オリウマ娘はダイスと選択肢に導かれるようです   作:F.C.F.

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クラシック級 11月 マイルCS作戦選択

 

11月、第3週。

京都のとあるホテル、その一室にてサナリモリブデンは夜の空を眺めていた。

 

「予報によると今がピークで、これからだんだん弱まって明日の午前中には止むようですよ」

 

「ん……。当たって欲しい」

 

「ですねぇ。折角のG1ですから少しでも持ち直してほしいものです」

 

そこに郷谷が声をかける。

翌日のマイルチャンピオンシップを控えて、空模様はあいにくの雨だった。

 

共に京都入りしたセレンスパークなどは不良バ場でのレースを余儀なくされていたものである。

芝2200メートル、3勝クラス比叡ステークスは出走ウマ娘全員が泥まみれ。

内容もとんでもない大混戦だった。

 

そこまでを思い出してサナリモリブデンは自身のスマホを開いた。

アルバムを開けば、最新の一枚には泥に負けずに輝くセレンスパークの笑顔と、彼女に肩車されておおはしゃぎするクロスミネラルの姿がある。

レースを見に行くという駿大祭での約束は反故にされることなく果たされた。

 

人気のウマ娘が荒れたバ場に苦戦して沈む中、セレンスパークは際立って強い走りを見せた。

普段の被害者になりがちな立場からは一転、攻撃性の高い凶暴な走りがレース中の彼女の持ち味。

それが今日は一段と鋭さを増していたと郷谷は誇らしげに語っていたものだ。

理由はもちろん、年の離れた妹分にいい所を見せたかったのだろう。

初めての生のレース観戦、その迫力に気圧されながらも興奮に声を上げていた小さな少女の応援はセレンスパークに無限の力を与えたに違いなかった。

 

「私も」

 

サナリモリブデンは写真を見つめながらこぼす。

 

「続かないと」

 

 


 

【レース生成】

 

【マイルチャンピオンシップ(G1)】

 

【秋/京都/芝/1600m(マイル)/右外】

 

構成:スタート/序盤/中盤/終盤/スパート

天候:曇

状態:稍重

難度:280(クラシック級11月の固定値140/G1倍率x2.0)

 


 

 

「えぇ、もちろん。サナリさんの勝利のために、私も全力を尽くしましょう」

 

窓際、椅子に座るサナリモリブデンの対面に郷谷が座る。

手元にはいつものタブレットだ。

そこに情報を表示させ、愛バへと示す。

 

「京都レース場の地形は覚えていますね?」

 

「うん。これで3回目。忘れてない」

 

まずは京都レース場の情報だ。

これはサナリモリブデンも既に把握済みのもの。

何しろ印象深いレースをここで経験したのだ。

 

2月、かかりにかかってペースを乱し、脚を痛めて完走する事さえ出来なかったきさらぎ賞。

5月、敗戦を乗り越え、どころか利用さえして周囲を騙し切り完勝してみせた白百合ステークス。

到底忘れられない2戦だった。

 

当然ながらレースの記憶と共に京都の特性も覚えている。

 

 

 

マイルチャンピオンシップ、1600メートル

 

そのスタートは2コーナー奥のポケットから始まる。

ポケットと向こう正面、合わせて711.7メートル。

序盤から中盤を争うのはこの長い直線だ。

枠順による有利不利はほとんど無いと思って良いだろう。

 

中盤の終わりからはほとんど丘と呼んで良い坂が待ち受ける。

京都名物、淀の坂だ。

ゆっくり登ってゆっくり下る……というセオリーは過去のものとなって久しい。

3コーナーで頂点に達し、4コーナーに向けて下っていくそれは終盤戦を高速化させやすい。

 

そして、最終直線は404メートル

前走の東京ほどではないがどちらかと言えば長めの部類と言えるだろう。

 

 


 

【枠順】

 

1枠1番:タヴァティムサ

2枠2番:オントロジスト

3枠3番:ボヌールソナタ

4枠4番:ブリッツエクレール

5枠5番:サナリモリブデン

6枠6番:ムシャムシャ

6枠7番:サラサーテオペラ

7枠8番:ノワールグリモア

7枠9番:スローモーション

8枠10番:ショーマンズアクト

8枠11番:スウィートパルフェ

 


