【二巻発売中!】スペースオーク 蛮族の戦士は夜明けの天を翔け女王を狙う 作:日野久留馬
SIDE:戦士 カーツ
エルフ要塞から安全圏のランデブーポイントまで離脱して二日。
トーン09のジャンプドライブはようやくフルチェックを完了していた。
離脱の為に一度はジャンプを使用したとはいえ、あくまで応急処置。
緊急時の使用はともかく本格的な運用を行うならば、その前にきっちり調査しておかないと怖くて使えたものではない。
トーロンとペールが二人掛かりでクロスチェックを何パターンも行い、ようやく安全性が確認されたのだ。
メカニックとオペレーターが掛り切りになっている間、他の面子も遊んでいる訳ではない。
氏族船へ帰還する前に、陛下への報告に備えて略奪行の戦利品を整理、分類しリストアップしておくのだ。
今回入手した獲物は
その内訳は精錬された各種金属のインゴットと、小惑星から掘り出してそのままコンテナに放り込まれた未加工の鉱石である。
ステラのドックの使用料として支払ったインゴットの余りはともかく、この生のままの鉱石が曲者だ。
簡易スキャナーを用いて大体の含有成分を調査し、コンテナごとにラベリングしないと報告書を書くどころではない。
普通の組織であれば当然の事である報告書もオーク氏族においては、酷く雑に扱われている。
丼勘定でも提出すれば上等な部類、武勇伝と勘違いでもしているのか無駄に戦果を盛った口頭報告を行うオーク戦士も少なくない。
実際に持ち帰った物資との差で恥をかくのは本人なのに、馬鹿な連中である。
「兄貴ぃ、こんな面倒事、ほんとに必要なんすか?」
そして判ってた事ではあるが、うちにも馬鹿ん子は居た。
トーン09の船内倉庫を埋め尽くすコンテナの山を見回したベーコは、うんざりしたようにぼやいた。
隣のフルトンもこくこくと頷いている。
「むだなさぎょうとおもうッス」
「無駄じゃないからしっかり数えろ」
手が止まった舎弟達をジロリと睨むも 、 頬を膨らませた二人は止まらない。
「他の連中は好き放題に盛って戦果を吹聴してるじゃないすか。 兄貴だけ馬鹿正直に報告して、何になるんすか!」
「兄貴がそんするだけッス!」
どうやら面倒な雑事をサボりたいというだけではないらしい。
「別に損にはならねえよ。 なんせ報告を受けるのは陛下だ、無駄に戦果を盛った所で陛下の目を出し抜けるものかよ」
「陛下なら、そんなのお見通しかもしれませんけど……」
ベーコは直球勝負が本領の彼らしくもなく、もにょもにょと言い淀んだ。
彼の意を汲んだフルトンが続ける。
「へーかにいいところ、みせるチャンスじゃないんスか?」
なかなか可愛い事を言い出す舎弟達に、頬が緩む。
「そりゃあ勿論だが、飾ったハリボテのガワを見せて惚れられてもなあ」
「ほれられる……」
何やら難しい顔をするフルトン。
「それいぜんの、はなしなんじゃないッスかね」
「あ?」
少々受け入れ難いフルトンの発言に、思わず低い声が出る。
「お、おい、フルトン」
同輩の制止を振り切ったフルトンは普段は寝惚けたような表情を引き締め、きっぱりと言い切った。
「めったにあえないあいてに、ちまちまやったところで、点かせぎになるかってはなしッスよ!」
「それで戦果を盛れってのか?」
「兄貴と同格の戦士はたくさんいるッス、はでにやらなきゃ、めだてないッス!」
「姫様のお付きの立場でも、目立てないのか?」
俺の問いにフルトンは難しい顔で首を振った。
「こんかいにかんしては、よしあしッス。
姫の初陣はうまくいったけど、そのあとにエルフにからまれて、よていよりおそく帰るはめになったから……」
「あー、姫を危険にさらしたとか、ケチ付けてくる奴はいそう」
フルトンの懸念にベーコも頷く。
「そこを突かれると痛いな……」
姫の初陣としてチョイスした鉱山星系への略奪は、手際よく行えた。
しかし、その後の別氏族のオークやバグセルカー、エルフとの面倒事は、それぞれもっと上手く立ち回れたのではないかという想いは常に付きまとっている。
実際に姫を危険にさらしてしまっているのは、護衛として無能と言われても反論できない有様だ。
「トラブル関連も報告するんすか?」
「しない訳にはいかんだろ。 問題点も報告しなきゃ片手落ちだ」
「じぶんの首しめてるだけっス……」
そうだとしても、陛下に偽りを告げる訳にはいかない。
馬鹿な拘りだとしても、見栄のひとつも張らずして惚れた女の前に出られようものか。
新刊発売直後なのでガンガン更新したい所なのですが、なかなかリアルが厳しくて難儀しています。
くっそ寒いサーバールームとくっそ暑いお外を行ったり来たりで自律神経がヘロヘロです。
スペースオーク二巻発売中です、よろしくお願いいたします。
https://over-lap.co.jp//narou/824009104/