じーさん家は不思議屋敷   作:サンサソー

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ピーンポーンパーンポーン

※注意※
この話には以下の要素が含まれます。
・ご都合主義
・ほのぼの初心者
・ホラーみたいでホラーじゃない
・ずんだ

こちらの注意事項にご不満の方は、戻るボタンを。それでもいいという方はごゆっくりお楽しみください。



ずんだ

何も考えられないまま夜が明けた。毛玉たちと人面花が家を去り、寂しさを覚える……暇などない。物思いに耽るよりも先にやることがたくさんある。

 

幾つもの部屋の照明を外し、買ってきた物に付け替えていく。その際に積もり積もった埃が舞いクシャミが止まらなくなった。マスクを付けてみるがなにぶん量が多い。容赦なくマスクの隙間から襲い来る埃と格闘しながら作業していく。

 

「…こんな小さかったっけ」

 

部屋を回る。つまりは家を回るってことだが、やっぱり記憶にあった家より小さく感じる。

 

一生懸命歩いてた長い廊下は、軽く10歩ほどすれば突き当たりに届く。たくさんある部屋はまるで迷路のようだったのに、今ではそこそこの数としか見れない。

 

俺はもう、ガキの頃と比べてデカくなっちまったんだとしみじみ感じる。

 

「……ここに住むのか、俺」

 

小さく感じるけど、どこか広くも感じる。うるさかったじーさんが居ないからだろう。そんで、今度は俺がじーさんの代わりになる。

 

「……なんか変な感じだな」

 

形容し難い、複雑な気持ちだ。そんな風に思いながらも手を動かす。やがて全ての照明を付け替えた俺は、今度は修理業者に電話をかける。

 

「もしもし、ちょっとトイレが壊れまして。はい、修理をお願いしたいです」

 

住所を伝え、時間の指定を話し合う。支払いは家でするらしいから、後で貯金を下ろしとかないとな。

 

「状況なんですけど、まず水が流れづらいです。出る量が少なくて、捻っても反応しない時がありまして。そんで台座なんですけど、はい、蓋を上げようとしたら一緒に取れます。座ったらガタガタ言ってズレるんで、そこも直して欲しいです」

 

これは昨日の夜に判明したことだ。初めて家のトイレを使ったんだが、蓋を開けようとしたら便座と一緒に後ろへ落ちた。どうやらちゃんとハマっていなかったらしく、状態からしてかなり前から壊れていたらしい。

 

なんとか便座をのっけようとしたんだが、なんとこの便座、割れて半分が無い。そのためかなり不安定な体勢で用を足すことになった。

 

そして俺の心に追い打ちをかけたのが肝心の水が流れない事。栓は開けてあるというのに、まったく水が流れない。何度かツマミを捻ると少しだけ出たから、何度も何度も捻ることになった。

 

じーさん、こんなのでどうしてたんだよ。変なところで面倒くさがりを出すんじゃない。

 

「はい、お願いします。失礼しまーす」

 

電話を終える。どうやら午後過ぎに来るらしいので、その間に金下ろして色々と買うか。

 

軽トラを出し、長い車の旅が始まる。銀行といったら町にあるので、田んぼとかのあるここら辺からだとかなり離れている。家出て10分程度で大抵揃う東京が恋しい…。

 

金を下ろし、そのままスーパーで良さげな買い物を幾つか小分けにして買った。これは手土産、これから付き合う……かもしれないご近所さんへの挨拶のためだ。

 

家に帰り、余計な物を下ろすと再び車に乗り込む。都会に住む者はわからないだろうが、田舎の近所はもはや近所ではない。

 

お隣さん家は徒歩数分、挨拶するにも車で行くのが当たり前。近所の家なんて、車でも数分かかる。そんなもの本当にご近所さんと言えるかは微妙かもしれないが、こちらの感覚で言えば、コンビニとかよりは近いんだから充分ご近所さんだ。田畑が接してさえいればお隣さんである。

 

「………………」

 

