じーさん家は不思議屋敷   作:サンサソー

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ピーンポーンパーンポーン

※注意※
この話には以下の要素が含まれます。
・ご都合主義
・クリーチャー出現
・ほのぼの初心者

こちらの注意事項にご不満の方は、戻るボタンを。それでもいいという方はごゆっくりお楽しみください。


コンビニでも車で10分

時は早朝。未だ暑さが残る秋だが、出る所はバンバン出る。

 

「あ、かゆ、かっっゆ!!!」

 

この世で黒光りするGよりも大嫌いな虫、蚊に食われた。6箇所ほど。

 

昨晩は毛玉を撫でながら一緒に和んでいたんだが、やはり酒が入ると眠気は相応に襲ってくる。いつの間にやら縁側で寝てしまった俺は、もう秋だというのに物の見事に食われまくった。

 

油断した。こんな田舎ではアブとかにも気をつけなきゃいけないってのに、ましてや蚊に刺されたなんて笑いものだ。

 

しかもコイツら、状況によっては冬を越す。生命力強すぎんだろ。

 

「と、とりあえず買い物メモ……あった!ついでにムヒと飯買おう!」

 

とりあえず軽く身支度を整えておくか。たぶんじーちゃんばーちゃんばっかりだから気にする人なんてほとんどいないだろうけど、念の為に。

 

「みゅ〜」

「あ?なんだお前、まだいたのか」

 

洗面台で髭を剃っていると、洗濯機の上に紫色のものがぴょんと飛び乗った。どうやらこの毛玉、あのまま家で夜を越したらしい。

 

「ということは、お前飼い主とかいないのか?」

「みゅあ〜」

「寝床とかはちゃんとあるのか?」

「みゅっ」

「そうか、あるのか」

 

なんとなくだが、コイツの言いたいことはわかる。やはり人語を理解できるからか、どう反応すれば意図が伝わるかを理解しているようだ。

 

「…やっぱり触り心地いいな、お前」

「みゅみゅ〜」

 

モフモフを見ていると、無性に触りたくなる。いや、無意識に触ってしまう。紫色の毛は洗ってやったからか綺麗で、絡まったりもしていないようだ……紫色といえば。

 

「結月さんには悪いことをしたな…」

「みゅ?」

「お前には関係ないことだろうけどよ、まあ……じーさんがくたばっちまって、んでこの家に越して来て。だいぶ追い込まれてたみたいでな。馬鹿な俺は初対面の女性に向かって『アンタ』とか、敬語も何も使わず当たっちまってな」

「みゅ……」

「もしまた会う時がありゃ、ちゃんと謝らないといけねえなぁって」

 

その時の機嫌で他人にまで迷惑かけて…ガキか俺は。

 

「みゅあ〜」

「ん?なんだお前、どうした」

「みゅい」

 

洗面台に置いていた手に前足でポンポンと叩かれる。慰めてくれてるんだろうか。

 

「……ありがとな」

「みゅっ!」

「買い物行くんだが、お前はどうする?」

「みゅ〜……みゅっ!」

「うわっ」

 

毛玉が跳ね、俺の頭に飛び乗った。行くってことでいいのか。まあ田舎だから店に来るのは車での遠出客ばかりだろうし、若いもんもいないだろ。

 

「なら、あまり動かないこと。そんでもって、声をあげないこと。約束できるか?」

「みゅっ!」

「ん、なら行くか」

「みゅー!」

 

金と免許証よし、髪よし、服よし。ひいじいさんが自作したらしいガレージから軽トラックを出し、長い買い物旅が始まったのである。

 

 

 

 

「わぁ」

 

草とほぼ同化していた何かはひょっこりと顔を出す。軽トラックが見えなくなったのを確認すると、葉を存分に広げ大きく口を開いた。

 

「わぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁわぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

まず最初に着いたのは電気屋。遠かったが、まあこんな田舎に店があるだけマシだろう。

 

まあ買うものはLEDライトのみ。買い物自体はサッと終わった。ここから戻るのがかなり面倒なだけだ。薬局とか行くとこ行ったら、道中で見つけたスーパーで飯買って帰るか。

 

「みゅみゅ〜……」

「腹減ったか?もう少しの辛抱だ、我慢しろ」

「みゅ〜…」

 

毛玉が元気なさげにペタリと潰れている。身体が小さいと動かずともエネルギーの尽きる速度が早いのか。早急に飯を調達しなければいけないな。

 

