オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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クラシック級 5月次走選択結果~閑話/映画館~6月スキル習得

 

 


 

【投票結果】

 

この期間は出走しない

 


 

 

話し合いの末に2人の意見は一致した。

6月、および7月はレースには出走しない。

この期間を利用して夏合宿を行い、しかる後にシニア級との混合戦に挑んでいくという決定だ。

 

「妥当なところですね。戦うならばまず鍛え上げてから。冷静な判断です。それでは学園にはこれで予定を伝えておきましょう」

 

言って、郷谷は早速スマホを操作してメッセージアプリで連絡を始めた。

彼女の言った通り学園への申請だろう。

正式なものは書面になるのだろうが、事前にこうして話を通しておけばスムーズに事が進む。

 

話し相手が仕事に入ったため暇になったサナリモリブデンは、ふと思いついた事があって自身もスマホを取り出した。

彼女は6月からは夏合宿に入る。

すると必然的に東京、府中からは離れる事となるのだ。

その前に、今しか出来ない事をやっておきたいと考えたのである。

 

 


 

 

閑話/怖いもの見たさPart2

 

 


 

 

「本気?」

 

「うん」

 

「ごめん、質問間違えたよ。……正気?」

 

「とても心外」

 

その翌日。

サナリモリブデンは昨日約束を取り付けた相手、チューターサポートにそう問われていた。

呆れを滲ませる真顔を向けられ、サナリモリブデンは目を細めてほんの少し拗ねる。

 

ただ、言われても仕方のない事ではあった。

何しろここは。

 

「悪いけど言いたくもなるよ。また入るの? この映画館」

 

かのB級専門映画館前だったのだから。

並ぶポスターはどれも安っぽく、いかにも予算がかけられていない感を滲ませている。

 

以前誘われるままにここで見た映画「ゾンビランナー ~命尽きても走れよ乙女~」はそれはもう酷い出来だった。

脚本はボロボロ、予算もなければ情熱もない。

撮影にも演技にもやる気がなく、とりあえず映画を撮れる事になったから撮ってみました、というようなレベル。

サナリモリブデンもチューターサポートもかの作品を"懲役70分"と称する事になんら異論はないと一致していた。

 

「うん。確かにアレは酷かった。でも他もそうとは限らない。意外な所に転がっている宝石だって、きっとなくはない」

 

「えぇ……そうかなぁ……」

 

が、木を見て森を知った気になるのは早計だとサナリモリブデンは考えた。

初めに出会った作品が粗悪だったからと足を遠のけては損をする事だってあると。

対してチューターサポートは懐疑的な様子だが、そこは気質の違いだろう。

あるいは、恵まれない素質から努力と根性でここまで走ってきた者と、素養に恵まれて順調に育ってきた天才肌の差であるかも知れない。

 

ともかく、最終的にはサナリモリブデンの説得により2人の映画鑑賞は本決まりとなった。

渋い顔のチューターサポートを先導し、サナリモリブデンは映画館に踏み込む。

 

今回見る事にした映画は───。

 

 


 

【映画ランダム選択】

 

アリジゴクvsブローニング Ⅲ 完結編

 


 

 

「アリジゴクvsブローニング Ⅲ 完結編」なる作品だ。

以前ゾンビランナーを見に来た時にも上映されていたものだ。

ポスターの中ではビル群を飲み込む砂漠から巨大アリジゴクが鋭い顎を覗かせ、それに対し大きなマシンガンを構えた白人のマッチョマンが勇敢に立ち向かおうとしている。

 

「前に来たのは3月。それから今まで上映しているなら期待はできると思う」

 

「そうかなぁ……。ねぇ、ちょっと情報調べてからにしない?」

 

「よくない。純度が下がる」

 

「何の純度???」

 

もちろん怖いもの見たさの純度である。

サナリモリブデンはそういった点、ちょっとこだわるタイプのようだ。

 

「それに、最悪脚本がダメでもアクションなら見れる所はあると思う」

 

