じーさん家は不思議屋敷   作:サンサソー

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ピーンポーンパーンポーン

※注意※
この話には以下の要素が含まれます。
・クリーチャー出現
・ほのぼの初心者

こちらの注意事項にご不満の方は、戻るボタンを。それでもいいという方はごゆっくりお楽しみください。


あかり草わぁわぁ事件

けだマキを頭に乗せ、お茶と果物を持って居間に入った俺が見たものは……。

 

「あ…ば……」

「わぁ」

 

頭にあかり草を生やして倒れている結月さんの姿だった。完全にホラーである。

 

「え、何これ。何が起こってるのこれ」

「わぁ」

「ああうん、いらっしゃい」

「ぎゅーん!!」

 

何もないかのようにあかり草は挨拶してくる。未だに状況が飲み込めていない俺の頭から、けだマキが飛び降りあかり草へと突進をかました。

 

「ぎゅん!ぎゅーん!」

「わぁわぁ!わぁわぁわぁわぁ!」

「あーこらこら。落ち着きなさいけだマキ」

 

暴れるけだマキを両手で掴み引き離す。ビークール、自分にも言い聞かせるように俺は言葉を紡いだ。

 

「結月さーん。大丈夫ですか、生きてますか」

 

結月さんの返事はない。だが震えた右手が親指を立てたのを見るにいつもの事か、はたまた元気なのか。

 

「あかり草…だったか?結月さんの頭の上で何してるんだ」

「わぁ」

「すまん、『わぁ』じゃわからんから前みたいに喋ってくれないか」

「わぁ」

「いや『わぁ』じゃなくて」

 

何度か同じお願いをするも帰ってくるのは『わぁ』である。粘るが答えは変わらなさそうなので断念する。

 

「あかり草、そろそろ結月さんの頭から離れてくれ。結月さんは掃除を手伝ってくれて今から休憩に入るとこなんだよ」

「わぁ」

「……ダメか?」

「……わぁ」

 

あかり草は曇り無き眼で俺をじっと見ていたが、小さく鳴くと結月さんの頭の中に潜って行った。とんでもない怖い場面だが、前に何かに潜って瞬間移動していたのを知ったからな、大丈夫だろうという気持ちが湧く。

 

「う…ううん…助かりました道彦さん」

「いえ…にしても凄いことなってましたよ結月さん」

「あはは…お腹が空くと人の頭に現れて催促してくるんですよ。ちょっと耳元で叫ばれたので…」

「ああ……」

 

なるほど。お腹が空いたから鳴く猫と同じようなものか。存外に可愛いヤツなのかも。

 

そう思いながらふとテーブルに目を向けると、お茶の横に置いていたミカンやリンゴが無くなっていた。まさか…あかり草、食べたのか?

 

「わぁ」

「いや『わぁ』じゃない……もう癖になってるんだが」

 

咄嗟に反応してしまった。『わぁ』には何か中毒性でもあるんだろうか?

 

それにしても、声は聞こえたが当の本人……本草?はどこにいるんだろうか。姿は見えないぞ。

 

「ふぷ……クッ…」

「ぎゅ…ぎゅぎゅん……」

「……何か」

「いえいえ何も…ブフッ!」

「ぎゅん……ぎゅっ!」

「何か知ってるな言えよ言ってくださいお願いだから!」

 

だんだん怖くなってきた俺は結月さんとけだマキに頼むが、一人と一匹は必死に吹き出そうとしているのを堪えている。つまりは俺に何か異変が起きているのだろうが、俺自身違和感は無い。

 

「ちょっと…ふふっ、失礼しますね」

「……どうぞ」

 

結月さんがスマホを出して俺にカメラを向ける。どうやら俺に起こっていることを写真に撮って見せてくれるようだ。

 

「…はい。取れましたよ」

「どれどれ……あ?」

 

頭にあかり草が生えているのかと予想していたが、それは生ぬるかった。

 

頭に生えていた。3輪ほど。さらには肩に2輪ずつ、背中には巨大な顔面を持つあかり草がいる。

 

