仮面ライダーミスリックサーガ   作:式神ニマ

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今回でSaga5は終了です。

そういえば…
文中で「黒妖石」と書いておりますが、誤字ではありません。
黒曜石をモチーフにした架空素材です。


Saga5 ヴァレット~影の刃~③

◇◇◇◇◇

「こいつ等は…一体何なんだ…?」

「えーと…俺も実物を見た訳じゃないんだけど…多分『ハルピー』だと思う。でもそれにしては…」

 

 容器の中に収められた怪物たちは、フクロウの様な寸胴体形に蝙蝠の様な羽と足、そして人の顔が植わった様な気色悪い姿をしている。レイトもアイリスが持っている図鑑の挿画でしか見た事が無いのだが、特徴を総合するに『ハルピーデブリス』ではないかと思えた。

 ハルピーはビーストクラスタに分類されるデブリスの一種で、普段は山頂等の高地で暮らすが、よく人里に降りてきては農作物や家畜を食い荒らしていく事でも知られている。恐らく飛行可能タイプのデブリスとしては最もポピュラーな存在だと言われ、実際体の2倍以上はあろうかという大きな羽根を持っているが、ここにいるハルピー達にはそれに加えて鉤爪を備えた巨大な“腕”が生えていた。これは図鑑では見なかったものだ。

 

 腕が生えたタイプなのかと思ったが、どうもそうではない気がする。強いて言うなら、外科処置で無理やり接合されたかの様な———?

 

「…まさか…ここは人工的にデブリスを生み出す工場なのか…?」

「…っ⁉…しかし…一体誰が…?」

 ゼオラは問うが、心当たりがないでもなかった。数日前に遭遇した人間を人狼化させるライドラッグに、それを作り出したと思しき謎の戦士———確か『ワールドラーグ』。確か彼らは自らを何と名乗っていたのだったか———。

 

 転瞬。

 頭上からドン!と音が響き、僅かに部屋が鳴動する。レイト達が頭上を振り仰ぐと、天井の一部がゴゴゴ…と音を上げて開き、強烈な光が差し込んできた。

 

「見つけたっ!おーい、2人とも大丈夫?」

「マヤ?」

 

 久方ぶりの光に目が順応すると、穴の奥からひょっこりとマヤの童顔が覗いているのが見えた。顔中に笑みを貼りつかせて「いたよアイリィ!こっちこっち!」と叫ぶのも聞こえた。どうやら2人が先に出口を見つけてくれた様だった。

 

「レイト、ゼオラ!2人とも無事なの?」

「アイリィ…!大丈夫。かすり傷くらいは負ったけど、2人とも無事だよ」

「そう、良かった…。待ってて、いま縄ばしごを降ろすから」

 天井の穴から縄ばしごがスルスルと落ちてくる。縄ばしごはユラユラと頼りないが、この状況下では天から降ろされた蜘蛛の糸も同然だ。梯子を昇りきり、外の空気を吸った時には再び生まれ変わった様な清々しい気さえした。

 

「お嬢…ありがとうございました。この様なご足労をかけてしまい、大変申し訳ございません」

「大丈夫よ。それにお礼はマヤに言って。彼女とファミリア達が出口を見つけてくれたお陰だから」

「そういうこと!…でもさ、この地下の妙な気配は一体なに?」

 マヤが怪訝そうにダイロク器官をピコピコさせながら、地下を覗き込む。そういえば地下で見た異様な光景を説明しなければ、とレイトが口を開きかけた時。

 

 先程、マヤ達は地下への入り口を開錠する為に、小型の爆弾を使用していた。それによって部屋に走った振動が、偶然部屋に設置された機械のスイッチを入れてしまったのか——詳しい事は不明だが、突如として部屋に置かれた機械が起動し、それが繋がった容器群にエネルギーを送り込んでいった。

 そしてエネルギーは溶液の中に沈んでいた怪物たちへと注ぎ込まれ———無数の改造ハルピー達が仮死状態から蘇る事となった。

 

「キヤアァァァァァッッッッッ!!!!!!」

 

「…っ⁉一体なにが…⁉」

「危ない!みんな離れて‼」

 

