仮面ライダーミスリックサーガ   作:式神ニマ

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今回でこの章は終わりです。
連載が執筆分に追いつきそうで怖い……。


Saga22 栄光の光と影 ~ステファニー:オリジン~③

◇◇◇◇◇

 これで、何体目になるのだろうか?10体を超えた辺りからレイヴァクロス・カスタムの刀身が悲鳴を上げ始めている。ヒュペリオンの技術班によるカスタムメイドとは言え、元は民間にも出回る汎用銀剣だ。通常のデブリス戦闘においては十分な性能を持つが、流石にそれ以上の事態——恐怖爆発下での使用には流石に耐えられまい。保つかしら……?と、不安感を感じつつ、アイリスはライドラッグをベルトの錬結炉に装填し、予備のレイヴァクロスをローディングさせた。

 

「このぉっ!何匹湧いてくるのよっ⁉」

 マヤの疑問に答えられる者などいない。この元凶たるリリスにも出来ないだろう。リリスは悪魔系統の中でも発生件数の少ないデブリスだが、同じ系統のリコンと比較してパワーでは劣る分、今の事態——フライトパンデミックを引き起こす事に長けている怪物でもあるのだ。

 

 屋敷の外に飛び出した途端に猛然と襲い掛かって来たインプデブリスの群れ。恐らく悪魔が引き起こす災厄の中でも、最も危惧すべき事態が起こったという事だろう。先ほどオリヴィエが緊急事態を意味する信号弾を打ち上げてくれたが、増援の到着までに持ち堪えられるかどうか……。這い寄る弱気を振り払って、アイリス達は懸命に剣を振るい続けた。

 

「オォォォォォッッッホホホホホホッッ!なァんてブザマなダンスなのかしラ‼」

 

 癪に障る嗤いを響かせながら、翅を鳴らして飛ぶリリスが鞭に変化させた棘を振るってくる。デブリスの膂力にかかれば、鞭は先端速度も威力も相当なものになる。しかも、雑兵を相手にしながらというハンデを背負わされている状態では……。手を出せないでいる少女たちをもう一度甲高く嘲笑しながら、リリスがこちらへとゆっくり距離を詰めてくる。

 

「さァて……死ぬ前にモウ一度チャンスをあげマしょう。崇めて讃えナさい!この世で一番美しい者の名前ハ———‼」

 

「解りきった事を聞いてんじゃねぇ!それは……俺サマだぁぁぁっっっ‼」

「ぶへぇっっ⁈」

 

 浮かんでいたリリスが何かに激突され、そのまま潰れたガマガエルみたいな声を上げて倒れ込む。更に、追い打ちとばかりに激走してきた鉄馬の車輪に押し潰される憂き目にあう事になった。

 

「おっ……おノれぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ……‼」

「レイト、ハイル、ホルガーさん!」

「みんなゴメン!遅くなった」

「このバカ騒ぎの元凶はお前かバケモノめ」

 

 バイクから降り立ったホルガー・ブロワールが2人の仮面ライダーと共にリリスを睥睨して凄む。だが、敵も怯む事なく「たカが3人増えたクらいでなンだって言うのよッ‼」と再び顎をガチガチと鳴らした。高周波に引かれてまた集まって来た数十体のインプを従え、勝ち誇った様に嗤う。

 

「ホホホホホッ!サぁ行きなさい我が僕たち!ワタクシの美にトキめかない男も、敗けを認めナい惨めな女どもも、全員ぶち殺シてやるのヨっっ‼」

「そんな推し活あってたまるか‼」

「美とか言うなら、少しは美しい振る舞いをして欲しいものだがな」

「負け惜シみねぇっ‼コの数相手に何が出来ルとでもっ‼」

 

 ワンワンと羽音を鳴らす使い魔たちが、見渡す限り100体ほど。しかも中にはワーカータイプよりも戦闘に特化したソルジャータイプも混ざっている。言ってやる気はないが、これは確かに相当厳しい……と思った刹那、突如飛来した青い光球が群れの一角を吹き飛ばした。

