リリベルの異端児   作:山本イツキ

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第二十二話 Alter Ego

 延空朴を駆け回る春陽。

 途中、シャッターの前で立ち往生するリリベルたちの姿が目に入り割って入る。

 

 

 「待て!!」

 

 

 その声にリリベル達が振り向く。

 

 

 「春陽ぃ?」

 

 

 小隊の指揮を取る小田巻が不服そうな顔を見せる。

 

 

 「この先にリコリス達がいるんだね」

 

 「そうだけど?」

 

 「ここはボクが引き受けます。みなさんは下がってください」

 

 

 春陽のその一言にざわつくリリベル達。

 

 

 「ちょっと待てよ。テメェ、自分が今どんな立場にいるのか分かってるのか?」

 

 

 この場にいる全員が春陽に銃口を向けた。

 彼もリコリス同様処分対象だということは周知していたらしい。

 そんな中、春陽は小田巻の銃口に額を当て淡々と言葉を発する。

 

 

 「ボクを殺せるなら引き金を引いて構わない。けど、その程度でボクを殺せないことは小田巻くん。キミが身に沁みて理解してるんじゃないかな?」

 

 「クッ……………!!!」

 

 「リコリスはボクが対処します。邪魔する人は容赦しないのでご注意を」

 

 

 眼力で威圧し、リコリス達のいるメインコントロールルームへの道を切り開く。

 リリベル達が傍からその様子を見守る。

 

 

 「リコリスのみなさん。ボクはあなた方を処分する気は一切ありません。上層部(うえ)ともすでに交渉済みです。そこから出てきていただけませんか?」

 

 『………………』

 

 

 扉の向こうにいるはずの人物達から返事は返ってこない。

 

 

 「そんなハッタリ通用するわけねぇだろ。バカが」

 

 

 ため息混じりに小田巻がそう漏らす。

 他のリリベルも似たような反応だ。

 

 

 「それなら、ここにいるリリベルをボクが全員処分します。もし達成できたらボクの言葉を信じていただけますか?」

 

 

 唐突の提案、それも春陽の身勝手な考えに全員が反発する。

 

 

 「ふざけんな!!」

 「テメェに殺されてたまるか!」

 「リーダーぶってんじゃねぇぞ!処分対象が!!」

 

 

 やいやいと喚き散らすリリベル達の言葉を聞き流すと、閉じられていたシャッターがゆっくりと開き出した。

 シャッターの先が見えるところまで上がったその先には、拳銃を構えるリコリスの姿が全員の目に映った。

 

 

 「そんな虚言。信じられるわけないっすよ!!」

 

 

 ニッと白い歯を見せながら放ったリコリスの弾丸は、そばにいた二人のリリベルに向かうが薙刀で一刀両断する。

 

 

 「マジっすか!?」

 

 

 人間離れした技に驚くリコリス。

 

 

 「交渉決裂、か。まあ当然といえば当然かな」

 

 

 やむを得ない、といった様子で春陽もまた戦闘体制を取ると、階段途中にあるスペースから見慣れたファーストリコリスが姿を現した。

 

 

 「あれ?春陽じゃん」

 

 「千束ちゃん……………」

 

 

 突如現れた千束に対し、驚きつつもどこか悲しそうな。

 そんな表情を浮かべる春陽。

 

 

 「リリベルがリコリス(わたしたち)を殺しに来るとは聞いてたけど、まさか春陽が相手とは」

 

 「あれ?春陽じゃないですか」

 

 

 ひょこっとたきなも顔を出す。

 

 

 「これは一体どういうことですか?」

 

 

 鋭い目つきでそう問いかけるたきな。

 しかしそんな彼女この言葉を右から左に流し、千束の方をジッと見る。

 

 

 「千束ちゃん。さっき吉松さんを撃ったらしいね」

 

 「あー、アレは仕方なかったんだよ。向こうも私たちを撃ってきたもんだからさ」

 

 「それでも殺そうとはしたんだ」

 

 「春陽。それは吉松が──────」

 

