七十五層突破からもうすぐ二ヶ月を向かえようとしている今日この頃、ホロウ・エリアの攻略も順調に進み、キリトやアスナの攻略組の方では既に八十六層まで突破している。
そして今日、とうとう三回目の年越しを向かえようとしていた。
アークソフィアでは既にお正月ムードでご丁寧にお正月限定のクエストを出すNPCが転移門の横で立ち竦んでいた。
「何かお困りですか?」
そこに話しかけた一人の少年、レイは気だるげながらにNPCの話を聞き終わりNPCから離れた少年はシノンと金髪の少女、リーファと少年のドストライクな容姿をしている女性ストレアに話しかける。
「クエスト内容見てきたけど難易度高けぇな、こりゃ」
「どんなクエストだったの?」
「ほれ」
少年がリーファの言葉で皆に見えるようにクエストの内容が書かれた画面を動かす。
「どうやらこの近くに洞窟が出来たようでそこに住み着いたドラゴンを倒すクエストらしいけど・・・」
「・・・・ちょっとこれ人数制限あるじゃない」
「あぁ。二人だけでの攻略だ。七十六層で生きていける人数かちょっと怪しいところだが、報酬がなぁ・・・・」
実は今回の報酬は強力な武器と大量の餅が貰えるのだ。
今回のお正月は皆で祝うことになったのだが少年達一行は餅担当となったわけだ。
「でもどうするの?私たち四人だよ?」
「とりあえず二人一組で順に挑めば良いんじゃないかな」
「よし、なら俺はストレアさんと組むから。お前ら二人な」
ストレアの疑問に順当な回答をするリーファと欲望のままに組を決める思春期の
そしてそのサルに一発を食らわす少女。
「バカ言ってないで行くわよ」
「おい待てシノン。俺はストレアさんとペアを組むって言っただろ?」
「アンタみたいなバカのペアは私で十分よ。ほら、最初は私達から行くわよ」
「ちょ、待っ、アァァァァ!!!ストレアさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
首根っこをシノンに捕まれて引きずられながら少年はストレアに手を伸ばす。
「キリト君の友達って個性的な人ばっかりだね・・・」
「・・・・・・彼もまたキリトと似て非なる子なんだよ」
「それって・・・・・」
「ううん!何でもないよ!それより私達は今のうちに準備しよ!」
「う、うん」
「だいたいよ、何がお正月だよ。何が明けましておめでとうございますだよ。何も明けてねぇんだよ。レイさんの心の中は常に真冬なんだよ。一向に春なんて来ねぇんだよ。お先真っ暗だよ」
「文句言う前に進みなさいよ」
現在アークソフィアの近くに現れた洞窟を少年を先頭に突き進んでいた。
しかしシノンに無理矢理ペアを組まされたからか少年はぶつくさとお正月への文句を垂れながら歩いている。
「・・・・・・シノンはよ、記憶戻りそうか?」
「まだね。それに、大分実感してきたわ。ここでゲームオーバーになると本当に・・・・」
シノンの声がだんだん暗くなってくる。
それに気付いたのか少年がメニューのインベントリから何かを取り出してシノンに投げる。
シノンがそれをキャッチして手の中にあるものをみる。
宝石のように綺麗な石。
「ホロウ・エリアで見つけたんだよ、それ」
「・・・・・・・・・・」
「心配しなくてもレイさんが護ってやるよ。今も昔も、そして未来も・・・・。それは変わらねぇよ」
「ッ!?昔って・・・・」
何か知ってるの?
そう言いかけてシノンの言葉が詰まる。
目の前に現れたネバネバした玉が無数に連なる何かが動いている。
「何・・・これ?」
「こいつが餅龍ライスケークドラゴン!」
「英語に直しただけ!?」
「とにかくやるぞ!俺が前衛でお前が後衛!スイッチしたら交代!」
「了解!」
そして夕方になり洞窟の前にリーファとストレアが立っていた。
「遅いね」
「大丈夫じゃない?きっと中で仲良くやってるって」
「でも入ってから何時間も戻らないなんて可笑しいよ!」
「遅漏なのよきっと」
「遅漏でも遅すぎるでしょ!てか、女の子がそんな下品な下ネタ笑顔で言うものじゃないでしょ」
二人が何だかんだ言い合っていると洞窟から足音が聞こえてくる。
二人が目を凝らして洞窟を覗くと大きな風呂敷を持った餅でベトベトの少年とシノンが歩いてくる。
「二人とも!大丈夫だった!?」
「「・・・・・・・・もう絶対やらない!」」
そして時は流れてエギルの喫茶店。
「じゃあ皆!改めて、明けましておめでとう!」
『おめでとう!!!』
キリトがジュースを持ち上げると少年含む周りの全員がジュースを持ち上げる。
「いやー、大変だったぜ!キモい虫大量に倒させられてよ!」
「アンタね!そのキモい虫から出たグロい糸加工して着物仕立てたのこの私よ!?」
「あぁ!?今テメェらが口にしてる餅は俺等があのドラゴンもどきによだれまみれにされながら苦労して仕入れて来てやったのを忘れんな!」
今日の自分の苦労を愚痴る者。
「パパ!これ私とママと二人で作ったんです!」
「おぉ!ユイ!美味しそうだな!」
「まだまだたくさんあるからいっぱい食べてね」
イチャイチャする者。
「お前さん達は混ざらなくて良いのか?」
「あんなバカ騒ぎは苦手だしね」
「オイラはこの状況をみてるだけで楽しいからナ」
「三人の幸せ空間を邪魔出来ませんし・・・」
「私も良いかな~。楽しいのは好きだけどどっちの空間にも入れそうにないし」
「わ、私もキリトさんの側に居られればそれで・・・」
「ぴゅい!」
残りの皆で宴会を楽しむ者。
「メール・・・・ッ!?・・・・・おめでとう」
ただ一人座り込み「明けましておめでとう」と書かれたメールを見ながら側に居ないメール相手に対して祝う者。
十人十色の反応を示しながら正月元旦は過ぎていった。