車で走っている時は、特段気をつけることなどない。田んぼや木々ぐらいしかないから見通しはいい。車とすれ違うことも稀。

 

そのため周りをゆっくり見る余裕がある。まあ田んぼしかないから土か青々とした畑や水田があるだけだが。

 

今向かっているのはお隣さん。畑は緑の葉っぱが覆っており、丁寧に世話しているのがよくわかる。鳥害用のカカシが立っていたり、同じく鳥害用のもう使わないDVDディスクが光を反射しながらぶら下がっているのは田舎の風物詩だろう。

 

門の近くで軽トラを停め、インターホンを押す。少しすると、若い女性の声が聞こえてきた。

 

『はーい、どちら様でしょうか?』

「隣に越してきた者です。一通り落ち着いたので挨拶に伺いました」

『そうですか。少々お待ちくださいませ』

 

インターホンが切れて少しすると、門が開き銀髪の綺麗な女性が顔を……顔を……。

 

「ようこそいらっしゃいました。私は東北家長女、東北イタコと申しますわ。あなたは……あら?どうしました?」

「え、あ、いえ。すみません、なんでもないです」

 

別に美人さんだから固まったわけじゃない。ただ、東北さんのご立派なものにたじろいだだけだ。

 

そう、この東北さん……ケモ耳が付いている!

 

「…私は中尾道彦と申します。東京から来たので何かと迷惑を掛けてしまうかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ。中尾さん……もしかして、和正さんの縁者ですか?」

「あ、はい。和正は私の祖父に当たります」

「そうですの……和正さんのことは、残念ですわ。あの方には畑のノウハウを教えてくださったりと、色々とお世話になりましたの」

「そ、そうなんですか?じーさんが…」

「はい。ですので、もし何か困ったことがあれば遠慮せず言ってくださいな。全面的に力になりますわ!」

「…ありがとうございます」

 

なんだじーさん。結月さんといい東北さんといい、慕ってくれる人結構いたんじゃねえか。ちょっと安心したよ。

 

「って、あらいけませんわ。お客様を門前に立たせたままお話に夢中になってしまうだなんて。どうぞ、お上がりになってくださいまし」

「あ、ありがとうございます。あとこれ、果物ですがよかったらどうぞ」

「まあ、ありがたく頂きますわ」

 

袋を渡して、家にあがらせてもらう。といっても、午後すぎには業者が来るから長居はできないだろうけれど。

 

東北さんの家はじーさん家よりもさらに大きく広い。しかし廊下を見れば掃除は行き届いており、清潔感が見られる。これを見習って、俺も家を大掃除するべきか。

 

「東北さんの家は立派ですね。掃除とかは大変そうなのに綺麗ですし」

「姉妹と3人で暮らしているので、手分けすればそう時間はかかりませんわ。それはそれとして、道彦さんは私を東北さんとお呼びになるんですわね」

「あ、はい。苗字の方で呼んだ方が失礼が無いかなと」

「お隣さんなのですし、長いお付き合いになるのですからお気遣いは無用ですわ。それに、先程も申しましたが家には姉妹がおりますの。苗字呼びだと誰を指すのかわかりづらいと思いますわ」

「ああ、なるほど…」

「と、居間に着きましたわね。私はお茶を入れてくるので少し離れます。恐らく末の妹が居るかと思いますが、仲良くしてあげてください」

「はい、ありがとうございます」

 

襖を開け中に入る……瞬間である。凄まじい爆発音が俺の鼓膜をぶち抜いていった。

 

「おっっ……ふ…」

「な、なんですのなんですの!?何か爆発しましたの!?」

 

家の奥へと消えたイタコさんが駆け戻ってきた。なんとか立ち直った俺は居間を見回し、元凶らしき人物を発見した。

 

「あぷ…あぷぷぷぷ…」

「……イタコさん、あの子は?」

「ちゅわ〜……ハッ!?え、ええと、あの子は東北きりたん。先程申した末の妹ですわ…」

 

