オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです 作:F.C.F.
【投票結果】
いっそ自分達でカツサンドを作ってみる
「……やっぱり、あのカツサンドは諦めきれない」
スッとベンチから立ち上がったサナリモリブデンは、そう言った。
拭いきれない未練をありありと覗かせて、あの味を食べたいと。
「同感! って言いたいとこだけどぉ……」
それに対し、ペンギンアルバムが追随するもののすぐさま消沈する。
「カツサンド、追加の時間が11時半と17時半なんだよねぇ」
「え、把握してるの?」
「ホームページに載ってるからね。あそこのは全部覚えてるんだ」
「ガ、ガチ勢だ……」
残念ながらそういう事であるらしい。
件のベーカリーのカツサンドを食べようと思うなら11時半まで待つしかない。
しかもその際にも当然行列が予想される。
長時間を店の近くで待つ忍耐力か、あるいはカツサンドが自分たちの番まで残っている幸運を期待する必要があるだろう。
「うん。流石にそこまでは待てない」
が、サナリモリブデンはそれはわかっていたと続けた。
握りしめた拳を胸元に掲げ、力強く宣言する。
「だから──作ろう。あの味を再現する。私達の力で」
その力強さに反してポカンとするペンギンアルバムとチューターサポート。
当然の反応だ。
先ほど味わったばかりのカツサンドの完成度は他に類を見ないレベルであった。
それを素人仕事で再現するなど到底現実的とは思えない、というのが普通の感想だろう。
【料理の腕前判定】
範囲:Lv1~100
基準:1-10暗黒料理/11-20未経験/21-40苦手/41-70並/71-80得意/81-90メシウマ/91-100プロ級
ペンギンアルバム :49
チューターサポート:10
「い、いやいやサナリン、流石に無理だと思うよ? 料理は苦手じゃないけどさ、どうすれば作れるか全然わかんないもん」
「私もちょっと自信ないかな。料理ってやった事なくて……」
二人は共に首を横に振る。
その顔に自信は全くうかがえない。
ペンギンアルバムの方は料理の経験は人並みにはあるようだが素人の域を出るものではないようだ。
現にソースが素晴らしい逸品であった事はわかるものの材料のバランスどころかそもそも何を使っているかさえ見抜けなかったとしょんぼり語る。
だが。
そこに、サナリモリブデンは静かに歩み寄り。
「大丈夫。心配しなくていい」
常よりも遥かに。
それこそレースに臨む際の彼女にすら近い、膨大な熱量を伴って気炎を吐く。
「私ならやれる。いや、やる。久しぶりに──」
【料理の腕前判定】
範囲:Lv41~100(描写済みの経歴から固定値加算)
サナリモリブデン:96
「──全力を、振るわせてもらう」
鉄腕料理人サナリモリブデン。
覚醒の時、来たれり。
まぁ、そういうわけで。
サナリモリブデンは困惑する二人を押し切り、材料を買い揃えた。
それを携えてやってきたのは寮の厨房だ。
食事時でさえなければ、申請すれば入寮者は利用できるのである。
もちろん、利用時間を守り、後片付けもキッチリ行う必要はあるが。
「えーと……買ってきちゃってから言うのもなんだけどさ、ホントにやるの?」
「ん」
おずおずと聞くペンギンアルバムにサナリモリブデンは当然のように頷いた。
返した言葉はわずか一音だけだが、そこに籠るやる気は天井知らずだ。
「で、でもさサナリ、その、材料がさ……」
同じくおずおずとチューターサポートが指摘する。
【買い出し成功判定】
難度:135
補正:プロ級の目利き/+20%
参照:賢さ/391+78=469
結果:304(大成功)
「だいぶ違うんじゃないかな……」
その言の通り、普通に考えれば余計に思える材料がそこにはある。
最もわかりやすい物はキャベツだろう。
ベーカリーの前で味わったあのカツサンドには明らかに含まれていなかったのだ。
パンとカツの間にはソースしかなく、キャベツなど千切り一本も挟まっていないのは三人全員が記憶している。
「問題ない」
だがサナリモリブデンは揺るがない。
むしろ自信に満ちた声色で胸を張って返答する。
「あの味を再現する。そうは言ったけど完全に同じものは作れない。時間がかかりすぎる」
「あ、あぁ、そうだよね。どう見ても手間かかってそうだったし」
