オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

40 / 83
クラシック級 1月イベント結果~1月トレーニング選択

 

 


 

 

【投票結果】

 

レースが上手いウマ娘になれますように

 

 


 

 

例年よりも少々長めに。

真摯に願いを伝え終えたサナリモリブデンはゆっくりと目を開ける。

その様を郷谷はニコニコと見つめていた。

 

「随分真剣でしたが、どんなお願い事を?」

 

「ん……言わない」

 

問いに、サナリモリブデンはゆるゆると首を横に振る。

 

「言ったら叶わなくなるって聞いた事がある」

 

「おや残念」

 

「そういうトレーナーは?」

 

「私は神様にお願い事はしないタチでして」

 

ぱちくり。

そんな擬音が聞こえてきそうな瞳のサナリモリブデンだ。

そういう人も居るのかと驚いた様子。

 

「実際の所、神社ではお願い事ではなく、なにがしかの決断を伝えてこれからはこうするから見守って下さいと宣誓するものらしいですよ」

 

「へぇ……」

 

「とまぁ、私も聞きかじりの知識でしかないんですが」

 

郷谷はそう言って社務所の方へ歩き出そうとする。

が、サナリモリブデンは動こうとしない。

どうしたのかと郷谷が振り向けば、サナリモリブデンはまた真剣な顔に戻って言った。

 

「ごめん、トレーナー。もう1回やり直したい」

 

「おっと。ふふ、構いませんよ。急ぎの用事がある訳でもありませんからね」

 

郷谷の了承を取り付け、サナリモリブデンは再び拝殿に向き直った。

 

賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らし、二拝二拍手一拝。

二度目のそれを行い、心中で宣誓を捧げる。

 

(ごめんなさい、神様。さっきのお願い事は取り下げます)

 

神社には人影が少ない。

サナリモリブデンを見つめているのは郷谷だけで、順番を待っているような者もない。

 

(代わりに誓います。レースの上手い、立派な活躍をみんなに見せられるようなウマ娘になってみせます。だから)

 

1月1日、元旦の空気は冷たく鋭い。

 

(どうか、神様も見ていてください。必ず。やってみせますから)

 

けれどサナリモリブデンは、どこかわからない遠い所から注ぐ暖かな視線を感じたような気がした。

 

 


 

 

【レアスキルヒント抽選】

 

結果:弧線のプロフェッサー

 

弧線のプロフェッサー/250Pt/コーナーを容易に曲がれるようになる。また、コーナーで少し速度が上がる。

 

獲得:スキルPt+100

 

 


 

 

宣誓の後、2人は神社を後にした。

もちろんおみくじと、無料で提供される甘酒を楽しんだ後にだ。

 

サナリモリブデンは小吉。

郷谷は中吉。

そんな結果である。

 

「うーん。逆の方が良かったんですが」

 

と郷谷がぼやき。

 

「でも走り人って所はいいこと書いてある。良き報せあり」

 

「……それ、レースについての項目じゃないんですよね」

 

「え?」

 

「サナリさんはたまに変な所でぼけてますねぇ」

 

サナリモリブデンがちょっとずれた事を言う。

 

「レースの場合は勝負事の項目だと思いますよ。そちらはどうです?」

 

「ん……ひるまず進めば明るし」

 

「ふふ、そちらも良い内容ではないですか。サナリさんがひるむ所は想像できませんし」

 

「うん。小吉だけど内容はいい。十分」

 

とはいえ、2人ともおみくじの内容を真に受けているわけではない。

新年特有のちょっとした娯楽として楽しんでいるだけだ。

項目のひとつひとつの解釈でどうこう言い合うのは、この時期あちこちで見られる光景だろう。

 

 

 

そんな風にして話をしながらサナリモリブデンと郷谷は街を歩く。

まっすぐには帰らない。

案内したいところがあると、サナリモリブデンが言い出したためだ。

 

まずは大きな通りを離れて、小さな商店街へ。

 

「あそこは魚屋さん。って言っても魚より貝の方が多くて、昔の私は貝のお店って呼んでた」

 

「ここは薬屋さん。入ったらすぐにお店のおじさんが寄ってきて、どんな症状にはどの薬がいいか丁寧に教えてくれる。親切でとても良い人」

 

「隅っこの、狸の置物が目印のお店はラーメン屋さん。全然美味しくないけど、いつ行ってもチャーシューをオマケしてくれる」

 

サナリモリブデンは彼女の知る限りを説明しながらゆっくりと進む。

だが、その説明は現実に即していなかった。

 

魚屋のシャッターは固く閉ざされ、もう数年は開いていないだろう。

薬屋は内部に何も残されておらず、入り口のガラス戸にテナント募集中と書かれた色あせた紙が貼り付けられている。

ラーメン屋の狸の置物は影も形もなく、代わりに置かれているのはカラフルな看板だ。

商店街の端で通りに面しているそこには全国チェーンのコンビニが居を構えている。

典型的なシャッター街というやつだった。

 

サナリモリブデンの家を訪ねるまでの道中に見かけた大型のショッピングモールを郷谷は思い出す。

随分と立派な建物で、元旦だというのに早くも初売りセールだとのぼりを出していた、とも。

当然のように駐車場は車でいっぱいで、年越しに暇を持て余した人々でごった返していた。

2人しか歩いていない薄暗いこことは大違いである。

 

 

 

商店街を抜けた先は、町工場が並ぶ一角となっていた。

 

「こっちの方は、私が生まれた時にはこうだったみたい」

 

今度はサナリモリブデンの説明はない。

だが、見れば分かる。

十数年は前に終わった区画なのだろう。

大半の工場は門が閉ざされ、中には処分さえ放棄された廃材が乱雑に積まれているような所ばかりだ。

稼働しているようには到底見えない。

生き残っているのは精々が片手で数えられる程度だろう。

 

