横山克、ウタ・アリィ『生まれる願い』
◇◇◇◇◇
疾走するオウルベアに向けて、ディライトはトランスラッシャーから数発の光弾を斉射する。だが、猛り狂った様に白目をむいて絶叫するオウルベアの動きを止める事は叶わなかった。
怪物の足元をよく見ると、数発の銀矢が深々と突き刺さっていた。ローランはオウルベアへの対策として罠を仕掛けていたと言っていたが、それが却って怪物を逆上させてしまった様だった。無理もない、と思う。近付いてみると分かるが、このオウルベアは図鑑で見せられた平均的な個体よりも二回りほど体が大きかった。
「だったら……これでどうだ!」
背後からディライトがオウルベアの眼前へと跳躍する。そのまま左手の平を構えて、怪物の真正面から眩い光を浴びせかけた。
「ギシャアァァァァァァァァァァァッッッッッ‼」
オウルベアが顔面を抑えて、苦しそうに呻いてようやくその動きを止めた。やはり光には弱い様だ。この怪物は本来ならば夜行性だ。それがどうしてこんな夕刻から出てきてしまったのか……気にならないではなかったが、今は考えてる暇はない。地面に着地すると、ソードモードに変形させたトランスラッシャーに光の霊薬を装填した。
〈ヴァリアントスラッシュ‼〉
あの巨躯に筋肉と剛毛の鎧を纏われていては、攻撃を通す事は困難だろう。ならば狙うは一点———矢が突き刺さる脚に向けてディライトが駆け出した。加速した刃が傷口を捉えた。これならばいくらこの巨体でもひとたまりもなく転倒する……と思われたが、そうはならなかった。
「グゥオォォォォォォッッッッッッッッッッ‼」
「…っ!嘘だろ⁉」
オウルベアは全く痛みを感じていない様だった。足元のディライトを追い払う様に腕が振り下ろされ、その鋭利な爪がマテリアメイルの表面を抉り飛ばした。
「ぐぁっっ………‼」
巨体から繰り出される圧倒的なパワーにディライトの体が吹き飛ばされる。オウルベアは地面に横たわるディライトに興味を失くした様であり、再び近くの集落へと走っていった。脚に怪我をしているとは思えない程の加速力だ。
「ボォォォォォォォォォォッッッッ‼」
「ひっ……!ひぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ‼」
逃げ惑っていた住民の1人が怪物に捕らえられた。長い鉤爪とあの恐るべきパワーでは到底逃れられないだろう。悲鳴を上げる人間の頭を嚙み砕かんと、その口腔がゆっくりと開かれていく———。
転瞬、ヒュッ!と空気を斬り裂く様な音と共に飛来した矢が、オウルベアの右目を見事に貫いた。これには堪らず絶叫を迸らせるオウルベアの隙をついて、1人の人影が怪物の腕を斬り裂き、住民を開放する。
「逃げて下さい、早く‼」
獲物を取り逃がされ、怒りの咆哮を上げた怪物が両腕の鉄爪を振り下ろすが、人影はまるで踊る様な軽やかな動きで攻撃を躱し、左手に握ったアーククロスをその顔面へと射かけていく。矢が眉間と左目に突き刺さり、オウルベアの顔から血の雨が迸る。剣にかかった血を払いつつ、ディライトの横に降り立った細身の姿は———。
「アイリィ⁉」
「レイト、無事?」
アイリスがディライトの目をしっかり見つめて微笑む。両手にそれぞれ剣とアーククロスを握っているが、服装は先程のブラウスとロングスカートのままだ。オウルベアの出現を受けて、急いでここまで駆けつけたのだろう。相変わらず無茶を……と思いつつ、そんな姿がやはり彼女らしいなと思ってしまう。
ディライトが立ち上がり、アイリスと共に剣を構える。防具なしの彼女には長期戦はきついだろう。一刻も早く目の前の怪物を打ち倒さなければ……と思うのだが、顔面のあちこちを矢杭で撃ち抜かれても、オウルベアは平然と立ち上がった。そのタフさに2人とも慄然とする。