 

「なにィッ⁈」

 

「面白そうじゃないか。僕たちも混ぜて貰うよ」

 悠然と現れたのはやはり、ネメシスとステファニー・ゴールドブラムの2人だった。

 

「ステファニィィィ……!このイモ娘がっ‼生きてやがったノネぇぇぇッッッ‼」

「…死んだも同然よ。でもね、アンタを道連れにするまで、死んでなんかやるもんですか」

 ステファニーの姿を見止めたリリスが虫の様な複眼に精一杯の怒気を漲らせるのが解った。だが、少女も負けず劣らない怒りを込めて怪物の顔を睨み返し、両腕のクローを展開させた。

 

「ネメシス、アイツの首はアタシが貰うわよ。周りの雑魚をお願い」

「構わないよ。僕の本命はどうせアッチだ」

 ネメシスの冷たい目がホルガー達を見つめて、ニヤリと曲がる。腰に取り出したスペリオルドライバーを巻き付けると、今度はコートのポケットからオレンジ色のルーンドラッグを取り出した。「それはっ……⁉」と目を剥くホルガーに構わず、バックルの中央部にそれを押し込む。

 

〈Take……Gravity Rune……!〉

〈On Your Mark……Get Set. On Your Mark……Get Set.〉

 

「変身」

 

〈Falling……. I am Nemesis.Anything that can be BREAK will be BREAK(形ある物は、必ず壊れる)……!〉

 

 グレーとオレンジがまだら状に混じり合った装甲に、6枚のサテライターズが両前腕部に手甲の様に配置された、仮面ライダーネメシスの新たな姿。名を『グラビティプラネッツ』という。

 

「さァ、天罰の時間……の前に、掃除かな?」

〈1 Knock Turn……. Nemesis Trial……!〉

 ネメシスがベルトのハンドルを押し込むと、ルーンドラッグに蓄積されたエネルギーがネメシスを包み込み、その姿が不定形に揺れる。そして次の瞬間……驚くべき事に数十体のグラビティプラネッツへと分裂したのだった!

 

「なんだとっ……⁈」

「『アステロイドシャドウ』……ただの幻とは一味も二味も違うと教えてやろう」

 

 宣言と同時に、全てのネメシスが手近なインプデブリスへと飛び掛かっていった。攻撃を受けた怪物達は実際にダメージを受け、次々と爆砕していく。分身の1つ1つが本物のネメシスにも匹敵する力を持っているとしか思えない。確かにただの幻影などとは全く異なる原理で作られている様だった。

 

 使い魔たちがネメシスに屠られていく中、リリスとステファニーの両者も激しくぶつかり合っていた。両腕の鞭を激しく振るうリリスに対して、ステファニーはウェイビングローブを身体に纏わりつかせる防御形態を取って悪魔の懐にまで肉薄した。ベルティドイェーガーの鋭爪が悪魔の体に深々と食い込み、その体に幾筋もの傷を叩き込んでいく。黒い血を撒き散らしながら、リリスが「おのれぇぇっっ‼」と憎々し気に叫ぶ。

 

「なんテ醜い……!なンて無作法な戦い方なのかしラッ……‼アンタみたイな山猿が近くにいタらっ……ワタクシの美しさにキズがツくわぁぁぁぁっっっ‼」

「そりゃどうも。アンタのお眼鏡に叶わないなんて、最っ高の栄誉だわ」

 吐き捨てつつ、左のクローをリリスの細い腰へと突き立てると、そのまま爪の間のエレメントガンを斉射した。体内を蹂躙される痛みに、悪魔が甲高い悲鳴を上げて地面を転がり回った。

 

「おのレっ‼ならコレはドうっ⁈」

「……………っ⁈」

 

