仮面ライダーミスリックサーガ   作:式神ニマ

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前回のあらすじ

デブリーターの襲撃を受け、アイリスの父が命を落としてしまう。その仇討と敵の正体に関する情報を掴む為に、ドミングス領パストールへと踏み込むレイト達だったが、そこに待ち構えていたのはデブリーターへと変貌したゼオラだった。マンティコアデブリーターの猛毒を受け、レイトは生死の境を彷徨う事となる。

そして一方、アイリスはアトラークによって捕らえられてしまう。
「神聖騎士の立場を騙った」という容疑によって———。


Saga13 ブートアップ~逆襲の勇者~①

◇◇◇◇◇ 

 1羽の大鷲が双翼を広げ、勇壮と東の空へ駆けていく。鬱蒼とした霧に包まれ、一寸先すら見通せないほど払暁の光が乱反射する空気の中であっても、まるでどこに行けばいいのか分かっているかの様に。

 その姿を追う様に窓を開け、テラスへと足を踏み出した。湿気を帯びてひんやりとした空気が肌に突き刺さってくる。石造りの手摺に阻まれ、直ぐにそれ以上進む事も出来なくなってしまう自分とは異なり、猛禽はやがてミルク色の霧の奥底へと吸い込まれて姿を消していった。空しく空をかくだけに終わった指を眺めながら、暫し何を掴もうとしたのかさえ思い出せない空白がアイリス・パニディエラの思考を支配した。

 

 手摺から僅かに身を乗り出し、真下を覗き込む。遥か高所に設置されたこの尖塔からは、それなりの大きさを誇るこの砦の城壁や城門もミニチュアかなにかの様だ。まるで木の上の鳥籠に押し込められている様に、アイリスには思えた。

 …否、その例えは正確ではない。ここは牢獄だ。罪過を犯した自分を封じ込める、空の流刑地。そのまま地面へと吸い込まれそうな感覚を味わったアイリスは、ふらつく足取りで部屋の中へ取って返した。

 

 絨毯のふわふわした感触が足元から伝わってくる。下手をすれば気が抜けてしまいそうな体を精一杯の意志力で律し、部屋中を見渡す。中央の丸テーブルには昨日からの食事が手つかずで放置されている。品数といいその品質の良さといい、とても罪人に供されるものとは思えない。上品な作りのクローゼットやら豪奢な天蓋付きベッドやら、それはこの部屋の調度品全般にも言える事だ。

 

 一体どういうつもりなのか。自分をこんなところに押し込めた相手の真意を考えようとした矢先、この部屋唯一の入り口である扉がコンコンとノックされた。どうぞ、と反射的に声を上げかけるが、今の自分が言ってもいいものだろうか?考えあぐねている内に扉が開き、「失礼するよ」と1人の長身の男が入り込んできた。

 

 金糸での刺繍が施されたシドニア軍上級将校の制服。腰には見事な拵えのサーベルが宛がわれているが、豪奢なのは外面だけで恐らく軽い代わりに強度もない装飾剣の類だ。指を彩る宝飾の数々と併せて、とても軍人という風には思えない作り物じみた細面に不遜な笑みを貼り付けた男の姿。アイリスを捕らえ、この場所に幽閉した張本人、シドニア帝国第一王位継承者アトラーク・フォン・シドニアその人だった。

 

「おはよう、アイリィ。よく眠れたかい?…おや、食べてないみたいだね。大丈夫だよ、毒なんて入れてないから。僕が君にそんな事をする筈がないだろう?」

 手が付いていない食事を一瞥し、アトラークが端に置かれたワインボトルを手に取る。グラスへ注ぎ、試す様に一口含んで見せる。

 

「ほらね?アネスタのロイデニヨン産だ。覚えてるかな?10年前、僕と君が初めて出会った夜もこのワインが食卓に並ん———」

「…どういう事なのか、説明して頂けますか?」

 アイリスが皇子の陶酔する様な弁舌を遮る。王族の話を遮るなど不敬の誹りを受けても仕方ないが、そんな事を今更気にする必要もない。

 

「私は国家反逆の罪で拘束された筈……ですよね?それがこんなところに留め置かれなければいけない理由はなんなのでしょうか?」

「おや、不服かい?少なくとも牢よりは快適だと思うのだけれど?」

「そういう問題じゃありません‼」

 

 リンネで国家反逆を問われ、拘束されたアイリスは程なくしてこの場所に連れてこられたのだ。目張りをされた馬車で護送されてきたので正確な場所は不明だが、自由な出入りは封じられているとか言え、少なくとも罪人を留置して置く様な待遇ではない。

 誰に対しても平等であれかし、というのはアイリスの信条の様なものだが、これは自身に対しても当てはまる。今も法の下に裁きを受けている者がいると言うのに、自分だけがこんな場所で遇されているなど、全くもって筋が通らない。睨みつけるアイリスをアトラークが「やれやれ……」と肩を竦めていなす。

 

