竜のエルシングスだったジークバルドよりディアバルの正体が語られた。かつて神にも匹敵する完全なる生命体を目指して創造されたディアバルだったが、人の手を離れ、完全な厄災の怪物と化してしまったのだった。
改めて打倒ディアバルを誓い、仮面ライダーネメシスの協力の末に撃退する事に成功するが……突如、急報が入る。
デブリーターによって率いられたシドニア軍が、アネスタへの侵攻を開始した……と。
◇◇◇◇◇
「君たちに聞いて欲しい事がある。…いや、君たちが知らねばならない話だ。今この世界で起きている、全ての始まりは———」
「た、大変ですっっ‼」
魔王ディアバルとの戦いを経て、自らの過ちを知り協力する事を約束したネメシス。彼の口からある“真実”が語られかけた刹那、転がる様に駆け込んできたのは、なんとクリスだった。
「北の国境守備隊から知らせが届きました。今朝がた、村が異国の軍の襲撃を受けて壊滅したそうです……。その軍というのが……人と怪物は混じり合った姿の兵が混ざっていたとも……」
「………………っっ⁈」
彼女の口から語られた急報。それとほぼ同時に多くの避難民が集まるエルネスティナ城の上空を飛翔する影が多くの住民達に目撃されていた。怪物……と呼ぶにはあまりに人間的であり過ぎるその影は、遥か高高度から人々が集まる密集地を捕捉し、背中の翼を全開に広げて地面へと降り立った。
「な、なんだコイツら———⁉」
「行くぞお前らぁっ!“
鷲と人間が一体となった様な怪物兵達が左腕の器具——『デブリシリンジャー』から爆発性ニードルガンを人々や建物に次々と撃ち込んでいった。パニックに陥る民衆達をまるで追い立てて楽しむかの様に次々と鳥人間達が飛来する。その肩に刻まれている紋が示すものとは……。
「同時に、シドニア帝国から宣戦布告の文書が提出されました。シドニアを中心とした新たな国家を建国する為に、アネスタの土地全土を明け渡せなどと宣っているそうです……」
「シドニア軍だと⁉」
「バカな……⁉先ほど北部国境線を超えられたばかりではないか……‼」
「飛行タイプの怪物兵です!既にエルネスティナ内部に一定数が侵入されています!」
「なんという事だ……!これが噂のデブリーターか‼」
元々アネスタの騎士隊は騎兵による突進力と敵の情報をいち早く掴む機動力、その両輪による“攻め”に特化した軍隊だ。だが、内部に攻め込まれた場合、こうも脆く崩れやすいとは……。
だが、ここで弱気になる訳にはいかない。上の者が竦んで、どうして末端に兵士達が実力を発揮できようか。震える足を叱咤し、ゼイバスが「怯むな!」と指揮所内で声を張り上げた。
「セオリーは悪魔想定戦とさして変わらん。まだ数の上ではこちらが上だ。住民を屋内に退去させつつ、騎士達は必ず一小隊以上で各個撃破に当たれ。我らには、勇者ディライトと神聖騎士達の庇護がある事を忘れるな‼」
たかが気休め……しかし、されど気休めである。この程度の事で人間は思いもかけない力を発揮できる事もある。先ほどより熱量の上がった指揮所の中を眺めながら、ゼイバスたち指揮官はすぐに送られてくる情報に耳を傾けて、実戦の只中へと潜っていく。
一気呵成に敵の本陣へと攻め入ったデブリーター……シドニア軍はその状況に舞い上がっているかの様だった。飽くまでも彼らは威力偵察を目的とした先攻部隊……であった筈なのだが、人を大きく超えたデブリーターの力に酔いしれるかの様に、宮殿の各地で暴虐の限りを尽くしていた。
「ヒャハァッ!相変わらずいい暮らししてやがんぜコイツら!」
「全部焼いて奪っちまえ!アトラーク国王のお許しは出てるんだ」
「劣等人種どもが何人死のうが知った事じゃねぇ!テメェらの恐怖が俺らの———ぐへぇっっ⁉」
デブリーターが細剣を人々に突き刺そうとした刹那、飛来した弾丸によって阻まれた。
