オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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ジュニア級 11月 次走選択

 

「お疲れさまでした、サナリさん。……いやー、なんというか、すごい事しましたねぇ」

 

「ん、ただいまトレーナー。……うん。ちょっと自分でも信じられないくらい」

 

ライブを終えて。

レース場備え付けのシャワーで汗を流した後、サナリモリブデンはようやく人心地ついていた。

 

夜まで使用が許されている控室に戻り、郷谷トレーナーと言葉を交わす。

普段ならば夜と言わずライブが終われば適当に切り上げて帰路につく2人であったが、今日はどうもそうはいかない。

きんもくせい特別、大差の決着。

その激走の疲れが色濃く残っているためだ。

 

「ふむ、やっぱり大分張っていますね」

 

「自覚はある。ライブもちょっと大変だった」

 

「でしょうねぇ。幸い怪我や故障の気配はありませんが、今月の残りはしっかり休養に当てましょう」

 

「ん、了解」

 

まだ熱を持った脚をマッサージしながら郷谷が言い、サナリモリブデンが素直に頷く。

その従順さによしよしと郷谷は軽く芦毛の頭を撫でた。

ピンと立っていた耳が撫でやすいようにパタリと寝る。

 

サナリモリブデンは表情に乏しく、言葉も平坦で騒がしさからは遠いタイプ。

だが同時に、他者との触れ合いには殆ど抵抗がないらしいと郷谷はもう分かっていた。

むしろどちらかといえば積極的に応じる方であろう、とも。

 

「サナリさんはかわいいですねぇ」

 

「ん……そうなの?」

 

「はい、とても」

 

「そうなんだ。ありがとう」

 

そして、褒められれば率直に嬉しそうにする。

顔には出ないものの雰囲気がやわらぎ、声の質が変わるのだ。

 

良い所はどんどん褒めて伸ばしたい郷谷とは全く相性の良いウマ娘である。

独立して最初の年から素晴らしい出会いだと、郷谷は心中でしみじみ噛み締めた。

 

 


 

 

「さて、それでは今後の話をしましょうか」

 

マッサージも終えて、2人はタブレットを挟んで向かい合った。

未勝利戦の後、お祝いのハンバーグを楽しんだ席で行った説明と同種のものだ。

郷谷は一拍置き、分かりやすい説明のために思考をかみ砕いてから口を開く。

 

「サナリさんは見事にきんもくせい特別を勝利してくれました。これでまた1つクラスが上がった、という事になります」

 

「うん。これでオープン、でいい?」

 

「えぇ、合っていますよ。ジュニア級、というかクラシックの夏までは1勝クラスの次はオープンですので」

 

そして、タブレットにサナリモリブデンの情報を表示させる。

 

サナリモリブデン、3戦2勝。

その評価点数は900と書かれている。

 

「つまり今のサナリさんは、オープン以上のレースなら出走制限はありません。走りたいと願うなら、重賞への出走も可能という事です」

 

「ん」

 

郷谷の言葉にサナリモリブデンは頷く。

 

彼女は既に勝利を2つ重ねた。

たかが2つ、などとは到底言えない。

トゥインクルを走るウマ娘の中では相当なものだ。

 

毎年デビューするウマ娘は1500人よりいくらか少ない程度の人数だ。

その内、2勝を上げられる者は400人に満たない。

サナリモリブデンは十分に上澄みと言える存在となった。

 

そして今の彼女には、それに相応なだけの自信も宿っている。

重賞と聞いて臆する事なく、むしろ戦意を燃やす程度には。

 

「ですが、それは期間限定の事です。先ほども言ったように、これはクラシックの夏までの話となってしまいます」

 

だがそこに、郷谷は別の話を差し込む。

指差す先にあるのはタブレット内の一情報。

評価点という項目だ。

 

来年の6月以降もオープンに残りたいというなら、評価点を1601以上にする必要があります

 

「? あと2勝、ではなく?」

 

「1勝、2勝、3勝、オープンとなっていますからそう思いますよねぇ。でも実際にクラスを管理しているのは勝利数ではなく、この評価点なんです」

 

郷谷は説明する。

クラスの区切りは重ねた勝利の数ではなく、URAから付与されるこの評価点だ。

 

1勝クラスとは、評価点500以下の者。

2勝クラスとは、評価点501以上1000以下の者。

3勝クラスとは、評価点1001以上1600以下の者。

そして評価点が1601以上となった者がオープンクラスに名を連ねるのだ。

 

この評価点は基本的には1着の者にしか付与されない。

そのために普通に戦っていれば、クラス名と勝利数は同期する。

一般的に3勝したならば評価点は1500となり、3勝クラスに所属するという形にだ。

 

「ですがちょっとした例外もあります。まずひとつは重賞ですね。重賞レースの場合、この評価点は2着まで付与されます。例えば……時期が近いですし、ホープフルステークスを例に出しましょう。このレースでは1着は3500、2着でも1400の評価点が与えられます」

 

なるほど、とサナリモリブデンは頷く。

もし仮にサナリモリブデンが出走して2着に収まれば、これまでの900と合わせて評価点は2300となる。

2勝しかしていないオープンウマ娘の誕生だ。

 

「次に、来年6月までは1勝クラスの次はオープンクラスなわけですが、クラシックのオープン競走で与えられる評価点は最低1000となっています」

 

こちらにもサナリモリブデンは納得した。

クラシック級であと1勝を上げれば、評価点は1900以上になる。

今度は3勝しかしていないオープンウマ娘だ。

 

 

 

「と、ここまで説明しましたが、実際この辺りの面倒な計算は一旦忘れて構いません」

 