「おかしいわね……。こんなに効果ない筈ないのに……」
「熊だからね。誰かに餌でも捕られて、気が立ってるとか?」
オウルベアが疑問に答えてくれる筈もない。どうやら目の前の2人に狙いを定める事を決めた様で、またしても怒号の様な呻きを上げて爪を振り下ろしてくる。攻撃を躱しつつ、怪物の顔をよく見つめる。先程アイリスの攻撃で奴は両目を潰されている。にも拘らず、こちらの位置を正確に把握している様に攻撃してきた。まるで、視覚以外の感覚も軒並み研ぎ澄まされているかの様な———?そこまで考えたところで、ふと気づいた。オウルベアの嘴の端に、血の混じった泡が付着している事を。
痛みを感じていないかの様な異様な躁状態。そして、感覚の鋭敏化。レイトの脳裏にまさか?という可能性が浮かんだ。
「アイリィ、言い方は悪いけど……もしかしてコイツ、ラリってない?」
「……っ。そう言えば、この微かに甘ったるい匂い……もしかしてペプカの葉?」
ペプカと言うのは、自然界に生えている強力な幻覚成分を含む植物だ。葉っぱの状態だけでも口に入れれば、異様な覚醒状態や高揚感、悪ければ暴力衝動を発生させる事もある危険な植物で、ドランバルド3国の中では生産も販売も禁止されている。だが、野生種を完全に絶やす事は不可能であり、恐らくここら一帯に自生していた葉っぱを目の前の怪物が食べてしまった……というところではないか?
「それで痛みも感じない訳か……。何とも厄介だな……」
「でもそうなる程のペプカを食べたのなら、それだけ体内にもダメージが行ってる筈よ。原理さえ分かれば、押して勝てない相手じゃない」
目の前の怪物は決して人知の及ばぬ存在ではない。幻覚と高揚感に支配されている状態は気の毒と言えば気の毒だが、人の生活を脅かす者である以上、ここで確実に仕留める必要がある。決意と同時に、レイトは取り出したライドレンジアッパーに2つの霊薬を装填し、ベルトへと取り付けた。
〈ワッツハップン!ファイア!アイアン!レ~ン・チン‼〉
「再錬成‼」
〈ブートアップ、ディライト!サイバネティック・ハイパーファイター!メタレイズレンジャー‼〉
炎と黒鉄のディライトにブースタースケルトンが装着され、『仮面ライダーディライト メタレイズレンジャー』が火柱を纏って爆誕した。迫りくる爪を素早く躱し、取り出したミキシングラッシャーの刃を思いきり叩きつけた。両手を砕かれ、最大の武器を失った怪物の動揺を素早く検知し、その腹部に向けてミキシングラッシャーの銃火を思い切り迸らせた。オウルベアが吹き飛び、地面に仰向けに倒れ込むのを確認すると、シリンダーに鉄と炎の霊薬を装填し、エネルギーをチャージする。
〈ダブルミックス‼マルチプル!ミキシングバースト‼〉
銃口から迸った轟雷がオウルベアの腹部に直撃し、爆発する。だが、体表の剛毛と下の強靭な筋肉に阻まれ、表面を少し削いだだけで終わった。だが、それで問題はない。元より通常よりも遥かに体格に恵まれた異常個体だ。フルパワーの一撃を喰らわしても、仕留めきれたかは怪しいだろう。
シリンダーからライドラッグを抜き去り、今度はライトライドラッグも加えて再びエネルギーをチャージする。メタレイズバニッシュの力も加わり、先程よりも大きなエネルギーが銃身へと充填されていった。
「アイリィ!」
「任せて!」
レイトの意図を理解した様に、アイリスが剣を閃かせてオウルベアへと肉薄する。今彼女が持っている剣はサクラが使用しているのと同じ『ブロッサカスタム』。ヒュペリオンの手によって独自の強化が施されているが、それでも彼女の愛刀だったパーラケインと比べれば、切れ味も強度も数段落ちる。普通ならばあの巨躯に深手を負わせる事も出来ないだろうが、先の攻撃でオウルベアの体表の一部を剥がしている。狙うのはあの一点———!
