【二巻発売中!】スペースオーク 蛮族の戦士は夜明けの天を翔け女王を狙う   作:日野久留馬

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スペースオーク第二巻、発売中です!


《余話》レジィのサイバネ事情

SIDE:フェンダーファミリー郎党 レジィ=ギーブス

 

 ステーパレス星系は神聖シャノイマン王国の勢力圏の中でも外れの果てに位置する、文明圏のどん詰まりと揶揄されるド田舎星系である。

 ここから先は人類の叡智に照らされていない未踏の世界。

 どのような危険が、資源が、未知が潜んでいるかも判らない冒険の最前線だ。

 中央星域では最早銀河大航海時代は終焉したと称して内政重視の政策に移行する星間国家が多いが、この星ではそんな風潮などまさにどこ吹く風。

 まだ見ぬ資源による富、未知の発見者という栄誉。

 富と名声という、古来より人を駆り立てる二大巨頭を狙う者は数知れない。

 星系唯一の有人惑星ステーパレスⅣの衛星軌道上を周回する宇宙港は大いに賑わっていた。

 

 人が集まれば相応に遵法精神の薄い悪党の類も増えるのが世の常だ。

 特にお上の目も届きにくい辺境の地とあれば尚更である。

 その為、この星系にはその手の後ろ暗い事柄の専門家が配置されている。

 王家公認無法者(プライベティアアウタード)

 そう渾名される大規模銀河放浪者(アウタード)一家、フェンダーファミリーがステーパレスの代官を担っていた。

 

 

 

 フェンダー家旗艦『二代目・貴人の装束(ガーブ・オブ・ローズ・セカンド)』は母港であるステーパレスⅣの宇宙港に停泊していた。

 白亜の巨船は辺境随一の宇宙港に停泊し、周囲に睨みを効かせている。

 電子王エニアック256世より賜った男爵位と古株銀河放浪者(アウタード)としての名声、そして巨船を始めとする単純な武力が、荒くれだらけのこのエリアに最低限の治安をもたらしていた。

 威風を放つ1200メートル級の船体の中には、様々な施設が備えられている。

 その一角、総合病院並みの機器を誇る医務室のベッドのひとつにレジィは陣取っていた。

 右腕を失った姿でベッドに横たわっている。

 バグセルカーに寄生されかけた所をオーク戦士の力業すぎる応急処置で救われてからすでに半月余り。

 一時は生死の境を彷徨ったものの『二代目・貴人の装束(ガーブ・オブ・ローズ・セカンド)』が擁する高度医療設備のお陰と当人の若さが相まって回復速度は著しい。

 体力が回復してきたのはいいが、まだまだ床払いとはいかず暇を持て余していた。

 タブレット端末を気のない表情で適当に弄っている。

 そんな彼女の下に来客が訪れた。

 

「邪魔するわよ」

 

 頭の半分を剃り上げた特徴的な髪型の小男、エディだ。

 小脇には今時珍しい分厚い紙のカタログが抱えられている。

 

「はい、お嬢からの差し入れよ。 あんたが暇してるだろうって」

 

「へえ、何持ってきてくれたん?」

 

「義手のカタログ。 ちょうどメーカーの営業が来てたんだって」

 

 どさりと枕元に置かれたカタログにレジィは左手を伸ばす。

 

「ほうほう、軍用の最新版やないの」

 

「欲しいのがあったら申請するようにってお嬢が言ってたわよ」

 

 カタログを置いたエディは要件を伝えると、もう用は無いとばかりに身を翻す。

 

「何や、もう行くん? 忙しないなぁ」

 

「新入りの下っ端は油売ってる暇なんてないの」

 

 不幸にも白塗りの巨大船舶に追突してしまった相棒のジャンガル共々、賠償の名目で自らのファミリーを食い物にされる所であったエディだが口八丁を駆使してフェンダーファミリーに売り込む事に成功していた。