報せを受けて、早々と現場に向かっていたレイトとネメシスが到着したのだった。バイクから降り立つと、周囲の鳥人間達にそれぞれの武器から牽制の攻撃を放っていく。
「て、テメェかぁっ!あん時ゃよくもやってくれやがったなぁっ‼」
「あれ……前にジャファーが使ってたグリフォン型のデブリーターか」
各部の色彩が異なり、肩部にはシドニア帝国の紋が刻まれているが、確かに前に交戦した事のある飛行タイプのデブリーター『レオニーグ』で相違ないだろう。
「なんか言ってるみたいだけど……お知り合いかい?」
「デブリーターとはずっとやり合ってたからなぁ。どんな恨み買っててもおかしくはないけどさ……。…というか、本当にこの件にも力貸してくれるの、ネム?」
「ネムと呼ぶな。コイツらがゴチャゴチャ五月蠅いと碌に話もできない。それに……仮面ライダーを名乗ったんだ。ケジメはつけるさ」
ネメシスが迷わず腰にスペリオルドライバーを装着する。どうやら任せてもいいらしい。それを少し頼もしく思いながら、レイトも「それじゃ頼んだ!」とディライトドライバーを取り出した。
〈ウインド!オブシディアン!ファンタスティック‼飛揚のレシピ‼〉
〈Take……Flare Rune……!On Your Mark……Get Set〉
「「変身‼」」
〈ブロウアップニンジャ!ウィンディアナイツ‼〉
〈I am Nemesis.The REGISTER will be go down in flames……!〉
「行くぜ!ここから先は!」
「天罰の時間……かな?」
「そして俺たちのサーガだ‼」
「調子のいいやつだな、君も!」
ディライトが風のエレメントを身に纏って、上空の敵を殲滅するべく飛翔する。ネメシスは地上の担当だ。槍から牽制の火線を放ちつつ、レオニーグが支配する領域へ2人の仮面ライダー達が果敢に飛び込んでいった。
◇◇◇◇◇
「でもデブリーターの奴ら、なんでアネスタに攻め込んできたんだろ?デブリスに対抗する為に巨大国家を作るって……あれアトラークを騙す為の方便だったんじゃなかったっけ?」
「まったくのデタラメって訳でもねぇんですよ。最終目的がそこじゃねぇってだけで」
かつて組織に所属していたジェイクが苦虫でも嚙み潰しそうな顔で、マヤの疑問に答える。
「どの道、シドニアだけじゃスペリオルを倒せるだけの戦力にはならねぇ……と思ってたんでさ。シドニアを乗っ取った後、三国を武力で併合して、デブリーターの戦力を増強させる……ここまでが計画の第二段階ってヤツでやして……」
「…そういう事は、サッサと報告して頂きたかったですね……」
クリスが珍しく苛立たしそうにジェイクを睨み付けた。まぁ、知らされていたところで悪魔達の対処に追われていたこの国で、どれだけの備えが出来たかは疑問符が付く訳だが……。
「…ハァ……出来れば、今はディアバル打倒の為に協力頂きたいところなんですけどね……」
「無理……でやしょうね。ジョーンズの親父の事だ。ディアバル復活くらいは見越して準備をしてたんじゃねぇかと思いやす。この国と戦争しながらでも、あの魔王に対抗できるくらいに強力な兵器を……」
「ジェイクも知らないの?」
「アイツは相当に用心深い男でやすので……俺やウォルターでも計画の全容を把握している訳じゃねぇんでさぁ。全部知らされてんのは恐らくパトリシアくらいじゃねぇか……?」
「彼らの目的はどうあれ、今は一刻も早くこの戦争を終わらせないと。これで下手に恐怖が蔓延すれば、それこそディアバルの思う壺だわ……」
戦争が起これば、それこそ平時とは比べ物にもならないくらいの恐怖が広範囲で発生する事になる。デブリーターの目的がどうであれ、今は人間同士で争い合っている場合ではないのだ。
