「イイヤァァァァァァァァァァァァァ」
空に浮かぶ城、通称
茅場晶彦が開発したVRMMO、ソードアート・オンラインの舞台である。
現実にソードアート・オンラインを所有する人は
そんなソードアート・オンラインの舞台であるアインクラッドでまだ薄暗い中叫ぶ少年が一人。
「何でこんなところにコイツが居るんだよ!?フロアボスだろうが!」
後ろから迫ってくる七十五層フロアボス、スカル・リーパーをチラチラと見ながら走る。
頭には『Rei』と掛かれた物が浮遊していていつも鬱陶しいとは思っている思春期真っ盛りの純情男子だ。
きっと今もこのままでは他のプレイヤーがコイツに遭遇すれば危険なのでどうやって倒そうか考えているに違いない。
「冗談じゃねぇ!このままじゃお陀仏だぜ!まだまだやりたいこともあるし、何より童貞のまま死にたくねぇ!」
前言を撤回しよう。
少年はただの思春期であった。
とは言えこのままでは七十五層で死んだ十一人の二の舞になってしまう。
「んなの絶対にイヤだぜ俺は・・・ッ!」
更に先まで走り数分、既にスカル・リーパーの姿は無くようやく一息付けると思えば茂みから音が聞こえてくる。
得物を抜き構える。
この間約一秒。
それでも少年には数分にも数時間にも感じられやがて少年は、考えるのを止めた・・・。
訳ではなかった。
そもそもこの世界は考えるのを止めれば死ぬような世界だ。
考えるのは止められない。
ようやく黒い影が茂みから出てきた。
少年は得物を黒い影に向けようとして気付く。
そこに居たのは一人の少女であった。
「えっと・・・・」
「ッ!」
少年が話しかけようとして近付くと少女は得物を抜き少年に襲い掛かる。
少年は何とか紙一重で受け止めてつばぜり合いへと持ち込む。
何なんだお前、など言える程の余裕もない。
この世界ではゲームであろうとリアル。
ゲームオーバーで自分は本当に死んでしまうのだ。
少女を押し返し距離を取る。
「アンタもアイツ等の仲間?」
「あ?何言って・・・・」
初めて少女が発した言葉に答えようとしてまた茂みが動くのを視界の端に確認する。
先程のような時間の引き延ばしは感じられずそれは即座に姿を表した。
幾つもの鎌の手を持つスカル・リーパーだ。
少年はスカルリーパーの姿を確認するや否や一目散にその場を走り出す。
それを目の当たりにした少女も少年に続いて走り出す。
「一度撒いたのに最悪!」
「あ!?今撒いたっつったのか!?じゃあテメェが撒いたせいで俺はさっき奴に追われたのか!?」
「じゃあアンタのせいで私はまた追われてるの!?」
「それはこっちの台詞だすっとんきょうめ!」
お互いがお互いを罵り合いながら走り続ける。
茂みを掻き分けて幹を飛び越えて、それでも走る。
「はぁはぁ、・・・・・ところでお嬢さん、ちょいと相談が」
「はぉはぁ、な、何?」
「このままジリ貧まで奴に追われるのと、ここで一か八か協力して奴を倒すの、どっちがいい?」
少女の返答を待たずに少年はたちどまり後ろを振り向く。
そこで初めて名前を確認する。
『ホロウ・デッドニング・リーパー』
それが今二人を追うモンスターの名前である。
「ちょ、ちょっと!」
「返事は要らねぇ!お前がやるにしろやらねぇにしろ、俺はやる。やりたきゃ勝手に混ざってきな!」
そして少年は雄叫びを上げながらホロウ・デッドニング・リーパーに向かって走り出した。