オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
スピードトレーニング
友情トレーニング発生!
朝が来る。
がばり、と音を立てて起き上がった。
いそいそと掛け布団を畳んでベッドを降り、まずは洗面所へ。
顔を洗って歯を磨き、パジャマから普段着に着替えて髪を整えると食堂に向かってモリモリと朝食を食べる。
ここまでの行動。
その全てがピッタリとシンクロしていた2人であった。
「寝ても起きても一緒、トレーニングの内容も同じってなると揃ってくるもんなんだねー」
「うん。少し不思議な感覚」
つまり、サナリモリブデンとペンギンアルバムだ。
本来、朝に強いのはサナリモリブデンのみ。
まず最初に彼女が起きて、ぐずるペンギンアルバムを揺り起こす。
寝起きでぼーっとしているペンギンアルバムが目覚めきるのを待つ間に1人で支度を整えて……というのが以前の日常だった。
それが今や、サナリモリブデンが2人になったようなキッチリ具合だ。
どうやらこれは友情トレーニングの副産物であるらしい。
常に共に行動する内に生活リズムまで揃ってしまったのだ。
それも良い方向にだ。
サナリモリブデンとしては、長所を写し取るという友情トレーニングの効果を意外な形で目の当たりにして驚くばかりである。
流石にここまで影響が出るのは寮でも一緒というペンギンアルバムだけではあろうが。
なお、食事の量まではシンクロはしなかったようだ。
サナリモリブデンの前にあるのは一般的なウマ娘向け定食。
ペンギンアルバムの前にあるのはそれが3人前だ。
よって朝のシンクロはここまで。
小柄な体のどこにそれが収まっているのか。
そして何故そのくらいの量ならば1日のトレーニングで消費しきって脂肪に変わる事がないのか。
そちらも同様に少し不思議なサナリモリブデンであった。
そうして、トレーニングが始まる。
やる事自体は以前のスピードトレーニングと変わらない。
ただ、その強度は段違いだった。
「はっ、はっ、は、ぐ」
「おー? どしたんサナリン、もうへばっちゃう?」
「まだまだっ……!」
「それでこそっ」
隣に走る者が居るというだけで何もかもが違う。
この1か月はサナリモリブデンにとってひどく辛い日々であった。
ペンギンアルバムは速く、サナリモリブデンは遅い。
その事実を毎日、走る毎に見せつけられている。
トップスピードがまるで違う。
加速力は格の差が大きすぎる。
最高速度を維持する時間さえ遥か先を行かれている。
これで毎日共に走れなど、ウマ娘の心を折るには容易いほどの過酷な条件だ。
だが、サナリモリブデンはわずかにもブレる事なく耐えて見せた。
苦にしなかったわけではない。
苦にした上で、落ち込む暇は自分にはないと歯を食い縛って見せただけだ。
「サナリさんは現実を正面から直視しながら夢を抱ける子ですからね。この程度で音を上げるなんて事はありませんよ」
「……末恐ろしい子ですね。アルバムがこれを言い出した時は相手を潰したいのかと思いましたし、話を受け入れられたのも困惑しましたが、これなら納得です」
ターフを駆ける2人を見ながら、トレーナー陣もまた会話を交わしていた。
郷谷が胸を張ってサナリモリブデンを誇って見せ、ペンギンアルバムのトレーナー……20代後半に見える男は納得を浮かべる。
「えぇ、現実から目を背けない覚悟さえあるなら得る物の大きさは段違いですから。何しろペンギンアルバムさんは世代トップの実力者ですし。来月は京都でしょう?」
「そうなりますね。京都ジュニアからホープフル、という予定でいます」
「あはは、トップクラスのウマ娘の定番コースですねぇ。勝算はいかほどで?」
その問いに男はニヤリと笑ってみせた。
自信を満面に浮かべて、長身から郷谷を見下ろして言う。
「うちの子が負ける理由なんてもの、この1か月で1つでも見つけられましたか?」
「……言いますねぇ、あなたも」
「唯一欠けていた勝負根性もこれで補えましたから。もう死角はありません」
2人の視線の先では、サナリモリブデンがペンギンアルバムに食らいついていた。
急に速度が上がったわけでもスタミナがついたわけでもない。
恐ろしいほどにバカバカしい話で、サナリモリブデンがスタミナが底をついたまま走っているだけだ。
意地だけで体を動かし、ペンギンアルバムの体力がなくなるまで根性でそれを続けただけ。
こうなるとトレーニングの辛さは反転する。
サナリモリブデンがペンギンアルバムを追い詰め、追い立てる形だ。
お陰でペンギンアルバムの根性は1月前とは比べ物にならないほど鍛え上げられていた。
「……いや、本当に末恐ろしいですね」
男も、担当自慢を一旦止めて息を飲む。
「ふふ、そうでしょうそうでしょう。……どこまでやっても手応えしかないので、育てる方も恐ろしいんですよ? 壊さないギリギリの見極めが大変でして」
「贅沢な悩みじゃないですか」
「えぇ。お返しの自慢ですからね」
そんな風に、トレーニングの日々は過ぎていった。