 リリスが再び顎をかき鳴らす。すると、上空から2体のインプデブリス・ソルジャーが飛来した。主であるリリスを守る様に立ちはだかったインプの胸部がモヤモヤと歪み……人間の顔を形成した。年齢の違いはあれど、よく似たその2人の顔がステファニーを見つめて、安堵した様に微笑んだ。

 

『『…お帰リ、ステフ……。こノ瞬間をミンナで待っていタヨ……』』

「お父様……ラッセル兄さま……」

『『ソウだ……さぁ、武器をシまってオくれ。オカアサマもきっとそんなキミを見たらサゾ悲しまれ———』』

 

「…いい加減にしてくれる?そんな下手な猿芝居は……もうウンザリなのよ‼」

〈OVER DRIVE……〉

 

 ベルティドイェーガーのエレメントガンから、エネルギーがそのまま爪の形に精錬されて現出した。『オーバードライブ』と呼ばれる、武器のリミッター解除形態はまるで、ステファニーの怒りがそのまま具現化した様であり……。

 

 否、実際ステファニーは怒っているのだ。人の記憶を利用する悪魔の所業にも、かつて愛した人々の惨めな姿にも、そんなものが世界の全てだと思えて逃げる道を模索しようとしなかった嘗ての自分の弱さ、その全てに!

 

 エレメントを怒気の如く漲らせて、ステファニーの目がリリスを……否、更にその奥に存在する全ての根源、魔王『ディアバル』を睨み据えて加速した。

 

 父と兄の顔を生やしたインプの胴体を叩き切り、彼らが爆砕する光景すら見ずに女悪魔に接近した。オーバードライブ状態では、満タン状態のライドラッグでも30秒と待たずに効力が切れる。高々と振り上げたベルティドイェーガーのエネルギーに当てられて、リリスの顔がハッキリと照らし出される。薄気味の悪いその顔を、ステファニーが精一杯の憎しみを込めて睨み付けた。

 

「ひ、ヒィィィィィッッッ⁈やっ……ヤめてせめてワタクシの顔だケは———‼」

「黙れ!二度と生まれて来んな‼」

 

「ヒぎゃあァぁぁぁぁぁぁァァぁァァァっっっっっっ…………⁈」

 

 怒りの爪撃を頭部に叩き込まれ、リリスが絶叫を上げる……が、それも頭部が完全に蒸発しきる僅か数秒間だけの事だった。胴体だけとなった女悪魔の体が塵の様に霧散して崩れ落ちていった。

 

 そして、今まで行動を指示していた司令塔がいなくなった影響か、リリスが撃破されると同時にインプ達の動きが一斉に硬直していった。その隙を見逃さず、分身したネメシスが一斉にベルトのハンドルを押し込んだ。

 

〈Nemesis Judgement……!〉

 

 拳撃、蹴り、斬撃や射撃攻撃。様々な必殺技が轟音と共に放たれ、インプの群れが一斉に爆砕した。全ての分身が消え去り、1体だけに戻ったネメシスが爆炎の中、息も上げずに佇む光景を見つめながら、「…なんて奴だ……」とオリヴィエがぼやいた。

 

「あの数をこの一瞬で……味方でいてくれたら、頼もしい事この上ないんだけどね……」

「解らないわね……どうして、それでも彼と敵対しようとするのか」

 ステファニーがこちらを冷たく見つめながら、問いかけてきた。

 

「アタシのコト嗅ぎ回ってたんでしょ。だったら、知ってるのよね?パラディンというシステムがアタシに何をしたか……」

「…ああ。だが、それは———」

「元凶はあの悪魔?それは解ってるわ。だけど、人が悪魔に篭絡されるのは全て心に弱さを抱えているからでしょ。そんな弱い存在にこの世を任せているから、どれだけ戦い続けてもこの戦いは終わらないんじゃない?」

 

 深い諦観と絶望を込めて、ステファニーが告げる。

 