 「たきなちゃんには聞いてない!!!」

 

 

 春陽の声が狭いこの空間の中で響く。

 

 

 「次に口出ししたら、怒るからね?」

 

 

 普段とは異なる彼の言動に二人は驚いた表情を見せる。

 

 

 「残念だよ、千束ちゃん。不殺を心情としていたキミが大事な常連さんを殺そうとするなんて…………」

 

 「誤解です!春陽─────」

 

 

 たきながそう話そうとした途端、春陽は服の内ポケットからビー玉程の大きさの鉄球を出し指で弾いた。

 それはたきなの頬を掠め、数十メートル後方の壁にめり込んだ。

 当たれば致命傷は避けられなかっただろう。

 

 

 「……………ッ!!」

 

 

 驚いた表情を見せるたきなも応戦するように、銃口を春陽に向けた。

 

 

 「二人ともやめて!」

 

 「しかし!春陽の敵意は明らかです!!」

 

 「それでもダメ!」

 

 

 涙目になり必死に訴えかける千束。

 しかし、虚の瞳で彼女を見る春陽にその言葉が響くことはない。

 

 

 「春陽、どうして………………」

 

 「どうして、か。そう問いかけたいのは、()()の方だ」

 

 「オレってまさか!!」

 

 

 スッとメガネを外し、丸くて優しい目は鳴りをひそめ、鋭い目つきが二人を見る。

 

 

 「よお。この状態で話すのは地下格闘技以来か?」

 

 

 春陽は自らの意思でバーサク状態に入ったのだ。

 

 

 「何が目的ですか!!」

 

 「別に、何も」

 

 

 何食わぬ顔でそう答える男。

 

 

 「春陽、ヨシさんに何を吹き込まれたの」

 

 「リコリスの機密事項を知ってしまいオマエに殺されかけた、と。そう言われた」

 

 「それを信じたんですか!?」

 

 「別に信じちゃいねェよ。オレが失望したのは錦木 千束。テメェだ」

 

 「私?」

 

 「オマエはこれまで誰一人として殺人を犯さなかった。そりゃあもう感心したもんだ」

 

 「…………ずっと気になってたんだけどさ」

 

 「あぁ?」

 

 「アナタって、春陽の何なの?」

 

 「オレか?そうだな」

 

 

 男は考える素振りを見せ、すぐさま答える。

 

 

 「別の肉体で生まれるはずだった春陽(コイツ)の兄弟、といったところか」

 

 「兄弟?」

 

 「信じられません。アナタと春陽では性格が違いすぎます」

 

 「そう憎悪を向けるな、井ノ上 たきな。テメェは余計な口出しさえしなければ殺されずに済む。黙って傍観してろ」

 

 「拒否します。私にだって話す権利はあるはずです」

 

 「組織に見放された虫ケラが。今ここで駆除してやろうか?ああ?」

 

 

 髪を逆立たせ、淡青色の闘気を見に纏う春陽。

 百戦錬磨とも言える雰囲気をかもちだす彼にたきなは臆することなく引き金を引く。

 弾は春陽の眉間に向かってまっすぐ突き進むが、再び鉄球を弾き軌道を変えると、一っ飛びで階段を越え石突でたきなの腹部を突き、後方へ吹き飛ばす。

 

 

 「ゴホッ!」

 

 

 口からは血を吐き、勢いそのままに壁に激突した。

 

 

 「たきな………………ッ!!」

 

 「動けばオマエの首を刎ねる」

 

 

 矛先を千束の喉元へ向けると、抵抗することなく降参のポーズを見せる。

 

 

 (リリベルにリコリス。全員ぶっ殺すのが手っ取り早いが、春陽がそれを許すわけねェ。面倒だ)

 

 

 二人に注目が集まる中、春陽は全員に聞こえる声の大きさで話を始める。

 

 

 「今からこの女と二人きりにさせてもらう。首を突っ込んでくる奴は容赦なくぶち殺す。たとえ誰であろうとな」

 

 