「その口ぶりだと……パラディンを騙った事は認めているんだね?」

「…………っ」

 

 『パラディンを騙った』

 その言葉がアイリスの心身をいたぶる様に這い回っていく。

 違うと言い切れたらどれだけ楽だろうか?だが、そんな事はできない。

 

 目の前の男が言う通り。

 『神聖騎士 アイリス・ルナレス』など、()()()()()()()()()()()()()

 

 言葉に詰まるアイリスを満足気に見つめ、アトラークが懐から注射器の様な器具を1つ取り出した。リンネで接収したあの届け出のない霊薬だ。

 アトラークが徐に針を自身の手の甲に突き刺す。すると、その場所にグリフォンを象ったシドニア王家の紋章がゆっくりと浮き出てきた。

 

「便利なものだね。任意の場所に思い描いた模様を出現させる事が出来るとは……。これで、あの教会の無駄に厳格な審査を突破したのかな?」

「……はい。その事は昨日も説明したと思いますけど」

 

 神聖騎士に与えられる多くの特権を求め、その立場を騙ろうとする者は後を絶たない。だからこそ、その真偽を問う審査は厳しくあらねばならない。特にパラディンの証たる紋章についてはただ手書きで描けば突破できるほど浅はかではない。

 

 あの薬が生み出されたのは全くもって偶然だった。リンネの住民に頼まれ、皮膚のシミを落とす薬を開発していた最中に、調合の誤りによって出来てしまったのがきっかけだ。投与された薬が人の錬真力に反応し、思い浮かべる形となって皮膚組織に出現する。それは数百もの偽装工作を見破ってきた教会の聖任者にも見破れない程に精巧なものだった。

 

 だからこそ、騙す意図をもってあの薬を作った訳ではなく、自分の神聖騎士としての立場も教会から与えられたものである事は間違いないのだが……何を言っても言い訳にしかならない。

 

 この薬を生み出した時。

 もしかしてこれならば、パラディンの審査を突破できるのではないだろうか。

 そして、ずっと憧れであった神聖騎士の世界に飛び込めるのではないか。

 そう思い、実行してしまったのは紛れもないアイリス自身なのだから。

 

 フッとアトラークが気障たらしく肩を竦めた。

 

「法を破ってまで危険なパラディンの道へ進もうとしたとはね……。いっその事、感心するよ。そんなに僕と婚約するのが嫌だったのかな?」

「…そういう……訳では……」

「冗談だよ。君がそこまで短絡的だとは思っちゃいない。夢を純粋に追いかけた君を、出来る事なら応援してやりたいところなのだけれど……勿論、君のした事はした事だ。このままで済むとは思っていないよね?」

 

 アトラークの言葉に、アイリスは静かに頷く。どういう意図であれ、神聖騎士の紋を偽装し、その立場を騙った事は紛れもない事実だ。しかもアイリスの場合、王族や多くの民衆達の前でその立場を振りかざし、本来は行使する資格もない権限でヒュペリオン達を庇っている。どう考えても言い訳できる状況ではない。最悪の場合、極刑に処されても文句は言えないだろう。

 

 だが。

「勇敢だねぇ……。しかし、それでは君のご家族や領民たちが困るだろう?ただでさえご当主がお亡くなりになって、跡継ぎの問題が浮上している矢先に、君が国家反逆罪を問われたとなると……。それは君の近侍——ゼオラ君も望む事ではないだろう?」

「っ!ゼオラ……⁈彼女が今どこにいるのか知っているんですか⁉」

 

 喧嘩別れの様な形で離れて以来、ずっと消息が分からなくなっている親友。それを何故、この男が知っているのか。そこまで考えたところで、まさか……?という予感が脳裏に閃いた。

 

 そもそも目の前の皇太子は何故、自分がパラディンの立場を偽っている事に気付けたのか。あの霊薬が発見されたにしても、それだけでその結論に至れる事はそうそうない筈だ。

 しかし、自分以外にその秘密を知っている者が1人いたのだ。その名は———。

 

「ようやく気付いたかい?そう、君の秘密を私に話したのはゼオラだよ。彼女は元はと言えば、ヘヴンラウンズの中で生まれた子ども……。そして、私が君たちパニディエラ家を見張らせる為に放った、言わば……スパイという訳さ」

 

 アトラークの言葉がアイリスの頭を通り過ぎる度に、まるで姿の見えない影が這い上り、足元から少しずつ感覚が消え失せていく様な気がした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 鉱物の採取地としては、ドランバルド三国の中で最も有名なのはやはりトンプソール部族連合だ。だが、それらの国の国境として聳えるステラスフィア山脈には、銀や鉄などの良質な鉱物が今も眠っている。かつては、それらを掘り出そうとこの山肌にもツルハシが振り下ろされたのだが、やはり人が活動するにはあまりに厳しい環境の所為で、それらの事業は程なくして撤退する事になったのだと言われている。その名残で、今もこの国境の霊峰にはアリの巣の様な坑道跡が人知れず通っているのだった。

