リリベルの異端児   作:山本イツキ

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人気にあやかってみます。

そんな長編にはしない予定です。

事前にリコリス・リコイルを全て見ていただけるとわかりやすいと思います。



第一話 Beginning

 銃弾が連射される音と戦死した仲間や敵兵の血の匂いが漂う悲惨な戦場。

 彼、篠原(しのはら) 春陽(はるひ)がよく夢に見る光景だ。

 いや、これは夢なんかじゃない。

 過去に経験した現実だ。

 どれだけ拒絶しようとその夢は、彼に執着するように頭の中から離れようとはしない。

 この夢をみてしまえば、目覚めたくても目覚められないのだ。

 

 そこに映るのは作戦行動を共にした "リコリス" たち。

 彼ら "リリベル" はあくまでリコリスたちのサポートとして、彼女たちが撃ち漏らした敵を各個撃破するというなんてことない仕事だった。

 共同作戦ともあって敵兵もなかなかの手練れで、リコリスたちは甚大な被害を受けていた。

 互いに兵を減らしていく中、敵兵のうちの一人があるリコリスに向けて発砲しようとしていた。

 その人は春陽とともに、とある機関で育ちDAに引き取られた後も関係の続いていた義理の姉のような存在。

 もちろん助けようとした。

 だがその時、彼の使っていた銃が弾詰まりを起こし発砲できず彼女を見殺しにしてしまった。

 

 なぜ、なぜ、なぜ。

 なぜなぜなぜなぜなぜなぜ

 ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ

 

 

 「──────うわっ!!」

 

 

 ベットから起き上がり、目を大きく見開く。

 

 

 「はぁ、はぁ…………………」

 

 

 荒くなった呼吸を整えるように胸を押さえる。

 呼吸が整うと、視界を片腕で遮り再びベットへと背中を預ける。

 

 

 「また、あの光景か…………」

 

 

 うんざりだ、と言わんばかりにそう嘆く。

 時計の方へ目をやると既に出発の時間まであと僅かの時間まで来ていた。

 彼は特に急ぐ様子もなく着替えを済ませ、駐輪場に停めてあった大型バイクにまたがりDA本部へと向かう。

 その道中、挽回した電波塔が目に入った。

 今や『平和の象徴』となっているこの建造物だが、かつてここではテロリストによる大事件があったそうだが、とあるリコリスの活躍によりその事件は解決。

 今も語り継がれている有名な話だが、まだその本人と会ったことはない。

 きっと今もリコリスとしてバリバリ仕事をこなしてるすごい奴なんだろう。

 僕とは比べ物にもならない。

 

 あっという間に本部へとたどり着き、バイクを駐輪場へと置く。

 

 

 「よお、春陽」

 

 

 同期のリリベルに声をかけられた。

 

 

 「おはよう」

 

 「役立たずはさっさと訓練所にでも行って、鍛え直したらどうだ?」

 

 「余計なお世話だ」

 

 「おいおい強気だなぁ」

 

 

 ヘラヘラとした面持ちかと思いきや、そのリリベルは僕の肩を掴み、脅迫するように小声で話す。

 

 

 「テメェみたいな足手まといがいるとこっちも迷惑なんだよ。わかったらさっさと訓練でもして俺たちの役に立て。このノロマ」

 

 

 その同期は掴んだ肩を話し、突き飛ばすように押し何食わぬ顔で僕に背を向ける。

 

 

 (役に立てって、同じセカンドに言われても………)

 

 

 リリベルにもリコリスのようにランク付けがある。

 白がセカンドで赤がファースト。

 もちろん僕はセカンドの白い服を身に纏っている。

 彼のことを気にすることなく、DA本部に行くと受付のお姉さんに呼ばれ上層部の人間である虎杖が僕を探していたと伝えられすぐに向かった。

 もちろんいい気はしない。

 大した実績もなく、彼のいう通りノロマな僕が呼び出されるということはきっと──────。

 

 

 「失礼します」

 

 

 直立に立ち、斜め45度で頭を下げるその先に虎杖はいた。

 

 

 「待っていたよ。まあ、楽にしなさい」

 

 「はっ」

 

 

 楽に、と言っても腕を後ろに組み、脚は肩幅まで広げなくてはならない。

 何が楽になのか、説明願いたいものだ。

 

 

 「キミがここに呼ばれた理由はわかるかね?」

 

 「おおよその検討はついています」

 

 「ならいい。キミがどういった人間か、私はよく理解しているつもりだ。この報告書にも記載されている」

 

 

 虎杖はそう言い、数枚がファイルされた紙をヒラヒラと靡かせる。

 

 

 「"銃を扱えない" 、"人を殺せない" 、"団体行動に向かず扱えない"。全て事実か?」

 

 「ええ。間違いありません」

 

 「そうか。キミの口から訊けたなら裏を取らずに済む。とどのつまり、そんな人間をリリベルに在籍させるわけにはいかないんだ」

 

 「解雇、ということですか?」

 

 「いいや、違う。逆に考えてほしいが、もし今のキミが社会に解き放たれたとして、一体どれほどの利益を生むと思う?」

 

 「ただのゴミとして扱われるのが関の山でしょう」

 

 「そうだ。そんな人間を手放すわけにもいかない」

 

 「では、僕にどうしろと?」

 

 「いい場所がある。お前にうってつけの場所が、な」

 

 

 虎杖はそう言い、白い封筒を僕に差し出した。

 中を確認するとそこにはどこかの喫茶店の写真と複数人の人物写真が入っていた。

 

 

 「これは?」

 

 「うちの元訓練官がそこにいる。そいつに鍛えてもらうといい」

 

 「つまり、転属ということですね。わかりました。謹んでお受けいたします」

 

 「期限は今日からだ。目に見える実績がない限りDAに戻す気はないからそのつもりでいろ。話は以上だ。下がりたまえ」

 

 「はい。失礼します」

 

 

 虎杖に再び礼をし、部屋を出る。

 長い渡り廊下を歩きながら、再度受け取った写真を見る。

 褐色肌の男性にメガネの女性、小学生ぐらいの子供に、僕と同い年ぐらいの女の子二人か。

 なんとも異色。

 写真だけで断定はできないが、僕がこの輪の中に入ることはできなさそうだ。

 最低限のコミュニケーションで躱し、元訓練官という人にだけ教わることを教わりこの人たちとの関係を終わらせればいい。

 特別DAに戻りたいという意思はないが、役立たずで終わる気も毛頭ない。

 

 全ては、あの男─────緑色の髪をしたテロリストへの復讐のために。




原作キャラたちは2話から登場します。
もちろん、リコリコの店員は全員です。

アニメだと3話と4話の間ぐらいかな?


評価、感想等いただけると幸いです。

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