オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
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よし、とサナリモリブデンは決断した。
ここは助け舟を出すべきである。
そう考え、あんぱんをしっかり味わってから飲み込み、口を開く。
「味は私も保証する。食べないのはもったいない。恥ずかしさを我慢してでも食べる価値はあると思う」
ただし助け舟はペンギンアルバムの方にだ。
実際、吐いた言葉に値するだけの美味ではある。
焼きたての今でなければ味わえない極上の逸品だ。
逃す手はないぞと、サナリモリブデンは大真面目に告げた。
「い、いやでもさ……」
「とても美味しい。オススメ」
「うんうん、絶品だよー。ほれほれいい匂いでしょ」
チューターサポートの顔の前でペンギンアルバムがチョココロネを揺らす。
すると小麦の香りがふわふわと漂い、鼻に吸い込まれて食欲を刺激した。
オマケの追撃とばかりにチョコの甘い香りも一緒にだ。
「う、うぅ……」
ゴクリ、とチューターサポートの喉が動く。
あと一押しといったところ。
ならばと、サナリモリブデンはその一押しを担当する事とした。
「アル。チューターサポートがいらないなら私が食べたい」
「お? おっけおっけ、そんなに気に入っちゃったか~♪」
真っ向からのおねだり。
それにペンギンアルバムは機嫌よく応じた。
チョココロネは引っ込められ、サナリモリブデンの方へ移動しようとする。
と。
「あっ、ま、待って……!」
縋りつくような声。
もちろんチューターサポートのものだ。
それを聞いた途端、コロネの移動はぴたりと止まる。
そして、ペンギンアルバムの顔が"にまーっ"となる。
引っ掛けられた、とチューターサポートが気付いた時にはもう遅い。
「んっへっへ、いいよぉ、待つよぉ~。遠慮なんかしないでさぁ、パクッといっていいんだよぉ?」
「ん。自分で止めたんだから食べるべきだと思う」
「さ、サナリまで……。ぐぅぅ、なんかすっごい納得いかない」
納得いこうがいくまいが、吐いた言葉は戻らないものだ。
戦友に後ろから刺されて歯噛みするも、それはそれ。
引き留めてしまった以上はチューターサポートの負けである。
それでも少しの間ためらいを見せたものの、彼女はしぶしぶと口を開けた。
恥ずかしさで頬を赤くしながらもコロネにかじりつく。
「…………!」
そして、その瞬間に目を見開いた。
顔の赤みが引き、代わりに瞳の中の光がどんどん大きくなっていく。
耳は小刻みに震え始め、尻尾の毛が逆立って大きく持ち上げられた。
感動が体の中を駆け巡る様がありありと、それこそ手に取るように分かるほどの様子だ。
「なにこれ美味しっ!」
それは言葉でも表現された。
興奮を隠せないチューターサポートはかじった跡の残るコロネを見て叫ぶ。
「チョコ、チョコが凄い! まだほんのり温かくてトロトロで、生地に沁みるみたいに溶け込んでいく……! パン全体が均一にふかふかだからそれがスムーズなんだ! その影響で全体がチョコの香りに包まれて、なのに甘さがしつこくない! なんだろうこれは……小麦の強さ? 包容力? とにかくパンがチョコをしっかり包み込んで味の具合も香りの強さも一番いいところに抑え込んでる。お、恐ろしいほどの完成度……! 信じがたいけど、完全に計算しつくされてるとしか思えない! これ作った人はもしかして天才なの!?」
「いや食レポすごいねビックリした」
「急にどうしたの」
「……わからない。なんか急に降ってきたというか、自分でも驚いてる。なんだろうこれ」
「シンプルにこわい」
ちょっと引くサナリモリブデンはともかく、チューターサポートもパンを気に入ったようだ。
余りの美味しさに羞恥心は消え飛んだらしく、そこからはモリモリとコロネを食べ始める。
隣ではサナリモリブデンもあんぱんをモリモリ食べる。
そして2人にパンを差し出し続けるペンギンアルバム。
ネイルサロン前に謎の空間が形成されていた。
道行く人々がちらちらと視線を投げていくが、3人とも全く気にしていない。
そうしてさらにもう1個ずつパンを消費して全員が満足する。
「ん、ごちそうさま。ありがとう、アル」
「私も満足。ごちそうさま。なんか悪いね、私まで2個食べちゃって」
「いいよいいよ、ちょっと買いすぎたなーって思ってたとこだったし」
2人が感謝し、ペンギンアルバムが鷹揚に答える。
そして今度は自分の分だと、紙袋からパンを出してモリモリ食べる。
カレーパンにソーセージパン、ツナマヨパンと様々だ。
