オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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クラシック級 7月夏合宿トレーニング結果

 

 


 

【投票結果】

 

早押しクイズ

 


 

 

「それでは続いて第19問」

 

ででん♪

などという効果音。

それを聞くのは。

 

「くぅ……!」

 

「は、はやく問題出してぇ……!」

 

「っ……っっっ……!」

 

上からチューターサポート、ペンギンアルバム、サナリモリブデンの順。

彼女たちが何をしているかというと、砂浜に設置された特設ステージ上のランニングマシンで走っているところだ。

 

ペースはさほどではない。

ウォーミングアップで軽く走るような速度より少々速いという程度。

ただし。

今は、という文言が頭につくが。

 

「レースといえば競走前のファンファーレもお馴染みですが、専用のファンファーレが───」

 

司会の女性がそこまで読み上げたタイミングで、全員が動き出した。

突然に始まるスパート。

3人全員が全力で脚を回し、ガーガーと音を立ててランニングマシンを稼働させる。

同時に、各マシンに併設された大きな速度計の数字がぐんぐんと上がっていき───。

 

「───流されるレースが2つあります。そのうちG1、っとここで回答権獲得! チューターサポートさん、どうぞお答えください!」

 

「しまっ、速すぎた……!」

 

ぴこーんと軽い電子音とともに、チューターサポートの顔の前にマイクが跳ね起きる。

 

簡単に言えば、早押しクイズ番組であった。

ランニングマシンで一定以上の速度を出す事で回答権が得られる、という仕組みの。

 

酸素不足の状態で思考を回す訓練として、元々似た形式のトレーニングは存在した。

それを見ていた誰かが思いついたのだ。

ファンサービスの一環としてこれを流せばウケるのではないか? と。

そして思い付きは実行に移され、今や夏合宿の時期にはお馴染みの番組となっている。

 

もちろん毎日毎回というわけではないが、今日はサナリモリブデン達の持ち回りの回であった。

ダービーウマ娘であるペンギンアルバムが参加している事もあり、視聴者数は中々に多い。

 

”あーこれはやってしまいましたなぁ”

 

”ちょうど大事なとこで切れるの完全にわざとでしょ、いいぞもっとやれ”

 

”い つ も の”

 

”ファンファーレってそこまでしっかり聞いたことないわ”

 

今もその視聴者達のうち、ネット視聴を行っている者達のコメントが回答者の背後のスクリーンに流れていた。

全てを追うのは難しいほどの量だ。

休日という事もあるが、国民のウマ娘に対する関心の高さが伺える光景だろう。

 

「……宝塚記念っ!」

 

ブー!

 

「あ、あぁぁぁぁっ……」

 

それはともかくチューターサポートは回答した。

が、無慈悲にも不正解を示す効果音が鳴り響く。

 

「レースといえば競走前のファンファーレもお馴染みですが、専用のファンファーレが流されるレースが2つあります。そのうちG1ではない方のレースの名前は何? 答えは名鉄杯でした、残念!」

 

”ウマ娘ちゃんの絶望顔すこ なんぼあってもいい”

 

”ダークサイドのファンだ! 吊るせ!”

 

"ちな名鉄杯の専用ファンファーレは名古屋鉄道の特急用車両で使用されているミュージックホーンをアレンジしたもの。この元のミュージックホーンは地元ではどけよホーンの愛称で親しまれ、どーけーよーどーけーよーこーろーすーぞー♪ などの歌詞が勝手につけられている。聞きたい場合は1000系列(1800系・1850系・1380系除く)、2000系列(2200系・1700系含む)に乗車のこと。ただし豊橋駅~平井信号場間ではJR東海の内規の関係上流れないので注意。また関連して名鉄杯はターフビジョンに旧パノラマカーがすれ違うCG映像が流れたり、中京レース場内に静態保存されているパノラマカー内で名古屋鉄道の名鉄杯記念グッズが販売されるなど特別なレースになっている。パノラマカーは普段でも内部を見学できるのでレース場に立ち寄った際には是非見ていくことをお勧めする"

