リリベルの異端児   作:山本イツキ

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あけましておめでとうございます。

今年も山本イツキをよろしくお願いします。


第二十話 Reluctantly agree

 離陸した飛行船は延空木へと向かう。

 全員が俯き任務に向け精神統一する中、春陽は一人、虚の瞳で窓から見える景色を眺めていた。

 一面真っ青の広々とした空。

 そこはなんのしがらみもない、自由の象徴とも言える領域だ。

 リリベルとは対となる。

 

 

 (みんな、無事かな)

 

 

 別れてしばらく経つ喫茶リコリコの面々を心の中で気にかける春陽。

 千束はともかく、たきなは今まさに任務を遂行している最中だろう。

 そんな彼女が今回の処分対象。

 従う気なんてとても──────

 

 

 「……………ッ!?」

 

 

 途端、腕輪は春陽が不用意な考えを行ったと見做し体中に高圧電流を巡らせた。

 バタリッ、と飛行船の床に倒れ込む。

 

 

 『いい加減諦めたらどうだ?篠原 春陽』

 

 

 備え付けられたモニターに本部にいる虎杖の姿が映し出される。

 どうやら、システムが作動したのを確認したようだ。

 

 

 「一体、なんのことですか?」

 

 『とぼけても無駄だ』

 

 「こんな装置をつけた状態のまま任務を遂行しろなんて、不可能だと思いますが」

 

 『反逆者(キミ)を縛るにはいい道具だ。それが原因で死んだのなら、それまでの人間だったということだ』

 

 

 あくまで春陽は使い捨ての兵隊。

 冷たい態度話す虎杖は彼を、いや、リリベル全員をそのように認識しているのだ。

 

 

 「ボクは死にませんよ。必ず生きて、彼女たちも助け─────ッ!!!」

 

 

 再び、装置は作動し春陽を苦しめる。

 

 

 『懲りない男だ』

 

 

 虎杖はそう言い捨てモニターは切れた。

 床に突っ伏した春陽は苦しみながらも、誰にもみられるように口角を少しだけ上げる。

 

 

 (死なせない……………リコリスたちは、必ず………………!)

 

 

 その考えを察知し、腕輪はさらに電圧を上げ春陽を苦しみ続けた。

 

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

 

 空を渡っていた飛行艇は延空木に辿り着き、司令部から伝えられたリコリスが固まる場所へと、春陽を先頭に駆ける。

 

 

 「いいですか?リコリスたちを殺すことは容認しません。必ず生け捕りにしてください。これは命令です。背けばあなた方の命はないと考えてください」

 

 

 脅し、とも取れる言葉を伝え各班散った。

 一つはメインコントロールルームへ。

 一つは死体の回収及び各個にたったリコリスの処分へ。

 そして春陽が指揮する班は、捕えられた真島のいる展望台へ向かった。

 久方ぶりに再開したその男は無惨にも意識を失っており、千束やたきなが使用する拘束銃の弾で縛られていた。

 

 

 「起きろ」

 

 

 石突で真島の頭をつき、後ろに控えるリリベルも奴へ銃口を向ける。

 

 

 「3秒経つ前に起きてください。でなければ、その首を刎ねます。3、2、1 ──────」

 

 

 薙刀を振りかぶると、小さく笑いながら真島が俯いた顔を起こし春陽を見る。

 

 

 「全く、もう少し寝かせてくれよ」

 

 「どうやら負けたようですね。たきなちゃんに」

 

 「それだけじゃねぇよ。アランリコリスもご一緒だ」

 

 「アランリコリス………………まさか!?」

 

 「そうだ。ククッ」

 

 

 アランリコリス、つまり千束もここへ来ていたらしい。

 上層部は春陽との約束を破った。

 怒りが込み上げ、すぐさま連絡を取る。

 

 

 「司令!!話が違います!!」

 

 『錦木 千束が勝手にやっただけだ。私たちが指示をした謂れはどこにもない』

 

 「そうですか、あくまでシラを切るつもりだと……………」

 

 『任務に集中しろ。真島を屋上で待機してる護送船に連れて行くのだ』

 

 「……………わかりました」

 

 

 上層部の命令は不本意だが、この男が危険なことは事実。

 拘束具を外そうと真島に近づいたその時だった。

 

 

 

 グサッ!!

