オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
賢さトレーニング
【友情トレーニング判定】
成功率:絆×1/3
ペンギンアルバム:失敗
チームウェズン:失敗
「さぁお勉強の時間ですよー」
「む……」
軽く芝のコースを流した後、待っていたのはタブレットを持った郷谷だった。
画面には学習用のアプリが表示されている。
サナリモリブデンは運動後の茹だった頭のまま、それの解答に取り掛かった。
今月の重点強化項目は賢さである。
レースにおける賢さとはどういうものかと言うと、酸素の不足した状態でどれだけ頭を回せるかという点に尽きる。
理性が緩み、本能が力を強める興奮状態。
その中でどれだけ普段の冷静さを保ち、正常な思考を行えるかという事だ。
これを鍛えるには当然、室内での勉強だけでは足りない。
「制限時間は5分です。はいスタート」
よって、走り込みでかいた汗を拭う間もないままサナリモリブデンはタブレットに向き合う。
まだ息も整っていないが呼吸器が落ち着くのを待つ時間もない。
郷谷によって用意された問題集は、5分全てを文章の熟読と回答記入に費やしてギリギリというところだった。
サナリモリブデンが全力で取り組みさえすればなんとか間に合う、というポイントを突くのが郷谷は妙に上手い。
「……!」
そして、全力で取り組むという事に関してサナリモリブデン以上のウマ娘というのはそういない。
彼女は真剣な表情で問題集に没頭していった。
数十分の基礎トレーニングと、数分間の問題集攻略、そして10分程度の休憩。
サナリモリブデンは1か月の間、そういったメニューをこなす事になる。
「はいそこまで」
「ん。……なんとか、できた」
「流石サナリさんです。採点結果は……うん、95点。上々ですね」
「……間違い、どこ?」
十分だと褒める郷谷に、完璧を求めて眉をしかめるサナリモリブデン。
郷谷は苦笑する。
こうなると小休止の時間は反省に費やされがちだ。
ベンチに並んで腰かけ、ドリンクで失った水分を補給しながら、郷谷は要修正箇所を提示する。
サナリモリブデンはそれに素直に頷き、ミスを飲み込んで消化した。
こうして、サナリモリブデンは少しずつ疲労した脳での思考に慣れていく。
それはきっと、レースでも彼女の力になるだろう。
【トレーニング判定】
成功率:失敗5%→0%(トレーナースキル)/成功85%/大成功15%
結果:成功
【トレーニング結果】
成長:賢さ+30/スピード+10/根性+10
スピ:287 → 297
スタ:240
パワ:264
根性:266 → 276
賢さ:211 → 241
【ランダムイベント生成】
イベントキーワード:「ネイルアート」「スイートピー」「ベーカリー」
【登場人物判定】
各員同確率/複数人登場率50%
結果:ペンギンアルバム&チューターサポート
ここ最近、サナリモリブデンは街を出歩く機会が増えた。
変化のきっかけは先日の映画である。
あの一件で芽生えたのはチューターサポートとの強い連帯感だ。
同志、あるいは戦友、もしくは道連れ。
呼び方はともかくとして、70分間の地獄を共に乗り切った事で2人の距離は確実に縮まっていた。
「あ、ここだよここ。レイに教えてもらったんだよね、評判の店」
というわけで、今日のサナリモリブデンはチューターサポートに連れられてとある店を訪れた。
ネイルサロンだ。
通りに面した部分はガラス張りになっており、内部の煌びやかな様子が見て取れる。
こういったオシャレに縁の薄いサナリモリブデンは分かりやすく狼狽した。
「爪……?」
「そうそう。サナリだってネイルアートくらい聞いた事あるでしょ? あれのお店」
「ある、けど。自分でやるのは考えた事なかった」
「あはは、サナリってあんまり飾り気ないもんね」
腰の引けている様子を見てチューターサポートがカラリと笑う。
しかしバカにした様子ではもちろんない。
そんな彼女はごく自然な動作でサナリモリブデンの手を取った。
「でももったいないと思うよ。サナリの指って綺麗な形してるしさ」
「……そうかな?」
「うん。スラッとしてるし、色も健康的だし。わ、感触もすべすべ。なにか手入れしてるの?」