「はあぁぁぁぁぁっっっっっ‼」
渾身の穿撃がオウルベアの焼け爛れた皮膚を食い破り、剣の鍔まで深々と突き刺さった。そのままブロッサを引き抜かず、アイリスは後方へと跳び退る。背後ではディライトが既に銃身にエネルギーの充填を終えている様だった。アイリスが頷いたのと同時に、ディライトは上半身のオーバーグロウタービュラーを起動させ、引き金を引き絞った。
〈マルチプル!ミキシングバースト‼〉
鮮烈な閃光が銃口から解き放たれ、ライドラッグのエネルギーを纏ったレーザーが空気を焼きながらオウルベアへと突進していく。レーザーは狙い通りにただ一点——ブロッサが突き刺さった腹部を正確に貫いた。ただでさえ度重なる連撃によって弱っていたその一点を穿たれ、耐え切れなくなった怪物が断末魔の咆哮を上げる。熱気によって揺れる空気の中、命脈を焼かれたオウルベアがゆっくりと力なく沈んで行った。
「ふぅ、スゴい反動……。アイリィ、大丈夫?」
「うん、平気。…さて、少し勿体ない気もするけど……」
アイリスがオウルベアの死骸に空の薬瓶を向け、レセプト化していく。稀に見る巨大な個体だけあって確かにその骸を完全に消し去ってしまうのは居たたまれない気もしないではないのだが、デブリスの体を残しておく訳にいかないもまた事実なのだ。
怪物が消え去り、辺り一面には被害の爪痕が残されているが、死者は誰1人として出しはしなかった。助けられた人々から口々にレイトとアイリスに賛辞が送られる。互いに照れ臭そうに顔を赤くした2人は揃ってその場を後にした。
「今の見て思ったけどさ……俺、やっぱりアイリィはパラディンを続けるべきだって思う」
夕映えに染まっていく道を歩きながら、傍らを歩く少女にレイトは呟いた。オウルベア出現の報を受けて、何の準備もなく駆けつけたのであろう彼女の服装は所々が破れてボロボロになっていた。下手をすれば大きな怪我を負っていた可能性もあるのに、それでも一切躊躇する事なく飛び出したのはきっと———。
「パラディンでなかったとしても……誰かの為に戦いたいってアイリィの思いは、ウソなんかじゃないだろ?灯火みたいな希望になれるなら……その心があれば、紋章のあるなしなんて関係ないって俺は思う」
「…そんなに、簡単じゃないよ」
それでもアイリスは目を伏せたまま、力なく呟いた。
「…私は、物語の中の神聖騎士みたいに、気高くなんかない。偽りの使命に逃げて、本当に守らなきゃいけない人達から目を逸らしてきた……。それが、本当の私だから……」
そんな私が……とアイリスが消え入りそうな声で呟いた。細かく震えている彼女の姿。きっと強くて毅然としているばかりではない、彼女の一側面。どれだけ気高くあろうとしても、逃げてしまった罪悪感が彼女を今も責め続けている。それを違うと言い切る事はきっと誰にも出来ないだろうけど……。
——ヘタれている時じゃない。
——今は、勇気を出すところだ。
「アイリィ」
目を伏せて震えている少女にレイトの手がゆっくりと伸ばされ……そのまま細いその体をしっかりと包み込んだ。アイリスが微かに息を呑む気配が伝わってきた。
「それでいい。君がいいんだ。例え何者でなかったとしても、俺にとってのパラディンは……君だけだったから」
「…………っ」
腕の中でほんのりと感じる体温。今にも折れそうな程に細くて、でも確かにこの世に存在している彼女の息吹。きっと彼女に出会う事こそが、自分がこの世界に転生した意味だったのだろうと今は何の根拠もなく思える。
——だって仕方がない。
——だってこんなにも……。
——彼女の事が、好きになってしまったんだから。
「…レイト……でもっ……」
「どうしても納得できないなら……俺が君をパラディンに任命する。ディライトにはそれが出来るんでしょ?…だから、これからも一緒に戦って欲しい」
「…もう……ズルいよ、こんな時だけ……」
アイリスが小さく呟き、その腕がゆっくりとレイトの背中に回った。己が身の内の熱。高鳴る拍動。そして心に秘めた想い。その全てを伝えんとするかの様に———。
「アイリィ、勝手も危険も十分に承知の上で、それでもお願いします。俺の戦いに、もう少し付き合ってくれませんか?」
「…はい、私で良ければ。…ありがとう、レイト」
レイトとアイリス、2人の視線が交錯する。胸の鼓動。赤く上気した頬。温かくて甘やかな愛しい人の気配。その全てをかつてないほど近くに感じて、レイトは少し落ち着かなくなってくる。
不意にアイリスの目が潤み、切なそうに揺れると——背中に回った手がレイトの首筋へとかかってきた。鼻と鼻がくっつきそうな程に近づき、布地と柔らかい感触もより身近に感じられ、レイトははっきりと息を呑んだ。
——え?コレってまさか……。
——…いいの?
