オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
逃げ
『京都レース場メインレース、きさらぎ賞。午前中に空を覆っていた厚い雲は流れまして、綺麗な青空が覗いております。バ場状態は良との発表』
サナリモリブデンは乾いた芝の上を歩み、ゲートに向かう。
メインレース。
それも重賞ともなれば客の入りはかなりのものだ。
前走のG1、朝日杯FSと比べれば流石にその数を減じているものの、スタンドのざわめきと熱い視線はそこから遠いゲート付近でも感じられた。
『本日の注目ウマ娘を紹介していきましょう。まずは3番人気、8枠9番ファスターザンレイ。前で長く使える脚が武器の逃げウマ娘。今日は外枠に当たりましたが京都1800では大きな不利はありません。2番人気は5枠5番アウトスタンドギグ。こちらは一瞬のキレにかけるタイプ』
『アウトスタンドギグは調子の当たり外れが大きい子ですが、今日はやる気十分に見えますね。パドックや返しウマを見る限り踏み込みの力強さが目につきます。好勝負が期待できるでしょう』
だが、とサナリモリブデンは息を整えながら瞑目した。
視界が閉ざされ、鋭敏になった感覚に幾つも突き刺さるものがある。
ファンの視線よりも遥かに強く、鋭くだ。
敵意。
警戒。
興味。
それはどれも至近距離から熱を伴って彼女に注がれていた。
『そして1番人気はこの子。6枠6番サナリモリブデン。前走朝日杯フューチュリティステークスでの好走は記憶に新しいところ。もはや無敵との評も揺るぎないマイル王者マッキラに、見事に食らいついてみせた刺客です』
『マッキラに敗れはしましたが実力はピカイチですよ。今期のクラシックマイルでは目玉の1人になるでしょう。度胸と根性もある、私イチ押しのウマ娘です』
郷谷の言をサナリモリブデンは実地で大きく実感していた。
このレースを走る誰もに、自身こそが最大の敵と認識されている事実を彼女は正しく理解した。
そう、6月に、そして阪神の舞台で、サナリモリブデンがマッキラの背に向けた眼差しと同じものが、今彼女自身に向けられている。
その事実に、白い尾が高く持ち上げられ毛が逆立つ。
二の腕が引きつったように震え、咄嗟に抑えようとした右手が強張っている事にサナリモリブデンは驚いた。
(怖がっている?)
自問に、そうとも言えると彼女は自答した。
(それは間違いない。だって、初めてだ)
閉じていた目を開く。
しかし、そこに怯えや竦みはない。
代わりに灯るものはたったひとつ。
(───これほど、多くの敵に”期待”されるのは)
何もかもを焼きつくさんばかりに滾る戦意だった。
大きく、深く息を吐き、サナリモリブデンが一歩を踏み出す。
それだけで彼女を囲む輪はざわりと揺らいだ。
向けられていた警戒は厚みと密度を増し、いっそ殺意にも似た域に昇華されていく。
(やれるなら、やってみればいい。私は走る。私が勝つ。その期待に応える)
それに対し、サナリモリブデンは不敵に笑ってみせた。
かかってこいと、そう言わんばかりに。
(あなたたちの目に、二度と忘れられない背中を刻みつけてみせる)
硬質の音を立てて、ゲートに収まったサナリモリブデンの背後で扉が閉まる。
その鋼の音色はまるで彼女の背を押すようだった。
そうして、時が来る。
『各ウマ娘、ゲートに収まりました。係員が離れて───』
身を低く。
精神を研ぎ澄ませて、サナリモリブデンは前方を睨み。
(やる。私はやる。絶対に)
【スタート判定】
難度:118
補正:集中力/+20%
参照:賢さ/253+50=303
結果:33(失敗)
(やる───?)