 彼女を追いやってしまった原因、それは確かに悪魔達かもしれないが、実行者となったのは人間達だ。

 悪魔は決して人の中に悪心を作り出す訳ではない。個人が元々微かにでも持っていた心の隙を彼らは増幅させて利用する。庶民であろうが、貴族であろうが、教会徒であろうが、パラディンであろうが……人の心から弱さが消える事などあり得ないのだ。功名心でも、僅かな暴力衝動でも、他者を疎ましく思う気持ちでも、そんなありふれた心の弱さを人が持ち続ける限り、悪魔は生まれ続ける事が出来るだろう。もし、この戦いを終わらせようと願うならば、確かに人を超えた力に任せた方がいいというのも解る話ではあるが……。

 

「話にならん。それはお前が信用できるという前提が成立してこそ、だ」

「へェ……。信用する気にはなれない、と?」

 

「生憎、俺は感情に左右される人間だ。仲間を殺して、その力を我が物顔で振るう貴様を信用して任せる気にはならん。全くもって……」

 

「気に入らない。それで十分だ……!」

 

「…気に入らないのはこっちさ。我らが叡智の結晶を、これ以上君ら如きに使われてなるものか……」

 

『そんな理屈はどうでもいいんだよ、ネメシス!僕らの叡智が生んだ怪物が、あそこにいる人々を苦しめている……。それを止めたいと願うのは……人として、当然だろう‼』

 

 脳裏に浮かんだかつての“友”の言葉を振り払い、ネメシスが再び大量のアステロイドシャドウを出現させた。だが、ディライト達も数の不利に怯む事なく挑みかかって行った。先頭を走るディライトがハイレンジプレディクションを起動させ、分身の解析を試みる。見た目は仮面ライダーネメシスそのものだが、結論から言うとこれは生物ではない。その体を構成しているのは、主に土や岩などの鉱物の様だった。

 

「なるほど、錬真力で動く土人形……ゴーレムみたいなものか。どうであれ、攻撃が当たりさえすれば!」

「フン。それくらいなら、俺にも似た様な事が出来る」

 

 ホルガーが『征蝉』を発動させる。流石に数はあちらほど多くは出せない。が、スピードに関してはこちらが上であり、しかもこの分身は並の攻撃では消す事ができないのだ。戦力としては十分に拮抗できると言っていい。

 

「長引かせるつもりもない……!ハイル、一気に本丸を!」

「おうよ!」

「させると思う⁉」

「うおっ⁈」

 黒い布が首筋に絡みつき、ディライトとソーディアの動きが封じられる。「彼の邪魔はさせないんだから!」と、ステファニーがベルティドイェーガーを叩きつけ———る寸前で、飛来した剣に阻まれた。対照的な白いウェイビングローブを靡かせて、ステファニーの前に1人の少女が着地した。

 

「アイリス……ルナレス!」

「あなたの相手は私よ!2人とも、お願い!」

 

「ああ、頼むよ!」

〈テラワット‼〉

〈ライトグラム‼〉

 

 グン!と加速したディライトとソーディアを阻む様に数体の分身が立ちはだかるが、それぞれの武器を叩きつけながら一撃で尽く粉砕されていく。見た目がどうであってもただの土塊でしかない為、耐久力はそこまでではないらしい。

 戦場を飛び回るオリヴィエの双剣と、ホルガーの力によって殆どの分身が撃滅された。残っているのが即ち本体だ。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっっっっ‼」

 

 ディライトのミキシングラッシャー。ソーディアのグラムバスター。ホルガーの禍照哭。オリヴィエのオートクレールとグローリーユーズ。ネメシスの四方を囲み、その体に必殺の一撃が炸裂する……が。

 

 ガキィン‼という撃音が響き渡る。攻撃を受けたにも拘わらず、ネメシスの体は傷1つつかないどころか、その場から微動だにしなかった。まるで頑丈な柱でも殴ったかの様な衝撃がそれぞれの手に伝わってくる。装甲が頑丈なのとは違う……と、レイトは気付いた。ネメシスの足元は酷く陥没している。となると、答えは1つ……このグラビティプラネッツは単純に物凄い重量を持っているのだ。

