オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
生きた証を残すべく
「証を残すため。そのために走ると決めた」
「ふむん?」
その抽象的な答えに、郷谷は軽く首を傾げた。
証とは何かと続きを促す。
「私がここに居たっていう証明」
サナリモリブデンは言葉を足し、郷谷から目を外して前を向く。
その視線は彼女の常と同じ、一見すれば冷淡とも取れるような静けさを宿している。
「例えば何十年か後に私が死んだ後にも……サナリモリブデンっていうウマ娘が昔居たんだって誰かに知ってもらえるような、そんな足跡がほしかった」
だがそこに郷谷は、巨大な感情の色の一端を見たような気がした。
その根底がどういったものかまでは、今はまだ推し量る術がないが。
「なるほど。教えてくれてありがとうございます。ん-、私にはよく分からない感じですねぇ」
それを郷谷はあえてサラリと受け流した。
深く踏み込むにはまだ日が浅い。
現段階では表面だけの理解で良いと突っ込んだ嘴を戻していく。
「そう? 割とよくある目標だと思ってたけど」
「確かにそこそこ聞きますし言葉の上では理解してますけどね。私はなんというか死んだら忘れられたいタイプでして」
お葬式では泣かれるよりも笑ってお酒でも飲んでもらって、次の日からはあっさり日常に戻るような。
そんな風に続けて、郷谷はカラカラと笑った。
車内に満ちかけていた重さはそれで流れる。
遮断機が上がり踏切を渡った頃にはすっかり日常の空気になっていた。
「ま、でも安心して下さい。共感は難しいですが目標の共有はできますから。大きな足跡となると、やっぱりG1でしょうねぇ」
「うん」
「それもできれば知名度の高い大きいところ。ふふ、クラシックで3冠でも目指してみますか?」
「……それは、目標が大きすぎない?」
「目標なんて重くて潰れそうなくらいでちょうどいいんです。引きずって走ればパワーがつきますからね」
郷谷は冗談めかすように言って笑う。
サナリモリブデンもまた釣られて少しだけ微笑んだ。
「どうします? ここで”やる”と決めてくれてもいいですよ?」
「まだ少し難しい。形が見えてないと、固められない」
「ふむ、サナリさんのそれには何かしらの基準があるんですね。ではこれは私の課題にしましょう。来年までに”やる”と決めさせてみせますよ」
「ん。期待してる」
車内は穏やかなまま、しばし走ってやがて学園へと戻った。
検査にはそれなりに時間がかかり、日はもうすぐ暮れようとしている。
トレーニングはまた明日からという事にして、2人は解散した。
明けて翌日。
ぬくぬくのストーブが焚かれたトレーナー室にて、郷谷とサナリモリブデンは向き合っていた。
郷谷はホワイトボードの前に、サナリモリブデンは椅子に座って、という形。
「さて、それでは本格的にトレーニングを始める前にちょっとおさらいです。知識を頭に入れた上での方が伸びも良いですからね。授業ですでに習った事でしょうし退屈かもしれませんが、少し我慢して聞いてください」
キュポッとマジックのキャップを取って郷谷は言う。
そしてホワイトボードに書き込みながら説明を開始する。
彼女の文字は外見のラフさからはちょっと結びつきにくいほどきっちりと整っていて、サナリモリブデンも読むに苦労はしない。
「現行のトレーニング理論では、ウマ娘の能力を5つに分けて定義しています。すなわち……」
キュキュキュ、と単語を5つ。
「スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さ。この5つです。それぞれ細かく説明していきましょう」
そこまで書き終えて、郷谷は一旦サナリモリブデンを確認した。
表情がさほど豊かではないせいで分かりにくいが、しっかり話を聞こうという体勢のようだ。
生真面目さを感じさせる動きで芦毛の頭が頷いている。
「まずはスピード。トップスピードの速さと、現状の速度を維持する能力を示します」
郷谷は説明する。
これが深く関わるのは、まずなんといっても末脚だ。
スピードがなければ最終直線での勝負は成り立たない。
当然の話である。
他に関わってくるのは、道中で一定の速度を保とうという時。
一瞬ごとに情勢が移り変わるレースの中、自身のペースを的確に守るには速度に関する感覚が重要になってくる。
この感覚は「スピードの能力」に含まれるというのが現在の定説だった。
「次にスタミナ。これはもう単純に体力ですね」
次は分かりやすい。
ウマ娘が走る時、当たり前だが体力を消耗する。
その体力の嵩を示すのがこの能力だ。
道中で体力を使い果たせば、最後にはスパートをかける力も残らない。
だが節約を考えるばかりでは激しいレースの中で亀のように丸まる事しかできない。
いくらあっても多すぎる事はなく、あればあるだけ嬉しいものである。
「3つ目はパワー。加速を生む筋力を指しますが、他のウマ娘にぶつかっていく攻撃性も含んで語られます」
パワーの高さは、一歩で生じる加速力に差を生む。
