オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【選択内容】
適応訓練:芝
脚を芝に慣れさせる。
そのためには何をすればいいか。
簡単である。
芝をとにかく走れば良い。
「ペースが落ちていますよー! 限界まで振り絞る必要はありませんが、緩めないように!」
というより他の方法は基本的にない。
芝の上を走り、足の裏で土を感じ、感触を覚える。
踏み込んだ時の反発力を体感し、体に返るそのリズムを覚え込む。
それだけだ。
ただただひたすらにその反復が繰り返される。
「ふっ、ふぅ、は、ふ」
それをサナリモリブデンは従順にこなしていた。
どこまでも単純な、全く華のない練習風景。
「漫然と走るのもいけませんよー。一歩一歩の反応を確かめて走るんです。……そう! 今の数歩良かったですよ! 忘れないうちにもう一度!」
それでも郷谷の声を受け、彼女は真剣な表情で前に進む。
サナリモリブデンには一度やると決めた事を最後までやり通す精神力がある。
それは今日この時も遺憾なく発揮されていた。
指導に当たる郷谷もその真面目さに応えようと熱が入っている様子で、声も大きくなってゆく。
だが同時に丁寧に目を配り、無理や無茶、限界を超える事のないようにと注意している。
「はぁ、ふ、は、はっ……っ、はっ」
「うんうん、良い感じでした! よし、一区切りです! このあたりで少し休憩にしましょうか!」
「は、は、ふぅ……ん」
当然わずかな呼吸の乱れも見逃さず、一息入れさせる判断を即座に下す。
サナリモリブデンは小さく首肯し、急には止まらずゆっくりとクールダウンに努めながら郷谷の元へと戻ってきた。
「お疲れ様です。はい、ドリンク。一気飲みはダメですよ? 口の中を湿らせるように少しずつです」
「うん。ありがとう、トレーナー」
郷谷があらかじめ用意していたボトルを渡され、礼を言いながら受け取ってキャップを開ける。
冷たすぎずぬるすぎもしない、ちょうどよい温度の液体がサナリモリブデンの喉を潤していく。
市販のものとは違う調整がされているようで、甘味が随分と控えめなのも彼女の好みに合致して心地よく感じさせた。
「ん……美味しい」
自然と漏れた感想に、郷谷もにっこりと笑顔になる。
初めてのトレーニングはこうして、何事もなく良好な滑り出しを見せていた。
【トレーニング判定】
≪System≫
トレーニングではランダムに失敗、成功、大成功が発生します。
発生率は失敗5%、成功80%、大成功15%となっています。
ただし、郷谷トレーナーは失敗率ダウンのスキルを所持しているため、失敗が成功に置き換えられます。
結果:成功
【トレーニング結果】
成長:スピード+10/パワー+10
経験:芝経験+3
【スキルボーナス/冬ウマ娘〇】
成長:スピード+5/パワー+5
経験:芝経験+1
スピ:72 → 87
スタ:90
パワ:69 → 84
根性:126
賢さ:111
芝:E(5/10)
【ランダムイベント生成】
≪System≫
毎月、トレーニングやレースの合間にランダムな日常イベントが発生します。
イベント内容はネット上で公開されている小説向けのお題ジェネレーターを用いて生成したワードに従います。
イベント中に登場する人物はランダムに決定されます。
イベントキーワード:「自動販売機」「同意」「湯気」
かぽーん。
などと、そんな音が聞こえてきそうな広い風呂場。
トレセン学園所属のウマ娘達が暮らす寮の1階、その片隅に存在する大浴場だ。
設備としては多数並ぶ洗い場と大きな浴槽のみとなっている。
サウナや水風呂、まして露天風呂や電気風呂といったものはない。
実にシンプルな構造だ。
だが隅々まで清掃が行き届き、しっかりした作りであるため使い心地はなかなか良いとの評判である。
