オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
スピードトレーニング
【友情トレーニング判定】
成功率:絆÷3(%)
ペンギンアルバム :失敗
ソーラーレイ :成功
チューターサポート:成功
チームウェズン :失敗
結果:友情トレーニング発生!
【トレーニングパートナー決定】
結果:チューターサポート
芝が千切れ、えぐられた土が舞う。
二振りの鋼がターフに足跡を形作る度に、その二人は加速していく。
コーナーを越えて迎えた直線。
まず先に出たのは癖毛のウマ娘、チューターサポートだった。
至近で燃え盛る熱量に微塵もペースを崩さずにここまでを走り抜けた彼女は敵手に勝る加速力を十全に発揮した。
ストライドを小さく、回転力を重視した走法で1バ身のリードを得る。
「ッシィ…………ッ!!」
それを、黙して受け入れるサナリモリブデンではない。
気合一閃。
引き絞るような呼吸の次瞬、轟音がターフを割った。
サナリモリブデンの脚が叩きつけられる。
回転よりも一撃を、加速力よりも最高速度を求める走法。
それが一度引き離された彼我の距離を秒ごとに食いつぶしていく。
1バ身が半バ身に。
半バ身がクビの差に。
そしてついに、サナリモリブデンが差し切って前に出る。
「ま、け、るかぁ……!」
だが、受け入れられないのはチューターサポートも同じ事。
クラシック戦線で鍛え上げられた意地と根性は彼女の背を押しやった。
サナリモリブデンがもぎ取った差は瞬く間に詰められる。
両者、完全な横並び。
サナリモリブデンが戦意を滾らせて前に出ればチューターサポートが歯を食い縛って食らいつき。
チューターサポートが負けじと飛び出せばサナリモリブデンは更なる熱を得て襲い掛かる。
そこに際限はなかった。
互いが互いを高め合い、どこまでも突き進んでいく。
とはいえ、もちろん永遠には続かない。
遠く、コース脇で二人を監督しているトレーナー陣からホイッスルの高い音が届く。
スパート終了の合図だ。
サナリモリブデンもチューターサポートも指示には従順なウマ娘である。
殆ど揃ったペースで速度を落とし、息を整え始める。
……ただし、だからといって心までは冷めない。
(……また)
(互角だった……っ!)
次のスパートに備えながら、二人の思考が重なった。
負けなかった安堵など欠片もない。
勝てなかった己への怒りだけを胸に悔恨を噛みしめる。
灯った炎は衰えを知らず、直線を終えてコーナーを往く二人をさらに燃え盛らせていく。
「いやぁ、流石ですねぇチューターサポートさんは」
「そちらこそ、流石のサナリモリブデンだね」
それと同じ事はコース横でも起きていた。
数歩の距離を開けて並び、二人を見守るトレーナー陣もまた。
「私のサナリさんの本気にここまで食らいついてくるんですから」
「僕のチューターにこれだけ食らいつけるなんて」
ただし。
こちらはウマ娘達よりも随分とピリピリとしていた。
表情は柔和に笑みを形作ってはいるが表面だけ。
互いの担当を言葉の上では褒め称え合いながらも、その目は一切笑っていない。
その言葉も、良く聞かずとも「うちの子の方が上だが?」と明らかに語っていた。
それも当然の事だ。
サナリモリブデンとチューターサポート。
マイルを主戦場とする者同士だ。
前走、関屋記念ではサナリモリブデンが大きく勝利したものの、実力は見ての通り伯仲している。
その上、10月の毎日王冠では再びの激突が決まっているのだ。
これほど条件が揃っていてなお仲良しこよしが出来るならば、むしろトレーナーとしての資質を疑われるだろう。
ふふふ、あはは、と笑い声が漏れ、しかし同時にバチリバチリと電気が走る。
この場面を漫画の一コマにしたならば、両者の頭部には怒りマークがくっきりと描かれているに違いない。
それでもトレーナー達が意識を散漫にする事はない。
コーナーを曲がり終え、再びの直線に向き直ったサナリモリブデン達の様子を観察し、状態を把握する。
それから交わされた視線でトレーニング続行に問題がない事を確認すると、郷谷がホイッスルを吹き鳴らした。
スパート。
デッドヒート。
そして、またも決着はつかない。
コースの中から二つ、コース横から二つ。
合計四つの「ぐう」と悔しみを滲ませる声が上がった。
【トレーニング判定】
成功率:失敗5%→0%(トレーナースキル)/成功85%/大成功15%
結果:成功
【トレーニング結果】
成長:スピード+30/パワー+20(基礎成長)
成長:スピード+10/パワー+10(友情トレーニング)
スピ:442 → 482