 

「…ま、そんな場所だから俺たちみたいなのには恰好のねぐらって訳だ」

 トロッコのレール跡が敷かれた道を進みながら、ハイルがランプを高々と掲げて見せる。高い場所ではざっと天井まで5ハンズといったところ。壁際に置かれたレバーを数本操作すると、壁に張り巡らされたパイプに霊薬のエネルギーが供給され始め、各所に設置されたライドラッグランプに灯がともり始める。瞬き1つする間に天然の岩肌が文明の明かりで照らされだしたのだから、マヤとしては呆れる様に目を白黒させる他なかった。

 

「まさか、ネイバーラントの他にこんな場所まで持ってたなんて……」

「俺達は無法者だぜ?いつどこが潰れてもいい様に活動拠点は複数用意して置くもんだ」

 

 襲撃をかけてきたジェヴォールトデブリーターの自爆によってネイバーラントは大きな損傷を被る事となった。修繕すればまた再使用は出来そうだったが、敵に位置を知られた拠点をいつまでも使い続けるメリットはない。持ち出せるものもそこそこに砦は完全に破壊し、隠されていた坑道からここまで抜けてきた、という訳だった。

 

「それにしても……やけに暖かいね、ここ……」

「雪解け水を沸かして、そこのパイプを走らせてるからな。燃料がちょいとかかるが今は四の五の言ってられねぇ……。…で、湯の排出口が……」

 壁に取り付けられた簡素なレバーを操作すると、湯気を纏ったお湯がバケツの中に一気に注がれる。持ってきた3つのバケツに目一杯注ぐと、そのまま来た道を取って返した。

 迷路の様に入り組んだ坑道の中であっても、ハイルの足取りは惑う事が一切ない。この複雑な坑道を辿る事で、あらゆる場所に瞬時に移動する事が出来る。ヒュペリオンが神出鬼没と呼ばれる所以がまさしくここにあるのだった。

 

 駆け足気味でハイルとマヤが「病院棟」と名付けられたエリアに侵入する。ノックする間も惜しいとばかりに、ハイルが蹴破る勢いでドアを開け放った。

 

「湯、汲んできたぜ。レイトの様子はどうだ⁉」

「ダメだ……!呼吸の乱れが止まらない……。意識はある様なんだが……クソッ!せめて毒物の正体を特定できれば……!」

 医務室の中にいたゲイナンが苛立たし気に机を殴りつける。ベッドの上には数人の看護スタッフ達におさえつけられたレイトが苦しそうに身を震わせていた。その全身には毒々しいまだらの様な紋が浮かび上がり、それが彼の体を侵すかの様に少しずつ広がっていっていた。

 

「レイト!レイト……‼しっかりしてよぉっ……!」

「……………っ‼…っっ!!!…ぁあぁぁぁぁぁっっっっっ……!!」

 

 マヤが縋り付いて必死で呼びかけるが、レイトは苦しそうにその身を捩らせるばかり。意識が侵される事はないのか、両目を見開きながら、しかし声にならない苦しみに喘ぎ続けるその姿は多くの修羅場を潜ってきたヒュペリオンの少年達ですら目を背けたくなる様な凄絶な光景だった。

 

「戦ってたのはマンティコアだろ、血清の常備があったんじゃなかったか⁈」

「本物のマンティコアとは毒の成分が違うみたいなんだ。ここにストックされてる分では解毒が出来なかった……」

「クソが……!ドミングスの方はどうだ⁈何か吐いたか?」

「ダメでした。やっぱり、あの時のアイツは何か薬を投与されて操られてただけみたいで……。デブリーターとかその辺りの事は何にも知らないみたいです」

 

 パストールで捕らえられたバトレー・ドミングスは、その後ヒュペリオンの団員達によって手厳しい尋問が行われたが、デブリーターなどに関する事柄は一切知らず、ネイバーラントやリンネ襲撃への関与ははっきりと否定されてしまった。

 今は何とか敵の追撃を逃れた状態にあるが、敵の正体は掴めず、これにて捜査は一度振り出しに戻った格好になる。ここに来て、レイトが謎の毒に侵され、生死の境を彷徨っている。少しずつではあるが真綿で首を締め付けられる様な感覚が強まっている気がする。嫌な想像を振り払う様にハイルがチッと舌打ちを1つ鳴らした。

 

「…なぁ、ゲイナン先生。イヤな事を訊く様だが……レイトの命が尽きるとしたら、あとどれくらいだ?」

 一同がギョッと息を呑む。だが、その間も与えずハイルが「答えろ!」と急かした。

 

「…前例がないのでなんとも言えないが……。このまま行けば、恐らく夕刻には……」

 洞穴の中では分かりにくいが、今の時刻は恐らく明朝。つまり、あと1日も猶予がない事になる。ならば……。

 

