オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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ジュニア級 9月次走選択結果~10月ランダムイベント

 

 


 

 

投票結果

 

きんもくせい特別

 

 


 

 

サナリモリブデンが選んだのは、きんもくせい特別だった。

開催時期は11月。

福島レース場で行われる、芝1800メートルのマイルレースだ。

 

「わかりました、では登録しておきましょう」

 

郷谷は頷き、タブレットはそれで仕舞われる。

後はただのんびりと食後の余韻を楽しむ時間だ。

普段口にする機会のないお高めのシャンパンをお供に、他愛ない雑談を交えながら静かな時間は過ぎていった。

 

 


 

 

【ランダムイベント生成】

 

イベントキーワード:「カラーコーン」「ポテトチップス」「祝い酒」

 

このイベントの登場人物は固定されています。

 

 


 

 

「ククククク……」

 

「ヌフフフフ……」

 

「ゲッヘッヘ……」

 

「わからない。なにごと?」

 

困惑。

狼狽。

冷や汗だらだら。

サナリモリブデンの状態を表すならそういったものになる。

 

「お前がぁぁ……サナリモリブデン、だなぁ……!?」

 

「…………人違いだと思います」

 

何故かといえば簡単だ。

あからさまに怪しいウマ娘達に囲まれているのだ。

人数は3名。

制服を着ている事からトレセン学園のウマ娘である事はおそらく間違いない。

 

ただ、人相は不明だ。

何しろ彼女たちは……頭にカラーコーンを被っているためである。

真っ赤なそれにすっぽりアゴまで入り込んで、顔の作りは少しも見て取れない。

かろうじて目元に小さな穴が開けられているが、精々瞳の色と形がわかる程度だ。

 

午前中の授業が終わり、昼食に向かおうかというところ。

そこに突然現れた彼女たちがサナリモリブデンを取り囲み、そして何やら怪しい笑い声を発し始めたのだ。

 

端的に言ってわけがわからなかった。

そんな状態で名前を確認されたとてとぼけるに決まっている。

 

「え、あれぇ? やば、間違った?」

 

「うっそ! マジで恥ずいんだけど」

 

「ちょーちょーちょーやめてよほんと。アビー何やってんの、間違いないって言ったじゃん」

 

「あ、バカお前! 名前で呼ぶなって!」

 

が、カラーコーン3人組は綺麗に騙された。

悪漢めいた雰囲気はたちまち霧散し、おろおろと取り乱し始める。

サナリモリブデンは少し拍子抜けした。

もしかして悪い娘達ではなかったのかも知れないと。

まぁちょっとおかしい子らであるのはおそらく間違いないが、とも。

 

「あー……その、なんつーか……ごめん。人違いだったみたいだわ。忘れて?」

 

「ん、別に良い。気にしないで」

 

「心が広い。助かるわー」

 

ともかく、なんとか切り抜けられそうでサナリモリブデンは安心した。

真顔ですっとぼけた事が功を奏し、道を塞いでいた1人がスッと脇に避ける。

これで一件落着。

後は落ち着いた頃合いで郷谷にでも相談しようとサナリモリブデンは考えた。

 

 

 

……と、ちょうどその時である。

 

「おやサナリさん、ちょうどいいところに。少しお話しておきたい事が……んん?」

 

その郷谷が廊下の角の向こうから現れた。

サナリモリブデンの名を呼び、それからカラーコーンを視界に入れて困惑する。

 

「あ」

 

タイミングの悪さに声を上げるも、もう遅かった。

 

「……やっぱお前でいいんじゃねーか! 確保おおおおお!!!」

 

「ひゃっはー! 生け捕りだー!」

 

「おっしゃー! 標的Bは任せろー!」

 

「は!? その声アビッ───」

 

弾かれたように飛び掛かってくるカラーコーンにサナリモリブデンは為す術がなかった。

2対1で抑えつけられ、縛られて持ち上げられる。

視界の隅では郷谷もまた同様に1人の肩の上に背負いあげられていた。

 

「作戦成功! ただちに撤収! ずらかれー!」

 

「おー!」

 

「おー!」

 

「ちょっと!? 何してるんですあなたたち!?」

 

そしてそのまま、ずどどどどと足音を立てて運搬される。

見事な早業。

狙った相手と特定できた途端、素晴らしい手際の拉致であった。

 

「思ったより暴れないねー。楽でいいけど」

 

「ん……なんとなく、事情はつかめたから」

 

「おわークールだ。すげー」

 

幸いなのはサナリモリブデンがおおむね彼女たちの正体を看破できた事だろう。

彼女はそういった部分、特に察しの悪いタイプではなかった。

 

 


 

 

「正座」

 

「りょうかーい!」

 

「おっす! イエスマム!」

 

「あはー、これも懐かしいねぇ」

 

そうして連れ去られた先で、下手人どもは床に座り込んでいた。

反省を促すための正座を命じているのは拘束を解かれた郷谷だ。

だが、座らされた側はむしろ楽しそうにケラケラと笑っている。

 

対してサナリモリブデンの方は。

 

「あの、ごめんね……? アビーたちってば本当バカで……あ、ポテチ食べる?」

 

「ん、平気。あなたは別に悪くない。うすしおなら食べたい」

 

こちらも拘束を解かれて普通に椅子に座っていた。

手元にはジュースが供され、今もそっとポテトチップスを差し出されている。

なお、差し出したのはカラーコーンズの仲間のウマ娘である。

が、聞いたところ拉致には反対の立場で必死に止めていたようだ。

結局制止は叶わなかったようだが、サナリモリブデン的には無罪認定の範囲だ。

 

