リリベルの異端児   作:山本イツキ

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第二十一話 The worst and strongest Puppet

 真島と別れた春陽はリリベルたちを止めるべく、旧電波塔を直走る。

 

 

 「あの男…………………」

 

 

 結局真島は春陽を殺したり、痛めつけるようなことはせず、腕輪だけを狙い撃った。

 数発撃ち込んだおかげで腕輪は完全に機能停止となり、これで晴れて自由の身となった。

 強引な手段を取ると爆発する仕掛けがあるかもしれないとも考えたが、万が一が起きても真島を道連れにできるならそれでいい。

 それぐらいの気持ちで真島に身を委ねたのだ。

 その後の奴の動きはわからない。

 とにかく互いの野望のために都会って別行動することになったけれど春陽のやることは変わらず、リコリスの救助のみである。

 

 

 「アレは………………?」

 

 

 見覚えのあるその姿を見て、そばへと駆け寄った。

 

 

 「吉松さん!」

 

 

 戦闘服のようなものを身に纏った女性に肩を掴まれながら、弱々しい顔つきで春陽を見る。

 

 

 「キミは確か…………」

 

 「喫茶リコリコの篠原 春陽です!そのケガ、どうしたんですか!?」

 

 

 吉松の胸部に目をやると、多量の血が流れた跡があり高そうなスーツが真っ赤に染まっていた。

 数秒の沈黙の後その質問に答える。

 

 

 「キミが知る、必要は、ない」

 

 「まさか、リリベルが?」

 

 「違う」

 

 「じゃあ、誰が?」

 

 

 吉松は撃たれた胸部を押さえ、一呼吸おいて答える。

 

 

 「─────千束だ」

 

 「千束ちゃんが!?」

 

 「彼女は………危険だ。あの目は、本気、だった」

 

 

 怯えたような表情で話す吉松。

 あの心優しい千束が?

 相対する考えが脳内を巡る。

 

 

 「彼女が吉松さんを殺そうとしたんですか」

 

 「……………ああ。おそらく、私が、DAの機密情報を、知ってしまったからだろう。偶然、だったとはいえ、不運な出来事だった」

 

 「そのために、千束ちゃんを」

 

 

 考えられないが、ありえない話でもない。

 実際リコリスの存在が公になって困るのは千束だ。

 本部の命令に従うことはないだろうが、それに近いことをやる可能性はある。 

 撃った千束も悪いが、指示した本部はそれ以上。

 怒りに似た感情が沸々と湧いてくる。

 

 

 「……………確かに、リコリスにとってあなたは危険な存在と認識したんでしょう。だけど、殺すの間違ってる!!」

 

 「千束を、どうする気だ?」

 

 「説得します。一筋縄ではいかないでしょうけど、最悪の場合、武力行使もやむおえないでしょう」

 

 「いいか。手加減を、してはいけない。一瞬の、気の緩みが、命取りになる」

 

 「ご忠告感謝します」

 

 

 吉松に頭を下げ、この場をさる春陽。

 

 

 (クソッ、何がどうなってるんだよ…………)

 

 

 虎杖に裏切られ、千束は吉松を殺害しようとし、真島とは協力関係にあるこの状況に春陽は困惑している。

 あり得ない事態に思考が追いついていないのだ。

 リリベルや真島に関しては特別気にしているわけではないが、千束やたきなにも裏切られたのであれば春陽の心傷の深さは計り知れない。

 そんなことが起きないことを願うばかりである。

 

 

 一方、深傷を負わされた吉松はというと───────

 

 

 「なぜあのような嘘を?」

 

 

 そばに居る女がそう問いかける。

 

 

 「……………千束が言ったことは、全て、綺麗事だ。私は、到底納得できない」

 

 「こだわるんですね。彼女に」

 

 「いいや。あの娘は、もういい」

 

 「もういい?」

 

 「ああ」

 

 

 フッと小さく笑みを浮かべる吉松。

 

 

 「彼なら、私の理想を、超えてくれると信じている」

 

 「彼?それはまさか─────」

 

 

 女の言葉を遮るように二人の目の前に現れたのは、筋骨隆々とした体格の男、ミカだった。

 

 

 「シンジ………………」

 

 

 信じたくなかった、と言わんばかりに悲しい表情を見せるミカ。

 

 

 「どうやら、私もここまで、らしい」

 

 「どうしますか」

 

 「………………彼に、全てを託すとしよう」

 

 

 二人の運命はこの判断を持って決まった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 旧電波塔を出た春陽は、別行動していた真島を連れ奴の飛行船で上空を飛ぶ。

 

 

 「これからどうする気?」

 

 

 後ろで脚を組んで居座る真島に問う。

 

 

 「決まってる。革命だ」

 

 「そのためにリコリスは全員殺していいとでも?」

 

 「ああ。奴らがいなくなればDAは機能しなくなって、これまで隠蔽され続けた闇が浮き彫りになる。奴らが望んだ薄汚い平和なんてあっという間に瓦解されるだろう」

 

 

 真島は今の世の中に疑問を抱いている。

 秩序を守るためならどんな手段も厭わないDAに嫌悪しているのだ。

 

 

 「まあ、自らリコリスを消そうとしてる連中もいるようだが」

 

 「…………………」

 

 「オマエもその一員だったんだろ?なんで殺されそうになってるんだ?」

 

 「散々、反抗してきたからその報いが来たんだろう。ボクも今ではお前と同じお尋ね者だ」

 

 「ハッ。言うなれば、組織の異端児ってとこか。それで?オマエの目的はなんだ?」

 

 「リリベルの暴走を止める。リコリスは誰にも殺させない」

 

 「どうやって」

 

 「………………この手を汚してもだ」

 

 「いいねえ♪」

 

 「ボクの邪魔をするようならオマエもその対象になる。言葉次第では、今ここで処分する」

 

 

 手負いの真島は今の春陽に敵うことはない。

 一瞬で、殺される羽目になるだろう。

 

 

 「俺が手を下すことはもうないから安心しろ。リコリスという存在を炙り出すことには成功したんだからな」

 

 

 奴の目的は既に達成されている。

 あとは千丁の銃を持った一般人が暴れでもしたら一気にパンデミックが起こり平和な日常は崩れ去る。

 そして、これまで暗躍していたリコリスは同じ組織のリリベルによって始末される。

 これでDAの戦力は半減し、残りのリリベルも同様の手口を使えば簡単に殺せるという真島の筋書きは概ね正しい。

 リリベルといえど、所詮は人。

 武器はもてど殺すことは容易い。

 

 

 そう話していると延空朴へと辿り着き、飛行船を着陸させる。

 

 

 「俺は少し休む。まあ頑張れよ」

 

 「言われなくても」

 

 

 適当なエールを流し春陽は延空朴へと入る。

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