『───今スタート! おっとこれは出遅れだ! それも9人中3人!』
そして、その総身に満ちた戦意が空回った。
ゲートが開いた。
その事実を耳で聞き、目で見て知った瞬間にサナリモリブデンは失敗を悟った。
スタートというものは開いたのを見て走り出したのでは遅い。
開いていくと分かった瞬間に飛び出していかなくてはならないのだ。
『1番スーペリアブルーム、6番サナリモリブデン、7番アーリースプラウトが出遅れ。他は揃っていますが何人かが後方を気にしています』
『これはまさかの展開ですね。波乱のレースとなりそうです』
慌てて続いたサナリモリブデンだが、前を行くウマ娘たちと比して2歩は遅れた。
たったの2歩。
しかしスタートでの2歩はそこから始まる加速の要だ。
そこに動揺が含まれていては、走りの質は全く異なったものになる。
(ダメだ。落ち着け。焦るな)
サナリモリブデンの頬が強張った。
発走前の高揚は一瞬で消え飛んだ。
胃の腑からこみあげるような焦りが彼女の脳を蝕もうとする。
【かかり判定】
難度:118
補正:集中力/+10%
補正:冷静/+20%
参照:賢さ/253+75=328
結果:273(大成功)
それを、サナリモリブデンは一呼吸未満で飲み下してみせた。
焦燥に歪もうとしていた表情は誰にも見られずに消える。
(反省も後悔もゴールの後でいい。そんな時間はない。今はやれることをやる)
激しかけた思考は冷たく引き締まり、彼女に常以上の集中をもたらした。
サナリモリブデンは出遅れた。
敵手に後れを取り、後方からのレースを余儀なくされている。
それは確かだ。
だが、それ以上の不利はない。
平静に、冷静に、前方を見据える瞳には確固たる理性が宿っていた。
『向こう正面の長い直線、ハナを進むのはファスターザンレイ。単独で先頭に立ちました。1バ身ほど離れてスローモーション、並んでミニコスモス』
その理性でもって、サナリモリブデンは周囲を観察する。
今ここでどうすべきか。
判断の材料を求めてだ。
『やや離れて後方集団は固まっています。3番ジュエルエメラルドを先頭に、内から1番スーペリアブルーム、2番トゥージュール。続いてアウトスタンドギグ。見るようにサナリモリブデン。最後尾アーリースプラウトが2バ身遅れてその背を追う』
『ちょっとスーペリアブルームの様子がおかしいですね。これはかかってしまっているかも知れません』
幸い、バ群に囲まれきるような事態は避けられた。
サナリモリブデンから見て左、外が大きく空いている。
持ち出そうと思えば持ち出せる。
一手遅れはしたがここから加速して逃げを打つ事は可能だ。
【序盤フェイズ行動選択】
加速して前を目指す
(無理がかかる。けれど、やってやれない事はない)
消耗の大きさと、後方からレースを進めるデメリットを比較して、サナリモリブデンは決断した。
このレースの出走人数は9人。
多くはないが、しかし現在彼女の周囲には4人が固まっている。
そして誰もがサナリモリブデンに対する警戒を、出遅れた今でも解いていない。
それを象徴するように、最も近い位置を走るアウトスタンドギグがちらりとサナリモリブデンに目を向けた。
この場で走り続ければ多くの敵意にさらされ自由に走る事は難しいだろう。
ならばと、サナリモリブデンは強く地を蹴った。
難度:118
補正:なし
参照:パワー/290
結果:246(大成功)
その足音に反応したか。
アウトスタンドギグに続いて、前方のミニコスモスまでもが警戒を露わにする。
難敵を自由にさせてなるものかと、彼女は多少の不利を飲み込んでサナリモリブデンの進路を塞ぎにかかった。
それを見てサナリモリブデンは……ただ、やると決めた行為を何ひとつ変更を加えずに実行した。
芦毛の頭が低く下がり、前傾に傾いて速度を上げる。
弾かれたような加速だった。
脚が回転し、蹄鉄が地を噛み、芝が千切れ飛ぶ。
「しま……っ」
『ここでサナリモリブデン外から上がっていった。出遅れを取り戻すように急加速。ミニコスモスをかわして先行集団の前へ出ていく』