例えるなら『狂気』を題材にした映画を鑑賞した日に見る悪夢だろう。それもだいぶファンシーな。

 

「わぁ」

「わぁ」

「わぁ」

「「わぁ」」

【わ ぁ】

 

「……わぁ」

「え、ちょっと道彦さん?道彦さん!?」

「ぎゅんぎゅーん!?」

 

彼女らの声を最後に、頭がバグった俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

……ん。なんだ。

 

頭が柔らかい物に乗せられてるのか…それに、なんだかいい匂いもする。

 

「ん……」

「あ、道彦さん。気が付きました?」

「……ん!?」

「あ、ちょっ」

「「オ''ッ?!」」

 

目が覚めたら結月さんに膝枕をされていた。驚いた俺は勢いよく上体を起こしてしまい、俺を覗き込んでいた結月さんと頭をぶつけてしまった。

 

結月さんは仰け反り俺は結月さんの膝に叩き戻された。柔らかい感触は全て痛みが持っていき、『美人に膝枕をされる』という男どもの夢は粉砕された。

 

「ず、ずみません…」

「だい、じょうぶでず…」

「ぎゅーん」

「わぁ」

 

俺はとりあえず起き上がると、左手で額を押えながら右手で太ももを思い切り叩いた。

 

「フンッ!」

「わぁ!?」

「ぎゅん!?ぎゅーん!」

 

気でも狂ったと思ったのか、驚いたけだマキが俺の腹に突進した。こ、これはこれでいい痛みだ。

 

「け、けだマキ。大丈夫だから、痛みを和らげるためだから」

「ぎゅ、ぎゅーん?」

 

何か痛みを感じた時、それと同等の痛みを得ることで和らげることができる。これを応用すれば殴られても無表情のままなんてことも可能。高校でラグビーをやっていた時は何度もお世話になった。

 

頭をぶつける痛みはズキズキと芯に響く。そこを瞬間的な痛みが大きい平手による一撃で痛みを塗り替えたというわけだ。

 

しかし知らない者からしたら急に自分を叩き始めるヤバい奴である。ここは一言入れた方が良かったか。

 

「けだマキ、心配してくれてありがとな。ふわふわ」

「ぎゅーん」

 

礼を述べると胸を張るけだマキ。結月さんよりもいち早く痛みから復帰してふわふわの毛並みを堪能していると、あかり草が俺の手前に生えてきた。

 

「わぁ……」

「…大丈夫、気にしてない。ただ少しだけ自重してくれよ」

「分かりました」

「……やっぱり喋れるんじゃないか」

「わぁ」

「…うん、もうそれでいいや。わぁ」

「ぎゅん!」

「あ、すまん。手が止まっていたな、よしよーし」

 

そうやって戯れていると、痛みから復帰した結月さんがヨロヨロとこちらへ戻ってきた。

 

「もう遅いですし、私たちはこれで失礼しますね」

「え、ああもうこんな時間ですか。良かったら夕食食べていきませんか?」

「わぁ!」

「ぎゅーん!」

「……けだマキちゃんとあかり草も乗り気のようですし、お言葉に甘えてもいいですかね…?」

「任せてください」

 

台所に立ち冷蔵庫から野菜類と肉、そしてパックに入れたご飯をレンジに入れる。流石に炊く時間は無いからな、そこはご容赦願おう。

 

「さて、作るか。カレー」

 

 

 

 

道彦が台所で腕を奮っている頃、居間では結月ゆかりによるお説教が行われていた。

 

「ちゃんと反省してます?」

「わぁ…」

「先程は道彦さんが優しかったから事なきを得たものの、本当ならブチ切れられても文句は言えないんですからね?」

「……わぁ」

 

しょぼんと顔を俯かせているあかり草に見かねたのか、けだマキは助け舟を出そうとする。

 

「ぎゅんぎゅーん」

「いいえ、甘やかしてはダメです。いや、甘やかせ過ぎました。罰として一週間はご飯のメインディッシュ抜きです」

「わぁ!?わぁわぁわぁわぁ、わぁわぁわぁわぁ!」

「抗議してもダメです。今回ばかりは情け介入の余地はありません」

「わぁ……わぁ…」

「ぎゅーん…」

「……そういえばあなたにも言いたいことがあります」

「ぎゅん!?」

 

