」

 

「ふふ、謙遜せずに受け取っておきましょう。ですが半分はサナリさんの努力の成果です。そこは忘れてはいけませんよ?」

 

「うん。半分ずつ」

 

柔らかい笑みを交わしあった後、テーブル越しに郷谷が握った拳を差し出す。

サナリモリブデンはその意図を正しく読み取って、同じく拳を伸ばしてこつんと当てた。

郷谷は満足げに片目を閉じてウインクを飛ばし、体を戻す。

そうして説明を始めた。

 

「それで、ですが。これでサナリさんは晴れて1勝クラスに上がりました」

 

ピッと郷谷が顔の横に指を立てる。

 

「はい、それではサナリさん。1勝クラスに上がるとどうなるでしょう」

 

「ん、未勝利戦に出られなくなって、1勝クラスのレースに出られるようになる」

 

「はい正解。そのまんまですね」

 

その詳細を郷谷は語る。

 

ウマ娘はその成績によってクラス分けがなされている。

下から順に、未勝利、1勝クラス、2勝クラス、3勝クラス、そしてそれ以上のオープンの5段階だ。

クラシック級の春までは1勝クラスの次はオープンになるが。

 

そして、自身の所属するクラス以外のレースには出走できない*1

何度も勝利したオープンクラスのウマ娘が未勝利レースを荒らす事は出来ないし、未勝利のウマ娘が突然オープンクラスに殴り込む事も許されない。

 

1勝クラスのサナリモリブデンは、1勝クラスのレースにしか出られないという事になる。

 

 

「というわけで、1勝クラスのレースをこちらにまとめておきました」

 

テーブルの上に郷谷がタブレットを滑らせる。

その画面にはサナリモリブデンが出走可能なレースの一覧が表示されていた。

 

「とりあえずは年内のもので、サナリさんがまともに走れる芝のレースをピックアップしています。どれか気になるものはありますか?」

 

「ん……逆ならある」

 

サナリモリブデンはそれを覗き込んで、幾つかのレースを指し示した。

そして、右耳から下がるリボンをいじりながら言う。

 

「この辺りのレースは、なんとなく興味がそそられない感じがする」*2

 

「ふむん? なるほど、まぁそういう事もあるでしょう。フィーリングというのも走りには影響しますしね。では除外しておきます」

 

そうして残ったレースの一覧に、サナリモリブデンはもう一度目を通していく。

 

 


 

 

≪System≫

同月同距離のレースが複数あると票数がバラけて不利になる恐れがあるため、それぞれ1つになるようにランダムに選出しています。

 

 

【10月】

 

紫菊賞      秋/京都/芝/2000m(中距離)/右

 

【11月】

 

秋明菊賞     秋/京都/芝/1400m(短距離)/右

きんもくせい特別 秋/福島/芝/1800m(マイル)/右

百日草特別    秋/東京/芝/2000m(中距離)/左

 

【12月】

 

黒松賞      冬/中山/芝/1200m(短距離)/右

ひいらぎ賞    冬/中山/芝/1600m(マイル)/右

エリカ賞     冬/阪神/芝/2000m(中距離)/右

 

 


 

 

「どのレースを走るかはサナリさんの希望次第ですが、ひとつ付け加えておきますね」

 

タブレットとにらめっこするサナリモリブデンへ、郷谷は語り掛ける。

 

「12月にはジュニア級のG1があります。サナリさんの適性から走れるとしたら、朝日杯フューチュリティステークス、そしてホープフルステークスです」

 

そして、タブレットの横にスマホを並べた。

そちらには今言葉にしたG1レースの詳細が表示されている。

朝日杯FSはマイルの、ホープフルステークスは中距離のレースだ。

 

出走条件はジュニア級のオープンクラスである事。

ジュニア級においては1勝クラスの次がオープンクラスであるため、サナリモリブデンはあと1勝すれば出走資格を得られる事になる。

 

「なので今年中にG1に出走したいなら、11月までのレースに勝利する必要があります

 

「ん……」

 

その言葉を聞いて、少しの間サナリモリブデンは考え込んだ。

時間にして十数秒ほど。

それから顔を上げて、郷谷をまっすぐに見つめて尋ねる。

 

「もし、私が今G1に出たとして、勝機はどのくらい?

 

「ありません」

 

郷谷は即答した。

だろうなと、サナリモリブデンも頷く。

 

「残念なことですが、今のサナリさんでは重賞での勝利は全く現実的ではありません。入賞も難しいでしょう。現実を見るなら、今はトレーニングを優先しながら、他のレースで少しずつ経験を積み重ねるべき段階です」

 

「うん。トレーナーのそういう誤魔化しのないところ、助かる」

 

「流石にこれをやれると言ってしまうのは優しさではなく無責任ですからねぇ……」

 

苦笑をひとつ挟んで、続ける。

 

「なので全くオススメはできませんが、もしサナリさんがG1の空気を体感しておきたいですとか、あるいは何か強い思い入れがあるのでしたら、という話ですね。参加を目指すなら11月までの勝利が必要。そういう補足でした」

 

「ん、了解」

 

 

郷谷の話はそれで区切りのようだ。

サナリモリブデンは再びタブレットに視線を戻し、考える。

 

さて。

自分はどう走りたいのだろうかと。

 

 


 

 

【ステータス】

 

スピ:217

スタ:150

パワ:204

根性:171

賢さ:166

 

 

【適性】

 

芝:C(6/20)

ダ:F(0/10)

 

短距離:B(1/30)

マイル:B(9/30)

中距離:B(0/30)

長距離:B(0/30)

 

逃げ:A(1/50)

先行:B(0/30)

差し:A(9/50)

追込:C(0/20)

 

 

【スキル】

 

冬ウマ娘○(冬のレースとトレーニングが少し得意になる)

冷静(かかりにくさが上がり、かかった時に少し落ち着きやすくなる)

 

 

【スキルヒント】

 

冬ウマ娘◎ (冬のレースとトレーニングが得意になる)

押し切り準備(最終コーナーで先頭の時、先頭をわずかにキープしやすくなる)

展開窺い  (レース中盤に後ろの方だとわずかに疲れにくくなり、視野がちょっと広がる)

ペースキープ(レース中盤に追い抜かれた時にかかりにくくなり、持久力が少し回復する)

集中力   (スタートが得意になり、出遅れる時間がわずかに少なくなる)

 

スキルPt:290

 

 

*1
格上挑戦は管理が煩雑になるので不可とします

*2
牡馬扱いのサナリモリブデンは牝馬限定レースには出走不可

次走選択

  • 紫菊賞
  • 秋明菊賞
  • きんもくせい特別
  • 百日草特別
  • 黒松賞
  • ひいらぎ賞
  • エリカ賞
  • 次走はクラシック級まで待つ
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