「うん。特にあのソース。完全と呼べるレベルの再現には何回か試作が必要だし、置いて馴染ませる時間も要る。少なくとも二週間は欲しい」
「二週間でできるの!?」
愕然とするチューターサポート。
彼女から言わせれば、十年かかってもやれる気がしないというところだ。
「今回はあくまで市販のソースとスパイスのブレンドで、短時間で出来る中で一番近い味を目指す。ただ、そうするとソースの味が鋭くなりすぎると思う。丸くする方法はあるけど、あえてやらない。香りと刺激が強いままの方が近付けられると判断した。かわりに中和のためのキャベツを加える」
対して、うむと首肯するサナリモリブデンはハキハキとキャベツ購入の意図を説明する。
その様にペンギンアルバムは、これはもしや、と反応した。
料理経験のある彼女自身も多少覚えのある事だが、美味しい店の料理を再現しようとする際、材料や調理法を見抜けてもまるっとそのまま真似ようとするとまず間違いなく失敗に終わるのだ。
それで上手くいくのは厨房の環境や素材の質までも同一の場合のみである。
一般には何らかのアレンジや、時に素人目には手抜きと取られるような工程の変化を加える必要がある。
そして、その判断が的確に出来るのは。
「もしかしてサナリンってメチャクチャ料理得意だったりする?」
「うん。もし今から店を持てたとして、黒字で回していくぐらいの自信はあるよ」
相当に腕のある料理人の証である。
ペンギンアルバムはふつふつと希望が湧きたつのを自覚した。
困惑と不安は瞬く間に消え、明るい兆しに胃袋が歓喜を奏で始める。
「さ、サナリン……! 最高だよサナリーン! ブラボー! ジュテーム! ボンボヤージュ! ナマステー!」
「ん」
「え、えぇ……?」
チューターサポートは突如ぶちあがった空気感の中で一人取り残されていたが、まぁ些細な事だろう。
かくして調理が始まる。
担当はそれぞれの腕に合わせて決まった。
味の要となるソース作りは最も腕に自信のあるサナリモリブデン。
カツを揚げるのはそれに次ぐペンギンアルバム。
三人の内で一番料理に馴染みの薄い、というか経験が全く無いというチューターサポートはキャベツの千切りだ。
「うん、まぁ、このくらいなら大丈夫だと思うよ」
まな板の前で腕まくりをし、チューターサポートはスライサーを構える。
キャベツを押し当てて前後に動かすだけで千切りが作れる、時短や手間抜きのためにあちこちのご家庭でお馴染みの調理器具だ。
もちろん、料理初心者にも大変優しい。
対峙するキャベツは緑が多くずっしりとした良質の物だった。
瑞々しい外葉が目にも美しく、軸の切り口の状態からも新鮮そのものである事がうかがえる。
サナリモリブデンの目利きはやはり確かなものらしい。
【調理判定/チューターサポート】
難度:67(簡単調理倍率/x0.5)
補正:良質素材/+15%
補正:暗黒料理/-90%
参照:賢さ/430-322=108
結果:71(成功)
シャ、シャ、シャ、と一定のリズムでキャベツがスライサーの上を往復する。
素早くはない。
だが淀みはなく、スムーズな動作だった。
千切りの厚みにも大きなブレはない。
「わ、すごい。本当に千切りになってる」
これが料理初挑戦のチューターサポートは感動したような面持ちで自身の手元を眺めていた。
定食の付け合わせでお馴染みの品はこうして作られているのかと、心なしか目がキラキラしてさえいる。
ソースをかき混ぜていたサナリモリブデンは横目でそれを確認してヨシと頷いた。
彼女の目から見ても及第点以上の出来であるようだ。
それから、ほんの少し頬に笑みを浮かべる。
親しい友人が、自身の趣味にして特技である料理に興味を持った様子なのが嬉しいらしい。
このまま興味を膨らませていってくれて、いつかレシピの交換でも出来る日が来ればと小さな夢まで抱くほどに。
(なんだ、料理って結構簡単なのかも。暇があったら色々やってみようかな。ごく普通の料理と見せかけてちょっとした独自のアレンジが効いてるとか、かっこよさそうだし)
──その未来が本当に来てしまった時、サナリモリブデンがどのような感想を抱くか。
というかそもそも舌と胃が無事に済むのかは、未だ誰も知らない事だが。
【調理判定/ペンギンアルバム】
難度:135(一般調理倍率/x1.0)
補正:良質素材/+15%
補正:並の腕前/補正なし
参照:賢さ/369+55=424