その迫力に、ミニコスモスは思わず予定よりも一歩外に出た。
気圧されてよろけた動きはさながら自ら道を譲るよう。
サナリモリブデンは当たり前のようにそこを突き、前へ前へと進んでいく。
【レース中ランダムイベント】
モブウマ娘の行動:ファスターザンレイが競りかける
その体が先頭に並ぶまではそうかからなかった。
先行集団を越え、逃げるファスターザンレイの隣へ。
だが、そこから前には容易には進めそうにない。
「行かせない……譲らないっ!」
鹿毛のショートカットの下で、ファスターザンレイが歯を食い縛る。
サナリモリブデンの自由をほんの少しでも奪わんと、レースを作るのは私だと主張する。
一歩、二歩。
ぶつかっても構わないとばかりに詰め寄り、サナリモリブデンを威圧した。
【抵抗判定】
抵抗方法:落ち着いて受け流す
難度:118
補正:冷静/+20%
参照:賢さ/253+50=303
結果:84(失敗)
その視線にサナリモリブデンは焼かれた。
まっすぐに、ただ己を打倒しようと心を燃やすファスターザンレイの姿にふつふつと心の温度を上げられる。
(逃げない。逃げられない。そっちがやりたいっていうんなら)
抑えて前を譲り、2番手で走る。
出遅れからの加速で消耗した今、賢い手段はそれだろう。
何も先頭を行くだけが逃げではない。
だがその賢さをサナリモリブデンは一時放り捨てた。
(やる。その期待に応える。真っ向から、叩き潰す!)
【追加判定】
難度:118
補正:なし
参照:パワー/290
結果:223(成功)
隣を行く鹿毛に倣うように歯を食い縛る。
加速してきた脚にさらに加速を重ねた。
食らいつこうとするファスターザンレイを置き去りに先頭を奪い去る。
『サナリモリブデン、ここで先頭に立ちました。そのままファスターザンレイとの差を広げていきますが、これはどうでしょう』
『この子は大逃げも出来る子ではありますが……今はかかってしまっているかも知れませんね。一息つければいいのですが』
そして勢いが止まらない。
熱された戦意は溶けるほどの高熱を保ったまま、その背を押し続ける。
【序盤フェイズ終了処理】
消費:高速(6)/過剰加速(4)/かかり(3)
補正:逃げA(-1)
消費:6+4+3-1=12%
スタミナ/288-34=254
【状態回復判定】
難度:118
補正:冷静/+10%
参照:賢さ/253+25=278
結果:99(失敗)
【中盤フェイズ行動選択】
かかり状態/さらに加速を重ねる
難度:118
補正:なし
参照:パワー/290
結果:275(大成功)
(負けない。私が勝つ。私が勝つ。───私が、勝つ!)
灼熱がサナリモリブデンを突き動かす。
加速はなおも重ねられた。
後続を引き離し、ただ1人京都レース場の向こう正面を走り抜けていく。
【レース中ランダムイベント】
モブウマ娘の行動:スローモーションはただ見送る
(落ち着け。落ち着け。つられるな。混同するな。……あれは違う!)
その背を見送りながら、スローモーションは自分にそう言い聞かせた。
彼女はこれまで、マッキラに3度敗北したウマ娘だった。
1度目はメイクデビューで。
2度目は11月、デイリー杯ジュニアステークスで。
3度目はG1、朝日杯フューチュリティステークスで。
その全てで圧倒的な背中を見てきた。
ひとたび離されれば二度と手が届かないと嫌でも理解させられた、遥か遠い背中をだ。
その経験が今すぐ走れと彼女に迫る。
それを、スローモーションは必死に押し殺した。
悲鳴を上げる本能に、理性を総動員して蓋をする。
(あれはマッキラじゃない。それに───)
スローモーションはまた、サナリモリブデンともこれで3度目のレースだ。
だからこそ分かる。
今のサナリモリブデンは明確に平静を欠いていると。
決意の下、決死の加速を見せられた過去の2戦と比して。
スローモーションは冷徹に確信する。
(今のあの子は怖くない!)
