オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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クラシック級 6月夏合宿トレーニング結果~7月夏合宿イベント

 

 


 

【投票結果】

 

遠泳

 


 

 

波の合間にバ体が揺れる。

サナリモリブデンにペンギンアルバム、チューターサポートにソーラーレイ。

それと、チームウェズン。

計8名のウマ娘はブイとロープで区切られた海の中の道を延々と泳ぎ続けていた。

 

彼女たちの顔はどれも必死なものだった。

8人全員、例外なく歯を食い縛り懸命さを滲ませている。

それも当然だ。

海で泳ぐというのは、プールでの水泳とはわけが違う。

 

まず深い。

足をつこうとした時に届く場所がどこにもない。

実際につくつかないに関係なく、いざその必要が出た時に足のつきようがないという事実は重い。

これは心理的な圧迫として8人の心にのしかかっていた。

 

次に、流れが荒い。

学園の設備にある流れるプールとは比較にならない。

自然ならではの予測の難しく荒々しいうねりは秒ごとに違う対処を要求される。

望むままに泳ぐことなど到底できない。

当然、体力が削られる速度は倍どころの話ではなかった。

 

「っ、は」

 

サナリモリブデンが水面から顔を上げ、深く大きく息を吸う。

同時に目にしたゴール地点は絶望的なほどに遠かった。

遥か遠くに見えるのは、合宿2日目と3日目を過ごした無人島だ。

この遠泳の最終目標はその無人島への到達と彼女は聞いている。

1ヶ月の間に到達できるようになれば上出来だと、彼女のトレーナーである郷谷は語っていた。

正確には、それが可能なだけのスタミナを身につけられればという話になる。

 

「ウェズーン!」

 

「「「ファイッ! オー!」」」

 

8人の中でいくらか余裕があるのはチームウェズンの4人だった。

アビルダが先頭で声を出し、トゥトゥヌイとタルッケが左右に別れ、セレンスパークがしんがりを務める。

彼女たちはそうしてクラシック級の後輩たちを見守りながら声出しまで行う体力を保持していた。

基礎能力に差があるのだ。

いかにウェズンが目立つ成績を残せていないといってもクラシック級とシニア級を隔てる壁は厚い。

生粋のスプリンターであるタルッケだけはやや苦しそうだが、それでも他に目を向けるだけの余力はあった。

 

「レイちゃん、そろそろっ、つらいとこー?」

 

現に今もソーラーレイの変調を敏感に察知していた。

このトレーニングに最も苦しんでいるのはソーラーレイだ。

そもそものスタミナに乏しい上に、彼女は水泳を苦手としている。

 

今回も手足に小さな浮き具をつけて浮力のサポートを得た状態での参加だった。

それでも限界に達するのはソーラーレイが誰よりも早い。

 

「こ、のっ、ていど……っ」

 

「ういういー。アビー!」

 

「おーう! 全体ペース落とすぞー!」

 

そんな彼女は無理を重ねてやせ我慢をしようとするが、タルッケは軽く流すとアビルダに合図を送った。

アビルダは即座に減速の判断を下し全員に指示を回す。

先頭が速度を落とした以上、後ろもそれに合わせる事になる。

隊列全体はそれまでの半分ほどの速度でゆっくりと進む形になった。

 

「あ……くそっ、また……!」

 

「レイ、落ち着いて。息を入れないと最後までもたないのはレースもこれも同じなんだから」

 

「そうそう、無理して急いで進むより、じーっくり長く進める方がいい練習だよコレ」

 

不甲斐なさから、ソーラーレイが怒りに震える。

それに寄り添うように冷静な声で語り掛けるのはチューターサポートだ。

ソーラーレイの少し先を泳いでいたペンギンアルバムもまた、振り返ってあえてのほほんとした口調で同調する。

 

「ん……それに、毎日少しずつ距離は伸びてる。焦る必要はない」

 

「っ……そう、ね。ごめん。ありがと」

 

そしてサナリモリブデンもそれに続いた。

ソーラーレイはそれでも悔しさを滲ませてはいたが、幾分頭の冷えた様子で落ち着いて泳ぎ始める。

 

