オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
長々言い訳するのも見苦しいので粛々と投稿を再開して取り返せればと思います。
【投票結果】
淑やかな和装
サナリモリブデンの脳裏に様々な衣装が思い描かれる。
ソーラーレイが表紙を飾ったようなドレス。
今しがたチューターサポートが話題に出した男装。
自然な私服や、実家で母親の手伝いをする際に身につけていたようなエプロン姿。
はたまた、ちょっと非日常を味わえる時節に合わせたイベント衣装やファンタジックなアレコレまで。
そうして思考を巡らせた結果、辿り着いた答えは。
「……和装に興味がある、かな」
和装。
つまりは着物や浴衣の類であった。
興味のきっかけはもちろん夏合宿だろう。
煌めくようだったあの2ヶ月の中のとある一日、郷谷の手で着付けられた浴衣姿でペンギンアルバムと歩いた縁日の記憶は、彼女にとって特別なものである。
思い返したサナリモリブデンは右耳をピクリと動かした。
その付け根に付けられた艶のある黒い髪飾りは思い出深い愛用品となって久しい。
「へぇ、和装かぁ。いいね。サナリには落ち着いた空気感があるから絵になりそうだ」
「落ち着き……? 落ち着き、ねぇ」
サナリモリブデンの口から出た希望に2人はそれぞれ反応を返した。
チューターサポートはうんうんと頷き、ソーラーレイはうーんと首をひねる。
「む」
それにサナリモリブデンは反論したげにソーラーレイに目をやった。
少しだけ眉を寄せ、口を開く。
「……トレーナーとアルは、似合ってるって言ってくれた」
「別に似合わないとは言ってないじゃない。むしろいいと思うわ。顔立ちとか体型とか考えても着物は合いそうだし」
が、反論はするりとすり抜ける。
拍子抜けしたか目をパチクリさせたサナリモリブデンへと、今度はソーラーレイがニヤリとした笑みを向けた。
「ただねぇ……和装だったら落ち着きとか淑やか方面以外にもあるって言ってんのよ」
頬が吊り上がり、三日月の形を描いた口からは綺麗な歯並びが覗いていた。
「最近のアプリってすごいね。業者じゃなくてもこんな事できるんだ」
「でしょー? 便利なのよコレ。わざわざ試着しに行かなくても雰囲気分かるのは楽よねー」
得意げに言うソーラーレイはスマホを見せつけていた。
画面に表示されているのはサナリモリブデンだ。
といっても顔以外は本人のものではない。
画像加工アプリによる合成だった。
スマホのカメラで撮影するだけで姿勢などをAIが判断し、様々な衣装を着用しているように画像を自動編集してくれるのだ。
ソーラーレイが言ったような試着代わり、あるいは実際には着て歩く事が難しいような奇抜な衣装を合わせて遊ぶなどの用途で広く親しまれている無料アプリだという。
事あるごとに出てくる広告の量だけが玉に瑕だとソーラーレイは愚痴りはしたが。
金なら払うから広告無しの有料版を出せと唇を尖らせている。
ともかく、画像である。
そこに表示されるサナリモリブデンは和装に身を包んでいる。
ただし。
サナリモリブデンが希望した淑やかさとは対極に位置する姿ではあったが。
画面の中の彼女は刀を手に、腰を落とした臨戦態勢で敵を睨んでいる。
戦闘中の一場面といった具合だった。
今にも居合が抜き放たれ、視線の先に対峙する敵手をズンバラリと切り捨てでもしそうな雰囲気がある。
「にしても、思ったよりだいぶ似合ってるわね。やっぱアンタはこっちよこっち」
「…………む」
「どうよ。ピッタリでしょ? このまま漫画の主役だって張れそうじゃない」
「悪くない……」
それは中々のクオリティで、実際に似合いもしている。
あの日の浴衣とは真逆の雰囲気ではあったが、ソーラーレイの言通り漫画かなにかの登場人物になった気分であった。
こういうのもあるのか、とサナリモリブデンは新たに開かれた扉にむむむと唸る。
「いや、いやいや、確かに似合ってるけどサナリはこうじゃないでしょ」
が、それを肩越しに覗き込んだチューターサポートは首を横に振る。
そしてソーラーレイの手元を覗き込んで指を伸ばし、アプリを撮影画面に戻した。
「あん? なによ、じゃあどういうのがコイツらしいわけ?」
「百聞は一見にしかずだよ。貸して、今度は私が撮るから」
今度はチューターサポートがスマホを構えた。
姿勢はこう、視線はこっちと細かく指定していく。
「ん……!」
ぱしゃりと、軽い電子音。
サナリモリブデンなりに気合を込めたポージングの写真は、わずか30秒と経たずに加工された。