 突如膨れ上がった異様な気配を察知し、レイトたちは慌てて地下への入り口から離れる。転瞬、地面を突き破ろうとするかの様な勢いで、無数のハルピー達が外へと飛び出してきた。黒い体毛で覆われた鳥型の怪物があっという間に夕日に染まりつつあった空を覆い隠してしまった。

 

「なんなのコイツ等…⁉」

「分からないけど…このままじゃマズい…‼」

 ハルピー——時に人にすら牙を剥く獰猛な有翼型の怪物たちが、鋭い牙を剥きレイト達を頭上から睥睨していた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

「変身!」

〈ミスリックナイツ‼〉

 

 頭上に雲霞の如く広がるハルピーの群れから数匹が、地上のレイト達に向けて襲い掛かってくる。レイトは即座に仮面ライダーディライトへと変身すると、ソードモードに変形させたトランスラッシャーで怪物たちに応戦した。降下してきた勢いのままに最初の2匹は胴体や羽を切り裂き一瞬で絶命させたが、3匹目は刃を巧妙に躱すと、腕を振り上げてディライトの頭部へと組みついてきた。

 

「くっ…!コイツ…‼」

 ディライトはハルピーを引きずり降ろそうともがくが、腕に設えられた爪はディライトの金属装甲(マテリアメイル)すら貫きそうな程に食い込んでいる。そのままディライトの頭部を嚙み砕こうとハルピーが口部を大きく開くが、その前に胴部へアイリスのパーラケインが深々と突き立てられた。ハルピーは悲鳴を上げて、そのまま地面に落ちて絶命する。

 

「何なのよ、これ…。こんな腕が生えたハルピーなんて見た事…」

「この地下の施設に研究室みたいな場所があるんだ…。多分そこで作られた改造タイプなんだと思う」

「キメラだっていうの?そんなバカな…」

 

 合成獣(キメラ)。それはかつて対デブリス対策の1つとして研究されていたものだった。

 複数のデブリスや獣をかき合わせる事で、最強の生物兵器を作れはしまいか?そんな狂気がかった思考と共に、無数の生物実験が繰り返されたらしいが、やはり生体同士の外科的な接合は難しく、またあまりに危険性が高いと判断された為、結局のところ日の目を見る事はなかった、と聞く。

 そんなモノが一体なぜここにいるのか?と気にならないではなかったが、今はそれどころではない。長らく容器に押し込められ、腹を空かせているハルピー達は地上の4人を獲物と定めた様だった。頭上の群れから1匹また1匹と怪物たちが地上へと襲い掛かってきた。

 

 だがこちらに狙いを定めてくれる分には(むし)ろ好都合である。周囲に徒に被害を広げないで済むというものだ。レイト、アイリス、マヤ、ゼオラはそれぞれの武器を取り上げ、襲い来る怪物たちを迎え撃って行った。

 

 腕を取り付けられ、攻撃力が大きく向上している改造ハルピーだが、1体1体はそれ程脅威ではない。だが、如何せん数が尋常でなく多い。その利を生かしてかハルピー達も一気には攻めて来ず、少しずつ攻撃を繰り出しながらこちらの消耗を狙っているかの様だった。

 

「クソッ…鳥頭のくせに意外と賢いな…」

「だったら…!こっちから直接殴り込みに行ってやる!」

 痺れを切らした様にレイトが叫び、ベルトのライドラッグを素早く交換した。

 

〈ウインド!オリハルコン!〉

「再錬成!」

〈オールセット、ディライト!ウインドオリハルコン〉

「よぉし!見てろよ!」

「て、おいちょっと待て!無茶をするな!」

 

 変幻自在の金属・オリハルコンの性質を持つ腕が上空のハルピーの群れへと伸ばされ、その内の1体をむんずと捕まえると、そのまま腕が戻ろうとする反動を生かしてディライトが上空へと跳躍した。風圧を放つ事でジャンプ力を強化するウインドアーマムエレメントの性質もあり、ディライトは瞬く間にハルピーの雲の中へと到達した。手近なハルピーを素早く切り裂き、即座にまた手を伸ばしてスイング移動を行い、次の敵を切り裂くを繰り返していく。

 

