オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
関屋記念(G3)
関屋記念。
それがサナリモリブデンの選択だった。
夏、8月。
新潟レース場で行われるレースである。
G1の存在しない夏のレースを盛り上げるべく開催されているサマーシリーズのひとつだ。
そして、G3のグレードを冠する重賞でもあった。
が、そういった点は一度置く。
サナリモリブデンにとって重要な事は他にある。
それは。
「チューターサポートさんが出走予定のレース、ですね?」
そこだった。
郷谷に指摘されたサナリモリブデンは、一度だけ小さく頷く。
戦いたいと、彼女はそう思ったのだ。
夏合宿を通してサナリモリブデンは感じていた。
今のチューターサポートは仕上がりつつある。
春からこちら、どうやら好調のようだという気配はあったが、夏に入って更に磨き抜かれている。
だからこそ、サナリモリブデンはチューターサポートに挑むと決めた。
ウマ娘としてのレースを求める本能が背筋をゾクゾクと震わせる。
激戦への期待と興奮。
そして、郷谷にも保証された、夏で伸びた自身の実力を真っ向からぶつけられる好敵手の存在にだ。
「わかりました、登録しておきます。恐らくチューターサポートさんとは互角の戦いになるでしょう。わずかでも気持ちの緩んだ方が負けると、そう思っていて下さい。……まぁ、サナリさんには言うまでもない事かもしれませんが」
「ん。やる以上はいつだって、全部振り絞る」
「えぇ、サナリさんはそういう子ですよねぇ」
予定は決まり、話し合いは終わった。
タブレットの電源を落とし、郷谷へと返却する。
そうして、サナリモリブデンは離れた席に座るチューターサポートに視線を向けた。
……チューターサポートはすやすやと寝息を立てているところだった。
専属トレーナーである男性の肩に頭を預けてすっかり気の抜けた様子である。
男は申し訳なさそうな表情を作って軽く頭を下げてから、指を唇に当てた。
しー、というやつだ。
「…………」
どうせなら今ここで宣戦布告を。
そんな考えが空振りに終わり、少ししょんぼりとするサナリモリブデンであった。
【ランダムイベント生成】
イベントキーワード:「ドリンクバー」「事故」「パスタ」
【登場人物判定】
各員同確率/複数人登場率50%
結果:ソーラーレイ&チューターサポート
「はい、あんたらのも入れてきてあげたから」
「やると思った!」
真夏のとある日。
ファミレスにて。
ニヤニヤ顔のソーラーレイが運んできたコップを見て、チューターサポートはげんなりしつつ叫んだ。
「なにこれ」
「主成分は麦茶よ」
「?? ……????」
「その顔なかなかウケるわ」
そしてサナリモリブデンは混乱顔だ。
手渡された飲み物───ソーラーレイがドリンクバーから持ってきた謎の黒い炭酸飲料を前に、頭の回りに疑問符を浮かべている。
「私の知ってる麦茶じゃない……」
「でしょうね。麦茶メインでコーラとコーヒーとオレンジジュースを適当にってレシピだもの」
「どうして」
次いで正体を聞かされて愕然とする。
聞くからに劇物である。
そんな、どう考えても合体事故が起きるとしか思えないものを何故、とサナリモリブデンは疑問の声を上げた。
「面白そうだからよ。定番じゃない」
「……それだけ?」
「えぇ」
「到底許されない」
「私もちょっとどうかと思うよ。確かに定番だけどさぁ」
最後に至ったのは憤慨だった。
必ず、かの邪智暴虐の褐色性悪ウマ娘を除かなければならぬと決意した。
が、それはともかく飲食物を無駄にする事ははばかられた。
まずはなんとか目の前のおかしなものを飲み切ろうとコップを持ち上げる。
「……え。サナリ、飲むの?」
「……コップに入れられた以上仕方ない。もったいない事は出来ないから」
「い、いや、でも流石に……あっ」
若干引き気味のチューターサポートが止めるも、サナリモリブデンの行動は変わらない。
怪しげな飲料が入ったコップを唇に当て、中身をぐいっと一気に飲み干す。
【イベント分岐判定】
難度:125
補正:なし
参照:根性/441
結果:427(特大成功)
ごっごっごっとサナリモリブデンの喉が動く。
相手は謎の混合物である。
口の中に長時間残したくないという判断だった。
「……!?」
が、その途中で動きが止まった。
コップからゆっくりと口を離して内容物をまじまじと見つめる。