遠ざかっていく背中は、確実に破滅へ向かっているのだと。
故に、スローモーションは何もしない事を選んだ。
最後の最後、必ず生まれる隙を突き殺すために、彼女はバ群の中で静かに刃を研ぎ澄ます。
「はっ、はっ、は、っ、───っ」
走る。
逃げる。
ただただ全力で、サナリモリブデンは地を蹴り続ける。
脚を緩めようという判断は湧かなかった。
彼女の頭にあるのはたったひとつ。
無様は見せられない。
期待に応えなければならない。
そのために、勝たなければならない。
『先頭は大きく離れてサナリモリブデンただひとり。さぁここから京都レース場名物、淀の坂。サナリモリブデンここも減速せずに突っ込んでいく!』
『これは、ちょっと最後までもつとは思えませんねぇ……』
決意が空回るその走りこそが、何よりも無様だとは気付きもしないまま。
【中盤フェイズ終了処理】
消費:超高速(9)/かかり(3)
補正:逃げA(-1)/加速大成功(-2)
消費:9+3-1-2=9%
スタミナ/254-20=234
【状態回復判定】
難度:118
補正:冷静/+10%
補正:時間経過/+20%
参照:賢さ/253+75=328
結果:79(失敗)
サナリモリブデンの視界が白み始める。
息は荒く、脚は重い。
高低差4.3メートルの坂の頂上で、彼女はいよいよ力尽きようとしていた。
(あぁ……下り坂?)
思考を回す余力すらなく、サナリモリブデンは茫洋と前を見る。
そこにあったのは、3コーナーから4コーナーへと続く下り坂だ。
(とても、助かる……)
サナリモリブデンはそれを天の助けだと錯覚した。
重力に引かれるまま、わずかにも速度を落とさずに突入する。
【終盤フェイズ行動選択】
かかり状態/減速せずにコーナーを曲がる
難度:118
補正:なし
参照:スピード/315
結果:104(失敗)
しかし。
(───、あ、れ?)
脚が回らない。
上体がぶれ、走行姿勢が安定しない。
ここまで稼いだ速度はたちまちに失われていく。
単純な肉体の限界が、サナリモリブデンを捕まえた。
【レース中ランダムイベント】
モブウマ娘の行動:ミニコスモスが仕掛ける
そこを見逃してくれる道理はない。
この舞台はG3、重賞である。
出走しているライバルのうち、一流でない者は誰一人として存在しない。
『サナリモリブデン急減速、ここでいっぱいになってしまったか。後続が先頭を捉えにかかる。下り坂を利用してスローモーションが上がってきた。ミニコスモスも猛烈な勢いでやってくる』
背に迫る足音を、サナリモリブデンは戦慄とともに耳にした。
どうして、と混乱が生じる。
逃げたはずだ。
引き離したはずだとむなしく言葉が空回る。
(やっぱり。今日のあなたは、何も怖くない!)
対する追跡者は指先をかけた勝機に奮い立った。
スローモーションが潜ませていた牙を剥く。
「う、ぁぁあぁぁあぁ!!」
そしてもう一人。
スローモーションを更に上回る勢いをもって坂を駆け下る。
ミニコスモスは怒りに焼かれていた。
サナリモリブデンを自由にさせない。
徹底して張り付き、その脚を殺して競り勝ってみせると、彼女のトレーナーと拳を打ち付け合ってレースに臨んでいた。
だというのに。
自分のあの様はなんだと噴き上げる憤怒が身を焦がす。
怖気づいた己を許さない。
二度と後れを取るものか。
今ここで全てを塗り潰して弱い自分を作り替えると、ミニコスモスは決断した。
その熱は、サナリモリブデンの背にも届く。
【抵抗判定】
難度:118
補正:冷静/+20%
補正:かかり/-20%
参照:賢さ/253
結果:28(失敗)
まだ遠い。
遠いはずだ。
大暴走で稼いだリードは小さなものではない。
いかにサナリモリブデンが減速し、猛烈に追い上げられようともまだ開きはある。
だが、それが彼女の安心をもたらす事はなかった。
後方からなにかが来る。
おそろしいものが、自分を殺すために。
その事実に、サナリモリブデンの心臓が鷲掴みにされたように縮み上がる。
胎の底から湧きあがるような恐怖に、彼女の心は支配されつつあった。
【終盤フェイズ終了処理】
消費:高速(6)/行動失敗(4)/かかり(3)/恐怖(2)
補正:逃げA(-1)
消費:6+4+3+2-1=14%
スタミナ:234-32=202
【状態回復判定】
難度:118
補正:冷静/+10%
補正:時間経過/+40%
参照:賢さ/253+126=379
結果:354(大成功)
『各ウマ娘最終コーナーを回って直線に向く。先頭はサナリモリブデン。だがそのリードはわずか!』
(……!? わた、し……何を!?)