「はーしーれーふふふーん♪ ふんふふふふーん♪ ふふふーふふんふふーん♪」
現に今もとあるウマ娘がアゴまで湯に浸かり、鼻歌を漏らしていたりした。
長い栗毛をタオルでまとめ上げた褐色の肌の少女だ。
普段は利用者でごった返している大浴場を珍しく1人で占拠できたためにテンションが上がっているらしい。
「つよーくふーふーふ♪ ふんふふー♪」
ご機嫌に頭を揺らし、エアマイクなども交えつつ、栗毛はぐんぐん盛り上がっていく。
サビを進み、クライマックスへ。
映像で何度も見て覚えたのだろう振り付けを真似て腕を突き出し。
「ふふふふふ、ふぅふっ♪」
「「うぃにんっ、ざそーぅ」」
「…………ん?」
が、そこで何やら異物が混ざった。
サビの締め、一番気持ちいいところで声が2重になったのだ。
それも明らかに栗毛のものではない誰かの声が。
ノリにノっていた栗毛の心が一気に冷える。
彼女は慌てて周囲、大浴場を見渡した。
「鼻歌、うまいね」
すると下手人はあっさりと見つかる。
話は簡単で、そもそも1人での占拠ではなかったのである。
浴場内に充満する湯気で見えなかっただけ。
白い湯気に溶け込む芦毛のウマ娘……サナリモリブデンが栗毛に背を向ける形で初めから湯船に浸かっていたのだ。
「は、ちょっ……! や、ぅ……んんんん!」
「ふぅ……いいお湯だよね」
栗毛は何か言おうとしたものの言い淀む。
鼻歌を聞かれた事が恥ずかしく、文句を言おうとしたものの、相手が先客な以上それは道理が通らない。
そんな思考を経てか、漏れ出たのは結局うなり声だ。
対するサナリモリブデンといえば落ち着いたものである。
白い頭に白いタオルを乗せ、どこかぼんやりとした表情で天井を眺めている。
呟いた言葉には特に同意を求めている様子はなく、単に場を繋ぐものかなにかだ。
あるいは、別にからかうつもりはないから焦らなくて良いと、彼女なりに伝えているのかも知れないが。
「……」
「……」
なんとも言えない沈黙が場を支配した。
サナリモリブデンが視線をちらと向けると、栗毛はサナリモリブデンから目を逸らす。
「……あっ! ……あんた、確かサナリモリブデン、よね?」
しかし唐突にその視線が勢いよくサナリモリブデンに固定された。
グルッと首が動き、ギンッと音がしそうな目力で見つめられ、サナリモリブデンは思わず耳を震わせる。
「……うん。知ってたの?」
「当たり前。一緒に走ったヤツ忘れるとかねぇ、ないでしょ」
「そっか」
どことなく嬉しそうに頷くサナリモリブデン。
そんな彼女の側も、この栗毛のウマ娘にはよくよく見覚えがあった。
「そっちこそ私の顔覚えてる?」
「ん。ソーラーレイ。忘れてない」
「よろしい」
名前を呼ばれた栗毛、ソーラーレイは満足げに笑った。
1月に行われた選抜レース芝短距離部門第1組。
サナリモリブデンが出場し走ったレースの勝者だ。
そんな彼女はわずか数秒で笑顔を引っ込めると、湯をかき分けてサナリモリブデンに詰め寄った。
元々壁際に近かったサナリモリブデンに逃げ場はなく、のけぞる芦毛を下方から覗き込む栗毛、という形になる。
一体何事かと問う間も無く、ソーラーレイが口を開く。
「あんたの事、噂で聞いてずっと気になってたのよ。あんた、専属トレーナーがついたって本当?」
「……ん」
それに、サナリモリブデンはピクリと眉を震わせた。
その噂とやらは彼女自身心当たりがある。
サナリモリブデンは選抜レースに敗北した。
それも並大抵の負けではない。
大きく出遅れてまともに走る事も出来なかったウマ娘にさえ抜き去られての最下位。
そんな成績でトレーナーからスカウトされるなど普通はどう考えてもありえない事だ。
何か不正を働いたのではないか。
トレーナー、あるいは学園の弱みを握っているのではないか。
それとも裏金でも?