 

「なにっ……⁉」

「大したものだろう?これが君たちがエレメントと呼ぶものの真髄……この宇宙を構成するエネルギーの力だ。君たち人間如きでは……」

〈3 Knock Turn……. Nemesis Execution……!〉

「…僕の領域には届かない」

 

 ベルトから全身にエネルギーがチャージされると同時に、胸部の装甲がバクン!と音を立てて開放された。内部に内蔵された渦潮の様な意匠が少しずつ白い光を帯びていき……。

 

 非常に高質量の惑星が極限まで狭い領域へと押し込められた時、光すらも飲み込む超重力を発生させる事がある。それこそが宇宙に存在する暗黒の“穴”『ブラックホール』と呼ばれるものだ。そしてそれの対、吸い込まれた物質を放出する領域である『ホワイトホール』も存在するのではないかという説も存在する。

 重力を司る『仮面ライダーネメシス グラビティプラネッツ』は自らの質量を増大させたり、星の構成物質を自由に操る力を持つが、最大の力はそこではない。生み出されたアステロイドシャドウは崩壊と同時に自らが受けたダメージ……即ちエネルギーをネメシス本体へと送り込む事が本来の目的なのである。ブラックホールさながらネメシス本体に吸い込まれた膨大なエネルギーの向かう場所……ネメシスの胸部重衝撃砲『ホワイトアウトパニッシャー』へと収束していくのだった。

 

 稲妻の様な轟砲と共に、ネメシスを中心とした一帯が白く塗り潰され……直後、物凄い衝撃が周囲に解き放たれた。全方位攻撃モードと呼ばれるこの発射形態では射程こそ短いが、それでも彼に取り付いていたディライト達を攻撃するには充分だ。

 

「…………っっ⁉レイト———ッッ‼」

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ⁈」

 ディライトとソーディアが地面に転がり、そのまま変身が解除された。体の各所の傷を負っており、アイリス達の背筋にゾッと冷たいものが走る。

 

「レイト、ハイル‼大丈夫⁈」

「…なんとか、な……。咄嗟にホルガーさんが、自分の力で……」

 攻撃が発射される瞬間、ホルガーが征蝉を発動させて、分身をレイト達に被せたのだ。その防御能力と仮面ライダーの生体装甲のお陰で、ダメージはある程度消せたのだが……。

 

「…ホルガーさんっ……オリヴィエさんは……」

 閃光に眩んだ目を必死に凝らして辺りを見渡す。すると、掠れた呻き声が微かに聞こえた。その声の先には……血塗れで仰臥する、2人の騎士の姿が……。

 

「…………っ⁈ホルガーさんっ……!オリヴィエさ———っ‼」

「まだ生きてるさ。力を明け渡す前に死なれちゃ困る」

 濛気を破って、仮面ライダーネメシスが悠然と歩み寄る。グラビティプラネッツの力なのか、2つに分裂したネメシスサイザースの切っ先が、その目的を雄弁に語っていた。

 

「…やめ、ろ……!ダメだ、2人ともっ……もう、いいですよっ……!死ぬくらいならっ……力なんか、渡したって———‼」

 

「…それは、命令か……ディライト殿?」

「嬉しい事を、言ってくれるじゃないか……。…だけどっ……できない相談だ……」

 誇りたる鎧も砕かれ、体中に深い裂傷を負っているにも拘わらず……2人の神聖騎士は変わらず凄絶に笑っていた。流石に面食らったのか、ネメシスが仮面の奥で戸惑う様な息を吐いた。

 

「…理解できないな。どうしてそこまで命を懸けようとする?どうせ君らがどれだけ足掻いたところで、この世界は変えられない。それならば———」

「…貴様に任せる方が、確かに利口かもな……。だがな……たった1人で何事も成せる気でいる……そんな奴に、俺たちの力を託す気はない……」

「…どういうコトだい?」

「解らないのかい?何故パラディンの力は、受け継がれるのか……解らないのなら、君の叡智とやらもそこまでだよ、ネメシス……。…あと半分は嫌がらせだ。残念だったね……」