この地域の避難誘導は大筋で終わったところだ。自分達も今この事態に対処すべしと決めて駆け出しかけたアイリス達を、「お待ち下さい」とクリスが制した。
「なんですか?」
「いい機会、というのも不謹慎ですが……あなた達の立場も立場です。それなりに相応しい装いをしませんか?」
そう言って艶やかに笑うクリスはやはり見惚れるほど美しい……が、同時に少女たちの脳裏に、イヤな予感……と僅かな寒気が走った……。
◇◇◇◇◇
戦局は多勢に無勢。おまけにこちらは周囲の被害を確認しながら、逃げ惑う人々を守る責務がある。つくづく仮面ライダーという役割は難儀なものだ。こんな損な役回りを引き受けるなど、我ながらどうかしている……と思う一方で、今はそれも悪くないと感じる。
目を凝らし、耳を澄まし、頭を働かせ、そして心を開いて。そうして見つめるこの世界は、人も、建物も、匂いも、肌で感じる空気の感触も、全てが驚くほどの彩度に満ちている。『ラショナル』がどれだけの情報量に満ちた世界であっても、この“現実”に満ちているものには決して及ばないだろう。
今まで犯してきた罪を償う為……それも勿論あるが、同時に今はこの世界の事を深く知りたいと感じる。だからこそ、滅びの淵に立とうとしているこの世界の人々を放っておく事はできない。それこそが、今のネメシスが戦う理由である。
「チィッ……!撃て撃て撃てぇっ‼」
レオニーグが群れを成してニードルガンを無数に乱射して来る。ネメシスの胴部に取り付けられたサテライターズが分離し、防御の陣形を構えようとする……が、途中でそれは打ち切り、もっと広範囲に展開する。周囲にまだ逃げ遅れた人々がいる様なのだ。彼らの守護を最優先。自らに降りかかる火の粉はネメシスサイザースを旋回させて防御する。何発かは着弾したが、その程度の痛みで今のネメシスが止まる事はない。立ちはだかるレオニーグ全てを照準し、サテライターズと共にネメシスが跳躍した。
〈Dark Consecrate…….Hell or Heaven……!〉
「はぁぁっっ‼」
必殺技が着弾し、数体のレオニーグが爆炎を上げた。これで地上の敵は殆ど掃討した筈だ。同時に上空でも大勢を決した様で、数体のレオニーグがウィンディアナイツの必殺技を受けて地上へと落下していく。ディライトが着地すると同時に、デブリーター達も変身が解除され、人間の姿へと戻る……が。
「あれ?コイツらは……」
「なんだ、やっぱり知り合いだったのか?」
「いや、前に逆恨みされた事があって……。何とかいう悪名高い討伐系ギルドの団員だった筈……」
ツンベルクという町で、火を噴くコカトリスの討伐を巡ってレイト達と対立した男達がいた。自分達の利益しか考えず、結果的に町の人々を危険に追い込んだハンター達をディライトの力で成敗したのだが……それが先程までレオニーグに変身していた男だった。さっき彼らがこちらを知っている風だったのはそういう事か……と、妙に納得するレイトだったが、ネメシスは「ギルドだって?」と眉を顰めた。
「それじゃ、彼らは民間人って事か?そんなのまで戦争に動員しているのか、デブリーターは……」
「……?それがどうかしたの?」
「おかしいと言うか……あまり普通の事ではない。時代にもよりけりだが、戦争というのは通常は王侯貴族や騎士身分でやるものでないか?」
そういえば……と、レイトも自分の知識を辿ってみる。確かに戦争というのはかつては貴族の“特権”の様なものだった……と聞いた事がある。民間人をも戦力に巻き込んだ戦争となると第一回十字軍遠征か、そうでなければ……第一次世界大戦と第二次世界大戦。この2つの世界大戦では多くの国が民間人をも戦争に動員し、その様から総力戦とも呼ばれた。それが出来た背景には機銃など様々な兵器の発達があったと言われている訳だが……。