大きなテレビの前で小学生程の女の子が目を回していた。どうやらゲームをしていたらしく、YOU DIEDの文字とその後ろで斧を持ったマッチョのおじさんが仁王立ちしている様が映っている。

 

きりたんと呼ばれた女の子の左手にはコントローラーを握り、もう片方の手はテレビリモコンの上に乗っかっていた。どうやら何かの拍子にテレビの音量を最大まで引き上げたらしい。

 

「イタコ姉さん!何かあったんですか!?」

「ちゅわ?ああ、ずんちゃん」

「ずん……ッ、ッ?!」

 

どこかで聞いたことがあるような声に振り向けば、いつぞやのずんだのあく…ずんだぐる……ずんだ好きの女の子がそこにいた。やめて、ちょっと近づかないでくれ少しトラウマなんだキミ。

 

「あれ?あなたは、あの時のおにいさんですか」

「ああえっとはいこんにちわ。隣に越してきた中尾道彦ですよろしくお願いします」

「えっと、大丈夫ですか?」

「大丈夫、はい大丈夫ですハハハ」

「ん……あ〜…んあ?」

 

意図せずカチカチになってしまった身体を必死に動かしていると、末っ子ちゃん……ええと、きりたん?が目を覚ましたらしい。

 

「あれ…ずん姉さま、誰ですかこの人」

「中尾さんだよ。お隣に引っ越してきたんだって〜」

「きりちゃんはなんで目を回していましたの?」

「突然後ろの襖が開いたのでびっくりしまして…その時にリモコンへ手をやってしまったみたいです。つまりはそこの中尾さんのせいです私は悪くありません」

「後でお説教とお仕置きね〜」

「ふぎゃあ!」

 

何やら罪を擦り付けられそうになったが失敗に終わったようだ。初対面の人によくそんなことできるな、きっと大物になるぞこの子。

 

「あ、そういえば中尾さん。ずんだ餅、お味はいかがでしたか〜?」

「え…あっ」

 

そういえば昨晩はずんだ餅を結局食べないままに寝てしまったんだった。ずんだ餅を見た瞬間、ずん子さんの顔が浮かんで食べる気が失せたというか…毛玉たちと人面花でちょっと疲れちゃったから、そのまま寝ても仕方ない……よね?

 

「ええと、まだ食べてない…です」

「そうですか〜……イタコ姉さん、きりちゃん」

「ちゅわ?」

「なんですかずん姉さま」

「スーパーで中尾さん、『あんこ餅』を買おうとしていたんですよ」

「……あの、なぜそんな事を2人に言う必要が…はい?」

 

右手をイタコさん、左手をきりたんに掴まれた。何やらいい笑顔をしている。それを見て俺も笑顔が浮かぶ。『引きつった』という言葉が着いてくるが。

 

「なんか嫌な予感がするんですけど」

「道彦さん?まだお茶を出せていませんでしたわ。ついでに我が家自慢のずんだ餅をご馳走しますわね」

「あんこ餅なんて目につかないくらい夢中にさせてあげますよ。それに私だけ怒られるそうですし、死なば諸共です」

「ま、待って。待ってくれ。ずんだ餅はちゃんと食べますから。家に帰ったら美味しく頂きますから!?」

「ならここでずんだ餅を好きになっちゃいましょう。そうすればもっと美味しく食べることができますよ」

「もうすぐ午後なんです!用事があるのでそろそろ失礼したいのですが!」

「大丈夫です、すぐに終わりますから、ね?」

 

 

 

 

その後、無我夢中にもがいて逃げていたら、いつの間にか家の前に来ていた。業者さんには顔色を心配されたが、なんとか押し通してやってもらった。

 

心身共に疲れたから昼寝したのだが、起きると彼女らの家に置いてきてしまった軽トラが家の前に停められていた。荷台には紙が一枚。

 

『諦 め ま せ ん か ら ね』

 

その日から、ずんだを見ると震えが止まらなくなりました。

 

ゆかりさん達側の話いる?

  • その時その時の心情回
  • たまに主人公などに対しての心情回
  • このまま主人公視点のまま
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