アークソフィアそこが今、少年が居を構えている街である。
アークソフィアに着いてから少年がいの一番にしたことは転移門の設定の確認だ。
行くと約束しておいて行けませんでは話しにならない。
「・・・・・あそこにも行けるみたいだな」
確認を終えて、ようやく少年は肩の力を抜いて身体を伸ばす。
そして自宅に帰ろうと一歩踏み出したところで誰かの足音が聞こえてきた。
「レイ!」
「レイ君!」
「うげ!バカップル」
少年が話しかけてきた男女の顔を見て苦虫を潰したような顔をする。
何故なら彼らは少年にとって不倶戴天の敵のような存在なのだ。
少年の名前はキリト。
七十五層で姿を表した
少女の名前はアスナ。
血盟騎士団副団長であり、閃光のアスナの異名を欲しいままにする剣士。
後はキリトの彼女と言うか妻と言うか嫁だ。
「レイ!お前今まで何処に居たんだよ!フレンドからも名前が消えてるし・・・・」
「え?まじ?・・・・・まじだ」
少年がフレンド欄を確認すると確かに今までフレンドなった者の名前はなく、先ほどフレンドになった少女、フィリアの名前しかなかった。
「・・・・・・ま、いいか。大してフレンド居なかったし。今度会ったらまた申請してもらえばいいわけだし。てこでほら、早く。ハリーアップ!」
気だるそうにフレンド申請を催促する少年に困惑しながらもフレンド申請を送る。
少年はそれを承認して小さく頷くと一時自宅に帰ろうとして誰かが少年の肩を掴む。
「まぁまぁ、レイ坊。街に戻ってきたらその一切の情報をオイラに売るのが協定だったロ?さ、俺っち達の前で一切合切を話しナ」
「ア、アルゴ・・・・・」
少年は振り向き様にこの声の持ち主の名前を呟く。
黄色の髪に頬にネズミの髭のペイント。
特徴的な喋り方をする少女、アルゴ。
少年と商売の協定を結んでいる情報屋で基本的に少年は彼女に売る情報とその過程で手に入れるクエスト報酬で生計を立てている。
「・・・・・・だぁ!分かった!分かったからあんま詰め寄んな!」
少年がアルゴの手を肩から剥がして走り出す。
「あ!待てよレイ坊!」
アルゴから逃げる少年が振り返り様に何かを投げる。
アルゴは走りながらもそれを受け取ってそのまま二人はアークソフィアの街中へと消えてった。
「あの二人、随分仲良しなんだね」
「あぁ、βテストの時からビジネスパートナーだったらしいぜ」
キリトとアスナの二人を置き去りにして・・・。
そして、ここはアークソフィアにある小洒落た喫茶店。
少年の知り合いのエギルが経営している。
エギルは黒人の坊主頭で少年の見立てではエギルはおそらくヤバいなにかに関わっていると考えている。
「たっだいまー」
「ようやく帰ってきたのね」
少年の言葉にいち早く反応したのは店主のエギルではなく、店でお茶をしていた少女シノンだった。
シノンはこの世界とは別の世界から来たらしく少年と初めて会った時はシータ宜しく空から降ってきたのを少年が下敷きになって受け止めたのだ。
「アンタね、連絡くらいしなさいよ!皆心配してたんだからね!」
次に反応したのは
少年もよく武器のメンテナンスや新しい武器の作成なども依頼している。
「悪かったっての。・・・・・マスター、カミュを二つ」
「んなもんこの世界にあるかよ。何時ものだな。二つってのは?」
「後から来る奴用だ」
「あいよ」
シノンとリズとの話を切り上げて少年はシノンの隣の席に座りジュースを注文する。
エギルがすぐにジュースを二つ出すとタイミングよく喫茶店の扉が開く。
「レイ坊、いったい何のつもりなんダ?」
「ここなら顔見知りくらいしか居ねぇからな内緒話とやりやすいだろ?」
入って来たアルゴに席に座るように促してアルゴが席に座るのを確認した少年は出されたジュースをアルゴの前に置く。
「・・・・・・で、レイ坊がさっきオイラに渡したアイテムは何なんダ?」
ジュースを飲み干して手に持ったアイテムを四方から見る。
周りに居たエギルとリズも気になるようでアルゴの手の上にあるアイテムを覗き見た。
「モンスタードロップの素材か何かじゃない?」
「だが、こんな名前のアイテムこの世界にあったか?」
「そう、無いんだヨ。だから聞いてるんダ。このアイテムは何なのかをナ」
少年もチビチビとジュースを飲みながらアイテムをチラッと見る。
「・・・・・昨日の事だ。俺はいち早く迷宮区のマッピングをしてアルゴに売っ払う為に奥まで進んでたんだけどよ、いきなり強制転移させられちまったんだ。それはそこで倒したモンスターのドロップ品だ」
「強制転移?そこってシノンみたいに別世界だったのカ?」
アルゴの質問に首を横に降って少年は更にジュースを飲む。
「いんや、多分アインクラッドの中だった。その証拠にスカル・リーパーのパチモンが出てきたし」
「おい、それ、大丈夫だったのか!?いや、ここに居るんだから大丈夫だったんだろうけどよ・・・・」
「あぁ。フィリアと二人で倒したからな」
「フィリア?」
少年の口から出た聞き覚えの無い名前に反応したのはネズミペイントの情報屋でも、あこぎな商売をする喫茶店のマスターでも、やや金にがめつい鍛冶職人でもなく、今まで少年の話を興味無さげに聞いていた少女、シノンだった。
「その人、まさか女の人じゃ無いでしょうね?」
「あ?フィリアは女の子だけどそれがどうした?」
「アンタはまた・・・・・。はぁ、もういいわ。とりあえず今日はもう寝なさい。情報屋さんも、これで満足よね?」
「あ、あぁ・・・。でも個人的にはまだレイ坊と居たい気はあるガ・・・」
ジュースをチビチビ飲んでいた少年の首根っこをシノンが掴み、喫茶店の二回にある宿に連れていく。
「キリトもだけど、レイも案外たいがいよね」
「あぁ。だが、キリトと違ってアイツは誰ともそう言うのになってねぇからな。激しさならアイツの方が上なんじゃねぇか?」
「あ!確かに」
その光景を見て談笑するエギルとリズを尻目に少年とシノンが登った階段を素直になれないネズミペイントの情報屋はただじっと見つめるしかなかった。