オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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クラシック級 次走選択結果〜9月ランダムイベント

 

 

【投票結果】

 

毎日王冠(G2)

 


 

 

「10月」

 

サナリモリブデンの口から発された言葉に、記者たちはざわついた。

わずかに漏れ聞こえたのはやはりという音。

 

「毎日王冠への出走を予定しています」

 

「それはつまり、マッキラさんへの挑戦と受け取っても?」

 

「構いません」

 

続いた答えに、そのざわめきはさらに加速した。

フラッシュとともに写真が撮られ、幾人もが手元の手帳にメモを走り書きする。

彼らの顔は期待と興奮に彩られていた。

対決そのものに対するものか、それともこの挑戦表明による盛り上がりで得られる利益に対してかは定かではないが、ともかく場のボルテージは上がっていく。

 

「しかし、サナリモリブデンさんはこれまで二度マッキラさんに敗北していますが」

 

そのボルテージに押されてか同じ若い女記者は前のめりに続けて問うた。

 

「今度こそ勝機はあるのでしょうか?」

 

相手によっては反感を買うだろう問いだった。

かつての敗北を突きつけ勝機の有無を尋ねるそれは、受け手の取りようによっては侮辱ともなりかねない。

実際、若手の情熱ゆえの暴走と見て「あちゃあ」という顔をした記者も数人居た。

 

が。

 

「ありません」

 

サナリモリブデンはその程度で揺れるようなウマ娘ではない。

タイムラグゼロ。

今の天気はと聞かれて晴れていると返すような当たり前さで、彼女は自身の敗北を予見していると言ってのけた。

 

ポカンとしたのは質問者だけではない。

耳にした誰もが「意外だ」と大きく顔に書いている。

サナリモリブデンは挑戦者の立場になる。

ならば嘘や虚勢の類であっても勝てると口にすべきではないかと。

 

例外はたった一人。

とっくの昔にサナリモリブデンという少女を叩きつけられている、郷谷静流だけ。

彼女はわずかに俯いて、愛バの自我の強固さに今更ながら苦笑した。

 

「マッキラを、侮って良い相手だと思ったことはありません。今も記録と記憶に語られる伝説的な先達の方々と同等の脅威だと認識しています。努力のひとつやふたつが実った程度で、勝負になると言えるほど傲慢ではないつもりです」

 

「は、はぁ……でしたら、何故出走を?」

 

なので問い返されるのは当然だった。

勝ち目がないならばどうして走るのか。

マイルの重賞は他にもある。

サナリモリブデンの能力であれば十分に勝ちを狙えるそちらを目指しても良いのではないかとの疑問は自然なもの。

 

「? どうしてと言われても」

 

それを。

 

「勝ち目がない程度の事が、挑まない理由になりますか?」

 

サナリモリブデンは徹底した自然体のまま、灼熱の熱量で焼き切った。

 

「順当に行けば私は勝てません。以前の二回と同じようにちぎられて終わると思います。マッキラは勝利どころか、並ぶ事さえ許してくれるとは思えません。ですがその事実と、彼女に勝ちたいと思う気持ちは別のことです」

 

記者達には徐々に見え始めた。

この少女の本質がだ。

一見無表情でクールに見えるが、そんなものは表面に過ぎない。

 

「私は挑みます。あの背中に追いつくためにあらゆる努力を重ねます。たとえどれほど望みが薄いとしても、です」

 

視線を向けられる質問者。

若手の女記者などはその熱に自分が狂わされていく予兆さえ感じていた。

血液が沸騰し脳が焼けついていく感覚を、しかし福音とさえ受け止めて、その決意を耳にする。

 

「サナリさん」

 

「トレーナー?」

 

「こういう時はもっと簡潔に、一言でも良いんですよ」

 

「ん、了解。じゃあ───」

 

ある者は悲痛な無謀と断じて鼻を鳴らした。

ある者は心躍らせる挑戦者の登場に口元を吊り上げた。

ある者はこの少女ならばあるいはと目を輝かせた。

 

反応は千差万別。

なれど、その根底には等しく理解があった。

物腰柔らかな表皮の裏に隠されたものを、彼らはようやく目にする事となる。

 

「───勝ちます。全霊を賭して、なんとしてでも」

 

その日。

彼らのペンを通して、人々はウマ娘の形をした灼ける鋼を認識した。

 

 


 

【ランダムイベント生成】

 

イベントキーワード:【グーグル検索】【ジューンブライド】【備長炭】

 


 

【登場人物決定】

 

ソーラーレイ&チューターサポート

 


 

 

そんなわけで。

世間は今、少々沸き立っていた。

 

「すごいわよねー。ほら見なさいよこれ。あっちもこっちもマイルマイルマイル、マイル特集ばっかりじゃない」

 