チューターサポート、ぐっ、とガッツポーズ。
「ほら、これだよ。これがサナリだ」
そしてドヤッと胸を張る。
画像の中で、サナリモリブデンは落ち着いた和装に身を包んでいた。
色合いは地味なあずき色だが、だからこそ雰囲気は静かで淑やかさを感じさせる。
同時に、帯がリボン状に結ばれている事でちょっとした可愛らしさも演出されていた。
「うん、すごく似合う。やっぱりサナリは雰囲気あるね」
当初からサナリモリブデンの着物姿を推していたチューターサポートはご満悦だった。
身を乗り出して普段より少しばかり目を輝かせる様はとてもお世辞には見えない。
本心から言ってもらえていると分かり、サナリモリブデンは更に気を良くした。
「……うっそでしょ。案外悪くないわ。今気付いたけど、アンタって黙ってれば儚い系なのね……」
「いや、普通に見ててわかるでしょ。サナリにどういうイメージ持ってたのさ」
「人に懐くタイプの猛獣」
「え?」
「もしくはスパルタ出身のバーサーカーね」
「……え?」
「評価が偏りすぎてる……。まぁ、正直ちょっとわかるけど」
「…………わかるの?」
同様にソーラーレイにも中々好評だ。
ただ、その後に続いた自身に対する評のために喜べはしないようだったが。
「何、アンタ自覚なかったの?」
「……トレーナーに頭がおかしいとは言われた事があるから、ちょっとズレてるのかなとは思ってた」
「じゃあいい機会だから覚えときなさい。アンタはレース中の私と同レベルで頭おかしいわよ」
「そんなに」
茫然と立ち尽くすサナリモリブデン。
具体的な比較対象を出されての指摘はそれなりにぐっさり刺さったようだった。
その様を見て、ソーラーレイはクスクス笑う。
「自分が周りとかファンとかからどう見られてるかは把握しといた方がいいわよ。特にアンタの場合、ファンサにも力入れたいんでしょ?」
「ん……うん。見てくれる人には出来るだけ楽しんで帰って欲しい」
「でしょ? だったら求められてるものは何かってのは知ってて損はないわ。と、ゆーわけで……」
クスクス笑いはニンマリ笑いへ。
帯刀した凛々しい姿と、淑やかな着物姿。
その両方を表示させたスマホを掲げ、ソーラーレイは宣言した。
「反応、調査するわよ」
買い物用のカートの中に次々に物が積まれていく。
備長炭の山、大きな焼き網、着火剤。
そして肉や野菜。
さらにコーヒー豆と紅茶の茶葉。
そこに……何故か衣服が加わる。
メイド服、野球チームのユニフォーム、看護師の衣装などなど。
大して値の張らない安物たちだ。
ショッピングモールの一角で売っている程度のパーティー用のものでしかなく、質もまぁそれなりといったところ。
「こう、改めて並べて眺めてみるとさ、やっぱりどう考えても……」
「ないわね。うん、ない。頭がウェズンすぎるわ」
「ちょっと否定できない」
何故そんな取り合わせかというと、だ。
秋の駿大祭の出し物のためである。
駿大祭とはウマ娘の無病息災を祈願して毎年秋に執り行われる伝統行事であり、いわゆる神事の一つだ。
当然真面目な行事ではあるのだが、こういった事に乗じて騒ぎ楽しむのは良くある事。
トレセン学園でも春のファン感謝祭と合わせて多くのウマ娘関係者とファンが心待ちにするイベントである。
そこに今回はチームウェズンが出店エントリーしたのだ。
中心になるのはもちろん余裕のあるシニア級の面々だが、共に合宿を過ごした繋がりからサナリモリブデン達もちょっとした手伝いに参加する事となっている。
今日彼女達がショッピングモールにやってきていたのは、そのリハーサルの準備のためであった。
なお、ウェズンの出店内容は……。
「コスプレ網焼きライブ喫茶ってなんなんだろうね……」
「炭の煙とコスプレが相性最悪だし、焼き具合見なきゃいけない網焼きと注目させたいライブが殴り合いしてるし、わけわかんないわ」
「喫茶と網焼きもどうかと思う。焼肉しながらコーヒーとか紅茶を……?」
という物。
つまりいつものウェズンである。
やりたいものを各々好き勝手に上げた挙句に取捨選択の過程を放り捨てごちゃ混ぜにして実行に移すという暴挙だ。
「……というか、大体網焼きが悪いわよね。コレ、買ってくのやめとかない?」
ソーラーレイがカートの中から備長炭を取り出す。
そうした方がいいのでは、とはサナリモリブデンとチューターサポートも同意するところではあった。
熟考の末、そうすると網焼きを熱烈に求めたセレンスパークがまた大泣きするだろうからとカートに戻されたが。