 ハルピー達も空を飛べない人間が自分たちにテリトリーに直接踏み込んでくるとは想像もしていなかっただろう。しばらくは予想外の闖入者に群れは混乱していた様だったが、デブリス達もそうそうやられっ放しで終わる筈もなかった。

 

 レイトが見誤っていた事が2つ存在する。1つはこの改造ハルピー達は決して腕を取り付けられただけではない。腕を操る為に強化された胸筋はハルピー達が羽ばたく力も大きく強化し、飛行速度を大きく向上させられていた事。そしてもう1つが、通常10体程度の群れでしか行動しないハルピーと異なり、この改造タイプはその数倍の数で行動も出来る様に統率力を大きく強化されていた事だ。

 

 ハルピー達の一部が群れから離脱すると、即座に猛烈な勢いでディライトへと突撃していった。ディライトは慌ててガンモードに変形させたトランスラッシャーで応戦するが、弾丸の如き速度で突っ込んでくる群れの勢いでそれで消しきれる筈もない。スイング移動で即座に回避を試みたが、足先を引っかけられてディライトは空中で大きくバランスを崩す事になった。その機を敵も見逃してはくれない。ハルピーの一群が再び大きくスピードを上げ、ディライトへの再攻撃の準備に入っていた。

 

「あのバカ…!だから無茶をするなと…!」

「あれ…流石にマズいよね…」

 ゼオラが歯がゆそうに吐き捨てた。ハルピーの群れは遥か上空におり、ここからでは満足に支援も出来ない。いかに強い力を持つディライトと言えども、空中ではやはり飛行タイプの怪物達に分があるのだ。

 

「こっちにも飛ぶ手段があればいいんだけど…。でもトリちゃんの力じゃディライトの体を支えきれないしなぁ…」

 マヤが手のトリーガアローを指し示す。ファミリアモードに変形させれば、確かにあのハルピーに追従できるくらいの速度は出せるが、如何せん攻撃力に乏しい。何か援護になりそうなものを運搬するのがやっとだろう。

 

「…レイザードナイツなら、あいつらを一網打尽に出来るのでは?」

「ハルピーは水属には強い耐性があるから無理でしょうね…。何か役に立ちそうなものは…」

 アイリスが手持ちの霊薬をいくつか取り出して思案するのに合わせて、ゼオラも腰の物入れを弄る。入っているのは数種類の爆弾と手裏剣、そして予備の苦無が数本。トリーガアローに爆弾を運ばせる手も考えたが、あの数の前では焼け石に水だろう。何かいい手はないものか———。

 

 次の瞬間、ふとゼオラの脳裏に閃くものがった。

 

「お嬢、これを使えませんか?」

 その手には黒紫色に輝く、黒妖石の苦無が握られていた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 かつて天高く飛び過ぎた勇者は、その羽を太陽に溶かされ地に落とされた———という話を聞いた事があるが…今の自分が正しくその状況だ。…否、まだ落とされてはいないから極めて近いというべきか。

 

「…流石に…そろそろマズいか…⁉」

 現在はスイング移動でなんとか空中に留まっていられるが、そろそろ体力がマズい。一旦地上に降りて体勢を立て直したいところだが、敵もそれを許してはくれないだろう。今はギリギリ敵の突進攻撃の直撃は回避できているが、あれを喰らったらディライトといえどもひとたまりもないだろう。

 

 敵もそれを分かっているのか、何度目になるのかも分からない突進攻撃をまた繰り出してきた。ディライトは跳躍してそれを躱すが、降り積もった疲労の影響か敵の対応力が上がったのか、とにかく伸ばした腕は何も掴めずに空をかく事になってしまった。

 

「…っ!しまった…っ‼」

 

 空中に放り出されたディライトはそのまま地面に向けて自由落下を開始する。慌てて手を伸ばそうとするが、落下状態でそれをするのは相当に難易度が高い。こうなれば風のエレメントを全開に噴出して落下の衝撃を少しでも緩和するしかないが、地上までの距離はおおよそ150ハンズ。果たしてそれで無事で済むだろうか?