このように、8人は隊列を組み、助け合って遠泳に挑んでいた。

理由としては単純にそうしなければ目標達成は不可能だと理解したためである。

甘く見て誰が最初に島につくか競争だと挑んだ初日の遠泳は、もはや全員にとって思い返す事さえ苦々しい反吐まみれの記憶となっている。

 

合宿前半の1ヶ月のうち、半分はもう過ぎた。

だが島への到達は未だにない。

併走するクルーザーに乗ったトレーナー陣からストップがかけられ、船上に回収されての終了ばかりを重ねてきた。

次こそは。

今日こそは。

そう気勢を吐いて挑んでは自然の脅威の前に幾度となく敗北してきた8人である。

 

「ウェズーン!」

 

「「「ファイッ! オー!」」」

 

「「「「ファイッ! オー!」」」」

 

だがまだ折れていない。

アビルダが声を出し、ウェズンが続き、残る4人も呼応した。

たかだか二週間失敗を重ねた程度で諦めに支配されるような者が、そもそもトゥインクルを走れるわけもない。

なにくそと根性を振り絞り、水を蹴って体を前へ前へと運ぶ。

その動きは緩慢になることはあれども、決して止まりはしない。

 

「……でも、その掛け声どうにかなんない!? 私ウェズンに入った覚えないんだけど!?」

 

「へいへいへいレイちゃん、そんなの水臭いっしょ」

 

「二週間も一緒にトレーニングしたら、それはもうウェズンなんだよ! ようこそウェズン! フォーエバーウェズン!」

 

「ははは! ソーラーレイ! お前も家族だッ!」

 

「突っ込み属性の子はいつでも歓迎してるからねっ! 本当に加入してくれてもいいんだよっ!」

 

余裕が生まれればそれをバカバカしい掛け合いに消費したりしながらも。

彼女たちは懸命に遥か遠いゴールを目指し続ける。

 

 


 

【トレーニング判定】

 

成功率:失敗5%→0%(トレーナースキル)/成功70%/大成功30%

 

結果:大成功

 


 

 

その努力は、ついに実を結んだ。

 

「はーっ、はーっ、はーっ……」

 

荒い息を吐き、ソーラーレイが横たわる。

その背は白い砂の上に。

打ち寄せる波は力のこもらない足先を何度も濡らしていく。

 

つまりそこは、長く長く、この日数時間を過ごした海の上ではなかった。

浜辺である。

間違いなく目的地、ゴールの無人島であった。

ちらりと視線を遠くにやれば見える、テントの態をなしていない葉っぱの山の残骸が懐かしくもそれを証明していた。

 

「やっ、た……」

 

サナリモリブデンがぽつりと呟く。

彼女もまた砂浜に倒れこんでいた。

というより、8人全員だ。

例外なく限界を迎えて力尽きながらも、呟きに触発されたように声を発し始める。

 

「んふ、へへへ、やればできるもんじゃんね……!」

 

ペンギンアルバムが笑い。

 

「な、何時間かかったのかな……もう一生分は泳いだ気がする」

 

チューターサポートが苦笑し。

 

「く、くくく……ウェズーン……!」

 

「「「ふぁい、おー……!」」」

 

チームウェズンが快哉を上げ。

 

「…………ふふ、ふはは、あはははは!」

 

そうして最後にソーラーレイが爆発した。

寝転んだまま高く拳を突き上げ、誰よりも大きく叫ぶ。

 

「見たかぁ! やってやった! やってやったわよコンチクショウ!」

 

哄笑とともに勝利宣言が空に向かって放たれた。

花開くのは満面の笑顔だ。

達成感と疲労と、達成感と達成感と達成感と、あとは達成感と、それに加えて達成感。

それらが混ざり合い、弾けて、ソーラーレイはただ笑った。

 

砂に腕をつき、這いずって近寄ったサナリモリブデンがソーラーレイの手を掴んだ。

力強く握りしめるその手にもまた、同質の感情が宿っている。

 

「うん。やった。私たちはやった。やってやった」

 

「そうよ! やってやったわ! あは、最っ高の気分!」

 

「ははは……まだ1回辿り着いただけだけどね。レイ知ってる? これまた明日からもあるんだよ」

 