「ん……」

 

「重要な点は、来年6月以降もオープンクラスに残りたいならば、クラシック級で1勝を上げるか、重賞で2着以内に入る必要がある……という事です」

 

そうして、それらの情報を郷谷がまとめた。

つまりそういう事になる。

どちらも満たせなかった場合、サナリモリブデンは6月以降はオープンクラスから評価点によって決められるクラスに変更されるわけだ。

そうなれば当然オープン競走にも重賞にも出られなくなる。

 

なお、重賞2着での評価点は一番低いものでも750だ。

現在の900と合わせれば1650のオープンクラスとなるため、重賞の格や種類は問われない。

 

 

 

説明を終えて、郷谷は水をひと口含んだ。

やや渇いた喉を潤して、さて、とサナリモリブデンに向き直る。

 

「ではそれを踏まえて、サナリさんの次走を決めましょう」

 

 


 

 

【ジュニア級 12月】

 

クリスマスローズS     冬/中山/芝/1200m(短距離)/右外

 

朝日杯FS(G1)     冬/阪神/芝/1600m(マイル)/右外

ホープフルS(G1)     冬/中山/芝/2000m(中距離)/右内

 

 

【クラシック級 1月】

 

クロッカスステークス  冬/東京/芝/1400m(短距離)/左

ジュニアカップ     冬/中山/芝/1600m(マイル)/右外

若駒ステークス     冬/京都/芝/2000m(中距離)/右内

 

シンザン記念(G3)   冬/京都/芝/1600m(マイル)/右外

京成杯(G3)      冬/中山/芝/2000m(中距離)/右内

 

 

【クラシック級 2月】

 

マーガレットステークス 冬/阪神/芝/1200m(短距離)/右内

すみれステークス    冬/阪神/芝/2200m(中距離)/右内

 

きさらぎ賞(G3)    冬/京都/芝/1800m(マイル)/右外

共同通信杯(G3)    冬/東京/芝/1800m(マイル)/左

 

 


 

 

表示された一覧は冬のレースだ。

ジュニア級12月、そしてクラシック級1~2月のもの。

そのうち、サナリモリブデンの適性に沿ってピックアップされたリストになる。

 

「トレーナー。この赤いのはなに?

 

その中の、特に強調されたいくつかのレースをサナリモリブデンが指す。

レース名が赤くなっているものだ。

それに郷谷は神妙な顔で答える。

 

「それらは特に有力なウマ娘が出走するレースですね。例えばサナリさんも良く知るペンギンアルバムさん。彼女はホープフルステークスへの出走を明言しています」

 

続いて郷谷は言う。

朝日杯にはメイクデビューで雨の中の鮮烈な逃げを披露したマッキラ。

年明けのシンザン記念には優れた能力を発揮して勝ち上がってきたチューターサポート。

彼女たちがそれぞれ出走を決めており、頭ひとつ抜けた実力と真っ向からぶつかる事は避けられないと。

 

「つまり、これらのレースは重賞の中でも特に厳しい戦いになります。参戦を選ぶなら、相応の覚悟が必要ですよ」

 

サナリモリブデンはこくりと頷く。

 

彼女の記憶の中に、6月の遥か遠い背中は未だ鮮やかだ。

共同トレーニングの最中、幾度も間近で見たペンギンアルバムの爆発的な末脚もまた同様。

それらと実戦でぶつかるとなれば、何一つ楽観できない戦いとなるだろう事は実に容易に想像ができた。

 

同時に、サナリモリブデンは自身の胸の内に熱を感じもした。

恐らくは間違いなく、厳しく辛いレースになる。

だがきっと魂を震わせるに足るものだ。

それがサナリモリブデンに、他では補えない何かを与える可能性は小さくない。

 

 

 

以上の情報を踏まえて、サナリモリブデンは次走について考える。

その結果出た答えは……。

 

 


 

 

■ サナリモリブデン

 

【ステータス】

 

スピ:267

スタ:170

パワ:244

根性:191

賢さ:191

 

 

【適性】

 

芝:C(11/20)

ダ:F(0/10)

 

短距離:B(1/30)

マイル:B(14/30)

中距離:B(0/30)

長距離:B(0/30)

 

逃げ:A(6/50)

先行:B(0/30)

差し:A(9/50)

追込:C(0/20)

 

 

【スキル】

 

冬ウマ娘○(冬のレースとトレーニングが少し得意になる)

冷静(かかりにくさが上がり、かかった時に少し落ち着きやすくなる)

 

 

【スキルヒント】

 

冬ウマ娘◎ (冬のレースとトレーニングが得意になる)

押し切り準備(最終コーナーで先頭の時、先頭をわずかにキープしやすくなる)

展開窺い  (レース中盤に後ろの方だとわずかに疲れにくくなり、視野がちょっと広がる)

ペースキープ(レース中盤に追い抜かれた時にかかりにくくなり、持久力が少し回復する)

集中力   (スタートが得意になり、出遅れる時間がわずかに少なくなる)

トリック(前)(レース中盤に前の方にいると、後ろのウマ娘たちをわずかに動揺させる)

 

スキルPt:340

 

次走選択

  • クリスマスローズS
  • 朝日杯FS(G1)
  • ホープフルS(G1)
  • クロッカスステークス
  • ジュニアカップ
  • 若駒ステークス
  • シンザン記念(G3)
  • 京成杯(G3)
  • マーガレットステークス
  • すみれステークス
  • きさらぎ賞(G3)
  • 共同通信杯(G3)
  • 冬は出走せずトレーニングにあてる
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