ホームストレート。
そこに届く観衆の声に、ようやくサナリモリブデンは正気を取り戻した。
自身の重ねた無様と失態を正しく把握し、その顔を青ざめさせる。
【スパート判定】
難度:118
補正:領域の萌芽/+10%
参照:スタミナ/202+20=222
結果:108(失敗)
「は、ぁ……! ぜ、ひゅ……!」
否、それは心から来るものだけではなかった。
絶望的に酸素が足りていない。
手足は震え、脳が今すぐ止まれと命令を下そうとする。
暴走のツケだ。
満足にスパートをかけられるだけの体力は、もうサナリモリブデンには残されていない。
『サナリモリブデンどうやらいっぱい、ここまでか! スローモーションが並びかける、外からはミニコスモスも来ている!』
そして、ついに誰も居なかった視界に2人のウマ娘が現れた。
内からはスローモーション。
外からはミニコスモス。
敗北の二字が、サナリモリブデンの白く霞む思考の中によぎる。
打ち付ける鋼の音は、その胸の裡からは聞こえない。
【スパート判定】
難度:118
補正:スタミナ失敗/-30%
参照:パワー/290-87=203
結果:6(大失敗、マイナスイベント発生)
【スパート判定】
難度:118
補正:スタミナ失敗/-30%
参照:スピード/315-94=221
結果:159(成功)
『スローモーションかわして前に出た! スローモー……っ! サナリモリブデン大失速! どうしたか、大丈夫か!? ミニコスモスも負けじと競る! ジュエルエメラルドも飛んできた! ぐんぐん差を詰めるが間に合うか!』
非情にも、それは当然に叩きつけられた。
(はし、らなきゃ)
決意を固める。
やると定めて食い縛る。
鋼の決意は積み重ねた疲労を無視して、サナリモリブデンを振り絞らせた。
(走らなきゃ、いけないのに───)
振り絞って、振り絞って、振り絞って。
だが、そこから何も生まれない。
(なんで、わたしはまたここにいるの……?)