結果:368(大成功)
キャベツの確認を終えて、次にカツの状態に目を向ける。
こちらは一旦動きが止まっていた。
とはいえ、別にペンギンアルバムがサボっているわけではない。
「サナリンサナリン、普通に揚げるのでいいんだよね? ちょっと置いてからで」
「うん、それで問題ない」
単に肉を馴染ませている段階というだけだ。
カツを揚げる場合、小麦粉、卵、パン粉をつけた後に10分ほど放置すると出来上がりの状態が良くなるのだ。
また、馴染ませる間に温めている油の設定温度も適切そのもの。
こちらも問題無いようだ。
どころか、一般的な家庭料理では中々行わない「寝かせ」の工程を挟んでいる辺り相当な期待が持てそうだと言える。
サナリモリブデンが見る限りカツ自体にはもう失敗の要素は見当たらない。
残るポイントは揚げ時間ぐらいのものだが、そこも問題としそうにはなかった。
「アル、腕は普通って言ってたけどそんな事ないように見えるよ」
「いやいや全然だよー。家でお手伝いさんにちょっと教わったくらいだし」
顔の前でパタパタと手を振るペンギンアルバム。
それからサナリモリブデンを見上げて、にひっと笑う。
「でも今日ばかりは手が抜けないからね。折角頑張ってくれてるサナリンのためにもさ、いつもより丁寧にやってるんだー」
「ん……」
「お? 照れちゃった?」
「少し。ありがとう、アル。すごく嬉しい」
「へっへ、いいってことよー!」
親友の言葉にサナリモリブデンの心はさらに浮き立った。
ならばこちらも期待に応えねばと、やる気の炎は勢いを増す。
ここまでの過程に問題は生じていない。
後は自分の担当、ソース次第だとサナリモリブデンは鍋の中をじっと見つめた。
【調理判定/サナリモリブデン】
難度:202(難関調理倍率/x1.5)
補正:良質素材/+15%
補正:プロの腕/+30%
参照:賢さ/391+175=566
結果:515(大成功)
サナリモリブデンがその鍋で最初に作ったのはカラメルだった。
水で溶かした砂糖を焦がして作ったそれをもう一度溶かし、ウスターソースとケチャップ。
そこに醤油も少々。
これをじっくりと弱火で煮詰めればコクと深みに富むベースの出来上がりだ。
そうすれば次にスパイスの出番である。
フェンネル、タイム、ローリエ、クローブ、ナツメグ、セージ。
少量ずつを購入してきたそれらを眺めながら鍋の中身をひと口舐め。
(──見えた)
十秒にも満たない思案で適切な配合を割り出した。
彼女の脳内に、朝に半切れだけ味わったカツサンドのソースに至る道筋が明確に描かれる。
スパイスの持つ味と香りを現状のソースにどう加算すればあの頂きに辿り着けるか、という道がだ。
各スパイスの処理から投入までの動作も驚くべき滑らかさだった。
迷いなく、力みも皆無。
加熱の温度と時間にも当然のように欠片ほどの瑕疵さえない。
「おわ……すごぉ」
「か、かっこいい……私も、あんな風になれたら……」
などと、横目で見ていたペンギンアルバムとチューターサポートが感嘆と憧憬に声を上げるほどの見事さであった。
それから少しして。
最後にソースを漉して粗熱を取った後、レモン汁と和辛子を加える。
(ん……やっぱり、寝かせていないからかなり強い。でも──)
濃密な味わい。
鮮烈な香り。
しかし、強烈に過ぎる刺激。
(カツとキャベツの状態を考えれば、これがジャスト)
つまり。
初めに宣言した狙い通りの、会心の出来栄えであった。
そうして、三人合作のカツサンドが出来上がった。
「ん……!」
「これ、かなり良さそうじゃない……!?」
「う、うん、私もそう見える」
大皿にドッサリと積まれたカツサンドの群れを前に、サナリモリブデン達は鼻息を荒くした。
ベーカリーの物と比べて薄い小麦の香りを補うべく軽くトーストされたパンの焼き目も美しく、カツとキャベツに塗られたトロリとした艶やかなソースは眩ささえ感じる。
何より鼻孔をくすぐる揚げたてカツとスパイスの香りが三人の期待をどんどん膨らませていく。
空きっ腹にはたまらない宝の山だ。
買い出しと調理を経て、現在時刻は10時近い。
朝食をまともに食べていない三人にはこれ以上の我慢は不可能だった。
示し合わせたように同時に椅子を引き、カツサンドを囲んで座る。
顔の前に手を合わせて声を発するのも全く同時。
「「「いただきます!」」」
そして、いざ実食の時──!