そんな噂が一時期、一部で流れた事は知っている。
敗者を語るよりも勝者を語る方が生徒達の好みに合ったようですぐに立ち消えはしたが、サナリモリブデンの同室、ペンギンアルバムなどは言い出しっぺを特定してボコボコにしてやるなどと連日息巻いていたものだ。
「うん。トレーナーと契約してる。……不正はしてない」
なのでサナリモリブデンの返答もやや硬いものとなった。
別に何をどう思われてもいいが、面と向かって絡まれるのは面倒くさい。
そんな雰囲気だ。
「は? 舐めてんの? この私がそんなこと疑ってるって?」
が、どうやらソーラーレイの考えはそちらではなかったらしい。
「あんたがどう走ったか見てそんなの思うわけないじゃない。逆よ逆! あんたさぁ……」
ソーラーレイは前屈みに。
人差し指を伸ばしてビシッとサナリモリブデンの鼻先に突き付ける。
下からジロリと睨み付ける姿が異様に様になっていた。
「悪いトレーナーに騙されてたりしないでしょうね? 変なことされてない? 大丈夫? トゥインクルを走りたいなら俺の命令に従えー、みたいなやつ! 聞いたことあんのよ! ……ドラマとかで!」
サナリモリブデンはその言葉に、目をパチクリとさせた。
「……心配してくれてるの?」
「そうよ! 一緒に走ったやつが変な目にあってたりしたら寝覚め悪すぎるでしょ! で、どうなの。あんたのトレーナー、まともなやつなの?」
「ん、多分いい人だと思う」
サナリモリブデンは首を横に振り、疑念を否定する。
郷谷トレーナーの指導は今のところ丁寧で確かなものだという実感が彼女にはある。
人格的にも問題は思い当たらない。
服装などは他のトレーナー陣と比べるとラフすぎて奇抜な感はあるが。
「そう? それならいいんだけどさ。もし何かあったら私に言いなさいよ。うちのトレーナー、結構力ある人っぽいから頼んで何とかしてあげるわ」
「分かった。頼るような事にはならないと思うけど、ありがとう」
その答えを聞いたソーラーレイは少し笑って、指をひっこめて体を起こす。
どうやらソーラーレイはなかなか人の良いウマ娘で、かつ世話焼きな部分があるようだった。
サナリモリブデンとしてもその事実は好ましい。
少なくとも、裸の付き合いで雑談に興じても不快はない程度には。
その後は特に何事もなく、2人は温かいお風呂を満喫した。
とはいえ、そう長い時間ではなかったが。
そもそも、サナリモリブデンが鼻歌に割り込んだのはそろそろ風呂から上がりたかったからだ。
そのために立ち上がって移動すれば、当然ソーラーレイに鼻歌を聞いていた自分の存在が露見する。
鼻歌を歌っている時に、無言で横を通り過ぎられるか、一声かけられるか。
どちらがより恥ずかしくないかは意見の割れる所だろうが、サナリモリブデンは後者の方がまだ良いと判断していたようだった。
そうして2人揃って大浴場から出て、少し歩いたところ。
廊下に設置された自動販売機の前でソーラーレイは立ち止まり、サナリモリブデンを呼び止めた。
「ちょーっと待ちなさいよ。1本おごるわ」
そして返事も聞かずに小銭を投入する。
軽い音を立てて自動販売機が省エネモードから復帰し、並んだサンプルを明かりが照らし出す。
「いいの?」
「証拠もなくあんたのトレーナー疑っちゃったしね。ま、そのお詫びってことで」
「ん、それなら……」
しかし、サナリモリブデンが何かを言う前にソーラーレイはボタンを押した。
あれっと疑問を感じる芦毛の前で、栗毛は転がり出た缶を取り出しぽいっと投げる。
サナリモリブデンが受け取ってみれば、それは国民的大人気を誇る炭酸飲料だった。
甘味たっぷり刺激的。
ハンバーガーのお供に付き物のやつである。
「お風呂上がりっていったらやっぱりコレよねー」
ソーラーレイはそう言って、さらにもう1本同じものを購入した。
即座にプルタブを開け、ゴクゴクと喉に流し込み、ぷはーと気持ちよさそうに息を吐く。
完全に大好物といった様子だ。
彼女としてはなんの意図もなく、こんなにおいしいのだから皆好きだろうという考えに違いない。
「ん? 飲まないの?」
ただ、残念ながらサナリモリブデンとしては意見が違う。
風呂上がりには炭酸よりも、さっぱりした癖のない麦茶というタイプだ。
正直な意見としては今は炭酸を求めていない。
だが、ソーラーレイの厚意を無下にするのもはばかられるところだ。
首をかしげて不思議そうにするソーラーレイの前で、サナリモリブデンはさてどうするかと一瞬だけ考えた。
ソーラーレイに気を使い、彼女の意見に同意してみせるか。
それとも自分の好みを貫き通すか。
そこが問題である。
≪System≫
サナリモリブデンの行動を選択肢で指定できます。
サナリモリブデンの行動により、成長するステータスや得られるスキルヒントが変化します。
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サナリモリブデンの行動
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話を合わせて炭酸を飲む
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好みを優先して麦茶を飲む
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逆に麦茶の良さを布教する