さて、一通りの買い物を終えた後。
サナリモリブデン達はフードコートにたむろして、ファストフード店のドリンク片手にテーブルを囲んでいた。
視線はテーブル上のスマホに向いている。
ソーラーレイが言うところの、反応調査の結果発表の時間であった。
「ウェズンのアレっぷりはアレだけど、今回ばかりはちょうどよかったわねー」
氷多めのコーラを啜りながらソーラーレイはニマニマ笑う。
サナリモリブデンのファンの反応調査。
つまり、サムライガールサナリモリブデンとしっとり淑やかサナリモリブデン。
世間が求めているのはどちらなのかが今示されようとしていた。
手法は単純。
SNSでのアンケートである。
ソーラーレイのウマッターアカウントで2枚の画像を投稿し、どちらがよりイメージに合うかを問うものだ。
「いい? 票が多かった方をお祭りで着て接客すんのよ」
「ん、問題ない。覚悟はできてる」
また、伴ってそういう約束が課されていた。
より得票数の多かった衣装を纏ったサナリモリブデンを生で、しかも間近で目に出来るのだ。
彼女のファンにとっては得難い機会だろう。
特に、サナリモリブデンは集めた人気と話題の割に露出が少ない。
トレーナーである郷谷の判断で、ネットに疎いサナリモリブデンのSNS利用が制限されているためだ。
こうなるとファンの投票に忖度が混じる可能性は少なく、生の意見が得られるはずだとサナリモリブデンはソワソワと画面を見つめる。
「まぁ間違いなく刀の方でしょうけどね。アンタに求められてるのはサムライガールよ」
「はぁ、それはないよレイ。素人意見丸出しだ。レースやトレーニング中のサナリは確かにそうだけどさ、だからこそ普段の静かで涼しげな顔が引き立つんだよ」
「アンタはコイツの何なの???」
チューターサポートとソーラーレイの対立もそこそこに、画面がタップされアンケート結果が表示される。
【得票数判定/それぞれファン数9731を上限】
サムライガール:1538票
淑やかしっとり:9568票
「はぁ!? なんでよ!」
「よしっ! ほら、言った通りだ!」
パカンと口を開けウソでしょと驚くソーラーレイと、グッと拳を握りしめて頬を吊り上げるチューターサポート。
勝敗はハッキリと分かれていた。
何しろ1538対9568だ。
6倍以上の差がついていては言い訳や物言いが挟まる余地は全くない。
「こんなに……」
なお、サナリモリブデン本人はどちらが勝ったかよりも票数の多さに目が行っている。
心なしか表情はホッコリと緩み、尻尾がピクピクと嬉しげに震えていた。
現在のサナリモリブデン公式ファンクラブの会員数は9731人。
その総人数を超える票数だ。
ソーラーレイのアカウントであるためファンクラブ以外の者が多く見るとしても、買い物中の短時間でここまでの票数が集まるとは思っていなかったらしい。
「いやおかしいでしょ。どうしてこんな偏ってんのよ。組織票か何か入ってんじゃないでしょーね」
「だからレイのそれは素人意見なんだって。リプ見てみなよ。多分それでハッキリするから」
ただ、ソーラーレイはやはり納得がいかないようだ。
自分が推した衣装がまるで票を集めなかった事が不満らしく、ぐちぐちと言葉を漏らす。
そこにかけられたチューターサポートの意見に、ならば見てやろうじゃないかと指が動いて画面がスクロールする。
| クレヨンを忘れるな@remember_crayon_7colors どっちも似合う〜! けどどっちと言われたらしっとり和装ですね! 雨の縁側に一緒に座ってあの優しい囁き声で世間話に相槌打って欲しい〜 |
|---|
「あ、あぁー、声。そっか、その評価ポイントは見落としてたわ」
「サナリの声って結構特徴的だからね。ウィスパーボイスは強いよ。刀にも合わない事はないけど、どっちが王道かってなるとね」
「……少し照れる」
| Mr.日曜日@goo_suka_pee これは2枚目 峠の茶屋感がたまらない 緑茶とお団子をそっと差し出してくれる姿が目に浮かぶ…… |
|---|
「実際差し出されるのは紅茶と生肉なのよね」
「くっ、ふ、ちょ、ちょっとやめてよ、噴き出しかけた……」
「や、でも納得感はあるわね。ペン子相手の餌付けとか見てるとそっちの素養はあるか……」
「そっち、って?」
「いわゆるママみとか……あぁいや何でもないわ。アンタは知らなくていいやつよ」