【カツサンドクオリティ判定】
基準:結果=点数/ベーカリーカツサンド=200点
補正:普通のキャベツ/補正なし
補正:上質なトンカツ/+15%
補正:上質なソース /+15%
参照:腕前合計/49+10+96+46=201
結果:158点
「おいひぃーーー!!」
真っ先に声を上げたのはやはりペンギンアルバムだった。
喜色満面。
大きな瞳をキラキラ輝かせて大満足の様相だ。
「凄い……! 凄いよサナリ! 本当にあの店の味だ! 信じられない!」
続いたのはチューターサポート。
こちらも歓喜に震えてはいるが、より割合が大きいのは驚愕だろう。
ひと口かじったカツサンドの断面を見つめて目を剥いている。
「残念だけど、そこまでじゃない。本物と比べると少し劣る。あれはもっとソースが全体と濃密に結びついて一体になってた」
最後はサナリモリブデン。
チューターサポートの絶賛に対して、より精密な評価を下す。
その言は正しく、朝に味わった極上の美味には一歩、いや二歩は足りていない。
舌に触れる味わい。
鼻を抜ける香り。
それらは確かにかの絶品に良く似ている。
だが、自作カツサンドの味は鋭かった。
トゲがある、と言い換えても良い。
ベーカリーの物は薫り高く刺激的でありながら一本筋の通ったまろやかな統一感があったのだ。
それと比べてしまえばどうしても劣ると言わざるを得ない。
「でも、模倣としては十分な出来。私達は良くやった。……これは再現失敗じゃない」
が、サナリモリブデンは微笑んだ。
最高峰には届かなかった。
けれど、少なくとも一般的なカツサンドにおける満点は優に超えた味だと。
「家庭向け時短アレンジ、大成功。そう言っていいと思う」
「なるほど、まさしくって感じだ。これが、アレンジ……!」
「もーサナリン天才! 何よりお腹いっぱい食べれるのが最高すぎるよぉ!」
食卓は大層ご機嫌だ。
ペンギンアルバムなど、感涙にむせびながらサナリモリブデンの腕をぺちぺちする手の動きも実に軽やか。
「あっ、そうだ!」
その上機嫌に任せるまま、ペンギンアルバムはカツサンドを一切れ手に取った。
そして何やらむむむと念じるとそれをサナリモリブデンの口元に差し出す。
「はいサナリン、願掛けておいたから! 毎日王冠勝てますようにって!」
「ふふ、よくあるやつだ」
「そーそー、よくあるやつ、へっへ」
カツだけに、というやつだ。
もちろんサナリモリブデンに断る理由はない。
一番の親友からの可愛らしく嬉しい応援を、そのままあーんと頬張る。
満足感たっぷりの分厚く柔らかいヒレ肉。
噛むほどにしみ出す肉汁が衣に含まれたソースと溶け合い、舌を喜ばせてくれる。
そのままでは若干強すぎる酸味と辛味は瑞々しいキャベツのおかげでちょうどいい所に落ち着いていた。
トーストされた小麦の香りも加わればバランスは抜群に良く、そんじょそこらのパン屋では裸足で逃げ出すほかない逸品である。
「じゃあ、はい。私からもお返し。菊花賞、勝てますように」
「やったー! サナリン大好きー!」
そこに親愛まで加わった美味しさを味わった以上、サナリモリブデンの次の行動は当然決まっていた。
同じく一切れに願を籠めてペンギンアルバムの口元へ。
小さな青毛の食いしん坊は幸せいっぱいに噛り付く。
「ははっ、ちょっと二人とも。私も今月走るんだけど?」
「ん-、ごめんねー。私の愛はサナリン専用なのだ☆」
「残念だけど、勝つのは私だからあげられない」
友人同士、そしてライバル同士の冗談なんかも軽く交わしつつ。
充実した休日はこうして過ぎていくのだった。
【イベントリザルト】
友好:ペンギンアルバムの絆+10
友好:チューターサポートの絆+10
成長:根性+5/賢さ+10
獲得:コンディション/絶好調
獲得:スキルPt/80
ペンギンアルバム 絆75 → 85
チューターサポート 絆50 → 60
スピ:482
スタ:385
パワ:394
根性:451 → 456
賢さ:391 → 401
スキルPt:280 → 360