 

スーパーに入り、弁当コーナーへと直進する。料理はある程度できるが、まだ材料買って調理するほどの余裕は無い。今はパパッと済ませられればいい。

 

「お前は何か食いたいものあるか?」

「みゅ〜…みゅっ!」

 

毛玉が前足で指したもの、それは並べられた紫芋。昨晩の反応といい、よほど好物なのか。

 

目に入った海苔弁当と適当なおにぎりをカゴに入れ、ちょっとおやつにあんこ餅ときな粉餅を入れて紫芋の所へ向かう。厳選したのか、毛玉が熟考した末に指した紫芋を手に取った時だった。

 

『皆様、ご来店ありがとうございます。これより、東北じゅん子様によるずんだセールを開始します』

 

「……は?」

 

なに?ずんだ?

 

「皆さん、お久しぶりです!東北じゅん子、東北じゅん子でございます!」

 

「みゅっ?!」

「なんか選挙みたいな始まり方だな」

 

お立ち台に上がったのは、濃い緑色の髪をした高校生ぐらいの女の子。その手にはパックに包まれた餅らしき物があった。

 

「お〜、また来たんなずん子ちゃんや」

「待っとったよ〜」

「おばあちゃんたち、いつもありがとうございます!さあ、今回は前回よりも質のいいずんだができました!それを使ったずんだ餅。そう、『あんこ』など足元にも及ばない、最高の『ずんだ餅』!いかがでしょう!」

「お一つおくれ〜」

「じーさんこのずんだ餅好きなんじゃよ」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 

「……なんじゃありゃ」

「みゅ……みゅみゅい!」

「ん?ああ、そうだな。そろそろ会計に…」

「そこのおにいさん!」

「あ?うおっ!?」

 

先程までお立ち台で演説らしきものをしていたのに、いつの間にやら目の前に!?

 

「そのカゴの中にあるもの、なんですか?」

「あ?えっと…弁当と紫芋と、あとおやつの」

「『あんこ餅』……ですよね」

 

え、なに。ダメ?もしかしてあんこアンチの過激派の方?さっきの演説ってガチだった?

 

「ずんだ餅いかがですか?」

「え、いや、これで間に合ってますんで」

「ずんだ餅、いかがですか?」

「あの、ちょっと」

「ず ん だ 餅 い か が で す か」

「あ、はい。買わせていただきますです。はい」

 

了承すればずんだ餅を一パックカゴへ。軽く中身を確認してみると、きな粉餅は見つかった。あんこ餅は……姿が見つからない。

 

「ありがとうございます!どうぞまた、『ずんだ』をご贔屓に〜」

「はい。ありがとうございまひた」

 

噛んでしまったが気にする余裕はない。この子怖い。さっさと会計済ませてお暇しようそうしよう。

 

「あの〜」

「え、もっと買えと」

「ああいえ、そうでなく。その頭のは…」

 

あ、毛玉忘れてた。店の中に動物連れてくるのはまずありえないこと。じーちゃんばーちゃんたちならなんとか誤魔化せるが、そういやこの子若い子だわ。

 

「あ、えっとただの帽子ですよ帽子!」

「そうなんですか?どこかで見たような…」

「いやぁ気のせいじゃないですかね。もう秋ですしフワフワの帽子だと暖かいんですよねハハハ」

 

毛玉を手に取って軽いお手玉をする。奇行で注意を逸らしつつ、さっさと話題を切り上げなければ。

 

「では、用事があるので私はこれで。また機会があれば買いますので」

「あ、はい。ありがとうございました」

 

レジに到着。ミッションコンプリート。ここまでビビったのなんてガキの頃にホラゲーのアトラクション行った時以来じゃねえかな。

 

 

「あれって……みゅかりさん、だよね?」

 

 

 

 

「ただいま〜っと」

「みゅ〜い」

 

軽トラをガレージに入れ、玄関を開ける。何気なしに帰宅の挨拶をすれば、頭の上から返事が聞こえた。ちょっと嬉しくなった。

 

テーブルに袋を置いて、腰を落ち着ける前に茶を入れる。その間も毛玉は大人しく俺を待っていた。

 

この毛玉、何かしら騒いだりするんじゃないかと思っていたが、予想に反しちゃんといい子にしていた。ほらご褒美だ、食えよ。

 

「みゅっみゅっ」

「美味そうに食うなぁ」

 