 

”なんかすごい長文が爆速で流れてって草なんだけど”

 

この不正解でスクリーンに表示されている点数が減った。

40点から30点へ、10点の減点。

1問あたりの得点は10点の計算だ。

50点に達する事で抜けていけるルールであるため、これはチューターサポートには少々辛い展開であった。

最後の直線を走っていたら急にゴールがコーナーの向こうまで遠ざかったようなものである。

チューターサポートは走りながら、肩をがっくりと落として落ち込んだ。

 

なお、抜ける方法は50点達成以外にもある。

下限速度を下回ってしまう事だ。

これは速度計が一定以下になってしまうと発生する。

そのボーダーラインはかなり緩く故意に足を止めなければそうそう起こりはしない。

つまり実質的なギブアップだが、これには罰ゲームが存在する。

バラエティ番組にありがちなアレやコレやだ。

当然、最後の1人になっても同じく罰ゲームになる。

 

回避するためには走り続けてなんとか他のメンバーより先に点を稼ぎきるしかない。

全力スパートに等しい瞬間的なダッシュを繰り返し、疲労と酸素不足に喘ぐ脳を回転させてだ。

見た目は完全にお気楽な娯楽番組であるが、その実態は夏合宿にふさわしい過酷なトレーニングである。

 

「チューターサポートさん、後一歩まで点を重ねていましたが痛恨のミス! どうでしょう、今のお気持ちは?」

 

「つ、次の問題早くとしか考えられないです……っ」

 

「おぉーっと、やはりこれは苦しそうです。ギブアップせずに最後まで回答を続けられるのかぁっ!?」

 

”引き伸ばしやめたれwww”

 

”笑顔の眩しさの割に性格が悪すぎるのよ”

 

”そんなだから彼氏に逃げられるんだぞニッシラテンザン”

 

「あ、スタッフさーん! このコメントの人のID控えておいてくださーい! ……んん! さて第20問です!」

 

そんな早押しクイズはまだまだ続いていく。

サナリモリブデンは下限速度にひっかからないギリギリを維持して息を入れつつ、鈍くなっていく頭に必死に鞭を打った。

 

彼女は横目で自身の得点を確認する。

40点。

あとひとつ正解を得られさえすればこの場から一抜けできる状態だ。

 

だが同時に、サナリモリブデンは自身の限界が迫っている事も自覚していた。

このトレーニングは長引けば長引くほど不利が大きくなっていく。

単純に頭が回らなくなるのだ。

現状ですでにギリギリ。

これ以上疲労をため込んでしまえば回答を考える能力さえ失われてしまうだろう。

 

(ここで、勝負をかける……!)

 

そう判断し、サナリモリブデンは集中を一段深めた。

眼光鋭く司会のウマ娘を睨む。

 

”お?”

 

”ちょっと空気変わったな”

 

「日本のレース場のうち、最も直線距離が長いのは───」

 

そこで加速を始める。

しかし、回答権を得る直前まで。

まだ早いと、サナリモリブデンは冷静に脚を抑えた。

 

「───……新潟レース場、です、が!」

 

引っ掛けようとするわざとらしい間。

それを読み切って、見つめるは司会の口元だ。

 

「では」

 

極度の集中により間延びした世界の中、サナリモリブデンは一音一音を見る。

 

「その」

 

ゲートと同じだと彼女は理解したのだ。

聞いてからでは遅い。

 

「───」

 

(ここっ!)