ともかく、うすしお味のビッグバック。

ポテチの中では一番好みのそれをサナリモリブデンは特に遠慮なく開けてつまみ始める。

 

「あー! それあたしの───」

 

「てい」

 

「かどっ!?」

 

それを見て正座していた1人が声を上げるが、鎮圧は即座だった。

頭の真ん中あたりに郷谷のタブレットが振り下ろされ、栗毛の中に沈む。

勢いはさほどではなかったが、当たったのは角である。

あれは痛そうだなぁと、ポテチをもりもり食べながらサナリモリブデンは思った。

 

「出たぁ静流ちゃんの得意技! 角っこタブレット! 出たぁ! 出たよこれー!」

 

「へへへ、震えてきやがった……やべぇ、ノリに任せてはやまったか?」

 

「そうですねぇ。はやまってますよ。行動を起こす前に落ち着いて考えなさいって何回も言ったでしょうに。てい」

 

「んごっ!?」

 

「えっじっ!?」

 

カラーコーンズは見事に崩れ落ちた。

頭のてっぺんから煙を上げてうつぶせに。

手足がピクピク震えているのがなんともシュールだった。

 

「ん、お疲れ様、トレーナー」

 

「えぇはい。はぁ、全くもう……サナリさんとセレンさんは本当にいい子ですねぇ」

 

「あはは……」

 

サナリモリブデンがねぎらい、郷谷が呆れにまみれたため息を吐く。

それを見ていたもう1人。

サナリモリブデンを歓待していたセレンスパークは、へにょりとした苦笑を返した。

 

 


 

 

つまり、ここがどこかというとだ。

部室であった。

利用権を与えられているのはチームウェズン。

おおいぬ座の二等星から名を取られた、学園内では少なくとも成績面では余り目立たないチームだ。

そして、サナリモリブデンのトレーナーである郷谷が去年までサブトレーナーを勤めていたチームでもある。

 

「で? なんだってこんなことをしたんですか?」

 

郷谷が聞く。

時間が経って復活したカラーコーンズがそれに答えた。

 

「いやだってさぁ、静流ちゃんの担当ならあたしらの後輩だろ? 歓迎しなきゃ嘘じゃん」

 

発言者はアビルダ。

ほとんど黒に近い濃い目の灰色、芦毛のウマ娘だ。

大きく露出されたおでこが眩しい。

今はタブレットの角が直撃した跡が痛々しくもあったが。

 

「そーそー! サナリちゃんはウェズンの末っ子みたいなもんだよ! 今年は先生が新人取らなかったからさぁ、寂しかったんだって」

 

こちらはトゥトゥヌイ。

鹿毛の眼鏡っ子だ。

反省の気配が欠片も見られない笑顔で、歯を見せて言う。

 

「そーそーそー、これアレっしょ、じょーじょーしゃくりょーってやつ。やむにやまれぬじじょーがあったんだって」

 

続いてヘラヘラ言うのはタルッケ。

長い栗毛のウマ娘である。

先ほどポテチを食べられて声を上げていた娘だ。

なお、撃沈された衝撃でそちらに関してはころっと忘れているようである。

 

「あー……えーと……こう見えてアビーたちも我慢した方なので……初勝利までは邪魔しちゃいけないって」

 

そして最後に申し訳なさそうに縮こまっているのがセレンスパーク。

ぱっつんと切り揃えられた黒鹿毛は長く伸ばされ、背中を半分ほど隠している。

拉致を止めていた立場なのだが最も申し訳なさそうに身を縮こめている辺り、苦労していそうな気配が伺えた。

 

アビルダはシニア級の3勝クラス。

トゥトゥヌイとタルッケはシニア級の1勝クラス。

セレンスパークは現在クラシックの2勝クラスだという。

この4人がチームウェズンの全メンバーであるようだ。

 

なかなかの面白チームだなぁと、食べきったポテチの袋をゴミ箱に入れながらサナリモリブデンは心中で漏らした。

怒りなどは特にない。

拉致のために持ち上げられた瞬間、郷谷が下手人の名前を呼びかけていた辺りから大体察しはついていたのだ。

郷谷の知り合いで、複数名の仲間らしいウマ娘と考えればそう難しい予想ではない。

そのために焦る事もなくのほほんと運搬されたサナリモリブデンは、別段ストレスを受けてさえいなかった。

 

のだが。

 

「だからって拉致はおかしいでしょう、拉致は。私は慣れているからまだ良いですが、初対面の子相手に何をしているんですか貴女達は……」

 

郷谷はまだまだ怒り心頭であるらしい。

腰に手を当ててプリプリと、私怒ってますよというポーズを崩していない。

 

彼女からすれば当然の事ではある。

サナリモリブデンは郷谷にとって初めての専属担当である。

それも初めての勝利の後、これからまさに上を目指して飛躍せんとする大事な時期だ。

拉致で怯えて調子を崩すような事があれば目も当てられなかっただろう。

サナリモリブデンが図太いウマ娘であったのはなんとも幸運だ。

 

「サナリさんも言いたい事は言って良いんですよ。そうだ、この子達に希望する処分なんかはありますか? 元サブトレーナー権限で通してみせますが」

 

そんな郷谷は振り返り、サナリモリブデンにそう振ってくる。

 

チームウェズンに対する処分

  • 郷谷にこってり絞ってもらう
  • たっぷり歓待してもらう
  • 特に処分を求めず許す
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