口いっぱいに紫芋を詰める毛玉。撫でたくなるが、こういう時はNG。食事の邪魔をしたと不機嫌にさせてしまうことがある。食べ終わって落ち着いた所を優しく撫でてやるのがいいだろう。

 

さて、ムヒも塗ったし俺もお茶で一息ついたら弁当を…。

 

「わぁ」

「ブーッ!!!」

「みゅあっ?!」

 

突如テーブルに咲いた一輪の花。それだけでも驚きだというのに、この花、顔がある。人面花だ。毛玉の時みたいな『なんだこの生物』なんてもんじゃない。もはや『なんだこの妖怪』である。

 

吹いてしまったお茶が毛玉にかかるが、こっちは驚いた拍子にむせてそれどころじゃない。

 

「ゲホッエホッ……な、なんだお前。え、なんですかお前」

「わぁ」

「え、なんだよ。外?……ナニアレェ」

 

人面花が片方の葉っぱを窓へと向ける。言われるままに外を見てみると……空からなにやら黄色いものが近付いているのがわかった。

 

毛玉以上にフワフワな黄色い毛玉。毛玉と同じような2本のアホ毛をクルクル回して、ヘリコプターのように空を飛んでいる。

 

「ぎゅんぎゅーん!」

「みゅっ!?」

 

黄色い毛玉は開いた窓から中へ入ると、紫の毛玉に頭突きをかました。そのままモフモフ溢れる取っ組み合いが始まる。

 

「……なんだコレ」

「わぁ」

「ッ?!まだ全然慣れんな怖いよお前」

「わぁ、わぁ」

 

俺の言葉を無視し、人面花は袋を漁る。そして目的の物を見つけたのか、器用に左右の葉っぱでおにぎりを取り出した。

 

「わぁ」

「な、なんだ。おにぎりが欲しいのか?」

「わぁ、わぁ」

「そうか。ええっと、包装破いてやるからかしな」

「わぁ」

 

素直におにぎりを渡す人面花。ちょっと可愛い……のか?

 

包装を破き、中のおにぎりをそっと人面花の前に置く。待ってましたと言わんばかりに、人面花は大口を開いておにぎりにかぶりついた。

 

「みゅー…みゅー…」

「ぎゅーん…ぎゅーん…」

 

息も絶え絶えに取っ組み合いは終わったらしい。息を整えると、紫の毛玉が俺の方へ跳ねてきた。

 

「みゅ…」

「……友達か?」

「みゅっ」

「お迎え…か?」

「……みゅっ」

 

悲しげな表情ですぐに察せた。そうか、やっぱり帰る場所はあったんだな。

 

「……ちょっと待ってろ」

「みゅい?」

 

買った紫芋を小さい袋に移して、口をキュッと縛ってやる。それを紫の毛玉の前に置いた。

 

「好きだろ?それ。お前がいてくれて、楽しかったよ。寂しくなかった。一緒にいてくれてありがとうな」

「みゅっみゅっ」

「もし良かったら……また、遊びに来てくれよ」

「…みゅい!」

 

俺の手にポフッと身体を押し付けると、袋を咥え名残惜しそうに黄色い毛玉に前足でしがみついた。黄色い毛玉はアホ毛を再び回転させ、少しずつ中へ浮く。

 

「ぎゅんぎゅんぎゅーん!」

「みゅい!みゅあー!」

 

二匹はそのまま茜色の空へと飛び立って行った。なんだろう、たった一日だったのに寂しさが込み上げてくるな。

 

「わぁ」

「…お前も行くのか。というかどうやってここに来たんだよ」

「わぁ」

 

人面花はテーブルへ潜り込み、姿を消す。少しして、俺の横にあったテレビ台から生えてきた。

 

「……もうお前わかんない。まあ…じゃあな」

「わぁ……おにぎりをくれてありがとう」

「……?ッ?!しゃ、しゃべっ!」

「またきます」

「……あ、ああ。いつでも、えと、いらっしゃい」

「わぁ」

 

台へ潜り、人面花も姿を消した。恐らく思いもよらない力でアイツらの寝床へ移動したのだろう。

 

「……とりあえず飯食おう」

 

もう頭働かねえや。

 

糖分欲しいしずんだ餅でも食うか。

 

 

ゆかりさん達側の話いる?

  • その時その時の心情回
  • たまに主人公などに対しての心情回
  • このまま主人公視点のまま
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