【トレーニング判定】
結果:成功
【トレーニング結果】
成長:スピード+40/パワー+30
スピ:217 → 257
スタ:160
パワ:204 → 234
根性:181
賢さ:166
【ランダムイベント生成】
イベントキーワード:「絵文字」「角砂糖」「起動」
「……おっそいわねぇ、あいつ」
「ん……」
ソーラーレイがこぼし、サナリモリブデンが相槌を打つ。
場所は喫茶店。
内装は綺麗に整っていて、どこか真新しい香りのする店だった。
それもそのはずで開店からまだ数週間と経っていない。
最近学園で話題のコーヒーショップである。
話題になるだけあり、メニューの品質はしっかりしたものだ。
サナリモリブデンはカップを傾け、ひと口味わう。
注文は無難なオリジナルブレンド。
この店のものは苦みが少なく、モカの香りが強いのが特徴のようだ。
後口には酸味が残るがしつこさはなく、総じて飲みやすく仕上がっている。
コーヒー初心者にも落ち着いて楽しめそうな部類である。
「なんなのよもう。折角遠征の壮行会してやろうっていうのにさぁ」
ただ、ソーラーレイはお気に召さなかったのか。
それともただただ甘党なだけなのか。
彼女は自分のコーヒーに次々と角砂糖を放り込んでいる。
4個、5個、6個。
そんなに、とサナリモリブデンが目を見開くのも気付かずに。
そしてスプーンで砂糖をザクザク崩して、ぐいっとあおってみせた。
「あら、結構おいしいじゃない。やるわねこの店」
「………………そうだね」
それだけ入れてはコーヒーではなく砂糖の味しかしないのでは?
などという言葉はそっと飲み込むサナリモリブデンであった。
さて、ともかく壮行会である。
これはソーラーレイ主催によるもので、ゲストは2人。
サナリモリブデンとチューターサポートだ。
この11月、2人は遠征を行う。
サナリモリブデンは福島に、チューターサポートは京都にだ。
それに対しトレセン学園のある東京から離れる予定のないソーラーレイは応援してやろうと企画を立ち上げたのである。
なのだが、主役の片割れが中々やってこない。
壮行会の開始予定時刻からは10分ほど経過していた。
温厚なサナリモリブデンはともかく、ソーラーレイはイライラを徐々につのらせている。
常識は備えている娘であるため店内で暴れたり大声を出すような事はもちろんないが。
「あーもう、何してんのかしらあいつ。ちょっと急かしてやろ」
代わりに、ソーラーレイはスマホを取り出してメッセージアプリを立ち上げた。
まだ余りスマホ操作が得意ではないサナリモリブデンからすると目を剥くような高速フリックで文字を打ち込み、送信する。
その返事も早かった。
画面には、トレーニングに熱中しすぎた、という文言が表示されている。
続くのは真摯な謝罪と、これからすぐに向かうという必死な弁解だ。
顔を青くして冷や汗をかいているチューターサポートの顔が目に浮かぶようである。
「……あいつまーたやりすぎてんのね。まぁ前よりはマシになったからまだいいけど」
それに対し、ソーラーレイは一度心配そうに眉をひそめた後に、ニヤリと笑って続けてメッセージを送った。
煽りである。
絵文字とスタンプを巧みに駆使し、チューターサポートを責め立てる。
「あれれー? 約束の時間も守れない子が京都になんて行けるのー? ちゃんと電車乗れまちゅかー? 迷子になってレースに出れなくてトレーニング無駄になったら可哀想! トレーナーさんに手繋いで連れてってもらわないといけまちぇんね! っと。どうよこれ」
「むごい。あとすごい」
サナリモリブデンは感心した。
ソーラーレイの人の神経を逆撫でする技術にだ。
その時、サナリモリブデンはふと閃いた。
この技術はレースに活かせるかもしれない。
「いや、んなわけないでしょ。こんなの私の性格が悪いだけよ」
と思ったが気のせいだったようだ。
目を輝かせていたサナリモリブデンはすんっと落ち着き、コーヒーを飲む。
謎の高揚感はその香りがどこかへ吹き飛ばしてくれた。
代わりにやってきたのは真っ当な思考だ。
今、ソーラーレイはチューターサポートに煽りのメッセージを送信した。
それに対し、フォローか何かをすべきだろうかと少し考える。
サナリモリブデンの行動
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ソーラーレイを弁護する
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焦らなくて良いと送信して落ち着かせる
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料理の写真を送って煽りから気を逸らさせる
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一緒になって煽る
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何もせず成り行きを見守る