それは当たり前の、ひどく残酷な現実。
サナリモリブデンの体には、もうどれほど振り絞ったところで、残っているものなど何一つなかったのだ。
『スローモーションか、ミニコスモスか! スローモーションか、ミニコスモスか! 両者譲らない! ジュエルエメラルドはどうか、あと一歩足りないか!』
彼女にとっては久しい光景だった。
ライバル達が自分を容易く抜いていき、ただ一人最後方に取り残される。
メイクデビュー以前。
模擬レース、そして選抜レースにて、嫌というほど目の当たりにしたもの。
だから、そういう場合に何をすればいいかは知っていた。
慣れ親しんだ窮地であるならば、対処もまた旧知のもの。
手を伸ばす。
地を踏みしめて一歩でも前に進む。
その行為に何の意味もないとわかっていても。
この程度で止まれるほどに、サナリモリブデンは柔らかく出来ていない。
【スパート判定】
難度:118
補正:なし
参照:根性/270
結果:9(大失敗、マイナスイベント発生)
【故障判定】
難度:基礎(10)/暴走(5)
難度:10+5=15
≪System≫
同一レース中の短期間に二度のマイナスイベントが発生したため、故障判定が行われます。
参照するステータスはなく、100を上限とするランダムな数値が難度以下だった場合、故障が発生します。
結果:69(成功)
だが。
「……っ、ぁ」
ビキリ、と引きつるような感触がサナリモリブデンの脚に走る。
致命的なものではない。
彼女にとっては幾分馴染みのある、幼少期に無茶を重ねた時期に味わったものと同一だ。
後に残るものでも、回復に時間のかかるものでもないと理解が出来る。
そして同時にわかってしまう。
このレースにおいて、もうできることは何もない。
何も、だ。
『いや、ジュエルエメラルドがさらに加速! 迫って迫って、食い破った! ゴール前で差し切ったジュエルエメラルド、僅差で1着! 2着は全く横並び、スローモーションとミニコスモス、どちらが先着したかは写真判定になります。4着にはアウトスタンドギグ、5着はファスターザンレイ。ジュエルエメラルド、見事な末脚でお手本のような差し切り勝ちを決め、重賞タイトルをものにしました!』
脚を緩め、止まる。
そして崩れ落ちるようにサナリモリブデンは芝の上に座り込んだ。
痛む左脚を抑え、悔しさに身を震わせる。
『サナリモリブデンは最終直線半ばで停止、座り込んでいます。ただちに救護班が急行中。スタンドからはどよめきの声。これは……』
『大変な事になりました、大丈夫でしょうか。心配ですね……』
それでもと、サナリモリブデンは顔を上げた。
遠い遠い、どれほど願ってもたどり着けないゴール板を睨む。
這ってでも進めと叫ぶ心を理性でもって抑えつけて、サナリモリブデンはどうしようもない最低最悪の敗北をその目に刻み込む。
クラシック級、2月。
この日サナリモリブデンは初めて、ゴールさえ出来ずにレースを終えた。
【レースリザルト】
競走中止
【レース成長処理】
成長:なし
経験:なし
獲得:なし
■ サナリモリブデン
【基礎情報】
身長:164cm
体重:増減なし
体型:B77 W53 H78
毛色:芦毛
髪型:ショートポニー
耳飾:右耳(牡馬)
特徴:物静か/クール/囁き声〇/従順/温厚/鋼メンタル
【ステータス】
スピ:287
スタ:240
パワ:264
根性:246
賢さ:211
馬魂:100(MAX)
【適性】
芝:C(17/20)
ダ:F(0/10)
短距離:B(1/30)
マイル:B(20/30)
中距離:B(0/30)
長距離:B(0/30)
逃げ:A(6/50)
先行:B(0/30)
差し:A(15/50)
追込:C(0/20)
【スキル】
領域の萌芽 (名称・効果不定。勝敗を分ける局面で奮い立つ)
冬ウマ娘◎ (冬のレースとトレーニングが得意になる)
冷静 (かかりにくさが上がり、かかった時に少し落ち着きやすくなる)
集中力 (スタートが得意になり、出遅れる時間がわずかに少なくなる)
【スキルヒント】
押し切り準備/150Pt (最終コーナーで先頭の時、先頭をわずかにキープしやすくなる)
展開窺い/150Pt (レース中盤に後ろの方だとわずかに疲れにくくなり、視野がちょっと広がる)
ペースキープ/100Pt (レース中盤に追い抜かれた時にかかりにくくなり、持久力が少し回復する)
トリック(前)/150Pt (レース中盤に前の方にいると、後ろのウマ娘たちをわずかに動揺させる)
弧線のプロフェッサー/250Pt(コーナーを容易に曲がれるようになる。また、コーナーで少し速度が上がる)
シンパシー/150Pt (絆70以上のライバルウマ娘と出走するレースがわずかに得意になる)
スキルPt:250
【交友関係】
ペンギンアルバム 絆30
ソーラーレイ 絆25
チューターサポート 絆10
チームウェズン 絆35
【戦績】
通算成績:5戦2勝 [2-1-1-1]
ファン数:3631人
評価点数:900(オープンクラス)
主な勝ちレース:きんもくせい特別