じーさん家は不思議屋敷   作:サンサソー

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ピーンポーンパーンポーン

※注意※
この話には以下の要素が含まれます。
・ご都合主義
・クリーチャー出現
・ほのぼの初心者
・モフ狂い

こちらの注意事項にご不満の方は、戻るボタンを。それでもいいという方はごゆっくりお楽しみください。


別れの時

かくれんぼも終わり、縁側に並んで座る俺たち二人と一匹。

 

未だにかくれんぼの結果を引きずっている俺の横で、マキさんは何食わぬ顔で太陽光を堪能し、みゅかりさんはバリボリと遠慮なしに煮干しを貪っている。

 

「もう、ごめんって。あんな手を使ったのは謝るからさ〜」

「みゅっみゅ!」

「……いや、引っかかった俺が悪い」

「あちゃあ、どうしよう……あ、そうだ。みゅかりさん」

「みゅ?」

 

庭にのみ視線を向けて黄昏ていると、なにやら横が騒がしくなった。だが俺は一切目を向けない。

 

拗ねてるわけではない、思えばあんな見え見えの手に引っかかってしまった己を恥じているだけだ。つまりは落ち込んでいる。脳内大反省会である。我ながらガキっぽい。

 

「道彦さん、こっち向いてよ」

「……なんブッ?」

「あっは!引っかかった!」

 

肩を叩かれたので無意識に顔を向けてしまった。その結果、いつの間にか横に来ていたマキさんの罠に引っかかった。肩に乗せられたままだった手から伸びていた人差し指が、俺の頬を潰したのだ。

 

「また懐かしい事を…」

「そう?結構最近な気もするけど……ねっ!」

「ブフォッ!?」

 

そして膝に乗せていたみゅかりさんを顔に押し付けられた。すぐさま取ろうとするが、何故かみゅかりさんは前足を使ってしっかりとしがみついて離れない。

 

「道彦さんモフモフ好きでしょ?元気出たかな?」

「ムー!ムググーッ!」

「……あれ?」

 

モフモフは大好きだ。愛していると言っても過言ではない。だがこれはマズイ、みゅかりさんが顔に張り付いているせいで息ができない!

 

「ちょ、みゅかりさん離れて?そのままじゃ道彦さん死んじゃうからね〜!?」

「みゅ…む……」

「あ、フリーズしてるこれ。道彦さんそのままね?よいっしょー!」

「ムグッ!?」

 

突然前へと引っ張られる感覚。おそらくマキさんがみゅかりさんを引っ張ってくれているのだろう。少しして、なんとかみゅかりさんを引き剥がすことに成功。みゅかりさんは目を回してグッタリしていた。

 

「ふぅ……なんでみゅかりさんの方がダウンしてるんだ」

「……あ、うん。押し付け方間違えちゃったね。次やる時は後ろ側でやるよ」

「何を間違えたんだ。それに次の機会なんて無いぞ」

 

何かを察したマキさんは言葉を濁しているが俺にはサッパリ。少し問い詰めてものらりくらりと躱すため、大して知りたくもないしそのまま話題を終わらせた。

 

茶を一服した後、みゅかりさんが大半を食った煮干しの袋を引き寄せ、ひとつまみ口に放り込む。

 

そういやこの煮干し、ガキの頃に背を伸ばすんだって言って爆食いしてたな。まあそんなだから、未だに煮干しを食べ続ける習慣が抜けきっていない。

 

「あ、私も欲しいな」

「ん…はい」

「ありがと〜」

 

しばしの間、互いに言葉もなく茶と煮干しをつまみながら庭を眺めていた。ふと上を見れば、青々とした空が広がっている。

 

「……いい天気だなぁ」

「そだねぇ……」

「「ふふっ」」

 

ジジババか、と心の中で1人ツッコめば自然と笑いが出た。マキさんも同じ感じだったのか、同じように笑みがこぼれていた。

 

「ここって、いい所だよね。静かで、のどかで……」

「東京の喧騒に長く触れていたぶん、心地良さがひとしおだ」

「たしかに」

 

降り注ぐ日光が心地良い。吹く爽やかな風が心地良い。風にざわめく木々の音が心地良い。

 

心を癒すには、やはりこういった自然豊かな田舎がうってつけなんだ。

 

「……みゅあ?」

 

そうしていると、どうやらみゅかりさんが起きたらしい。ポケーっとしながら近くにあった煮干しを掴み、あーと口を開け美味そうに食べ始めた。可愛い。

 

「……やっぱりみゅかりさん可愛いなぁ。俺も猫でも買おうかな」

「え…ま、まあ猫なら、外に出したらどっか行っちゃって居なくなっちゃいそうだけどね〜」

「いやいや、好奇心旺盛でなければそうでもないんだな。なんだかんだ、田舎だと山よりも飯や寝床に困らない家にいることが多い。住宅街とかだとどこでもいいから」

「へえ〜」

 

取るに足らない豆知識を披露している間に煮干しを食べ終えたみゅかりさんが動く。まだ眠気が抜けきっていないのか、いつもよりゆったりと移動してマキさんの膝によじ登った。