「…あのマンティコアデブリーターから毒を取り出すしかねぇな。俺がゼオラの奴をふん捕まえてくる」

「そ、そんな……!どこにいるかも分からないのに……」

「このまま手をこまねいていられるか!…今の俺がいるのはコイツに命を救って貰ったからだ。だから……こんな事でコイツを死なせる訳にはいかねぇんだよ……」

 そう言ってデウスカリバーⅡを引っ提げると、ハイルは再び外へと飛び出していった。全く関りのなかった自分の為に何度も命を懸けてくれたのがレイト達だ。お人好し……と思われても仕方ない程、バカみたいに甘い奴らだ。そんな生き方をしてもこの世界では損しか回って来ないと言うのに……。

 だが、だからこそそんな彼が仲間に裏切られた結果命を落とす事になったなどと……頷ける筈がない。

 

 このままで、終わらせると思うなよ。肌に突き刺さる冷気を正面から睨み据え、誰にともつかない呟きがハイルの口から漏れた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 一体何故、この身は今も生き続けているのだろうか。誰も応える者がいない問いが脳裏の奥底に反響して、熱で倦んだ頭を更にグチャグチャに掻き回していく様だった。

 先程から体中が刺す様な痛みに包まれ、手足は末端から凍てついてまるで自分のものでなくなっていく様だ。その癖、臓器という臓器が今にも燃えだしそうに熱い。まるで体内で生まれた怪物がゼオラ・ユピターという人間の真皮を食い破って生まれて来ようとしている様だった。

 

 痛みに耐えかね、ゼオラの体が倒れ込み、泥飛沫が舞い上がる。周囲をゆっくりと見渡すと、放置された家屋や木材で造られた壁の様な跡が見えた。どうやら大昔に放棄された特区———否、規模からしてそれ程でもない村落かなにかだったのだろう。シドニア特有の冷たい湿原に倒れ込んだゼオラの、髪から肌まで泥に塗れていく。だが、別に構わないと思う。こんな人から忘れられた場所で、泥に汚れて最期を迎える。自分という薄汚い裏切り者には似合いの結末ではないか……。

 

 裏切りはいつからが始まりだったのか。主の行く道を信じ切れずにその手を振り払ってしまった時か。主に仕えると言いながらも、その動向を別の存在へ話してしまっていた時か。否、それとも———そもそも彼女と出会ってしまった時からが、全ての始まりだったのか。

 

 シドニア王家に纏わる黒い噂の数々———例えば、権勢の強い諸侯の動向を探らせる為に、その内部にスパイを放っている等の噂。多少の尾鰭はあれど、それは真実だ。他ならぬゼオラ自身がそうだったのだから。

 

 物心がついた時から周囲にいたのは、冷たい目をしたヘヴンラウンズの構成員たちばかり。この中に自分の親がいるのか、それともただ日々この世に溢れ出る孤児が拾われたのか。それすらも教えられぬまま、ただ王家直轄の騎士団の構成員となる事だけを目指して戦闘術を叩き込まれるだけの日々。それが変わったのは、皇太子直々に潜入調査の任を受けたからだ。そして6歳のゼオラ・ユピターは、事業を拡大し、勢力を強めつつある監督領主の一家———リンネのパニディエラ家へと潜入させられる事となったのだった。

 

 暗く淀んだ策謀が渦巻く世界で生きてきた少女にとって、初めての組織以外の人間と関わる暮らし。その日々は正しく驚きの連続だった。

 強権的でありながら、やり手の監督領主として知られたレイフは、その経営手腕の強引さや性格から敵を作りやすい人間だったが、仕事の覚えが早い者には評価と報奨を絶やさない公正な人物でもあった。ゼオラが送り込まれてきた意図をどれだけ理解していたのかは定かでないが、ゼオラの近侍としての働きぶりはよく評価してくれた。これは本人に訊いても絶対に認めなかっただろうが———ゼオラをアイリスの近侍として任命したのは、貴族の論理で自分の行きたい道を選ぶ事が出来なくなる孫娘へのせめてもの手向けだったのではないか……そう思える時があった。

 

 それとは対照的に大らかで明朗快活なオーエンとイーヴァ夫妻。凡そ腹芸などとは無縁なこの夫婦は、きっとゼオラが送り込まれてきた理由など知る由もなかっただろう。でもだからこそ、彼らはその生来の優しさで闖入者でしかないゼオラの事を、我が娘の様に迎えてくれた。幼少期から相手の腹の内を探り出す様に訓練されてきたゼオラにとって、掛け値なしの愛情というものは何とも居心地が悪く、同時にそんな事すらも理解できない自分の在り様が嫌で堪らなくなった。でも、そんな頑なだった心を解してくれたのも彼らだったと言うのは、何とも皮肉が効きすぎている気もする。

 

 そして、ゼオラにとって恐らく生涯で最も重要な存在となる、アイリスとの出会いが待っていた。

 当時から深窓の令嬢という言葉が似合いそうな類まれな美少女だった彼女だが、見た目の印象に反して性格は闊達で破天荒そのもの。本で読んだ勇者や神聖騎士の真似事をして、街のあちこちを駆けずり回る彼女について回るのは今考えても本当に至難の業だった。街の人々の些細な困り事を解決して、実に嬉しそうに笑う彼女の姿が———最初は心底嫌いでならなかった。