心臓が痛い程に早鐘を打ち、それでも脳の処理エネルギーが追い付かない。今にも沸騰しそうな頭に、落ち着け落ち着け……!と命じて息を吸い込むが、それで答えが見つかる筈もなく……。
——…どうしよう。まさか本当に「いいの?」なんて聞く訳にもいかないし……。
——てゆーか、勘違いって可能性もあるしな……。
浮き足立って動揺するレイトを余所に、しかし今度ははっきりと少女の目が閉じられた———。
——…間違いない。
——これ絶対に勘違いじゃない‼
だとすると、答えは……1つしかあり得ない。先程、ヘタれてる場合じゃないと誓ったばかりではないか。ここで彼女に恥をかかせる訳にはいかない……!
意を決し、彼女の腰に回した手の力を強め、空いた手で後頭部を優しく支える。光彩の中の自分を見つけられる程の距離。アイリスの拍動と呼吸が、待ち望んでいる様に強まるのを感じ———。
「いやぁ、良かった良かった‼」
「「……………っっ‼」」
突然響いたあっけらかんとした声音に2人が固まる。声のした方向へ目をやると、顔中に満面の笑みを貼り付けてこちらを見るローランが立っていた。
「アイリィ、また戦う気になってくれたんだね。レイト君も、ディライトとして決意を固めてくれて……僕は嬉しいよ!」
「「………………………………」」
拍手をしながら、うんうんと感極まった様に何度も頷いている。その邪気のない笑顔から悪気がある訳じゃないんだろうが……多分、極限に空気が読めない人なんだなと分かった。
「さて、僕の上司の事も含めて、今後の事を色々話さなきゃいけないし……2人とも、一旦屋敷の方に戻ろうか」
一方的に宣言してローランが軽い足取りで道を引き返していく。そんな彼の背中を「…ローラン様……今、出てきますか……?」と、アイリスがいつまでも恨めしそうに見つめていた……。
◇◇◇◇◇
「さて、それではだけど……我が領地『アレステリス』へようこそ。『炎のパラディン』、ローラン・デュランダールの名の下に皆さんを歓迎いたします」
大広間に集められたレイト達とヒュペリオンを前にして、ローランが改めて宣言する。広間内にはいくつもの料理が並べられており、正しく歓迎という雰囲気だ。外でもここの住民達とリンネの民達が集まって宴会を開いているのが見て取れた。
「突然の質問で申し訳ないのだけれど……ここが何処だがお分かりの人はもういるかな?」
いつもの気楽そうな笑みを貼り付けたまま、ローランが尋ねる。レイトは窓の外に目を転じた。そこには剣山の様に鋭い、高い霊峰の連なりが見えるが……。
「ステラスフィア山脈が北にあるって事は……ここは『神聖アネスタ皇国』ですか?」
「正解‼」
ローランが満足そうに微笑んだ。そのまま壁に貼られた地図の近くまで歩み寄り、その一点——ドランバルド三国の国境が交わる、ちょうど中心点を指差した。
「アレステリスが位置するのはここら辺。三国の国境が集中する地域の守り手としての役割を担ってきた。だから、シドニア帝国でもおいそれとは手を出して来れない筈だよ。だからリンネの民たちは、ここで責任もって預からせて頂きますので、ご安心を」
「…ありがとうございます。…でも……よろしかったんですか?私達を勝手に匿う様な事をして……」