スタ:385
パワ:364 → 394
根性:451
賢さ:391
【ランダムイベント生成】
イベントキーワード:【カツサンド】【物足りない】【覚醒】
【イベント登場人物決定】
複数人登場率:50%
結果:ペンギンアルバム&チューターサポート
「も゛の゛た゛り゛な゛い゛っ゛!!」
「うん」
「だと思ったよ……」
10月初週のとある日。
それなりに賑わう朝の商店街にて。
ペンギンアルバム、魂の叫びであった。
滂沱の涙を流し、地に崩れ落ち。
そしてアスファルトに小さな拳をぺちぺち叩きつけての咆哮だった。
余りにも哀れを誘う姿に商店街を歩く人々からギョッとした視線が向けられる。
ペンギンアルバムの同行者、サナリモリブデンとチューターサポートは頬を赤らめた。
いかに冷静さで知られた二人であろうともこの状態で恥じらいを覚えない感性は持ち合わせていない。
さて、何故ペンギンアルバムがこんな道端で泣いているのか。
その理由は実に分かりやすく、そしてバカバカしいものだった。
事の起こりは今朝の事だ。
ペンギンアルバムは朝早くにベッドから飛び起きた。
驚いたのは同室のサナリモリブデンだ。
ペンギンアルバムの朝の弱さはサナリモリブデンも良く知る所、というより、あの手この手で何とか目覚めさせて支度を整えさせているために体に覚え込まされている。
そんなペンギンアルバムが何故ひとりでに、と疑問を抱くのは当然だった。
「ど……どうしたのアル。何かあった?」
「良く聞いてくれたね……! 今日はいつものベーカリーで新作が──」
「すごく納得した。おはよう、アル」
「うんっ、おはよーサナリン!」
早起きの理由はこの通り。
ペンギンアルバムの食い意地は寝起きの悪さを凌駕するらしい。
なるほどなー、と心の底から納得を得たサナリモリブデンは一切の心配を放り捨て、輝く笑顔眩しいペンギンアルバムに朝の挨拶を投げた。
その後の行動は実に単純だ。
どうせなら一緒に行こうよとペンギンアルバムがサナリモリブデンを誘い。
休日ながらも予定のなかったサナリモリブデンが快諾し。
道中でばったり出くわしたチューターサポートも巻き込んで商店街にやってきて……。
「うそぉ! 出遅れた!?」
「うわ、すごい行列。え、今7時半だよね? 開店まで30分もあるのに」
「ん……でも気持ちはわかる。ここのパンは本当に美味しいから」
ただの早起きではちょっと足りなかったという現実を突きつけられる事となった。
目当ての店は、以前にペンギンアルバムが二人に紹介したベーカリーだ。
そこにズラリと並んだ行列は少なくとも20人は居るだろう。
このベーカリーは今や押しも押されもせぬ大人気店だ。
元々すこぶる味が良く、その上今年のダービーウマ娘が足しげく通っているとなれば宣伝効果も抜群。
そんな店の新作を朝一に狙おうというならば30分前程度では見通しが甘かったと言える。
慌てて行列の最後尾に並ぶも、他の客も目当ては彼女たちと同じだったようだ。
新作……厳選したブランド豚を使ったカツサンドは瞬く間に数を減らしていく。
順番が巡ってきた時にはもう、一番小さな3切れ入りのパックが一つしか残っておらず……。
「なんでぇぇ……! こんなに美味しいカツサンドが一切れだけなんてっ! 生殺しすぎるよぉぉぉぉ!!」
そうして、冒頭に戻るというわけだ。
絶望に崩れ落ち、ぴえーと泣くペンギンアルバム。
こうなると件のカツサンドが目を剥くほどの絶品であった事はむしろ不幸でさえあった。
肉は分厚く満足感たっぷりで、しかも肉汁はほのかな甘みを感じるほどに濃厚。
なのに食べにくい硬さも余計な臭みも一切ない。
サックリと歯を受け入れ、心地よい歯ごたえを感じさせながらも咀嚼の邪魔にはならないジャストの調整だ。
研究を重ねて専用に開発したというソースは熟成された野菜の味わいも深く、程よくスパイスが効いて香り豊かで刺激的。
それがふんだんに染み込んだカツの衣のとろけた食感など、最早芸術品と呼ぶ者もいるかも知れないレベルだった。
そして、当然のようにパンは最上級のそれだ。
上述の強烈なカツに負ける事なく、しっとりした柔らかさと小麦の芳醇さでもって全てを包み込んでいる。
下手をすれば「カツとおまけのパン」になりかねないところを「カツサンド」に力強く留め、料理としての完成度を数段上に高める技量には満場一致での満点越え評価が下されたほどだ。
……だからこそ、ペンギンアルバムの嘆きは深い。
彼女は食事に人一倍どころか十倍ほどこだわりが強い上に、言わずと知れた健啖家だ。
一般的なヒトミミよりもよほど食べるウマ娘の中で、更に平均の3倍4倍は平気で食べる少女なのだ。