とあるホームセンターの雑誌コーナーにてソーラーレイが言う。

彼女が指差す先にはレース関連がまとめられた一角があった。

表紙を飾るのは栗毛のウマ娘だ。

おでこを広く出したボブカットの彼女は勝負服を身に纏い、柔らかく微笑んでいた。

マッキラである。

 

【挿絵表示】

 

これまで無敗。

しかも全レースを圧勝劇で飾っている上に、クラシック級での安田記念制覇という偉業。

これで人々の話題に上らないわけもなく、今や彼女を知らない日本人はよほどレースに興味のない変わり者だけだろう。

 

必然的にこうして表紙に載る機会も多い。

恐ろしく強い上に愛想も良くファンサービスに熱心なマッキラはメディアからしてもありがたい存在と言える。

 

なのだが。

 

「く、く、ふふふ。今月のG1はこっちだってのにねぇ……?」

 

中にはそれが気に入らない者もいるのだった。

例えば今まさに本人が口にしたように月末に開催されるスプリンターズステークスの、その主役と目されているソーラーレイなどだ。

大層機嫌の悪い様子で口の端を引きつらせている。

 

「……あの、ソーラーレイ」

 

「なによ」

 

「ちょっと痛い」

 

「はーん、そりゃよかったわ。痛くしてんだから」

 

「…………んぅ」

 

ついでに言えば乱暴に振るわれた尻尾がサナリモリブデンの太ももにベシベシと当たっていた。

八つ当たり、ではないと本人は言うものの実質八つ当たりであった。

サナリモリブデンは確かに彼女の「スプリンターズステークスに来い」という誘いを蹴った形にはなるが、そのメッセージを受信した時点では既に郷谷との話し合いは終わっていたのだ。

関屋記念出走前に勝利した場合のプランは決定されていたのである。

なのでサナリモリブデンとしてはそんな事言われても困るというのが正直な意見だった。

 

「レイ、ちょっとその辺にしときなよ」

 

「あ゛ぁ゛?」

 

「うわ、すごい声……じゃなくて、ほら、サナリも困ってるでしょ」

 

「ふん。いいのよ困らせとけば。大体……」

 

同行していたチューターサポートが止めるも、さほど効果はない。

ソーラーレイは指差していた雑誌のうち、一冊に手を伸ばす。

そして”むんず”と掴んで抜き出してみせた。

 

「短距離の話題が潰れるくらいに熱入ってんのはコイツのせいじゃない」

 

それは特集の中では珍しくマッキラが表紙ではなかった。

会見場にて机を前に立ち、闘志を剥き出しにしてカメラを睨む芦毛のウマ娘。

サナリモリブデンである。

先日の王者に対する挑戦表明を行ったまさにその場面だった。

 

「ん……」

 

「満更でもない顔してんじゃねーわよ!」

 

「あ、あはは……」

 

ソーラーレイの言通り、雑誌の特集がマイルで埋め尽くされているのはそれが原因だった。

 

絶対王者。

今のレース界でその呼称はつまりマッキラを指す。

勝利どころか並ぶ事さえ不可能とまで囁かれ、彼女の敗北を予想する者は誰一人としていない。

次に毎日王冠を走ると彼女が表明した瞬間、出走回避を決定したウマ娘が何人も居たほどだ。

 

行き過ぎた強さは退屈を呼ぶ。

どうせまたマッキラが勝つ。

ライバルになれる者はもう居ない。

そんな風潮が流れ始めようとしていたところに現れたのがサナリモリブデンだ。

 

高い壁が、強すぎる敵がなんだというのか。

それでも挑み、なんとしてでも勝ってみせる。

臆することなく堂々とそう言い放ったサナリモリブデンの姿に人々は心を熱くした。

 

となれば必然的に特集はこうなる。

王者vs挑戦者。

サナリモリブデンがマッキラに太刀打ちできる可能性は。

これまでの両者の戦績を並べ、徹底的に比較し、専門家による批評が書き立てられる。

読者の需要を完璧に満たすそれらは今飛ぶように売れているという話だ。

 

「実際満更でもない。というより、率直に嬉しい」

 

「のほほんとしやがってコンニャロウ……!」

 

その事実にサナリモリブデンはちょっとホクホクしていた。

人々の注目、期待、応援。

それは彼女の力となってふつふつとやる気を沸き立たせてくれるのだ。

 

「ったく……でもちょっと意外ね。アンタこういうの興味ないかと思ってた」

 

「ん、そう?」

 

「あー、なんていうの? スト……スト……ほら、あれよ」

 

「ストイックって言いたいの?」

 

「そうそれ!」

 

言葉が出ずに唸るソーラーレイにチューターサポートのフォローが入る。

彼女の言うストイックさは確かにサナリモリブデンを表すには適切だろう。

トレーニングでさえ限界ギリギリ、ともすればそれを越えていく走りを見せようとする彼女を指して言うにはまさしくピッタリだ。

だが、かといってレース以外に興味がないというわけでもない。

 