 正確にはフェンダーファミリーの下部組織であるステラ爆音隊(ボンバーズ)の、そのまた下という位置付けである。

 元はステラ爆音隊(ボンバーズ)と対立していたエディジャンガルファミリーだが、大規模組織の紐付きの立場を得られるのならば話は別。

 必要とあれば頭も下げるし尻尾だって振るのだ。

 

「まったく、最初からお嬢がフェンダーファミリー所縁の組織だって名乗っててくれれば、こっちも変に突っかかったりしなかったのに」

 

「そりゃしゃあないわ、七光りをひけらかすのはお嬢が嫌がるんだもの」

 

「贅沢な話よねぇ……。 それじゃ失礼」

 

 後ろ手にひらひらと手を振り、エディはさっさと退室した。

 

「さて、と」

 

 積み上げられたカタログの一冊目を膝の上に置き、ページをめくる。

 

「おお、流石は軍用、凄いスペックやねえ」

 

 オーク戦士と腕相撲ができる程にハイパワーな軍用サイバーアームにレジィは眠そうな垂れ目を輝かせた。

 だが、カタログの記述を読み進める内に表情が曇る。

 

「これ、背骨の置換も必須なん……? あんまりバキバキにサイバネするのもなあ」

 

 レジィのような腕だけのサイバー化では、サイバーアームはその出力を十全に発揮できない。

 生身との接合部分が機械のパワーに耐え切れず、千切れてしまうのだ。

 それを防ぐためには背骨を含む骨格中枢の機械化、ひいては全身義体化が推奨される。

 片腕だけのサイバー化でもメンテナンスや体質とのマッチングで苦労しているのに、それ以上広範囲の改造はとても無理だ。

 

「あんまりハイパワーなのは止めとこ、持て余してまうわ」

 

 軍用品でも普段使いできるようなマイルドな品がいい。

 ぺらぺらと紙面を捲りながら良さそうな品を探るレジィの目に、ほっそりとした女性らしいデザインのサイバーアームのページが止まる。

 

「お、こっちはお洒落系?」

 

 一見普通の腕にしか見えないサイバーアームも、選択肢のひとつではある。

 これまでは荒事対策として鉄の腕の視覚的威圧感も利用していたが、先々を考えるとそういった単純な話ばかりでもない。

 

「いずれはお嬢もマダムの後を継いで、男爵号を名乗る事になる。 そしたら、お偉いさんに会う機会も増えるやろ」

 

 そんな時、武骨な機械腕をぶら下げていてはドレスコードに引っかかって、お嬢の傍に付き添えない可能性がある。

 

「細腕でも軍用ならそれなりのパワーもあるか、後は……え、仕込みレーザーガンに高速振動爪(ヴィヴロクロー)?」

 

 過剰な重武装に眉を寄せたレジィはカタログの項目を改めて確認する。

 

「これ、軍用は軍用でも特殊任務用やん……」

 

 特殊任務、要するに「お片付け」系の後ろ暗いお仕事である。

 

「こんな腕付けとったら、そもそもお偉いさんの前に出る所じゃないわ」

 

 溜息と共に軍用カタログを放り出す。

 

「……普段のメンテナンス料金なんかも考えたら、やっぱ軍用はあかんな」

 

 最終的にレジィは前の義手と同じメーカーのバージョンアップ品を購入した。

 使い慣れたものが一番と嘯くレジィであったが、結局の所は貧乏性ゆえのチョイスであった。

 




スペースオーク二巻が発売されました。
よろしくお願いいたします。

今回、ペール、ステラ、レジィと新たに女性キャラをデザインして頂いたのですが、その中でも不意打ちというかレジィがかなりキまして……。
「イモねーちゃんって感じ」という今思うと何か酷いオーダーにブッチャーU先生は見事に応えてくださいました。
地味顔巨乳ハイレグっていいものですね!
そして何かレジィの話ができたという。


https://over-lap.co.jp//narou/824009104/
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