簡単な話で、力が強ければ体を射出する勢いが強まるわけだ。
強ければ強いだけ有利であり、スパートの質に明確な差が発生する。
そしてもうひとつシンプルな理屈として、力の強い者は怖いのだ。
野性的な話ではあるが、本能を剝き出しにして競争に挑むウマ娘にとってこの理屈は重く強い。
他者への威圧により優位を得ようというならば、まずパワーがなければ話にならないというのは覚えておくべきだ。
「4つ目は根性。恐怖を感じた時、追い詰められた時、そこでなにくそと立ち上がる精神力ですね」
これはパワーを攻撃力とした時に、防御力と考えると捉えやすい。
威圧されても跳ね返し、競りかけられて差し返す。
そういった部分に作用する力のことだ。
たった1人で先頭を走り影も踏ませずゴールするような者には全く無用。
だが、ギリギリの勝負を泥にまみれて勝ち取るようなウマ娘にとっては最後の最後で頼れる大きな武器となる。
「5つ目は賢さ。レース中に発揮できる観察力、先を読む思考力、冷静さ。そういったものです」
視野の広さ。
適切に状況を乗り切る力。
そして、それらを正常に運用する精神状態を保つ力だ。
その中には集中力も含まれ、ゲートでの落ち着きも含めて語られる。
スピードやスタミナ、パワーほど直接に目立って作用するものではない。
が、これを欠いた者が楽に勝てるほどレースは甘くはない。
「以上5つをサナリさんの適性に合わせて伸ばしていきます。走る距離、戦法、それらにマッチするようにですね」
そこで郷谷はマジックを置き、一息吐いて生徒へと向き直る。
サナリモリブデンは一から十までしっかり聞いていたようで真面目な顔でうんと返事をした。
素直で従順、良い教え子だと郷谷はにっこり笑う。
「これらを伸ばすトレーニングの他には、適応訓練というものもあります。サナリさんにはこちらが優先ですかね」
最後に付け足されたのは、ウマ娘の走り方の矯正についてだ。
ウマ娘には走りやすい距離やバ場というものがある。
短距離は得意だが中距離以上は無理、ダートは上手いが芝は苦手、逃げると強いが追うとダメ、といったものだ。
これらのレースへの影響は大きく、適した条件でなければいくら他の能力が高くとも無意味になる事もある。
今のサナリモリブデンならば、あらゆる距離、あらゆる走り方ができるものの、芝でもダートでも実力を出し切れない状態だ。
これはある程度まではトレーニングで矯正する事ができる。
7段階で評価するなら上から3つ目、C相当まで程度ならばだ。
それ以上は訓練では鍛える事は難しく、実戦の中で磨いていくしかない。
「以上がトレーニングの基本です。さて、それではお待たせしました。実践に入りましょう」
郷谷が手を叩いてにっこり笑い、告げる。
契約から初めてのトレーニング。
初月に重点的に行われるメニューを聞き、サナリモリブデンはよしきたと立ち上がるのだった。
≪System≫
サナリモリブデンをどう育てるかは読者が選択肢で指示できます。
可能なトレーニングは以下の通りです。
選択に参加希望の方は、本文下のアンケートからご参加ください。
投票〆切は作者が続きを書く気になったタイミングです。
スピードトレーニング / スピード↑↑↑ パワー↑↑
スタミナトレーニング / スタミナ↑↑↑ 根性↑↑
パワートレーニング / パワー↑↑↑ スタミナ↑↑
根性トレーニング / 根性↑↑↑ スピード↑ パワー↑
賢さトレーニング / 賢さ↑↑↑ スピード↑ 根性↑
適応訓練:芝 / 芝経験↑↑↑ スピード↑ パワー↑
適応訓練:ダート / ダート経験↑↑↑ スタミナ↑ パワー↑
■ サナリモリブデン
【ステータス】
スピ:72
スタ:90
パワ:69
根性:126
賢さ:111
【適性】
芝:E(1/10)
ダ:F(0/10)
短距離:B(1/30)
マイル:B(0/30)
中距離:B(0/30)
長距離:B(0/30)
逃げ:A(1/50)
先行:B(0/30)
差し:A(0/50)
追込:C(0/20)
2月のトレーニング内容
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スピードトレーニング
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スタミナトレーニング
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パワートレーニング
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根性トレーニング
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賢さトレーニング
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適応訓練:芝
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適応訓練:ダート