「サナリは確かにストイックだけど別にそれだけでもないよ。結構普通の女の子だよね」

 

「言われてみれば水着とかも気合入ってたわね。アレ自分で選んだの?」

 

「うん。アルと一緒に」

 

「前にネイルとかもやったしね」

 

「なにそれ私も混ぜなさいよ。前から地味な服着てるなーって思ってたのよね。着せ替え人形にしてあげるから」

 

一度逸れれば話題はすぐに和気あいあいとしたものになっていく。

年頃の少女たちらしいファッションの方向にだ。

サナリモリブデンにどんな服が似合うかとチューターサポートが頭をひねり、どこのブランドの新作がどうだとソーラーレイが盛り上がる。

 

「ん……そういえば」

 

と、そこでサナリモリブデンは思い出したことがあった。

先ほどまでの雑誌の表紙の話題と、今のファッションの話題。

その二点からの連想だった。

彼女はスマホを取り出し、グーグル検索に”ソーラーレイ 表紙”と打ち込む。

するとすぐに目当ての画像に行き当たった。

 

「前に見たこれ、似合ってるって言い忘れてた」

 

「は、ちょ、やめなさいよもう!」

 

「どうして? 綺麗で素敵だと思う。少し羨ましい」

 

「感想がストレートすぎんのよアンタは……!」

 

そこに表示されているのは真っ白いドレスを身に纏ったソーラーレイだった。

ウェディングドレスだ。

6月のジューンブライド特集号の表紙である。

 

当時すでに短距離路線のエースと目されていたソーラーレイは様々な雑誌の取材を受けていた。

中にはウマ娘のファッションに関するものもあり、その目玉として扱われた号のものだった。

 

「あ、それ私も良いなって思ってたんだよね」

 

「うん。とても良い。肌が褐色だから、白がすごく映える」

 

「髪もほとんど金色に近いからキラキラしてて……理想のお嫁さんって感じでさ。スタイルも良いし」

 

「あの、ほんと恥ずかしいんだけど……!?」

 

それは二人の感想が示す通り大変評判の良い一枚だった。

快活さを残しながらも恥ずかしげにはにかむソーラーレイの写真はネットなどではちょっとした話題にもなったほどである。

学園の教室に雑誌を持ち込んで当の本人を囲むウマ娘さえ何人も居たのは記憶に新しいところだ。

 

ただ、ソーラーレイにとっては嬉しさよりも恥ずかしさが勝るらしい。

顔を真っ赤にしてスマホの画面を覆い隠し、称賛の目線を遮ろうとする。

 

「こんなに良い写真なのに……」

 

「アンタも同じ目に合えば分かるわよ! あぁもう、トレーナーの口車になんか乗るんじゃなかったわ!」

 

ついには端末を奪い取ってブラウザを閉じてしまった。

画面は最低限のアプリだけが並ぶ待ち受けに戻る。

そこに映るのはもうウェディング姿のソーラーレイではなく、入寮初日に撮ったペンギンアルバムとの写真だ。

褐色のウマ娘はようやくホッと息を吐く。

 

「同じ目……」

 

「そうよ、考えてみなさい。思いっきり着飾らされて表紙にされて全国に晒されるのよ。……どうよ?」

 

「恥ずかしいのはあるかも知れないけど、悪くないと思う」

 

「正気?」

 

ソーラーレイは怪訝な目をするが、サナリモリブデンは全く正気だった。

彼女は人々の目に晒されるのを苦としないタイプの少女である。

 

正確に言うならばレースに注目される方が好ましくはある。

だがファンとなって貰えて走りを記憶に残してもらえるならば入口はどこからでも良い。

最近目覚め始めたお洒落の方面からでも当然問題はなく、むしろ積極的に取り組む事を考えるのもやぶさかではなかった。

 

「私もサナリに同感。そこまで恥ずかしがる事でもないでしょ」

 

「アンタもそっち側? どうなってんのよ……」

 

「私だったら……うーん、スーツとか似合いそうってたまに言われるんだよね。そういう話が来たらやってみたいかも。サナリはどう?」

 

「ん……」

 

チューターサポートの問いに、サナリモリブデンの空想が具体化していく。

 

雑誌の表紙を飾るとして、その時にどんな装いを披露したいか。

彼女はしばし悩んでから口を開いた。

 






大変遅くなって申し訳ありません
2月中には再開します

表紙を飾るなら?

  • 綺麗なドレス
  • スーツ姿で男装に挑戦
  • 淑やかな和装
  • 家庭的なエプロン姿
  • 自然体な私服
  • 季節に合わせたイベント物
  • いっそファンタジー系も面白いかも知れない
  • 応援する側に気分を変えてチア衣装
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