強力な兵器の導入による、民間人の戦争への参加。まさしく今の状況そのものではないか?ネメシスが懸念する事がレイトにもよく解った。
「…このまま……デブリーター達にアネスタへの侵攻を許したら……」
「あァ。きっと多くの民間人を含めた人間達が、彼らの戦争に加担させられる事になるだろうね。『スペリオル』との戦いなんて、バカげた妄言に……」
「妄言とは……随分な言い様じゃなくって?」
どこか妖艶さを含んだ女の声、それと同時にバシャン!と水が跳ね上がる音と共に、地面を水面の様に突き破って3体の怪物兵士が出現した。
「お前ら……!」
「お久しぶりね、ディライトの坊や」
「隣のは知らない人だねぇ。ソーディアのお兄さんはいないのかな?」
ボロボロの外套に身を包んだ、黒骸骨は『ライティアウィドウ』。
ふざけたまだら模様の小柄は、チェンジリングタイプのデブリーター『グリンファング』。
そして背後で黙りこくったまま、しかし異様な存在感を発揮しているのはデブリーターの首魁『デイヴィラーク』。その正体は、かつてアイリスの聖任に携わり、自分達とも接した事のあるあの男……。
「…あれから二月も経たんというのに、ここまで覇気を漲らせるとは……。相当な修羅場を乗り越えた様ですなぁ、レイト殿?」
「ジョーンズ司祭……!答えて下さい!どうしてこんなバカな事を———‼」
「前にも申しておる。堕ちゆくこの世界を救済する為に、神を殺してその力を手にする。その為にもまだ力が必要なのだ」
「…それがバカな事だって言ってるんだ……」
我慢ならないとばかりに、ネメシスが吐き捨てる。
「聞け。知らない様だから教えてやる。ディアバルはもう蘇っている。奴は死しても、また人々の恐怖を苗床にして更に力を高めていく。君らのこのバカげた振る舞いも、結局奴に力を与えるだけなんだよ」
「ふぅん、バカげた……ねぇ……。アハッ、アハハハハハハハハハッッッ‼」
グリンファングが突然、堰を切った様に嗤いだした。
「…なにが可笑しい……?」
「ディアバルが人々の恐怖で強くなるって?悪いけどねぇ、それ位はとっくの昔に知ってるんだよ」
「………………っ⁉」
「私たちの情報網を舐めないで頂戴。ディアバルの力がどれだけ強大でも、それならそれを上回るだけの力を持てばいいだけ……そうでしょう?」
ライティアウィドウの問いかけに、デイヴィラークがうむと頷いて答えた。
「ディアバルを上回るだって……?そんな簡単に———」
「信じられぬか?ならば、その根拠を見せてやろう……!」
〈KRAKEN VORTEX……INFUSING……!〉
左手のデブリシリンジャーを押し込むと、霊薬に充填されたクラーケンデブリスの力がデイヴィラークの全身へとリチャージされ、即座に肩口と背部に搭載された触腕『アームドコンクエスター』の先端部からレンズの様な砲口が覗き……四方八方に向けて、破壊の閃光が迸った。
血の様に赤いレーザーは着弾点を高熱で焼き切り、ほぼ一瞬で建物が崩れ去り、地面が沈み、多くの人々の悲鳴が辺り一帯に撒き散らされる。そのあまりの暴威にネメシスですら「なんて事を……⁉」と息を呑んだ。
「…どうしてっ……どうしてこんな事を———⁉」
「クラーケンはディアバルに極めて近い特質を持つデブリスでな……人々の恐怖を糧として力を増すのは、この儂も同じという事よ‼」
「なんだと……⁉」
人々の悲鳴が木霊する中、まるでその怨嗟を吸い上げるかの様に、デブリシリンジャーに嵌まったライドラッグが輝きを増していた。
もしその言葉が本当であるなら、デイヴィラークはまさしく人の手によって造られたディアバルと言っても過言ではない存在だと言えるだろう。
だが……ディアバルに対する事が出来る力であるなら、何故それをこんな非道に用いるのか。アイリスを聖任し、神聖騎士として人々を苦難から救い続ける道を説いた人である筈のあなたがどうして……!