アイリスが疑問を差し挟む。レイト達はシドニア帝国に反逆した逆賊として追われている身だ。それをアネスタの一領主が勝手に匿う様な真似をすれば、国際問題となってしまう気がするのだが……。だがローランは、「それが問題ないんだなぁ」と相も変わらず呑気そうに首を振る。
「君たちを匿っているのは親切心だけじゃない。僕の上司からの命令でもあるんだ。上司の名は……『クリスティン・ビバリー・アネスタ』」
一同にドッと驚愕の波が広がっていく。『クリスティン・ビバリー・アネスタ』……その名が示す通り、神聖アネスタ皇国の最高権力者。若干23歳にして、愛と高潔の皇国を束ねる、女王の名前。
「ローランさんの上司が……アネスタの女王?」
「そ。僕の所属は正確には『アネスタ皇国王宮付脅怪対策騎士衛隊』——まぁ、通称『パラディン騎士団』の炎騎士隊長ってところだね」
「…アネスタには、神聖騎士を要する軍隊があるって噂があったけど……本当だったんだ」
サクラが感心した様に呟いた。
「なるほど……。…それで……アネスタの女王様が……どうして俺たちを?」
「勇者ディライトの復活や、シドニア国内の不穏な噂はこちらにも入ってきていてね。救援に向かうべきだったんだけど……今はアネスタもそれどころではないんだ。僕も国境監視の任を解かれて、君にこの話をする様に、と女王陛下から言いつかっている」
口元を引き締めたローランがレイトへと歩み寄り、黄金色の巻物を取り出してレイトの前に突き出した。中央部には剣を抱きとめる翼の紋が刻印されていた。
「アネスタの御紋……これは、召喚令状ですか?」
「如何にも。アネスタ国内では現在、正体不明の病と怪物が皇都『コーパーズ』を中心に広まりつつある。そこで君の力を貸して欲しいという訳だ。我が国の伝統に則り、無理強いはしないが……どうだい?」
正体不明の病と怪物……不穏な響きを含む言葉を噛み締めながらレイトは暫し思案した。目の前のローランは信頼に足る人物だと思う。彼が言うのであれば、リンネの民達を人質に取られて無理矢理了承させられるという事はないだろう。
それに何より、これは恐らくデブリス絡みの問題だと思っていいだろう。デブリーター達との戦いが長引いた事で忘れがちだったが、ディライトが戦うべき相手はデブリスであり、その背後にいる魔王ディアバルである。ならば、断る理由はない。
「…助けて頂いた恩もありますからね。引き受けますよ」
「ありがとう。それでは、命令書を読み上げさせて貰うね。しち面倒くさいけど、これも我が国の伝統ってヤツなんで……」
ヤレヤレと肩を竦めてローランが巻物を開き、目の前に掲げると、朗々とした声で読み上げ始めた。
「現世に蘇りし救世の勇者ディライト殿。貴殿の勇名は我が国にも轟きつつある。弱き者、罪なき人々を見捨てぬ貴殿の高潔さを見込んで頼みたい。勇者ディライトよ、どうか民を脅かす病と、それが齎す怪物から、我が国を救って欲しい。これは愛と高潔の国の女王、クリスティン・ビバリー・アネスタ———否、アネスタ国民全てからの依頼である」
次回予告
この世の最後の理想郷と謳われる地『アレステリス』。
大きな戦いを切り抜けた戦士たちにも暫しの休息の時が訪れる。
夏だ!
湖だ!
そうなりゃ水着だ!
開放的になった少年少女たちに、何も起きない筈がなく?
Saga17『ユートピア~湖畔の秘め事~』
※来週はお休みします。図鑑等の更新を行いたいと思います。