やはりどれも焼きたて揚げたて、実に美味しそうに見える。
「それにしても、サナリンもオシャレに興味出てきたかー」
「ん……」
食べながらのペンギンアルバムの言葉に、サナリモリブデンは少し恥じらいを見せながらも頷く。
ちら、と自分の爪を見る目には確かな喜びがあった。
「うん。こういうのも思ったより悪くない。むしろ良い。チューターサポートに教えてもらって、良かった」
「それは連れてきた甲斐があったけど……なんだろ、なんか照れるね」
「むー、羨ましい! サナリン、今度は私も色々教えてあげるから一緒にいこー!」
「ん、楽しみにしてる」
その後、パンを食べ終えたペンギンアルバムは丁寧に手を拭いてからネイルサロンに入っていった。
ただ、それだけで別れるには折角バッタリ会えたというのに勿体ない。
パンを奢ってもらった分を返すためにもとサナリモリブデン達は近場で時間を潰し、ペンギンアルバムの施術が終わった後に再合流した。
そうして、街をぶらり歩くウマ娘3人。
色とりどりの爪をひっさげて、姦しく休日の午後は過ぎていくのだった。
【イベントリザルト】
友好:ペンギンアルバムの絆+10
友好:チューターサポートの絆+5
成長:パワー+5/根性+5/賢さ+10
獲得:スキルヒント/逃げためらい
ペンギンアルバム 絆30 → 40
チューターサポート 絆20 → 25
スピ:297
スタ:240
パワ:264 → 269
根性:276 → 281
賢さ:241 → 251
逃げためらい/100Pt/レース終盤に作戦・逃げのウマ娘をためらわせて速度をわずかに下げる
閑話/追う者と追われる者
そうして。
たっぷりと休日を楽しんだ後にチューターサポートは学園に戻ってきた。
時刻はまだ夕暮れ前。
寮の門限まで多少の猶予がある。
その時間をどう使おうかと彼女は考えて。
「……少しだけ、走ろうかな」
思考に数秒とかけることもなく、そう決定した。
寮へと向いていた足を止め、自主トレーニング用のコースへと歩き始める。
どのくらい走れるだろうかと、頭の中ではすぐさま計算が始まった。
トレーナー室に寄って置いてある運動着に着替え、走行用のシューズを履き、空きコースを調べて利用申請をして……と考えを巡らせる。
それに往路復路の移動分と再度の着替えを足していけば、30分は走れるだろうとの予測が立つ。
たかが30分。
されど30分。
どれほど小さな積み重ねだろうとも、チューターサポートは軽視する娘ではない。
この短い時間がいつか成果を生む事もあるはずだと、彼女は固く信じている。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
ターフを走る。
一定のリズムで規則正しく。
踏み込む強さも均等に、正確にタイムを刻んでいく。
チューターサポートの走りとはそういうものだった。
がむしゃらさとは程遠い。
冷静に、冷徹に、常に己を律しながら走る。
それが彼女のスタイルであった。
(……思えば、去年はひどかったな)
とはいえ、このスタイルに戻って来られたのはここ2、3ヶ月の話だ。
ジュニア級においてのチューターサポートは、その全てを不調の中で喘いでいたと言って良い。
6月、メイクデビュー。
降りしきる雨の中、泥濘に塗れて味わった人生最初の敗北。
それが彼女を狂わせた。
初めは敗北の事実を受け入れられず、己の心すら見失い。
サナリモリブデンの一言に勝利への渇望を理解したものの、今度は初めての感情を持て余してオーバーワークに苛まれ。
それでも生来の能力の高さから勝ち上がり、ジュニア級G2の舞台でリベンジの機会を掴んだ。
狙う相手の名はマッキラ。
結果は、敵手が今もマイルの王者として君臨し、無敗の戦績を刻み続けている事から分かる通りだ。
メイクデビューでの5バ身からさらに引き離された、8バ身差での大敗。
チューターサポートの心はいよいよ悲鳴を上げた。
努力したはずだ。
何足ものシューズを履き潰し、懸命にトレーニングを重ねて、過去に類を見ない程に走ったはずだった。
しかし、それでもなお差が広がった現実は彼女をこれ以上ないほどに叩きのめした。
(……でも)
だが。
チューターサポートはそこで終わらずに済んだ。
必勝を期して挑んだ二度目が惨敗に終わった事で、逆に自分自身を俯瞰する視点が生まれたのだ。
(それが良かった。本当に、自分のバカさ加減に気付けて)
そうして己を省みた時、チューターサポートは愕然としたものだった。
冷徹な計算の下で行われる冷たく硬い走り。
そんなものは、ジュニア級のチューターサポートにはかけらもなかったのだ。
恵まれた身体能力だけを前面に出してのゴリ押し戦法。