「上等! 何回だってやってやるわよ! 次はこんなもん無しだってね!」

 

チューターサポートの一言でもその興奮は抑え込めない。

ソーラーレイは手足の浮き具を外し、浜に転がしてみせた。

明日は自力だけで同じ結果を出してみせると吠え、まだまだ笑う。

実際に可能かどうかはさておいて、今の彼女は無限の気概に満ちていた。

 

そしてそれは他の7人も同様に。

一度やれた事が二度三度できないなど道理が通らない。

次はもっと早く、もっと余裕を残してと、威勢の良い宣言が次々と夏の浜辺に打ち上げられる。

 

沖合いに泊まったクルーザーから回収用のボートが島にやってくるまで、彼女たちの笑い声が絶えることはなかった。

 

 


 

【トレーニング結果】

 

成長:スタミナ+40/根性+30(夏合宿基礎成長)

成長:スタミナ+10/根性+10(友情トレーニング)

成長:スタミナ+50/根性+40(大成功ボーナス/全体2倍)

獲得:スキルPt+30(10~30ランダム)

 

スピ:387

スタ:260 → 360

パワ:349

根性:316 → 396

賢さ:261

 

スキルPt:130 → 160

 


 

 

 


 

【7月固定イベント/夏祭りの夜】

 

このイベントの登場人物は固定されています

 


 

 

遠泳のトレーニングは大成功のうちに終わった。

その成果は大きい。

各々のトレーナーが驚くほどの効果を上げて、スタミナの強化は予想を超えるほどのものとなった。

特に目覚ましかったのはやはりソーラーレイだろう。

彼女の心肺能力はメキメキと鍛え上げられ、最終日には本当に浮き具なしでのゴールに成功したほどだ。

私こそが主役、という顔をして胸を張っていても誰もがその通りと言わずにいられなかったものである。

 

「サナリさんも負けてはいませんけどね。ふふ、本当に見違えてしまうほどです」

 

「ん。そうなら、とても嬉しい」

 

「えぇ、私が保証しましょう。今のサナリさんなら、合宿前のサナリさんと戦って圧勝できますよ」

 

が、郷谷だけは異を唱える。

遠泳の主役はサナリモリブデンだったと言ってはばからない。

もっとも、参加したウマ娘全員のトレーナーが自身の担当こそ主役と言っているのだろうが。

 

そんな彼女は今、サナリモリブデンの着替えを手伝っていた。

衣装を着させ、しわを伸ばして衿を正し、キュッと紐を結ぶ。

それから帯を回してリボン状に結べば。

 

「はい、出来ました。うんうん、やっぱり似合いますねぇ」

 

浴衣姿のサナリモリブデンの出来上がりである。

 

「1回くるっと回ってみましょうか」

 

「うん。こう?」

 

「おかしな所もありませんね。浴衣なんて久しぶりでしたが、忘れていなくてよかったです」

 

郷谷は自身の仕事ぶりに胸を張り、サナリモリブデンは照れくさそうにはにかんだ。

 

夏、7月。

合宿所ではちょっとしたお祭りが行われる。

いわゆる縁日だ。

合宿所のある島は日本ではないが、それはそれ。

 

当然の話だが、現在合宿所に居るのはサナリモリブデン達のグループだけではない。

他にも同じ施設を利用するウマ娘は数多く、そのサポートにあたる人々も含めればさらに膨れ上がる。

つまりこの島にはトレセン学園の関係者だけで無数の人々が集っているのである。

ならば日本風の祭りをやっても良いだろうと、出店が並び花火が上がる数日間が存在するのだ。

 

今日、サナリモリブデンはそこに出かける予定がある。

 

 

【挿絵表示】

 

 

同行者は一名だ。

全員でわいわいと騒ぐのはまた別の日に。

一対一で歩こうとサナリモリブデンから誘った相手である。

 

それは───

 

 




【ダイスログ】


【挿絵表示】

夏祭りに一緒にでかける相手は?

  • ペンギンアルバム
  • ソーラーレイ
  • チューターサポート
  • アビルダ
  • トゥトゥヌイ
  • タルッケ
  • セレンスパーク
  • マッキラ
  • スローモーション
  • ブリーズグライダー
  • 郷谷静流
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