 

 良家に生まれ、命を脅かされる心配もない壁の中で育った少女が、領民の些末な願い事を叶えて回る程度の事がなんだと言うのか。そんなものはただの自己欺瞞でしかないのだと、当時のゼオラは腹の中で思っていた。彼女がどれだけ力を尽くしたとしても、自分に纏わりついて離れないこの国の暗部を掃う事が出来る筈もないのだから……。

 

 どれだけ優しくされようが、どれだけ燦然と生きている人々の姿を見せつけられようが、自分には関係ない。どうせこの関係は全てが偽物。真の主たる王家に戻れと言われればそうするのが定めだし、殺せと下達されれば実行するだけの話だ。命令に生き、命があれば死ぬ。それしか自らを規定する術を知らないゼオラには、どうせそんな道しか許されていなかったのだから………。

 

 それなのに。

 いつの間にか、その偽物に価値を見出してしまっている自分がいた。

 優しく、温かなあの街での日々を手放したくないと思っている自分が生まれた。

 

 使命を十全に果たす為には一族の信頼を勝ち取り、その奥深くまで入り込む方が都合が良かったというのもある。だがそれだけで、『友達になって欲しい』とせがむ少女の手を取った事を、その手を取った時に心底嬉しそうに笑った彼女につられて生まれて初めて笑みを零したあの瞬間を正当化できるものだろうか?

 

 アイリスの中に潜む孤独の影を知ってしまった。彼女の思いがどれだけ真っ直ぐで揺るぎないものであるか気付いてしまった。だからこそ、全てを捨ててでも彼女の夢を支えたいと願った。それが国家に仇なす嘘に加担する行為なのだと知っていても……。

 

「…っ⁈…がはあぁぁっっっっっ……!!う…うあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!」

 

 体中の痛みがいよいよもって激しさを増していき、グラつく視界の端で左腕が怪物のそれへと変化し始めるのが見えた。記憶は朦朧としているが、アトラークに連れ去られ、デブリーターとなる為の薬物投与を受けた。 従来型のデブリーターと異なり、直接体内に薬瓶を埋め込まている為かより強い力を発揮できるが、その分制御が効かない。きっともうすぐゼオラの意識は怪物の衝動に飲み込まれ、今度こそ命令を忠実に実行するだけの物言わぬ生物兵器へと姿を変えてしまうのだろう。

 

 イヤダ。

 コワイ。

 キエタクナイ。

 心の弱い部分が、今にも泣きそうな声で叫んでいるのが分かる。それがどれだけ虫のいい願いであるのか、分かってはいるのに止める事が出来なかった。

 

 だって他に選択肢などなかったから。心の底から彼女への忠節を誓いながらも、王家との繋がりを断ち切れずにその動向を伝えてしまっていた不実。その根源の命令に逆らいきれずにアイリスの秘密を話してしまった自分自身の弱さ。それらを清算し、国家を欺こうとした主を救う術はそれしかないと言われたから。その為に、旅の過程で得た大切な友人を手にかける事となったとしても……。

 

 レイト。

 もう逝ってしまっただろうか?

 マンティコアの毒は強力だ。下手をすれば自らの死を、仲間に裏切られたのだと実感する間もなかったかも知れない……。

 

「あ…あぁぁぁぁっっっっ……!ぃやあぁぁぁぁぁぁ…………‼」

 体を鞭打つ痛み。心を蝕む罪過の火。その苦痛もいよいよ耐えがたく、ゼオラの口から漏れ出た絶叫も、だがやがて萎んで消えていこうとしていた。

 

 モウイヤダ。

 カンガエタクナイ。

 キエテシマイタイ。

 

 そんな心の叫びに答えるかの様に、ゼオラの視界に1人の影が差した。

 

「…楽に、してやろうか?」

 褐色の肌と、燃える様な赤毛の男。肩に担いだ幅広の柳葉刀や無駄なく引き締まった肉体から恐らく戦士なのだろうと思えるが、その顔はどこか悲痛そうな色を湛えていた。

 視線で問いかけるゼオラに、男がため息を漏らす。

 

「ジェイク・アリウス……まぁ、傭兵だ。お前のその状態を治してやる方法は……ない。だったら……せめて苦しませないでやる。…どうだ?」

 ジェイクが柳葉刀を持ち上げ、ゆっくりとゼオラに突き付ける。今や苦しさのあまりゼオラは満足に頷く事も出来そうになかった。だが、懇願する様な視線がジェイクの瞳を覗き込み……確かに頷いた様に見えた。

 

 日陰の道に嵌り、そこから出る事が叶わなくなってしまうのは、多分にこの目の前の少女にも責任がある様な気がしないではない。だが、それでも……目の前の少女が怪物となってしまう光景など見たいとは思わない。