「特には何も。お風呂上がりに同室の子から教えてもらったクリーム塗ってるくらい」
「それでこれかぁ。じゃあ天然ものだ。こんな綺麗なんだしさ、1回くらい試してもいいんじゃない?」
そう褒められればサナリモリブデンとて悪い気はしない。
店先の案内に書かれた料金表も手頃なところ。
更には初回のみ50%OFFのサービスもあるようで、ネイルアート初体験に踏み切るには絶好の機会と言えた。
「……分かった、やってみる」
「へへ、やった。実は私も初めてなんだよね。仲間が欲しかったんだ」
「また道連れだ」
「いいでしょ? 一蓮托生ってことで」
「ん……仕方ない。戦友の言う事だから」
「助かるよ、相棒」
冗談めかして笑い合い、2人は店のドアをくぐった。
そのネイルサロンは初心者にも優しい店だった。
華やかなイメージとは異なり静かで落ち着いた雰囲気の店員から2人は施術を受けた。
まずはデザインや色彩の好みを確かめ。
次に基本的な爪の手入れを実践と共に教わり。
それから爪の上にジェルを塗っていく。
このジェルは数分で乾いて固まるもので、少しずつ色を乗せては乾かし、飾りを乗せては乾かしを繰り返していく。
わずかずつ、しかし着実にキラキラと輝いていく指先にはサナリモリブデンもチューターサポートも思わず夢中にさせられた。
2人は揃いのデザインのネイルアートを施した。
可愛らしい薄桃色の花、スイートピーだ。
店員の得意なモチーフであるらしい。
門出、という花言葉を持つ花で、初めてのネイルアートにはもってこいだった点も選んだ理由のひとつ。
細部まで丁寧に仕上げられた素晴らしい出来栄えである。
「すごいなぁ、プロって……」
「うん。すごい。これはすごい」
「すごいよねぇ……」
その余りの出来の良さに語彙力を失う2人であった。
感嘆のため息を何度も漏らしながら、店先の道端でしげしげと自分の指先を眺めている。
ただでさえ精緻な意匠の花。
それが爪1枚ごとに形を変えて描かれ、しかもどれもが負けず劣らずの優美さだ。
もし自分がネイルアートの勉強を始めたとしてここまで至れるか。
サナリモリブデンはなんとなしにそう考え、すぐに結果に行き着く。
まず無理だ。
プロってすごい。
頭の中で再び語彙力に乏しい感想を流し、感嘆をさらに追加する。
チューターサポートの側も似たようなものだった。
「あれ? サナリン珍しいとこにいるー」
と、そこに声をかける者があった。
大変に聞き覚えのある声に、サナリモリブデンがようやく爪から視線を移す。
「アル?」
「はーいサナリンのアルちゃんだよー。こんなとこでどしたの?」
へにゃっとした笑みを浮かべてアル───サナリモリブデンの寮での同室、ペンギンアルバムが手を振る。
小柄な体で紙袋を抱えた彼女はご機嫌な様子だ。
そんな彼女にサナリモリブデンは手を差し出した。
「ん。これ、やってもらった」
「わ、スイートピー。ここのネイルいいよねぇ。私も最初はこれにしたなぁ」
「アルもやった事あるの?」
「ここ、トレセンでも評判だしね。休みの日にたまに使ってるよ。実は今日もそうだし」
自分の体に芸術が乗っかるのって面白いよねぇ、とペンギンアルバム。
それにサナリモリブデンもわかるわかると頷く。
初めての体験は新鮮な喜びをもって、彼女の感性に心地よい刺激を与えてくれたようだ。
「……ペンギンアルバム? え、本物だ……」
「偽物がいる話は聞いた事ないけどなぁ。そっちはチューターサポートじゃん。本物?」
「私こそ、偽物が出るほどのものじゃないでしょ。……名前知られてるとは思わなかった。こっちはチューターサポート。サナリの友達やってる。よろしくね」
「よろしくー! 知ってるみたいだけどペンギンアルバムね。サナリンとは同室なんだ」
そこでチューターサポートが話に加わった。
サナリモリブデンと親しく話すペンギンアルバムに驚いている様子。
さもありなん。
ペンギンアルバムと言えば今期のクラシックにおける台風の目だ。
マイルならばマッキラ、中距離以上ならばペンギンアルバム。
そういうレベルの存在である。
対するチューターサポートも対マッキラの刺客として名前は売れているが、比較になるほどではない。
なおちなみにだが、短距離とダートは群雄割拠の状態だ。