アホ毛でポンポンとあかり草を慰めていたけだマキ。しかし結月ゆかりの雷は留まることを知らなかった。

 

「そもそも道彦さんに甘え過ぎです。ほとんど初対面じゃないですか」

「ぎゅーん…」

「そんなにGから救ってもらえたことが嬉しかったんですか?」

「ぎゅん!?」

 

けだマキの脳裏にありありと浮かび上がる記憶。ゆかりがインターホンを鳴らしても反応がなく、何かあったのかと偵察することになったけだマキ。いざ家に入って早々に黒光りするヤツに襲われた。

 

人間にとっては足よりも小さい、普通の虫よりは大きいがまあ小さいと言える。しかしけだマキにとっては人間で言う大型犬並の大きさなのだ。そんなものが襲ってきて、平気でいられる者などいないだろう。

 

そこを颯爽と救ったのが道彦である。この件がきっかけでけだマキは全幅の信頼を寄せていたのだ。もはや道彦の頭はけだマキのスペースになりつつある。

 

「別にどうしようと構いませんが、後で後悔しても知りませんよ。恥ずかしくなるのはあなたなんですから」

「ぎゅーん…」

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。できましたよ〜って、何やってたんです?」

「ちょっとお説教をしていました」

「ははは、程々にしてやってくださいね」

「道彦さんも甘いですよ。ちゃんと言わないと為になりません」

「ううん……」

 

正直、こんな可愛い子らを怒るのは忍びない。やはり甘いのだろう、その辺は結月さんが適任らしい。

 

「まあとりあえず、カレーができました。どうぞ」

「ありがとうございます」

「けだマキとあかり草にはおにぎりな」

「ぎゅーん!」

「わぁ!」

 

目の前に味付けを変えたおにぎりを数個置けば、一匹と一輪は目を輝かせ今か今かとその時を待っているようだ。

 

「それじゃあ頂きましょうか」

「そうですね」

「「いただきます」」

「ぎゅーん!」

「わぁ!」

 

おにぎりへかぶりつくのを見て、微笑みながら俺もカレーを口に運ぶ。思えば、誰かと飯食うなんて久しぶりだな…。

 

「ん、美味しいです。料理もできるんですね」

「まあ一人暮らしだったもので軽く自炊は。お口にあったようで良かったです」

「……少し思うことがあるんですけど」

「はい?なんでしょうか」

 

結月さんが匙を止めてこちらを見る。何か大事な話か?俺も手を止めて聞きに徹した。

 

「思えば、初めて会った時と言葉遣いとかが違うと思いまして」

「あ〜……あの時はすみませんでした。色々といっぱいになっちゃってたみたいで、つい当たりの強い話し方を…」

「いえ、いいんです。でも、やっぱりあの時のように気兼ねなく話したいと思ったんです」

「あー……粗野ですが、それでもいいなら」

「では手始めに、私のことはこれから下の名前で呼んでもらいましょう」

「なぜ!?」

「だって、私だけ下の名前で呼ぶのは不公平だと思うんです」

 

たぶん和正じーさんと区別するためにそうしたんだろうけど……なら不公平、なのか?わからん。

 

「……そんじゃ改めて。これからもよろしく、ゆかりさん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「…ゆかりさんは敬語外さないのか」

「もうこれで慣れちゃってるんです。気にしないで大丈夫ですよ」

「……うん、そうする」

 

少しむず痒いけれど、頼れる人がいるのはいい事、だな。

 

その後は何事もなく食事を終えた。久しぶりに囲った誰かとの食卓。それは存外心地よく、カレーの味も引き上げてくれたと俺は思う。

 

 

 

 

「ボロが出ますね」

「ぎゅーん」

「そのうちはっちゃけますよあの人」

「ぎゅんぎゅーん」

「そこ、うるさいですよ」

 

 




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ゆかりさん達側の話いる?

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  • たまに主人公などに対しての心情回
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