 これが、自分が目指していた世界なのか……?ふと湧き上がった疑問の声を振り払い、刀を振り上げるが———。

 

「待ちやがれ」

 

 静かに響いた声にジェイクの刃がピタリと止まる。声のした方向へ目を向けると、1人の青年がつかつかとこちらへ歩み寄って来た。人相書きを渡されていたので、その顔は知っている。

 

「ヒュペリオン首魁、ハイル・ランドナーか……」

「ああ。…で、俺を知ってやがるって事は、お前もデブリーターか」

 元より人相がそう簡単に他者に割れる様な立ち振る舞いはしていない。且つ、自分やゼオラの事を知っていそうな人物となると他に心当たりはない。

 

「そいつを殺ろうってんなら、やめて貰おうか。俺のダチを助ける為にも、今はそいつが必要なんだよ」

 それを聞いた瞬間、暗く淀んでいたゼオラの瞳に微かな光が灯った様に見えた。

 

「…ッ⁉……レイ…ト……?まダ、生きテッ……⁈」

「…そうだ。今でも必死に戦ってる。それなのに……テメェは何を1人で勝手に楽になろうとしてやがる⁉」

 

「…だっテ……!私ニはモウ……———!…ゥ……ゥアァァァァァァッッッッッッ!!!」

 泣きそうなゼオラの声が、遂に悲痛な叫びに変わる。それと同時にその体が再びマンティコアデブリーターへと変異を遂げた。その様を眺めながら、ジェイクが深々とため息を吐いた。

 

「ったく……お前も酷な奴だな。折角、身も心も怪物になる前に葬ってやろうと思ったのによ……」

「生憎、アイツほどお優しくはないもんでな」

〈バスタード!〉

 ハイルがソードラッグの片側をデウスカリバーⅡの剣先へと装填した。

 

〈テリフィック!蛮壊の魔剣!〉

「…いい加減に気付け。てめえの心は、そんな事を納得しちゃいない。それでも分からねぇ、気付かねぇって言うなら……俺がその殻をぶち破ってやるよ!変身‼」

〈ブレイク!怒張剣抜!ソーディア、ツヴァイハンド‼〉

 

 魔剣を抜き放ち、裂帛の叫びと共に『仮面ライダーソーディア ツヴァイハンド』がマンティコアへと突撃していった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 ハイルにとっての領域が戦場であるなら、それを支えるのがヒュペリオン達の役割だ。戦いに参加する者もそれを支援する者も、帰る場所を守る者たちも全てが等しく役割を持って、己が出来る事に全力で挑んでいる。

 

 嘆きも怒りも全て根底にあるのは無力感だ。だが、その無力に打ちひしがれている位なら、今の自分に出来る事をやれ。この世に無駄な人間も、無駄な時間もなに1つありはしないのだ———。なんともハイルらしい合理主義だが、これはすべからく錬真術師の世界にも当てはまる事だ。1つの素材、1つの調合物、それらが持つ効果の1つ1つを正確に理解し、そこから生み出される“答え”に向き合い続ける。それこそが、錬真術という世の心理を探求し続ける者に与えられた義務の様なものだ。

 

 そう、だから無駄に悲しんだり、懊悩したりする時間は与えられない。今自分が向き合うべき領域は間違いなくここだと決めて、マヤはいくつもの薬品が煮詰まっている丸底フラスコの群れを睨みつけた。

 

「マヤ殿、倉庫の薬草類の仕分け、言われた通りにやりましたぞ」

「ありがとう。そこの左列の大鍋に、振ってる数字の通りにぶち込んで!」

「マヤさん、こっちの薬品はダメです。中和反応は見られませんです」

「…分かった。それじゃ今度は24番から35番を試してみて。そろそろ出来上がってくる筈だから……」

 

 例えハイルがゼオラを無事に見つけ出し、マンティコアの毒を採取できたとしても、直ぐにそこから中和剤を作り出せる訳ではない。その為の設備やら調合に必要な他の薬品・錬真物質を予め作っておく必要があるし、何よりもそれが効かなかった場合にも備えて他にも複数の中和剤を用意しておいた方がいい。そういう訳で、マーカスとそれなりに錬真術の知識があるラナを助手に、ずっと拠点の研究室に籠りっ放しになっているのだった。

 

 常に自然と共に生きてきたリンクスにとって、毒とそれの中和剤に関する知識は必須だ。今は余計な事を考えずにあらん限りの自分の知識を生かして、状況を打開する手立てを模索するべし、と決めているマヤだが……本当にこれでいいのだろうか?という気分になる事がある。

 

 薬品の臭いや濛気が立ち込めるこの部屋に籠ってどれ位の時間が経っただろうか。可能性を潰していくのも立派な前進の1つとは言え、デブリーター謹製の合成毒の組成は思いのほか手強く、未だに有効な中和剤の発見には至っていない。

 

 本当にこんな事をしているべきなのだろうか?