 

 

「……ん、みゅかりさんといえば、ゆかりさんはどうしてるんだ?」

「ゆかりん?ゆかりんはねぇ……あ、ほら。私たちって旅行で来てるじゃない?そろそろ帰るから荷造りしてくれてると思うよ」

「……え?あ、そうか。旅行だもんな」

 

何度かゆかりさんも遊びに来てたから、ついご近所さんのような感覚に陥っていた。そうだよな、マキさんだって家は俺がバイトしてる東京だし、ゆかりさんも旅行で来てじーさんと知り合ったって言ってたもんな。

 

「帰るのか…寂しくなるなぁ」

「おー?大の大人が弱音なんて吐いていいのかな〜?」

「いいだろ別に。マキさんとは今日が初めてだったとはいえ、ゆかりさんやみゅかりさん、けだマキやあかり草たちがいたから、こんな何も無いような場所でも楽しかったんだよ」

「……そっか」

「というか、歳は全然離れてないだろ。そこ突いても大して痛くないぞ」

「あ、たしかに」

 

そう、こういった何気ない会話も楽しかったんだ。じーさんの居ない家で一人でいるのは辛い。だから、マキさんらに会えたのは幸運だった。楽しかったなぁ……。

 

「まあでも、私とはバイト先で会えると思うし」

「……まあ、そうだろうけど」

「それに、ゆかりんも喫茶店『マキ』の常連さんだしね。そう悲観することはないと思うよー?」

「え、ゆかりさんもあの辺りに住んでるのか?」

「んーん、ちょうど通勤途中にあるから寄ってくれてるんだよ」

「へ〜」

 

そういやゆかりさん働いてるんだったな。てことは高卒で社会に出たということか。

 

「立派だなゆかりさん」

「ホントにね〜」

 

膝の上で丸まっているみゅかりさんを撫でながらマキさんが煮干しをつまむ。すると、マキさんの指に着いた煮干しの匂いにつられたのか、みゅかりさんはマキさんの指をガッシと捕まえた。

 

「みゅあ〜む…」

「ちょっとごめんねー、離してくれるかなー?歯が当たって痛いな〜なんてちょっと痛い痛い痛い!?」

「みゅかりさーん。ほら、ここに買った紫芋がまだあるよ〜」

「っ!みゅあ〜!」

 

みゅかりさんの好物、紫芋の力は絶大だった。寝ぼけていたみゅかりさんはすぐさま覚醒しマキさんの指を離すと、紫芋を持った俺へと飛びついてくる。

 

「よっと」

「みゅっ!?」

「お、ナイスキャッチ」

 

紫芋を持っていない方の手でみゅかりさんを捕まえると、抱え直しながら紫芋を与えてやる。頬いっぱいに頬張るみゅかりさん。可愛い。

 

「さて、そろそろ帰らないと。荷造りして、明日の朝には出ないといけないから」

「そうか……あ、そうだ。ちょっと待っててくれ」

 

みゅかりさんをマキさんに渡し、急いで台所へと向かう。ビニール袋を取り出すと、その中に野菜や果物、それと紫芋も詰めていった。

 

「ん、これぐらいか」

 

居間へと戻れば、マキさんはみゅかりさんを頭に乗せながら縁側で鼻歌を歌っていた。

 

「お、何その袋」

「野菜とか紫芋とか色んなの入ってる。持ってきな」

「みゅ!?」

「あーダメだぞ。せめて帰ってから食いな」

「みゅあ〜」

 

紫芋に反応したか突進の構えをとったみゅかりさんをすぐさま宥める。あれだけ煮干しと紫芋食っておいてまだ食うつもりか。

 

「あはは。ありがとね、ゆかりんもきっと喜ぶよ」

「それなら嬉しいけど」

 

家を出て、マキさんを門まで送る。本当なら車使って送ってやりたかったんだが、流石にそこまではと断られた。それだとかなり歩くことになるだろうけど、無理強いはできんしな。

 

「今日は楽しかったよ。ありがとね」

「こっちこそだ。また旅行で来ることがあれば寄ってきな」

「うん。まあ店で会うだろうけどね。じゃあね〜」

「みゅあ〜」

 

マキさんは軽く手を振ると歩いていく。みゅかりさんはマキさんの頭に乗ってこちらへと前足をブンブンしてた。可愛い。

 

「ゆかりさんたちには挨拶もしてないけど……マキさんがよろしく言ってくれるだろ」

 

家の中へ戻り、残った煮干しを口にしながら縁側でくつろぐ。あーあ、俺の茶がぬるくなっちまった。

 

「………また、一人になっちまったな」

 

誰かが居なくなると、毎度のことだが家が広く感じる。いつもより静かで、いつもよりハッキリと自然の音が聞こえるようになる……寂しいな。

 

「中尾さ〜ん」

「……あ?」

 

門の外から誰か呼んで……なんだ?身体が勝手に震えて…。

 

「中尾さんいらっしゃいますか〜?隣の、東北ずん子です〜」

「ヒェッ」

 

寂しいとは言ったがトラウマが来ていいわけじゃない。

 




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