 

 

 

 「…………………ッ!?」

 

 

 背後から忍び寄るはずのない影。

 リリベルの一人が春陽に向けナイフを突き立てたのだ。

 目の端でその姿を捉え致命傷は避けたものの、殺意を込めたその刃はあと数センチズレていれば確実に心臓へ刺さっていただろう。

 間一髪。

 まさに紙一重だった。

 

 

 「クッ………………!」

 

 

 刺してきたリリベルの肩を突き、遠ざけるも他のリリベルが春陽を殺そうと銃口を向ける。

 

 

 『しぶとい男だ』

 

 

 背後のモニターの電源が入り、虎杖の姿が映し出された。

 

 

 『キミは痛みを感じないのだろうが所詮は "人" 。急所は同じだ』

 

 

 殺すことは容易い。

 そう言わんばかりの口ぶりだ。

 

 

 「真島もろともボクを処分するおつもりですか」

 

 『その通りだ。キミの存在は我々にとって癌と同等。今すぐにでも除去しなくてはならない』

 

 「散々手懐けようとした結果、それが叶わずボクを殺そうと……………自らを無能だと証明するようなものだと思いますが?」

 

 『なんと言われようと構わない。キミはここで死に、その存在を無かったことにするのだからな』

 

 

 虎杖は春陽の両腕につけた腕輪を起動させ高圧電流を流す。

 殺すことを厭わないその威力の前に春陽は膝をついた。

 

 

 「おいおい。仲間割れならよそでやれよ」

 

 

 不服そうに真島はリリベルたちを見る。

 

 

 「目の前にいるのは誰だ?10年前、電波塔でテロ行為をした犯罪者だぜ?殺すならまずは俺からじゃねぇのか」

 

 

 拘束具を外し、首をコキッと鳴らしゆっくりと立ち上がる。

 

 

 「俺を縛り付けるにはちょっとばかし足りなかったようだな」

 

 

 ニッと白い歯を見せると、服に仕込んでいた小型の煙幕を下に投げつけ視界を遮ると颯爽とこの場から逃げ出した。

 片腕には春陽が抱きかかえられている。

 

 

 「コイツは借りてくぜ」

 

 

 そう言い残し去った。

 数十秒後に映る視界に二人の姿はなく、その場にいたリリベルたちは2人の捜索を開始した。

 

 

 命かながら逃げた二人はとある小さな倉庫へと身を隠す。

 

 

 「おい。生きてるか?」

 

 

 瞳を閉じ、動けずにいる春陽に声をかける真島。

 

 

 「……………なんで、助けた……………」

 

 

 痛みはないが痺れて動けない春陽はキッと助けた恩人に鋭い視線を向ける。

 

 

 「お前、俺と手を組む気はないか?」

 

 「………………断る」

 

 「なんだ。ケチなプライドでそんなこと言ってるわけじゃないだろうな?」

 

 「どれだけ、時間が経とうが……………お前は、詩音を殺した、犯罪者だ……………」

 

 「なるほど。恨み、ね。言っとくが、俺たちの計画を潰しにやってきたのはお前たちだ。当然、殺される覚悟もあったはずだ」

 

 「詩音は、殺されるべき人じゃなかった……………真に死ぬべきなのは、弱い、このボクだった………………」

 

 「へぇ」

 

 

 退屈そうに話を聞くこの男は懐から銃を取り出し春陽に向ける。

 

 

 「じゃあ。今ここで死ぬか?」

 

 

 脅しなどではない。

 本気の目だ。

 

 

 「…………ボクの死に場所は、ここじゃない」

 

 「なら、お前の選択肢は一つ。この俺と協力して延空木を脱出する。それしかないだろ?」

 

 「なんで、お前みたいな犯罪者と……………!!」

 

 「ハッ、こっちだって願い下げだ。だが贅沢も言ってられないのはお前も同じだろ?」

 

 「……………………」

 

 

 今の春陽には頼り甲斐のある相棒もいなければ、電脳戦でサポートしてくれる仲間もいない。

 それを分かった上で真島は提案しているのだ。

 立場上、春陽は圧倒的不利に立たされている。

 

 

 「………………一時休戦なら」

 

 「いいぜ。のった♪」

 

 「ただし、全て片付いたら、お前を殺す」

 

 「ククッ。やってみろ」

 

 

 春陽はゆっくりと立ち上がり真島の正面に立つと、両腕をその男の方に差し出した。

 

 

 「なんだ?」

 

 「協力するための条件。コレがある限りボクは本気を出せないから、その銃で破壊してくれ」

 

 「OK。両腕がぶっ壊れてもしらねぇぞ」

 

 「そうなったらボクもお前も死ぬだけだ」

 

 「上等だよ」

 

 

 パンッ!

 

 

 パンッ!

 




現実でも上司に裏切られるなんてことはザラです。


春陽の怒りはもっともだと思います。

そんな彼を宥めてくれる人がそばにいれば…………
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