「…ふざけるなよっ……‼」
全身に怒りを漲らせて、ディライトが叫んだ。
「それだけの力があるのに……なんで人同士で争い合わなきゃならないんだ!スペリオルを倒して、この世界を救済する?いつかそんな事を成す為に、今を懸命に生きている人達を見捨ててもいいって言うのかアンタは⁉」
「…実に勇者らしい意見よ。それが間違っているとは思わん。だがな!1つ問おう、レイト殿。この破滅寸前の世界を、このまま救う事など……果たして出来ると思うか?」
「なに……?」
「ディアバルは勿論だが、通常のデブリスですら我らは完全に殺す術を持たぬ。この様なチッポケな瓶に納めても、その体細胞の一部は霧散し、何れまた別の異形へと姿を変えて我らに牙を剥く。この様な病魔に侵された世界を、我らの微力な錬真術如きで救えると……お主は本当に思っておるのか⁉」
「……………っ」
迷う様に、ディライトが口ごもる。勇者らしく、あると言えたらどんなにいいだろうか?だがジョーンズが言う通り、デブリスを殺しきる術は今の人類はおろか、ディライトにもないのだった。
デブリスとは質の悪い癌細胞の様なもので、僅か一片でも急速に成長し、人を蝕む怪物へと姿を変えてしまう。怪物は土地を、植物を、人をも汚染し、その恐怖がまた怪物の糧となっていく。その出現から300年以上が経ちながらも抜本的な対策は生み出せず、人の生活圏は今でも少しずつ蝕まれているのだ。
——状況を打開する為には、今のままではいけないのかもしれない。
——世界の法則を超えた、もっと強大な力があれば……。
「故に、奪う!ディアバルが異界より齎されたのであるならば、世界を超えてそれ以上の力を奪い去ればよい!それの何が間違っておるか‼」
「そんなのっ……!ディアバルと同じになるだけだって言うのが、解らないのか‼」
「そんな事は百も承知!癒せぬ病に侵された世界を浄化できるのならば、魔王にでも墜ちてみせるわ‼」
紫電を帯びたデイヴィラークの細剣が、アームドコンクエスターの連撃が、ディライトとネメシスの襲い来る。狂嵐の様に猛るデイヴィラークに向けて応射するが、その勢いは止まる事を知らない。その様は正に祟り神といった風情である。
「そんな無茶苦茶な話があるかよ……!」
「…もはや理屈ではないんだ……。だが、彼もまたディアバルが生み出した恐怖の支配下にある……。ならばっ……!」
「…っておい、ネム⁉」
何かを小声で呟いたネメシスが、唐突にデイヴィラークに向けて飛び出した。砲火の驟雨を避ける事もしない、正に捨て身の突撃である。だが、先の戦闘で重傷を負っていた彼がそんな戦い方をして耐えられる筈がない。間もなくデイヴィラークの触腕がネメシスの体に巻きつき捕らえた。
「ネム、どういうつもりだよ⁉」
「…言ったろう……。ケジメをつけるって……」
「ケジメだと?どういう意味だ?」
彼の行動を不可解に思ったのは向こうも同じらしい。デイヴィラークの問いかけに、ネメシスが「…言葉通りの意味だ……」と答える。
「ライアン・ジョーンズ……君には……いや、この世界に生きる全ての者には知る権利がある……。この世界の悲劇の元凶を……ディアバルを生み出したのは、僕たちだという事を……!」
「………っ⁈なん、だとぅっ……‼」
思いもかけないネメシスの言葉に、その場にいる誰もが息を呑んだ。
「…ディアバルを生み出したって……ネム!どういう———⁉」
「貴様っ‼」
転瞬、デイヴィラークがネメシスを縛り上げる触腕の力を強めた。全身を締め上げられ、装甲がギシギシとスパークを上げる……にも拘らず、ネメシスは悲鳴も上げず、抵抗する素振りも見せない。ディライトは彼の意図している事を理解した。
——もし、『ディアバルを生み出した』という彼の言葉が本当なら……。
——アイツ、1人でその罪を背負うつもりか?
——自らの死をもって、彼らの怒りを引き受けるつもりなのでは……。
「ネム!やめろバカ!」
「…どういう事だ……!説明しろ!事と次第によっては———‼」
怒りを燃え滾らせ、アームドコンクエスターの力が更に跳ね上がる。獲物に食らいつき全身の骨を砕く大蛇の如く、仮面ライダーネメシスが押し潰される……その刹那の瞬間だった。
不意に、空に瞬いた一筋の光がデイヴィラークとネメシスに降り注ぐ……直後、遅れて雷の如き轟音が轟いてネメシスを締め上げる触腕が焼き切られていった。
「何奴⁉」
デイヴィラークが空を睨み付けると、その視線の先……まるで陽星の様な光輝がゆっくりと彼らに向けて降下して来るところだった。
…否、星ではない。それは明らかに人である。
色とりどりに色彩を変える宝飾が埋め込まれたブレストプレートを中心に、パールホワイトの手甲やブーツに包まれた華奢な体。まるで意思を持っているかの様に靡いている腰布や背中のスカーフはさながら天使の翼。息を呑む美しさとは裏腹にその右手には細身の長剣を握りしめ、地上の怪物兵士達を毅然と睨み付けていた。
「アイリィ……!」
この距離からでも、そのシルエットはハッキリと認識できる。さながら天の御使いの様でもある光芒……それはまさしく神聖騎士アイリス・ルナレスの姿だった。
今回の話はかなり短いです。今回と次回の2回しかありません。
しかし、なかなか重要な情報が明かされる回でもあるのでお楽しみに。