 

音が発される寸前。

唇の形から言葉を読み取った瞬間、マシンを蹴り飛ばすように最後の加速を叩きこんだ。

 

電子音をともなってマイクが起きる。

回答権はサナリモリブデンに与えられた。

問題の内容を推測でき、かつ他の2人に邪魔をされない、狙いすましたタイミングで。

 

「はいっ、サナリモリブデンさん回答権獲得です! お答えをどうぞっ!」

 

”*おおっと*”

 

”お手付き連続www”

 

”これは荒れる展開になりそうですねぇ”

 

肝心の部分を口に出さないまま、にんまりと笑う司会。

コメントもまた先ほどのチューターサポート同様サナリモリブデンも早すぎたと考え、失敗を予想する言葉が流れる。

 

しかし、サナリモリブデンには既に見えていた。

問題文の先端部、そこで形作られた音の母音を彼女は理解している。

 

『日本のレース場のうち、最も直線距離が長いのは新潟レース場ですが、ではその───』

 

続く母音は、うの形をしていた。

そしてそこまで分かれば後の予想は容易い。

この文言に続くとなれば候補は2つ程度のものだ。

 

第1の候補は距離を問うものだろう。

だがその場合『ではその距離は』と続くはずだ。

これは違うとサナリモリブデンは切り捨てる。

 

つまり正解はもう1つの候補。

すなわち。

 

『ではその次に長いのは───』

 

 


 

【トレーニング判定】

 

成功率:失敗5%→0%(トレーナースキル)/成功70%/大成功30%

 

結果:大成功

 


 

 

「───東京レース場、525.9メートル!」

 

高らかに電子音が鳴り響いた。

ピンポーン、というそれは日本人ならば誰にでもわかる、正解を示すものだ。

 

サナリモリブデンの答えは完璧なものだった。

新潟レース場の次に直線の長いレース場はどこか。

その質問に対し適切に東京と答え、問題内で距離まで聞かれていた時に備えて正確な数字も添えてみせた。

文句のつけようのない正答である。

 

「お見事っ! サナリモリブデンさん正解です! 日本のレース場のうち、最も直線距離が長いのは新潟レース場ですが、ではその次に長い直線を持つレース場はどこ、という問題でした! これで50点獲得、勝ち抜けを決めました!」

 

「……ん!」

 

これには司会のウマ娘も素直に称賛を贈る。

サナリモリブデンはそれに応えて、そして同時に視聴者にアピールするように握った右手を高く掲げてみせた。

 

”おおおおおおおお”

 

”すげー!”

 

”そ の た め の 右 手”

 

”8888888888888”

 

”んほぉ~無表情っ子のドヤ顔いいゾ~これ”

 

祝福のコメントが流れる中サナリモリブデンは脚を緩めていく。

もちろん罰ゲームはふりかからない。

3人のうち1位で勝利を収めたサナリモリブデンは悠々とマシンを降りる。

 

「ふ。私の勝ち。先にかき氷食べて待ってる」

 

「う、うぅー! ずるい! サナリンずるいー!」

 

「ずるくない。勝負の結果」

 

そして、勝者にのみ許された豪華フルーツ盛りのかき氷が供される。

残り2人の熾烈な争いを眺めながら楽しむ甘味は、疲れ切った脳に染み入るように優しく癒していくのだった。

 

 

 

なお、残った2人であるが。

チューターサポートがその後サックリ50点に達し、罰ゲームはペンギンアルバムが受けることとなった。

その内容は『超山盛りかき氷 ~ロイヤルビターシロップを添えて~』というものである。

甘味大好きな彼女の盛大なのたうちっぷりは、視聴者達に結構な笑いをもたらしたとだけ記しておく。

 

 


 

【トレーニング結果】

 

成長:賢さ+40/スピード+15/根性+15(夏合宿基礎成長)

成長:賢さ+10/スピード+5/根性+5(友情トレーニング)

成長:賢さ+50/スピード+20/根性+20(大成功ボーナス/全体2倍)

獲得:スキルPt+10(10~30ランダム)

 

スピ:392 → 432

スタ:365

パワ:354

根性:401 → 441

賢さ:266 → 366

 

スキルPt:160 → 170

 

 




【ダイスログ】

【挿絵表示】



※ちょっと居眠りしてしまって書くのが間に合わなかったので次走選択は5日に投稿します
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