そんな彼女にわずか一切れとは、ヒトミミの感覚で言えばスプーン一杯程度の感覚だろう。
「……アル」
「うっ、うっ……サナリン?」
「私の、半分あげるから」
その哀れさに同情したサナリモリブデンがそっと自分のカツサンドを差し出す。
もう既に口を付けてしまった品だが、まだ半分ほどは残っていた。
「いっ……! ぃ、いぃのぉ……?」
脊髄反射の速度で手を伸ばし、しかし直前で手を止めて遠慮を伺わせるペンギンアルバム。
これほどの絶品を人から取ってしまうのは大罪ではないか。
そういう思考が働きつつも、食欲は誤魔化し切れない。
そんな葛藤が丸見えの動きであった。
「うん。気にしないで。私はそんなに食べる方じゃないって知ってるでしょ」
なので許しが出た次の瞬間にはカツサンドは消え去っていた。
もごもごと、じっくり味わうようにペンギンアルバムの口が動く。
「うぅ、美味しい……すっごい美味しい……こんなカツサンド初めてだよぅ……」
「なら良かった。……少し落ち着いた?」
「うん……ごめんねサナリン、道端でこんな取り乱しちゃって」
それでなんとかペンギンアルバムは小康状態になったようだ。
申し訳なさそうに立ち上がり、恥ずかし気に頭の後ろを掻く。
そうしてチューターサポートにもごめんねーと言おうと向き直って。
「ん、むぐ…………」
慌てたように、自分の分として割り当てられたカツサンドの残りを口に詰め込むチューターサポートを発見した。
「…………」
「むぐ、もご……」
「……あ、あのね……?」
「ごくん……う、うん」
「さ、流石に、自分から寄越せって言ったり、無理矢理取ろうとしたりとかは、しないよ……?」
「…………そ、そうだよね……ごめん」
チューターサポート、痛恨のバッドコミュニケーションであった。
その後。
三人はそそくさとその場を離れた。
何しろ、周囲の目が痛くなってきたためだ。
"あれって、もしかしなくてもペンギンアルバムちゃんじゃ……"
"ダービーウマ娘がカツサンドに負けてる……"
などというヒソヒソ声が鋭敏なウマ耳に届いては流石に留まってはいられない。
早足でスタスタと商店街を抜け、広い道に出るや道路端のウマ娘専用レーンを走っての逃走であった。
「あはは、なんかもう、ほんとごめんねー!」
「いやこっちこそ、つい、ついね! 本当に取られると思ったわけじゃなくて、つい反射的にね!」
「大丈夫、気にしない。逃げるのも少し楽しかった」
そうして街中の公園に辿り着きベンチで休む頃には沈んだ空気はおおむね消えていた。
個人差はあれど、ウマ娘というものは走っていればそれなりに楽しくなってくるものだ。
余程の事でない限り、長々と走れば変な空気はどこかに飛んでいく。
さて、落ち着いたところで解決していない問題が目に入ってくる。
朝食をどうするか、という話だ。
三人は三人とも今朝はカツサンドしか食べていない。
一番多く食べたペンギンアルバムでも一切れ半。
これでは到底足りるわけもなく、全員が空腹を抱えていた。
ならば追加で何かを食べようという結論に当然至る。
「ん……まだ8時過ぎ。この辺りだとどこが開いてる?」
「ファストフードとかファミレスは24時間やってると思うよー」
「今ちょっと調べてみたんだけど喫茶店も大体開いてるみたいだ。モーニングの評判が良い店、幾つか見つけたよ」
それ以外にはコンビニという選択肢もある。
公園から見える範囲だけでも全国展開しているライバル店舗が二つあり、どちらに入ってもそれなりの物を手軽に食べられるだろう。
ただ、問題が一つある。
ペンギンアルバムは当然として、サナリモリブデンとチューターサポートも、まだ口の中に絶品の余韻が残っているという点だ。
特上カツサンドにはまだまだ後ろ髪を引かれる思いがたっぷりである。
「「「…………」」」
よって、候補は出揃っても決定は下らない。
三人は顔を見合わせ、全員の顔に未練が塗りたくられている様を確認して苦笑を交わした。
だが、いつまでもそうしているわけにもいかない。
本日の朝食は何にするか。
その意見を出そうと、サナリモリブデンは口を開く。
本日の朝食は?
-
チェーン店で質より量を求める
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喫茶店で別ベクトルの美味を期待する
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コンビニ飯で誤魔化しカツサンド追加を待つ
-
別の店のカツサンド開拓に走り回る
-
いっそ自分達でカツサンドを作ってみる