 もしも、こうしている間にレイトが急変して、彼の最期の瞬間にすら立ち会えなかったとしたら……?

 それで、本当に一片の後悔もないなんて言い切れるのだろうか……?

 

 頭に浮かんだいくつもの最悪の予想を振り払い、今一度目の前の薬瓶に目を向けたところ、「た、大変っス‼」とドアを蹴破る勢いでジャンが飛び込んできた。

 

「レ…レイトさんの意識が消失したっス……!心臓も脈もどんどん弱くなってて……このままじゃ保たないかもしれないってゲイナン先生が……‼」

「…………っ⁈」

 言葉がナイフとなってマヤの胸に突き刺さる。ふらつく足を精一杯支えて、次の瞬間には一も二もなく研究室を飛び出していた。

 

 嘘だ嘘だ嘘だ……‼言葉にならない絶叫を胸中に響かせ、病室まで一気に走り切ると、扉を勢いよく開け放った。レイトが寝ていたベッドにはゲイナンを始め医療班が張り付いており、彼の顔は見えない。マヤは居ても立っても居られず、「どいて!」とその列に割り込む。

 

 目に飛び込んできたレイトの顔。今度こそマヤは息が出来なくなった。

 

「…そんな……嘘だよね……?レイト………ねぇ、レイト……レイトッ!」

 ベッドに仰臥する少年の顔。今はゾッとするほど真っ白に染まり、薄紫色に変色した唇は呆けた様に半開きになっていた。縋り付いた彼の手は———この世のものとは思えないほどに冷たい……。

 

「レイト……!ヤだぁ……何か言ってよぉ……‼」

 少年の傍に寄り添い、マヤの頭頂部からダイロク器官がゆっくりと持ち上がった。強化された超感覚がゆっくりとレイトの身体状況をスキャニングしていく。心臓はまだ微かに鼓動している様だったが、しかし今にも消え果てしまいそうな程に弱い。やがてこの僅かな拍動が止まってしまえば……この少年の命が消えてしまう。もう自分達に話しかける事も、笑い合う事もなく、この世から消え去ってしまう……。マヤの足元から急速に力が抜け、そのままヘナヘナと腰を落とした。

 

「…そんな……どうして……。なんで……こんな事に………」

「…すまない。出来る限りの手は尽くしたんだが……毒の広がりが予想以上に早すぎた……」

 申し訳なさそうなゲイナンの声も頭を素通りして届かない。マヤの頭を占めているのは自身への無力感と、激しい後悔の念だった。

 

 こんな事になるのだったら、どうして最後まで傍にいなかったのだろう。もっと話したいことが、伝えたい想いがたくさんあった筈なのに。彼にまた会う為に、必死で磨いてきた錬真術の腕は何の為に……?

 泣く事も出来ずに、その場に蹲るマヤ。部屋にいるヒュペリオンの団員達も力なく項垂れ、すすり泣く声も部屋中に広がっていく……。

 

 だが。

 

『なにやら哀愁が漂っておるな……』

 

 突如、響いた声にその場にいる誰もが顔を上げる。前にも聞いた事がある、刃が金属を擦る様なこの声の主は———。

 

「ローザちゃん⁈」

『エクスカリバーである。何度言えば分かる』

「…イヤ、言われた覚えはないっス……」

 体から禍々しいオーラの様なものを発しながら、ローザ・ランドナー——否、正確には彼女に宿るエクスカリバーか——が滑る様にレイトへと歩み寄り、その胸へと手を触れる。

 

『フム……。確かに命の危機にあるのは間違いがないが……』

 口も表情も動かさず、しかし僅かに考え込む様にした後、周囲を睥睨する。

『そこのキツネ娘』

「だ、誰がキツネよっ⁈」

『どうでもよい。それよりこの者にディライトドライバーを装着しろ』

 迷う事なく、ローザが言い切る。何の為に……?と思わないでもなかったが、その逡巡のなさにつられて、マヤが横たわるレイトの腰にディライトドライバーを取り付けた。使用者を認識したベルトがシュルシュルと巻き付いていく。

 

『それでよい。変身させろ』

「な……⁈で、でもそんな事して、レイトの体にどんな負担がかかるか———」

『どの道、他に手などない。信じるのだ、ディライトの器たるこの男の強さを』

 ローザの口調は確信に満ちている様だった。彼女が何を考えているのかは理解できないが、それでもマヤは目の前の少年を信じる事にした。

 

 ——約束したもんね……。君が私たちを置いていく筈がない。

 

〈ライト!シルバー!ファンタスティック!栄光のレシピ‼〉

 

 ——だから。お願い……!

 

〈オールセット、ディライト!ライトアップブレイバー!ミスリックナイツ‼〉

 

 霊薬を装填され、ベルトが輝きを発する。その体がいつも通りディライトに変身する事はなかったが、まるでベルトから発した光が少年の全身に広がっていく様だった。

 変化はそれだけではない。視覚情報よりも早く、マヤのダイロク器官がそれを捉えていた。

 

 ドクンドクンドクン……、と少年の胸から全身に広がっていく命の拍動を!