「うーん……まぁ確かに。映画ってバカスカ銃撃ってるだけでも楽しいものだしね」

 

続く意見にはチューターサポートも同意した。

彼女の頭に思い描かれるのは往年の名作だ。

例えば、誘拐された娘がどこに居るかも分かっていないのに敵のアジトをズタボロにしていく筋肉ムキムキマッチョマンの大活躍。

問答無用で見る者を興奮させる大立ち回りは突っ込みどころという概念を一時忘れさせる爽快さがある。

 

流石にそこまでは期待できないだろうがゾンビランナーほどの大外れもしないだろう。

そういう判断を共に下し2人のウマ娘は魔境へと足を進める。

 

 


 

 

そして出てきた。

今回の映画は90分。

鑑賞による疲労をいたわるように、2人は前回と同じ喫茶店に入った。

 

向かい合って座り、コーヒーを注文し、そして見つめ合う。

このタイミングで何をするかは事前に決めていた。

 

頷きをひとつ交わし、それから同時に口を開く。

 

 


 

【映画の採点】

 

サナリモリブデン:27点

 

チューターサポート:13点

 


 

 

「27点」

 

「13点。……ちょっとサナリ、高くない?」

 

「高くない。冷静に考えてほしい。27点は普通に赤点」

 

「あぁうん、そりゃそうだ。うん……」

 

同時に映画の点数を口に出し、そして揃って苦い顔をする。

2人の背中は等しくすすけていた。

岩でも背負ったような沈みっぷりである。

 

結論として、クソ映画であった。

 

「……あんなに見れないアクション、初めて見た」

 

「逆にすごいよね。同じ映像何回使い回したのかな」

 

「わからない。でもマシンガンを左右に振り回すあのシーンだけでも20回はあった。……夢に出そう」

 

「やめてよ、こっちまで出そうだ」

 

アクションならそう悪い事にはならないだろう。

そんな2人の考えは完全に裏目に出ていた。

 

演者の動きには迫力もスピード感も何もない。

映像は使い回しがやたらと多い上に、CGがお昼のニュースで使われる再現映像並に安っぽく悪目立ちしすぎる。

 

敵であるアリジゴクと主人公であるマッチョが同時に画面に映らないのも悪かった。

砂漠に立つ主人公に向けていかにも作り物な虫の脚が振り下ろされ、よっこらしょと声が聞こえそうな遅さで主人公が避ける。

そしてどっこいしょとマシンガンを構えて気の抜けるような叫びとともに射撃を行うと、画面が切り替わってアリジゴクが弾け飛ぶシーンが挿入される。

単純にテンポが悪く戦っている臨場感がまるでない。

 

なお、もちろんアリジゴク死亡シーンは使い回しだ。

あ、発泡スチロールで作ったんですね、と誰にも分かる質感のそれがCGの爆発エフェクトをともなって崩れていく姿は2人の目に悪い意味で焼き付いている。

 

当然、アクションらしい爽快感など皆無。

それどころか使い回しばかりの映像を見ていると砂を掘っては埋める拷問を受けているような気分になった2人である。

最早視覚化された虚無だった。

 

「あとさ……設定、何言ってるかわかった?」

 

「全部抜けてった。なにもわからない」

 

そして次に、無駄に多すぎる設定語りも問題だった。

何故都市が砂漠に飲み込まれたのか。

そこにアリジゴクが襲来した理由は。

それに立ち向かう主人公の男は何者なのか。

 

これが映画の世界独自の用語を用いて序盤から延々と語られたのだ。

当然動きの殆どないカメラワークで、前世紀を思わせる安っぽさのSF系基地のセット内で、棒読みの大根演技でだ。

しかもただでさえ分かりにくいところに、都市の危機のはずなのだが何故か挿入される緩い空気の日常会話が邪魔をする。

主人公がヒロインらしいブロンドの女性を口説こうとしてみたり、ヒロインがコーヒーの味に文句をつけて3度も淹れなおしてみたりだ。

どうしてそこに尺を使うのかと考えているうちにわずかに記憶できた情報も抜けていく。

 