 そう言い残し、千束を連れコントロールルームへと入る。

 扉を開かないように設定すると、彼女を椅子に座らせ自分はその対面に腰を下ろした。

 もちろん、抵抗されないように銃は回収してある。

 

 

 「ねえ、話す前に一つ聞いていい?」

 

 「なんだ」

 

 「アナタは本当に春陽じゃないの?」

 

 「ああ。別人だ」

 

 「じゃあさ、名前とかないの?」

 

 「ない。互いに名前を呼ぶ間柄でもないからな」

 

 

 トントン、と頭を指でこづく男。

 

 

 「じゃあ─────秋月(あつき)

 

 「ああ?」

 

 「アナタの名前。春陽とは正反対だから、秋月。どう?よくない?」

 

 「春と陽の逆が秋と月ってか」

 

 「気に入らなかった?」

 

 「別に。好きに呼べ」

 

 

 小さく笑みを浮かべる千束とは対照的に男、改め秋月は憮然とした表情を変えない。

 

 

 「それじゃあ本題だ。何故、吉松を狙った」

 

 「…………ヨシさんが、私の代わりになる心臓を持ってたの」

 

 

 まとめるとこうだ。

 吉松はアラン機関の人間で、幼少期の千束を生かした張本人だった。

 そして彼女の役割を果たさせるために殺させようとし、怪我を負ったらしい。

 結局吉松を取り逃し、春陽と再開したというわけだ。

 いつもは太陽のように煌びやかな笑顔が眩しい千束が俯き、小さくしゃべるその姿に嘘偽りないと秋月は判断した。

 

 

 「やはり嘘だったか」

 

 「春陽は信じてなかったの?」

 

 「奴は心が未熟だ。人を疑うことを知らん」

 

 「きっと、後悔してるよね」

 

 「ああ。井ノ上 たきなに危害を加えようとしたことを、今ここで頭抱えて唸ってるとこだ」

 

 

 再度頭をこづく夏月。

 今度1発殴ってやれ、と千束に伝えると秋月は立ち上がり扉の前に立つ。

 

 

 「どうやらオレはリリベルに不要な存在になったらしい。今やリコリスたちと同じ処分対象だ」

 

 「何をする気?」

 

 「向かってくるやつをぶち殺す。逃げたところで何の解決にもならんからな」

 

 「春陽はそのことに賛同してるわけじゃないよね」

 

 「ああ。今にもオレと入れ替わろうと足掻いてるところだ。無駄だがな」

 

 「秋月が殺しても、私たちからしたら春陽が殺したようにしか見えないんだよ。春陽の思いも汲み取ってあげて」

 

 「善処はする」

 

 

 そう言い残し部屋を出る秋月。

 階段の上下で銃口を向ける人間全員に対し、腕を広げ高々と宣言する。

 

 

 「オレを殺したい奴はかかってこい!返り討ちにしてやるよォォォ!!」

 




間話 春陽の脳内にて

「何でたきなちゃんを突き飛ばしたの」

『余計な口を挟むからだ。お前だって鉄球飛ばしただろ?』

「あれで十分だった。手を出す必要はなかったんだ」

『随分勝手な言い草だ』

「次、誰かに危害を加えればボクがボクを殺す。もちろん、キミもボクと地獄に堕ちることになる」

『はあ、それだけは勘弁だな』

「面倒ならボクが変わろうか?メガネさえかけてくれればそれでいいんだけど」

『ハッ、誰も傷つけたくないって言ってオレにその役を押し付けた奴が出しゃばるな』

「それは勘違いだよ。暴れたいってキミがボクを押し除けたんだ」

『………もうどうでもいい。適当に蹴散らしてまた逃げる役はお前に譲るとする』

「譲るというより押し付けるが正しい言い方だよ」

『いちいち細かい奴だ。別の肉体に宿ってたら速攻殺してただろうに』

「なら、出ていっていいんだよ?」

『うるせえ。ほらっ、敵さんが殺意を込めた目でオレたちを見てる』

「殺すことは厳禁。気絶させるだけでいいからね」

『言ってろ。チキンが』
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