 

「…噓でしょ……。心拍が再開してる……!」

 医務室中にどよめきが広がる。当のレイト自身も先程より血色がよくなり、弱くなっていた呼吸も誰にも分かる位に回復しつつある様だった。心なしか得意そうに、ローザがフンと鼻を鳴らして見せる。

 

「し、しかし……一体どうして……?」

『…ディライトに変身している間、こやつの錬真力が増加しているのは気付いておったか?』

「え……?ああ、うん…それはまぁ……」

 ディライトが行使するトランスラッシャーなどの武器やツールド・ファミリアを変形させる際に働く力、あれは間違いなく錬真力だ。通常、レイトの錬真力は一般人と比較しても少し高い程度で、マヤやアイリスには遠く及ばない筈なのだが、変身している時の彼は明らかにそれ以上の力を行使している。最近は少しずつ力が上がってきている様子も見られるので、ディライトへの変身は人の錬真力を増強させる効果があるのではないか、と睨んでいたが……。

 

『では更に問おう。パラディンがこの病める世界で唯一何の制限もなく、国境を超える旅が許されておるのは何故だ?』

「え~と……確か、パラディンほどの錬真力の高さがあれば、デブリス毒への耐性も高いからって理由だった筈……。…あ、そういう事か!」

 得心がいった、という風にマヤが手をポンと叩く。

 

「錬真力で毒を分解してるって言うのか……?凄いな、医者いらずじゃないか……」

『何事にも限度はあるがな。この者が今まで戦い続けて錬真力を上げ続けて来たから、即死せずに済んだとも言える』

「…で、でも……大丈夫なの?この合成毒を分解できるほど錬真力を上げて、レイトの体にどんな影響があるか……」

 

 人と錬真力の関係は未だによく分かっていないところが多い。生まれつき高い者もいれば、低い者もいる。それは生まれや育ちに一切左右されず、文字通り天性の素質としか言いようのないものだ。訓練によって上昇させる事は可能だが、それもある程度であり、結局のところは生まれついた領域から大きく離れるという事はないと聞く。

 人体を一瞬で殺してしまう程の猛毒を、浄化してしまえる程にまで錬真力を向上させれば……その時、レイトがどうなってしまうのか正直前例がない為、マヤにも全くの未知数だ。大丈夫なのだろうか…?という彼女の不安を見透かした様に、ローザが『問題ない』と力強く頷いた。

 

『これくらいでどうにかなるのならば、元よりディライトの器など務まらん。乗り越えれば乗り越えるだけ強くなる事も出来よう。…さぁ、貴様らも呆けている場合ではないぞ!』

 ローザが手をパチンと叩いて、周囲を一瞥する。

 

『快方には向かいつつあるが、それでもまだ予断を許さん状況だ。錬真術とは万物を思う形に作り変える力……即ち貴様らの思いの力そのもの。この男の回復を真に願うのならば、祈りの1つでも捧げてやれ。その結束こそ、貴様ら人間の最大の力なのだからな』

 

 そこまで言い切ると、彼女の体が糸が切れてしまったかの様にその場に倒れ込みそうになり、サクラが慌てて支える事になった。目を閉じ、再び眠りのフェーズへと突入したローザを見遣り、一体あの声の主は何者なのだろうか……?という思考が頭を過ぎる。だが、それも一瞬で打ち切ると、マヤは再びレイトに歩み寄り、その手をギュッと握りしめた。

 

「乗り越えれば乗り越えるだけ強くなる事も出来る、か……。そうだね、私信じるよ。それが君の力に変わってくれるのなら、いくらでも。…だから、ちゃんと帰ってきなよ……」

 

 自身の錬真力の一部でも分け与えられる様に、握られた手から少しずつ体温が伝わっていく。触れ合った箇所から伝わる体温や脈を一身に感じながらマヤは、少し先の未来へ、僅かな可能性の先へ思いを馳せていった。

 

 




今回からSaga13となります。そろそろ1クール終わりなんですね。それに伴って、大きく物語が動き出しました。

一番のトピックスはアイリスに纏わる真実でしょうか。
前回のラストで示した事、あれは事実です。アイリスはパラディンではありませんでした。単にその立場を騙っていただけに過ぎなかったのです。
これはアイリスというキャラクターを作るうえで最も重要な要素の1つでした。過去パートを改めて振り返って頂くと、アイリスの心情シーンで言っている事の意味が分かると思います。

罪を抱えていたのはゼオラも同様です。ここらへん一帯のパートは書いていて苦しくもありましたが、しっかりと満足するものが書けました。2人の罪と罰は晴れる時がくるのか……?

ところで毒に侵された主人公という構図。どこかで見た気がしませんか?ある仮面ライダー作品のオマージュなんです。
という事は……と思ったところでまた次回。

長々と失礼しました。それではまた。
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