2人とて最初は理解に努めようとはした。

が、結局ストーリーラインは殆ど飲み込めず、いいから早くアクションに入ってくれと願ったものだった。

 

まぁ、その40分ほどの説明を終えた先に待っていたのは先述した虚無のアクションだったわけだが。

 

「いや仕方ないとは思ったよ? いきなり完結編から見た私達が悪いんだろうなぁって。でもさぁ……」

 

「……そもそも1と2がないんだからどうしようもない」

 

「それ。それだよ。完結編に繋がる1作目を鋭意撮影中ってどういうこと? エンディングで出てきたあの宣伝ですっごい混乱したんだけど。本気で理解できない」

 

「多分、構想を練ってる間に盛り上がってクライマックスを先に撮りたくなったんだと思う」

 

「無茶苦茶だよ!」

 

チューターサポートの意見に、サナリモリブデンはため息と共に深く深く同意した。

理解はできなかったが何やら深い設定がありそうな感は出していた。

ならばせめてそれを理解しやすいように順を追って作ってほしいと。

 

なお、サナリモリブデンの点数が少々高いのはこの辺りを勘案しての事だ。

何もかも拙い上に順番を盛大に間違えた作品であったが、脚本や監督に情熱はあると感じられたために点を増やしたのだ。

是非次は間違えないでほしいという期待と願いを込めて。

 

「……はぁ」

 

「……ふぅ」

 

一通り語り終え、2人は同時にため息を吐いた。

レース後よりも疲れを感じる背中を丸めて。

 

ちなみに、エンディングはバッドエンドだった。

主人公が倒したアリジゴクの群れは先遣隊でしかなく、解決したと思ったら本隊がやってきたのだ。

SF基地の中で最期を待つ主人公たちは互いにここまでの健闘を労い、そっと肩を抱き合って崩れ落ちる瓦礫の中に消えていった。

 

そしてまさかのフォローなし。

普通に人類が滅んでサラッと終わる肩透かしぶりも酷さの一因と言えた。

滅ぶなら滅ぶでもう少しドラマがあっても……というのが2人の感想であるが、同時にこのクオリティで見せられても辛いかも知れないと思いもしている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「とりあえず、次はなくていい……。あっても、しばらくは無理」

 

「同感。少なくとも10年くらいは普通の映画館でいいや、私」

 

そういう事になった。

残念ながら残りの1作「地上最速の料理人X」とやらを見る機会はやってこないだろう。

サナリモリブデンにもチューターサポートにも、3度目の虚無に挑む気力は残っていなかった。

 

 


 

【6月固定イベント/スキル習得】

 


 

押し切り準備/150Pt

(最終コーナーで先頭の時、先頭をわずかにキープしやすくなる)

 

展開窺い/150Pt

(レース中盤に後ろの方だとわずかに疲れにくくなり、視野がちょっと広がる)

 

ペースキープ/100Pt

(レース中盤に追い抜かれた時にかかりにくくなり、持久力が少し回復する)

 

トリック(前)/150Pt

(レース中盤に前の方にいると、後ろのウマ娘たちをわずかに動揺させる)

 

弧線のプロフェッサー/250Pt

(コーナーを容易に曲がれるようになる。また、コーナーで少し速度が上がる)

 

シンパシー/150Pt

(絆70以上のライバルウマ娘と出走するレースがわずかに得意になる)

 

逃げためらい/100Pt

(レース終盤に作戦・逃げのウマ娘をためらわせて速度をわずかに下げる)

 

 

スキルPt:330

 

 




【ダイスログ】

【挿絵表示】

スキル習得内容

  • 押し切り準備
  • 展開窺い
  • ペースキープ
  • トリック(前)
  • 弧線のプロフェッサー
  • シンパシー
  • 逃げためらい
  • 習得しない
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