「昔は賑わってたってお父さんが言ってた。もう一度盛り立てようと頑張ってる人も居るって」

 

その頑張りが報われたかどうかは、語るまでもない。

どこまでも閑散としたそこは、2人の足音以外に何の音も漏らしていなかった。

 

「ただ、お陰で助かった事もある。この辺りは人が殆ど居ないから、走り回ってトレーニングしても誰にも迷惑がかからない。……トレーナーには怒られたけど」

 

冗談めかしたそんな言葉も、どこか空々しく風にさらわれるだけだ。

 

 

 

そうして最後に。

小さな住宅街の隅にある空き地に辿り着いた。

 

「ここは」

 

一拍の間。

ほんの一瞬だけ躊躇した後で、サナリモリブデンは呟く。

 

「私の家」

 

あぁ、と郷谷は深く息を吐いた。

 

「遠く離れてるのに火が熱くて、空まで真っ赤で、お母さんが泣いてたのを覚えてる」

 

サナリモリブデンの母、サナリクロムの様子からそうだろうとは彼女も思っていた。

サナリモリブデンの父親は何かの不幸でいなくなったのだろうと。

そこに来てこれを紹介されれば、察せざるを得ない。

 

「それしか覚えてない」

 

郷谷はそっと、サナリモリブデンに寄り添って背を支えた。

他に、何をすればいいか分からなかったためだ。

 

「家は全部なくなったから写真ももう無くて、声も顔も思い出せない。覚えてるのは言葉だけで」

 

 

 

サナリモリブデンは振り向いた。

その顔に、郷谷は驚きを覚える。

ひるんだと言っても良い。

 

「トレーナーは、去年私に聞いてくれた。なんで走るのかって。これが、私の答え」

 

泣いているのではと郷谷は思っていた。

それでなくとも悲しみに沈んでいるのではと。

 

「私は、忘れる事が許せない。なくなっていくのが嫌。……どんなものだって、どうやっても消えていくとは分かっているけれど」

 

しかし、違った。

サナリモリブデンはもうとっくにそんな所には居ない。

 

「どうか残っていて欲しいと、願わずにはいられない」

 

恐らくはとうに昔。

10にも満たない年齢で彼女はどうしようもないほどに完成したのだろう。

 

「だからやる。お父さんとお母さんが出会って生まれて、愛されて、この街で育てられた───」

 

涙も悲しみも振り切って。

鋼の瞳の中には、ただ決意の光が灯っている。

 

「───私が生きた証を、誰にも忘れられない、二度と失われないものにする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帰ろう。お母さんのお雑煮が待ってるから」

 

サナリモリブデンはそう言って、また歩き出した。

足取りは確かで、その振る舞いは平然としたものだ。

対して、郷谷は数秒遅れた。

 

(……トレーナーは、ウマ娘の人生を支えるもの。そう分かってはいましたが)

 

こみあげる苦みを彼女は飲み下す。

それは大人が子供の前で吐き出して良いものではない。

少なくとも、郷谷はそう信じている。

 

(少しばかり、覚悟が足りていませんでしたねぇ)

 

そして、パァン、と大きな音。

サナリモリブデンは耳と尾を震わせて、弾かれるように振り返った。

 

そこには自身の両頬に手を当てる郷谷が居た。

力いっぱいに叩きつけたのだろう。

彼女の頬には寒さを由来としない赤みが広がりつつあった。

 

「よぉし、わかりました! ありがとうございますサナリさん!」

 

何事かとサナリモリブデンが聞く前に、郷谷が大声で言う。

どこまでも底抜けに明るい、鼓舞するような声色だ。

 

「任せてください。やっちまいましょう。世界中がサナリさんから目をそらせないようにしてやりますよ!」

 

そうして、ニッと歯を見せて笑う。

言葉の勢いのままサナリモリブデンの肩に手を回し、引き寄せた。

 

キョトンとした顔はほんの一瞬。

サナリモリブデンもまた同種の表情になり、言葉を返す。

 

「うん。お願い。どんなトレーニングでもついていくから」

 

「ん? 今どんなトレーニングでもするって言いましたね?」

 

「ん、やるよ。私はやる」

 

「よろしい、これからは加減なしです。ガンガン厳しくいきますよ!」

 

2人の握りこぶしがこつんとぶつかる。

気合十分。

先ほどまでの湿っぽさはどこかに消え飛び、2人は意気揚々と歩き出す。

 

「ですがまずは腹ごしらえから! ……流石にそろそろお腹がすきました」

 

「うん。おせちとお雑煮、山ほどあるからいっぱい食べて」

 

 

 

こうして、決意も新たにサナリモリブデンと郷谷は新年を迎えた。

レースの苛烈さも増し、本格的に争いが激化するクラシック級へ向けて彼女たちは歩み始める。

 

2人の挑戦の結末はまだ誰も知らない事だが。

少なくとも、そこに挑みかかる意志はきっと、何者にも負けないものだった。

 

 


 

 

【1月トレーニング選択】

 

スピードトレーニング / スピード↑↑↑  パワー↑↑

スタミナトレーニング / スタミナ↑↑↑  根性↑↑

パワートレーニング  / パワー↑↑↑   スタミナ↑↑

根性トレーニング   / 根性↑↑↑    スピード↑  パワー↑

賢さトレーニング   / 賢さ↑↑↑    スピード↑  根性↑

 

 


 

 

【ステータス】

 

スピ:287

スタ:190

パワ:264

根性:211

賢さ:211

 

 

1月のトレーニング

  • スピードトレーニング
  • スタミナトレーニング
  • パワートレーニング
  • 根性トレーニング
  • 賢さトレーニング
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。