 

「……っ!…貴様ら……っっ‼」

 侮辱と受け取ったのか、高々と振り上げられたネメシスサイザースが2人の胸に深々と突き刺さった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっ———‼」

 

 無様に這い蹲ったまま、レイトはただそう叫ぶしか出来なかった。鮮血に塗れた2人の瞳が最後の優しさを湛えてレイト達を見つめ……そして、消えて行った。その事実が、自分がひたすら無力であるという事実をレイトに突き付けた。

 

 また、命が刈り取られた。

 自分の目の前で、為す術もなく。

 

 どうして……どうして、こんなにも無力なのだ……⁉

 

 大いなる力を託された。仮面ライダーの名を名乗ると決めた。

 ならば、その道で……これ以上、敗ける訳にはいかないのに‼

 

 人々の希望を担う、勇者になると誓ったのではなかったか?

 誰かを守れるヒーローになるのではなかったか⁈

 

 …俺は、無力だ……。

 

 しかし、力なく項垂れたレイトの視界の端で、ユラリと1人の影が立ち上がるのが見えた。

 

「は、ハイルッ……⁉そんな体で———!」

「まだ立てるのか……?たかがディライトの模造品風情でよくも———」

「うるせぇっ……!気に食わねぇんだよ……。お前みたいな……神サマヅラして命を踏み躙る奴はなっ……‼」

 

 傷だらけの体と、レイトと同じく無力を湛えた表情。しかし、その全身からはそれを圧する程の怒気が放たれていた。力を込めたその腕が唐突に輝きだし、握られたソードラッグを包み込むと……次の瞬間、そのもう一端に黄金色の刃が形成された、小刀の様な形へと精錬された。

 

「…覚悟しとけ。今からお前に刻み付けてやる……。本当の……暴力の恐怖って奴をな……‼」

 

〈デウス・マキナ‼アンビテック・ストラスラッシュ‼〉

 

 小刀の柄をデウスカリバーⅡの剣先へと装填する。ソードラッグの刃が増加され、長大化したデウスカリバーⅡから雷鳴の様な轟音が鳴り響く。同時にハイルの周辺の空間がひび割れていき、そこから浸出してきた紫色の光が彼の体を包み込んでいった。苦痛の様な怒りの様な表情に、しかし確かな決意を込めて、柄を握りしめたハイルが叫んだ。

 

「…変身‼」

〈マキナ……ブレッシング……‼〉

 

 振り抜かれたデウスカリバーⅡがひび割れていた空間を更に破断し、そのエネルギーに触れたハイルの体を新たな姿へと変質させていった。

 

 シンプルなソーディアライトブレードを基軸に、嘗ての剣人体を思わせる鎧が体の各部に装着されていく。いくつもの装甲板を重ねて、鋲や組紐の様な意匠が刻まれた鎧は、レイトが生まれた地である日本の鎧を連想させた。3つの角が鋭く伸びるマスクの左バイザー部分が鋭く割れると……その奥から、鋭く光る複眼の一部が露出した。

 

〈魔穿……!鐡剣……!ソーディア・マキナ‼…Just bring it……!〉

 

 どこか遠くで雷鳴が聞こえる。唐突に振り出した滝の様な雨を全身に浴びながら、剣身一体の魔戦士——『仮面ライダーソーディアマキナ』が、刃の様な鋭い視線を突き付けた。

 

 




次回予告
大いなる力が目覚めた。
それは天なる者を打ち砕く、絶対者の力。
その力に惹かれる様に、コーパーズに迫る巨大な危機。

…食い止めなければならない。仮面ライダーの名において。

Saga23『ジャッジメント・デイ~世界が終わる時~』
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