「あー……やっぱりきついでしょ。やめといた方がいいよ」
「ううん。逆。割といける」
「え、嘘」
「本当。少なくとも変な感じはしない」
確かめるようにもうひと口舐めてみてもやはりサナリモリブデンには美味と感じられた。
麦茶のサッパリとした風味はそのままに、わずかな炭酸の刺激と程よい甘さが加わっている。
柑橘の香りも邪魔になるほどではなくむしろ良いアクセントだ。
コーヒーの気配はほとんどないようにサナリモリブデンには思えたが、麦茶の後味が普段よりも強く感じられている。
もしかしたらこの後味の中に自然に溶け込んでいるのではとも考えられた。
さらにもうひと口。
慣れが進んだ事でさらに美味しく感じられるようになったのか。
サナリモリブデンの目が徐々に輝き出す。
「……ちょ、ちょっと私も飲んでみようかな」
つられるように手を伸ばしたのはチューターサポートだ。
恐る恐るコップを手に取り、ごくりと飲む。
そして、意外だとばかりに顔をきょとんとさせた。
「本当にいける……。すごいよこの配合」
「うん。甘味はしっかりあるのに後口がサッパリしてて良い」
2人は顔を見合わせて頷きを交わす。
「はー? 何よ面白くないわね。ひっどい味にしてやろうと思ったのに」
それにぶー垂れるのはもちろんソーラーレイ。
続いて自分のコップに口をつけているが、こちらは普通のコーラのようだ。
自分ひとり安全圏から高見の見物と洒落こもうとしたらしいが、逆に仲間外れとなった事で不満を抱く結果に終わったらしい。
率直に言って自業自得だった。
さて、今日は休日であった。
つまりは友人たちの時間である。
サナリモリブデンら3人は余暇の時間を共に過ごすためにこのファミレスにやってきていた。
学園からは徒歩圏内で、手頃な値段で味もそこそこ良い。
騒がしすぎず静かすぎずといった雰囲気。
学生がたむろするにはちょうどいい環境だった。
飲み放題のドリンクバーがあるのも大きなプラスである。
3人も利用するのは初めてではなく、幾つかある”いつもの場所”のひとつだ。
「それで、どうなのよあんた。トレーナーとは何か進展あったの?」
「何もあるわけないでしょ。別にそういう関係じゃないんだって」
「そうは見えないけどねぇ~? こないだの帰りの飛行機だってベッタリだったじゃない。あれで何もないは通らないわよ」
「ん、私も見た。肩を枕にしてあんなに安心して寝られるなんて中々ない」
「サナリまで……。いや、本当に違うんだって。信じてよ」
流れる話題も年頃の少女らしいもの。
チューターサポートが見せた隙を突き、つつきまわすサナリモリブデンとソーラーレイである。
サナリモリブデンのトレーナーである郷谷は女性で、ソーラーレイのトレーナーは年の離れすぎた中年の男な上に複数のウマ娘と同時に契約している。
こういった場面で標的になるのは、若い男性と一対一の専属契約を交わしているチューターサポートというのがお決まりだった。
「でも本心では~?」
「ないって。ないない。いくら年が近いったって向こうは大人でこっちは子供だよ? ないでしょ」
「そんなことない。トレーナーと担当ウマ娘が結ばれる確率はかなり高いって聞いてる。私のお父さんとお母さんもそう」
「えっ、本当に?」
「はーん? 随分食いつきいいじゃない。冗談のつもりだったのにいいとこ突いちゃったかしらねーこれは」
「は!? いや、違うから! 私自身には関係なくそういう恋愛話に興味があっただけだから!」
からかうソーラーレイ。
本心がどうかは定かではないが否定するチューターサポート。
そして友人が本気なら手助けもやぶさかではないと鼻息の荒いサナリモリブデン。
ファミレスの喧騒に紛れながら、3人は姦しく時間を過ごす。
と、そこへ近づく者があった。
料理の乗ったワゴンを押す店員だ。
お待たせしましたー、と朗らかに言いながらワゴンから皿を持ち上げた。
大盛りのパスタである。
現在このファミレスではパスタフェアが行われている。
多種多様なパスタが普段よりも安く、そして多く食べられるのだ。
サナリモリブデン達も店の勧めに乗りフェアの商品を注文している。
最初にテーブルに置かれたのはサナリモリブデンが頼んだ品だった。
それは───。
サナリモリブデンの注文
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