 

 

続いて表示されたのは出走ウマ娘の一覧だ。

合計11名。

 

不動の絶対王者と目されていたマッキラの敗北と、長期休養の発表。

これはマイル路線から離脱をはかろうとしていたウマ娘を大きく呼び戻すかと思われた。

……が、実際はそうはなっていない。

 

「マッキラさんが弱って大敗した、というならそうなったのかも知れませんけどね」

 

負けてなお、マッキラの走りは強者のそれだった。

ならば打ち勝った側、サナリモリブデンの強さもまた同等なのではとの目が向いている。

 

怪物は一時ターフを去った。

しかし代わりに別の怪物が頭角を現した。

怯え逃げた者が戻る道理はない。

 

残る者もこの一戦に調整を間に合わせられない者が続出した。

毎日王冠で最下位に終わりながらも全力以上を振り絞ったアングータなどが良い例だろう。

マッキラが居ない今こそ力をつけて差を埋めるチャンス。

そう気張って疲労も抜けきらないうちから無茶な自主トレーニングを試みて体調を崩してしまったらしい。

 

他にも、目標と定めた背中が突然消えた事で闘志の矛先を見失う者。

マッキラを射落とす最大の好機に刃を届かせられなかった事実に消沈する者。

あるいはチューターサポートのように、絶対的な不足を痛感した者。

 

結果として、今回のマイルチャンピオンシップは少々寂しい人数での出走となった。

 

「ただし、それは裏を返すと」

 

郷谷は語る。

油断も楽観もなく、むしろ険しい表情で。

 

主役はいれどもライバル不在。

結果の見えたレースだとする下バ評は的外れなものでしかないと。

 

「ここに名前を連ねているのは例外なく一流以上の気迫を持ち、完璧に調整を済ませてきたウマ娘達です」

 

厳然たる事実として、彼女達はマッキラには及ばないだろう。

絶対を冠したかつての王者と比較すれば、その能力には絶望的な開きがある。

 

だが、かといって格下と侮り油断を見せた瞬間、サナリモリブデンを射落とすだけの力を誰もが秘めているはずだ。

 

 

 

「特に注意が必要なのは、この2人でしょうね」

 

中でも郷谷が目を向けたのは2名。

スローモーションとムシャムシャだ。

 

「スローモーションさんは分かりやすいですね。一種異様と言って良い、サナリさんに対する執着心。こんなに恐ろしい子は中々居ませんよ」

 

「うん。……この間、少し話をした。正直怖い。とても」

 

「サナリさんの心臓でそうなんですから飛び抜けてますよねぇ……」

 

しみじみと言うサナリモリブデンと郷谷。

スローモーションとの因縁ももう長い。

特に郷谷は、厄介な相手が愛バに目をつけてくれたものだと戦々恐々とする心境である。

 

「彼女の作戦はサナリさんへの徹底マークでしょう。ぴたりと背後に張り付いて、隙あらば刺し殺す。そんな気迫で向かってくる事はまず間違いありません」

 

「同感。他の作戦をとるスローモーションはちょっと考えられない」

 

ですよねぇ、と郷谷は深く深く頷いた。

 

 

 

「もう1人のムシャムシャさんは後方待機からの直線一気を得意とするウマ娘です」

 

郷谷の解説は続く。

対象はムシャムシャ、シニア級のウマ娘だ。

 

「彼女の走り自体は凡庸の域を出ません。時計も重賞級ウマ娘としては標準といったところでしょう」

 

マイル路線のシニア級はマッキラから逃げた、などと言われているがそうでない者も当然居る。

ムシャムシャはその筆頭格と言える。

安田記念での敗戦以降、マイルチャンピオンシップでのリベンジに向けて徹底的に己を鍛えてきたウマ娘である。

そも毎日王冠は彼女の眼中にはなく、本来明日の京都レース場でマッキラを討つべく弓を引き絞っていたのだ。

 

当然、そのための武器は磨き抜かれている。

 

「ですが、彼女の怖いところは技術です。敵のペースを乱し、調子を狂わせ、わずかな隙を食い破る。()()()()としての手管は現在のシニア級全体を見渡しても最上位に数えられるでしょう

 