 

『レイト!掴まって!』

「マヤ⁉」

 だが戦慄するディライトへ向けて、青い金属製の鳥が———トリーガアローが飛翔し、語り掛けてきた。ツールド・ファミリアはマヤの声を伝導する事が出来るのだ。ディライトは迷わずトリーガアローのグリップを握った。完全とはいかないが、ディライトの落下速度が僅かに緩やかになった。

 

『それからコレ、ゼオラからだよ。役に立つかは分からないけど、使ってみろって』

 トリーガアローがディライトの手に薬瓶を放る。ややデコボコした表面の黒紫色のライドラッグで『OBSIDIAN』のラベルが貼られている。今まで見た事がないマテリアルライドラッグだった。

「…わかった。信じるよ、ゼオラ…!」

 ディライトの手がベルトのオリハルコンライドラッグを外し、黒紫色の霊薬を新たに装填した。

 

〈オブシディアン!…ファンタスティック‼飛揚のレシピ!〉

「きた!ファンタスティックヒット!」

 

 レイトの心が躍る。この状況を打開し得るかもしれない手を引けた自分の幸運を———否、ギリギリまで抗い続けてくれた仲間達へ感謝しながら、レイトはベルトのスイッチを押し込んだ。

 

「マテリアルチェンジ!」

〈オールセット、ディライト!〉

 だが、ベルトが叫びを上げたのと、ディライトが地上へと落ちたのはほぼ同時の事だった。いくら強靭なディライトと言えどもあの高度から落下して無事で済むとは思えない。舞い上がった土煙を呆然と見上げながら、アイリス達は息を飲んだ。

 

 しかし。

 

〈ブロウアップニンジャ!ウィンディアナイツ‼〉

 

 突如として濛気を突き破り、人型の影が空中高く飛び出した。新しい姿となったディライトである。緑色の風のアーマムエレメントに、黒妖石の性質を宿した黒光りするアンダースーツ。2枚のエレメントタービュラーを翼の如く靡かせ、風のファンタスティックヒットは何もない空中に、しかし超然と佇んでいた。

 

 ディライト第4のファンタスティックヒット。その名も『仮面ライダーディライト ウィンディアナイツ』。

 付加された特殊能力は空中滞空能力『ウィンディアジャンプ』である。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 巻き上がる風のエネルギーがまるで自分の体を押し上げてくれている様だった。黒妖石の力を宿した黒いマテリアメイルは今までのどの形態よりも軽く、それもあって体中が妙な浮遊感に包まれている。

 

「…て、空を飛んでるんだから当然か…。よぉし、行くぞっ‼」

 ディライトが足元に気合を込めると、そこから猛烈な風圧が解き放たれ、ディライトの体を上空まで加速させた。ウィンディアナイツの滞空能力は決して無限という訳ではないが、先程のスイング移動に比べれば遥かに自由度も高く、スピードも速い。これならばハルピー達の飛行性能にも十分に追従できる。

 

「切り捨てぇ…ごめぇぇんっっ‼」

 高速で飛来したウィンディアナイツがすれ違いざまにハルピー数体を纏めて斬り飛ばす。胴体を寸断され地面に降下していく怪物には目もくれず、ディライトは次のターゲットに向けて一気に体を加速させた。

 アローモードに変形させたトリーガアローを構え、雲霞の如き改造ハルピーの群れに光矢を放っていく。衝撃波を纏った風の矢が怪物達を貫き、その体を四散させていった。

 

 だが、敵もやられっ放しでは終わらない。ウィンディアナイツを撃ち落とすべく数十体の群れがディライトへと殺到してくる。ウィンディアナイツの体は軽量な分、防御力においては若干劣る。流石にあれを喰らってはひとたまりもないが———。

 

 ディライトは左手に持ったトリーガアローへ自身の錬真力を流し込む。すると、トリーガアローの翼が折り畳まれ、その形状がブレード状に変形する。そして、その柄をトランスラッシャーのライドラッグスロットへと装填させ———トランスラッシャーの形状が2つの刃を備えた薙刀型『ツインブレードモード』へと変形した。

 