| 棹@SNR様激推しBIGLOVE@Sarasate_Opera おほーーーッ! 最高! すんばらしい! まずは感謝を! いつも新鮮なサナリ様の供給ありがとうございます!!! あぁ〜たすかる〜沁み渡る〜 しかも凛々しさと儚さの同時攻撃は威力高し! 純粋に"質"ですよこいつぁ…… アンケートは後者に入れました! どちらも甲乙つけがたいサナリ様の魅力的な一面ではありますがっ! ファンと接する場面でとなるとこっちでしょう! 理由を付記しておくとサナリ様のファンに対するスタンスによるものです サナリ様と言えば熱烈濃厚なファンサでもうすっかりお馴染みですが、それは見てくれて嬉しい、応援してくれて嬉しいという気持ちをまっすぐ剥き出しでしかも山盛りにお出ししてくれるからなんですね ファンサしてもらってるのはこっちなのに、より幸せそうなのはサナリ様なんです 自分の応援でこんなに喜んでもらえたと一撃で理解らされるあの感覚は他ではそうそう味わえません サナリ様の味! だからこそファンに間近で接して微笑む姿がより似合うしっとり和装! もちろんだからといって武装サナリ様が劣るわけではありませんが! むしろこっちも好き好き好き好きBIG LOVE…… レース中のサナリ様の抜き身の妖刀めいた鋭さで壁際に追い詰められて尋問されたいっ! 首筋に刀添えられたままあの声で「……時間がもったいない。全て、すぐに吐いて」とか言われたいっ! どんな秘密も全部しゃべりますぅ♡♡♡♡♡ |
|---|
「うわでた」
「この子、サナリの話題出すと毎回飛んでくるよね。レイの方にもアンテナ張ってたか……」
「ん……ん? ?????」
そうして意見収集は一区切り。
概ねソーラーレイも納得できるだけの材料はリプライ欄に並んでいた。
「はぁ、しゃーない。今回は私の負けね。予想が外れたわ」
ため息を吐きつつ、残った僅かなコーラをずごごと啜る。
行儀の悪いそれをチューターサポートは苦笑して見やった。
勝負好きで負けず嫌いなソーラーレイにはよくある姿だ。
付き合いの多い彼女達の間ではもういまさら問題にするようなものでもない。
「で、どーよサナリ。ファンの声に対するご感想は?」
最後にソーラーレイがサナリモリブデンに聞く。
「ん……嬉しかった。とてもいい。こういう機会が定期的に欲しいぐらい」
サナリモリブデンはそれに対し、ご機嫌が滲む声で返答した。
多くの票数、多くの意見。
自身に向いた人々の目と声を認識して、彼女は心が浮き立つのを感じていた。
多少の気恥ずかしさなどはそれに埋もれて気にもならない。
良い一日の良い経験として、サナリモリブデンの中に刻み込まれる事となったようだ。
「……ただ、トレーナーにSNSを止められた理由も少しわかったけど」
「あ、うん。極端な例ではあるけど、あのくらいのはそこそこいるしね……」
「そうね……うん……やめときなさい。アンタの場合、真正面から相手して色々面倒くさい事になる未来しか見えないわ。時には距離を取っておく方が正解ってこともあるのよ……」
若干、頬を引き攣らせるような面もありはしたようだが。
【イベントリザルト】
友好:ソーラーレイの絆+5
友好:チューターサポートの絆+10
成長:賢さ+15
獲得:コンディション/好調
ソーラーレイ 絆40 → 45
チューターサポート 絆40 → 50
スピ:442
スタ:385
パワ:364
根性:451
賢さ:376 → 391
【9月トレーニング選択】
スピードトレーニング / スピード↑↑↑ パワー↑↑
スタミナトレーニング / スタミナ↑↑↑ 根性↑↑
パワートレーニング / パワー↑↑↑ スタミナ↑↑
根性トレーニング / 根性↑↑↑ スピード↑ パワー↑
賢さトレーニング / 賢さ↑↑↑ スピード↑ 根性↑
9月トレーニング内容
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スピードトレーニング
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スタミナトレーニング
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パワートレーニング
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根性トレーニング
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賢さトレーニング