誰か1人が飛びぬけているという状況とは遠い。
「あっと、ごめん。ネイルしに来たって言ってたよね。邪魔だった?」
挨拶を交わした後、チューターサポートは慌てて脇に避けた。
サナリモリブデンもハッとしてそれに倣う。
爪の見事さに見惚れる余り、入り口の前で立ち止まってしまっていたのだ。
「やー、だいじょぶだいじょぶ。ここ入る前にやる事あるしさ」
が、それに対しペンギンアルバムはひらひら手を振って笑った。
そして、抱えていた紙袋を掲げてみせる。
その中からはなんとも言えず良い香りが漂っていた。
「……パン?」
「そ! 隣の通りにね、美味しいベーカリーがあるんだ。この時間に来ると焼きたてが並んでるんだよねぇ」
ふわりと鼻に届く、焼きたての小麦の芳香にはサナリモリブデンも食欲を刺激された。
チューターサポートも同様のようだ。
ごくりと唾を飲む音がサナリモリブデンの耳にも届く。
「サナリ、今日のお昼はパンにしない?」
「同感。今、すごく小麦が食べたい」
「へっへ、布教成功~♪ でもどうかなー、難しいと思うよ」
ペンギンアルバムのその言葉に、2人は揃って首を傾げた。
何故パンを食べるのが難しいのか。
その理由を、ペンギンアルバムはぴっと指差して告げる。
「だって、その爪でパン掴むのちょっと嫌じゃない?」
「……む」
言われ、サナリモリブデンは唸った。
確かにそれは少し嫌な気分である。
これほど見事な作品にパン屑をつけてしまうのは、なんだか冒涜のように感じられたのだ。
「だからここに入る前に食べる事にしてるんだ。始まっちゃったら時間もかかるしね」
「慣れてる……」
「慣れてるもんね」
ペンギンアルバムはおしゃれにも気を遣うタイプの少女だ。
自室の机回りは可愛らしく飾られているし、身につけるリボンなどもサナリモリブデンと違って毎日気分によって変えている。
経験値の差が如実に表れていた。
「あ、そうだ。だったらこうすればいっか」
「?」
「はい、あーん」
と、そこでペンギンアルバムが少々突飛な行動に出た。
紙袋からパンをひとつ取り出し、そのままサナリモリブデンの口元に運ぶ。
なるほど、とサナリモリブデンは納得した。
確かにこれならば爪を汚さずに食べられる。
そしてペンギンアルバムとは、今更その程度で遠慮する仲でもなかった。
「ありがとう。……はむ」
「いいってことよ。どう? 美味しい?」
「……!」
もぐもぐと咀嚼しながらサナリモリブデンは目を輝かせて頷いた。
流石は食にこだわるペンギンアルバム推薦のベーカリーである。
噛むほどに香り立つ小麦は芳醇の一言。
ふわふわとした柔らかい食感も楽しく、中にたっぷり詰められたあんこはサッパリした甘さで生地との相性が抜群だった。
「んひひ、どうぞごひいきにってね。この辺はお店の競争激しいからさ、繁盛に協力してあげてよ」
「ん、了解。この味なら異論なし。絶対また来て食べる」
「やりぃ。あ、そっちも食べる?」
「え、えっ? 私も?」
そして次に、ペンギンアルバムはサナリモリブデンに餌付けしながら同時にチューターサポートにもパンを差し出した。
こちらはどうやらチョココロネだ。
ぐるぐると巻かれた生地の中に覗く、とろっとしたチョコが実に美味しそうである。
ただ、チューターサポートは困惑している。
彼女はペンギンアルバムと初対面だ。
にもかかわらず道端であーんは少々ハードルが高いらしい。
最高に美味しいあんぱんを更にひと口かじりながらそれを見るサナリモリブデンは、助け船でも出すべきかどうか少々考えた。
サナリモリブデンの行動
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ペンギンアルバムと一緒になって勧める
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あーん以外で食べる方法を考える
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食べにくいならばと代わりに食べる
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特に何もせずあんぱんに集中する