 ディライトが自信の前でツインブレードを旋回させ、突撃してくるハルピー達を迎え撃った。回転する刃に肉体を千々に引き裂かれ、数十体のハルピーが一気にその命を散らした。正面戦闘では敵わないと踏んだのか、残りのハルピーがディライトから距離を取りつつ周囲を取り囲んだ。このまま四方八方からディライトを攻撃しようという腹なのだろうが、それ位は想定済みだ。

 

 ディライトが体に気合を込めると、手足と肩部に備え付けられたカッターが大きくせり出し、周囲のハルピー達に向けて解き放たれた。風のエレメントを纏い、速度と切れ味を向上させた小型の刃は空を縦横無尽に飛び回り、怪物達を次々と切り落としていった。

 

「おぉ、まるで宇宙ブーメラン!ウルトラすげぇっ‼」

 ディライトが再び加速し、無数のカッターと共にハルピーの群れを蹴散らしていく。射出されたカッター————『ブラッキーエッジ』はディライトが発する錬真力に反応し、自由自在に空を飛ぶ事が出来る。合計6枚の黒妖の刃が次々と改造ハルピーの肉体に食い込み、地へと叩き落していく。衰えることなく、立ちはだかるもの全てを飲み込んでいくその様は正しく吹き荒れる暴風の様だった。

 

 そして、瞬く間に空を覆いつくしていた怪物の大群はその数を減らしていった。

 

「これで…止めだっ‼」

 残った十数体の群れに向けてディライトが加速する。飛行中ずっとエレメントを放出している所為で、残りの活動時間も短い。早々に決める必要がある。ディライトはツインブレードモードのトランスラッシャーの引き金を強く押し込んだ。

 

〈ヴァリアントハリケーンスライサー‼〉

「せぇりゃぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 エネルギーがチャージされ、刃に乗せた暴風が生き残ったハルピーへ向けて降りぬかれる。吹き荒れるエレメントエネルギーのハリケーンに体を切り裂かれ、ハルピー達が次々と四散していった。

 後にはそんな喧騒など露ほども知らない表情で、夕映えに染まった空だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 改造ハルピー達が飛び出した衝撃の影響なのか、地下の研究施設は無惨にも崩れ去り、調べる事は困難だった。元々建物が崩れやすかったというのもあるのだろうが、アイリスには何らかの隠蔽措置が働いた様にも思えたのだが———全てが瓦礫に沈んだ今、何を言っても憶測でしかない。

 

「これもあいつら…『デブリーター』の仕業…なのかな…?」

 レイトが呟く。かつてベアカンファーで自分たちの前に立ち塞がった、人間を怪物化させる霊薬とそれの実験データを取っていた謎の戦士。やはり憶測でしかないのだが、禁じられたキメラの研究に手を出している者が他にいるだろうか?

 

「改造デブリスなんて…解き放たれれば、一体どれだけの被害を出すか想像もつかないのに…」

「あぁ…こんな事した奴ら…絶対に許さない…!」

「それに…言い辛いですが…気になる事はもう1つあります」

 ゼオラが重々しく口を開いた。その目は目の前の建物へと向けられていた。

 

「そんな禁断の研究が…一体なぜ…神聖教会の施設(・・・・・・・)にあったのか(・・・・・・)…という事です」

 

 一同の間に重い沈黙が落ちた。特にアイリスは僅かに顔が青白くなっている。

 ゼオラの言う通り、ここはパラディンの母体たる神聖教会の修行院だった筈なのだ。だが、その地下には改造デブリスを生み出す施設が眠っていた。

 

 それではまるで。

 こんな事をした者たちと、神聖教会が繋がっている(・・・・・・)かの様な…?

 

(違う…。そんな訳…ないわよね…)

 

 浮かび上がった考えをアイリスは胸中で強く否定した。たまたま教団の施設だった場所に作られただけという可能性もあるし、結局はこれも憶測でしかないだろう。

 

 だが、胸の奥にわだかまった疑念は、いつまで経っても離れてはくれなかった。

 

 




次回予告
レイト達が不毛の大地で出会ったのは、服わぬ民たちと彼らが崇める謎多き神。
数多の涙と流血の歴史の裏に秘められた彼らの秘密とは?
傷ついた魂に、勇者が示せる道はあるのか?

Saga6『みなもと~泥の谷のカラバ~』
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