不安を煽り焦らせる。

平静を奪い仕掛けをためらわせる。

時に威圧し、時にささやき、時にけん制し、時にトリックを用いてペテンにかける。

 

駆け引きこそが自分の戦場だとはばからない様は反感を買う事も多いが、間違いなく強力なウマ娘である。

ムシャムシャが走るレースは必ず荒れるとさえ評されるほどだ。

 

「サナリさんはシニア級と実戦で戦うのは初めて*1ですが、良く覚えておいて下さい。シニア級の怖さは数多の実戦で培われた技術(習得しているスキルの数)にあります。クラシック級の相手とは一味違ってきますよ」

 

 

 

そうして、締めに入る。

 

「……厳しいレースになりますねぇ」

 

郷谷は細く長く息を吐いた。

彼女にとっては頭の痛い話である。

 

当然の1番人気、サナリモリブデン。

 

スローモーションはまず当然。

前述したムシャムシャもおよそ間違いなく。

そして他8名も恐らくは。

絶対王者を下して見せたサナリモリブデンをこそ狙い撃ちにかかるだろう。

 

「トレーナーは、勝率はどれくらいあると思う?」

 

「5割。と言いたいところですが……3割あるかないか、というところかと思います」

 

どうあっても楽な勝負にはならない。

郷谷の予測はおよそ正しく、サナリモリブデンが勝利する道筋は細いだろう。

 

「十分」

 

それは、つまり。

 

「去年の今頃は、G1の勝ち目なんかゼロって言われてた」

 

サナリモリブデンの一年間の成果を示す、0%からの脱却だ。

 

「3割もあるなら贅沢すぎる。……ここまで私を連れてきてくれてありがとう。後は、3割をもぎ取ればいいだけ」

 

 

 

「──ふふ。えぇ、その通りです。期待させて貰いますよ、サナリさん」

 

「任せて。私はやる。トレーナーの方も、作戦は任せる」

 

信頼を交わし、頷き合う。

これまでを二人三脚でやってきた2人は、今日も足並みを違えることなく。

明日の決戦へ向けて戦意を高めていくのだった。

 

 

 

 

 


 

【ステータス補正適用】

 

バ場適性:芝B/スピード&パワー+10%

距離適性:マイルA/スタミナ&賢さ+20%

バ場状態:稍重/スタミナ&パワー-5%

 

スキル:補正なし

 

調子:絶好調/ALL+10%

 

スピ:507+101=608

スタ:410+102=512

パワ:419+ 62 =481

根性:476+ 47 =523

賢さ:421+126=547

 


 

【他ウマ娘の作戦傾向】

 

追込:2 差し:3 先行:3 逃げ:1

 

【注目ウマ娘の情報】

 

1番人気/5枠5番:サナリモリブデン

2番人気/6枠6番:ムシャムシャ(差し)

3番人気/7枠9番:スローモーション(マーク:サナリモリブデン)

 


 

■ サナリモリブデン

 

【基礎情報】

 

身長:164cm

体重:増減なし

体型:B77 W53 H78

毛色:芦毛

髪型:ショートポニー

耳飾:右耳(牡馬)

特徴:物静か/クール/囁き声〇/従順/温厚/鋼メンタル

 

【挿絵表示】

 

 

【ステータス】

 

スピ:507+101=608

スタ:410+102=512

パワ:419+ 62 =481

根性:476+ 47 =523

賢さ:421+126=547

 

馬魂:100(MAX)

 

 

【適性】

 

逃げ:A(11/50)

先行:B(0/30)

差し:A(29/50)

追込:C(0/20)

 

 

【スキル】

 

領域/決意の鏨、鋼の轍 Lv2(効果不定。勝敗を分ける局面で奮い立つ)

 

冬ウマ娘◎     (冬のレースとトレーニングが得意になる)

冷静        (かかりにくさが上がり、かかった時に少し落ち着きやすくなる)

集中力       (スタートが得意になり、出遅れる時間がわずかに少なくなる)

弧線のプロフェッサー(コーナーを容易に曲がれるようになる。また、コーナーで少し速度が上がる)

 

 

*1
本来は関屋記念でシニア参戦判定があったはずですが、当時忘れていました。

マイルCS 作戦選択

  • 逃げ
  • 先行
  • 差し
  • 追込
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