まるでレースのレの字も知らない子供にすら見えた映像記録の中の自分に、彼女は心の底から己を恥じた。
そして、恥じて理解したからには修正が効く。
ひとしきり落ち込んで反省に反省を重ねた後に現れたのは、幼少期からメイクデビューまで無敗を誇っていた時期の、かつての強いチューターサポートだ。
”ようやく、僕がスカウトしたかった子が戻ってきたよ”
自身の専属トレーナーが安堵を覗かせてそう笑った時、チューターサポートのトゥインクルシリーズは半年遅れで始まったのだった。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
呼吸のリズムに乱れは生まれない。
歩幅は常に一定で、1ハロン毎のタイムにブレもない。
今のチューターサポートにとっては出来て当たり前の、ひどく容易い事だ。
焦燥に支配されていた昨年とはもう違う。
チューターサポートはやがてペースを落としていき、走行から歩行に移ってコースから外れていく。
トレーニングの時間はきっかり30分。
不要な無理を一切かけない適切な運動だった。
そうして、チューターサポートは寮への帰路につく。
途中、彼女はふと自身の爪に目をやった。
そこに咲き誇るのは薄桃色のスイートピー。
門出を祝う花言葉を持つその花は、今の彼女の心境にぴたりと合っていた。
楽しかった一日を思い返し、チューターサポートの頬に笑みが浮かぶ。
共に同じ相手に負け、同じ相手に再び挑んだ者同士。
チューターサポートはサナリモリブデンに戦友としての友情を感じていた。
そんな相手と揃いで塗った爪が、今、彼女の背を押してくれている。
だから。
「あは、その爪どうしたの? もしかしてだけど……遊んできたのかな」
道を塞ぐように現れたその少女を前にしても、チューターサポートは胸を張って立っていられた。
「うん。サナリと、あとペンギンアルバムとね」
「へー! びっくりしちゃった。随分余裕あるんだね、サっちゃん? それとも……」
くす、と目を細めて少女───マッキラが微笑む。
だがそこに親しさはない。
あるのは侮蔑にも近い冷淡さだ。
「もう諦めちゃったのかな? 私には勝てないって。ふふ、そうだよね。去年の朝日杯、結局サっちゃんは来なかったもの」
「NHKマイルカップ」
それに取り合わず、チューターサポートは端的に答えた。
口から出たのはひとつのレースの名前。
耳にしたマッキラは、ピクリと尾を震わせた。
「出るんでしょう? マイル王者を名乗るなら避けて通れないはず。そこで、私はもう一度君に挑むよ」
「…………ふぅん? 勝算でもあるの? ふふ、こんな時期に、遊んでるような子が、私に?」
「息抜きだって必要だよ。自分を自分のままで保つにはね。去年の私にはそこが足りてなかった」
嘲るような言葉もチューターサポートを揺らすには至らない。
「ただまぁ、正直言って勝算はないかな。君に追いつけるビジョンは想像の中でも持てないから」
「……ふざけないで。だったらなんでそんなに───」
余裕があるのかと、マッキラの言葉は最後まで言葉にならずに終わった。
かすれるように息が漏れるだけ。
彼女の耳はいつしか後ろに倒れ、尾は脚の間に巻き込まれている。
「余裕なんてないよ。でも、ほら」
対するチューターサポートは、泰然と両手を広げてみせた。
「落ち着いてない私って、全然強くないってわかったからね。無理にでも余裕ぶっていないと、挑む資格もなくなりそうだから」
「…………っ」
「勝てる、なんて今はとても言えないけど。君に勝ちたいからまた挑むよ。これから何度だってね」
話はどうやらそれで終わった。
唇を噛みうつむいたマッキラの隣を過ぎ、チューターサポートはまた歩き出す。
「あぁ、それと……去年からずっと言い忘れてた。おめでとう、マッキラ。全部まとめてで申し訳ないけど。これからは私が追う番だね。……待っててとは言わないよ。きっと追いついてみせるから。君が、そうしたみたいに」
今度は、その歩みを止める者はいなかった。
『サっちゃんは、はやいね……。どうしてそんなにはしれるの?』
「なんで……なんで? 勝ったはずなのに。負かしたはずなのに。今度こそ、ちゃんと叩き潰しておいたのに……!」
誰もいなくなった道の上でマッキラは声を漏らした。
まるで雨の下で寒さに凍えるようなそれは、到底王者に似合うものではない。
自分の肩を抱き縮こまって震える様は、むしろ。
「うるさい。うるさい! 生意気だよ! 負けたくせに! 負け犬のくせに! あんな、あんなやつ全然速くない! 私の方が、ずっと速い!」
『ぜ、ぜんぜんおいつけない……。すごいなぁ。うらやましい。でも、いつかゼッタイわたしがかつんだから!』
いつかの過去。
自身が吐いたはずの言葉がマッキラの中に幾度も流れる。
幼く、夢見がちだった頃の声が。
『あ、はは……これで何回目かなぁ、サっちゃんに負けたのって。…………。いつか、いつかきっと、勝ってみせるから』
『どうして……? こんなに、頑張ったのに。死にそうなくらい、私……頑張って練習したのに』
『大丈夫。勝てる。勝てる。勝てる! 努力したんだから、あんなにやったんだから、絶対に、今度こそ……!』
『…………あ、ぁ。また。まただ。また、負けた。あは、嫌になるなぁ……どうして、私は、こんな』
「違う! こんなの関係ない! 今は私の方が速い! 私は、私は───」
どれほど否定し頭を振ったところで記憶の再生は止まらない。
それはやがて、致命的な場面へ至る。
『サっ、ちゃん……』
『お疲れ、マッキラ』
『あ……ま、待って。お願い、違うの。こんな走りは、ほんとの私じゃ……』
『大丈夫だよ。マッキラはかなり上手く走ってた。君に声をかけるトレーナーは間違いなく居ると思う。じゃ、私はスカウトの話聞きに行くから、また後で』
『………………ぁ』
「負け犬、なんかじゃ……」
崩れ落ちる。
幼少期、物心がついた頃からマッキラとチューターサポートは親しかった。
隣家で生まれ育ち、親同士の交流の下で幼馴染として10年以上を過ごしていた。
そしてその時間は、数える事を諦めるほどに重ね続けたマッキラの敗北の数と同義だった。
負けて、負けて、負けて。
いつしかマッキラが負けるのは当たり前に、チューターサポートの勝利が当然に変わり。
そうしてついに選抜レースの日。
チューターサポートに敵として認識されてさえいないと、マッキラは理解した。
立ちすくむ自分の横を通り過ぎた姿を、マッキラはありありと思い出す。
その日と今日とはまるで違う。
強者は弱者に、弱者は強者に、互いの立場は入れ替わった。
だが、何故だか。
マッキラには今のチューターサポートが過去の幻影と重なって見えて仕方がなかった。
「……トレーナーさん? 私です。お願い、したい事があって」
そのまましばらく時が経って。
辺りが暗くなった頃、マッキラは電話をかけた。
相手は、彼女の専属トレーナーである。
「気が変わったんです。桜花賞を走らせてください。登録をお願いします」
絞り出すような声には暗く粘ついた触感があった。
嗚咽にも似たくつくつという笑い声が混じるそれは、不吉に沈んでいる。
「あぁ、もう間に合わないんですか……。だったらニュージーランドトロフィーでも、アーリントンカップでもいいです。……なんですかそれ。あなたは、あは、あなたも私の敵になるんですか? うそつき……うそつき! 私だけの味方になってくれるって、言ったくせに……!」
嘆きの言葉さえ、笑みを交えて。
マッキラはもう自分が何を感じているのかさえ分かっていない。
「……は、ふふ、そう。そうですよね。ごめんなさい。トレーナーさんが私を裏切るなんてありえませんでした。……はい。では、登録お願いしますね」
電話を終えて。
幽鬼のように立ち上がったマッキラは、掠れた声でつぶやく。
「………………私は、負け犬じゃない。証明しなきゃ。私は負けない。もう二度と、誰にも負けない。追いつかせない」
揺れる体は引きずられるように歩み、どこかへ消えていく。
その背に、共に走った誰にも畏怖をもって見つめられる王者としての威厳は、どこにもなかった。
【4月トレーニング選択】
スピードトレーニング / スピード↑↑↑ パワー↑↑
スタミナトレーニング / スタミナ↑↑↑ 根性↑↑
パワートレーニング / パワー↑↑↑ スタミナ↑↑
根性トレーニング / 根性↑↑↑ スピード↑ パワー↑
賢さトレーニング / 賢さ↑↑↑ スピード↑ 根性↑
【ステータス】
スピ:297
スタ:240
パワ:269
根性:281
賢さ:251
4月のトレーニング
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スピードトレーニング
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スタミナトレーニング
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パワートレーニング
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根性トレーニング
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賢さトレーニング