リリベルの異端児   作:山本イツキ

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ランキングにも入り、順調な滑り出し。

お気に入り登録も段々と増えてきました。
ご愛読いただき本当にありがとうございます。

今回はようやく、春陽が実戦で武器を振います。



第五話 Enemy Attack

 真依奈と別れ、それぞれが持ち場に着く。

 人の出入りのできるメインゲートは全部で三つあり、千束は北、たきなは南西、春陽は南東ゲートをそれぞれ担当する。

 残ったミズキは巡回警備員と同様に周囲を警戒する。

 リコリコに残ったクルミとミカも、モニター越しに動向を探る。

 

 そして。

 58、59、0──────。

 

 

 「18時となりましたので入場を開始いたします!!」

 

 

 女性のアナウンスと共に外で待っていた観客たちが検査を受け一切にドームへとはいってきた。

 ライブを心待ちにするファンが楽しそうに笑いながら話す一方、彼らにそんな余裕はない、

 

  

 「南東ゲート、今のところ異常ありません」

 

 『こっちもスカンピン〜』

 

 『南西も問題ありません』

 

 『私も〜。もう歩き疲れたー』

 

 『やはりただのイタズラだったんじゃないのか?』

 

 『そんな思い過ごしで終われるわけないでしょっ!バカっ!」

 

 『そうですよ、クルミ。任務は最後まで遂行してください』

 

 『は〜い』

 

 

 リコリスの二人に言われ、クルミは気怠げに返答する。

 

 

 『そういえばさ、春陽は今もメガネつけてるの?』

 

 「うん。それがどうかしたの?」

 

 『いやいや、危ないでしょ。万が一割れたらどうするの。目に刺さったら痛いじゃすまないでしょ』

 

 『コンタクトにしないんですね』

 

 「そこまで深く考えたことはなかったな………今度はコンタクトにしてみるよ」

 

 

 これは春陽本人を除いてミカしか知らないことなんだが、普段春陽がつけているメガネに度は入っていない。

 ただの()()()()()()

 そんなものなくても彼は常人かそれ以上の視力を有しているのだが、ある理由があって常時付けている。

 それは決して公にするものではないと春陽が判断したため、みんなには黙っている形をとっている。

 過去に、本部のリリベルに所属していたときも伊達メガネをつけ任務を遂行してきた。

 決して支障はなかったから上層部からも咎められることはなかったのだ。

 

 

 『たきな。黒いキャップを被った緑のTシャツの男。手荷物検査でいくつかものが押収されて入場してるが挙動が怪しい。至急接触してくれ』

 

 『了解しました』

 

 『やるな〜クルミ〜♪』

 

 『万が一僕が間違っていたとしても、お前たちが謝ればいいから気が楽だ……………ズズッ』

 

 『当てずっぽうで変なことするなよ〜……………っておい、貴様今コーヒー飲んでるだろ』

 

 『ただのノイズ音だろ。ズズッ』

 

 

 千束の指摘通り、リコリコにいるクルミはモニターを眺め怪しい人物を探すだけでいいので仕事さえこなせば何をしてもいい。

 例えば、右手側にあるコーヒーを優雅に飲んだり、左手側にあるミカ特製の抹茶団子を食べることも可能だ。

 

 

 『こんにゃろー、私もこの仕事終わったら絶対スイーツ食べてやるからなあ!』

 

 『意気込みはいいが、ちゃんと仕事しろよ』

 

 『お前が言うかー!!』

 

 

 などと二人が戯れあっている中でも、たきなは一人男の元へ駆け寄る。

 数分して、たきなは会話に戻ってきた。

 

 

 『身体検査もしましたが、特に怪しいものは持っていませんでした』

 

 『たーきな、ちゃんとごめんなさいした?』

 

 『ええ、まあ』

 

 『クルミ〜、次間違えたら下着姿で接客させるからなあ!?」

 

 『こっちだってわざと間違えてるわけじゃないんだぞ!不可抗力だ!』

 

 

 やいやい揉める二人。

 

 

 「二人とも、ボクやミカさんだけじゃなくて、男性のお客さまがいる事を忘れないでね」

 

 『『はーい』』

 

 

 それからも度々怪しい人は見かけたものの、誰一人として拳銃を持っている人物はいなかった。

 最後の観客がドームに入り、これで犯人はいないことの証明となった。

 

 

 『ねえねえ。これからどうすんの?』

 

 『とりあえずミズキと合流して周囲を警戒してくれ。ゲートはもう閉まる』

 

 『了解〜』

 

 『了解しました』

 

 『私今西の方にいるからそれぞれ散っていいわよ』

 

 『なら、千束は北。たきなは南。春陽は東を担当してくれ』

 

 「わかりました」

 

 

 ミカの指示の元、それぞれが見回りを始める。

 辺りを見渡しても怪しい動きをする人物はいない。

 もしや、どこか既に潜んでいるのではないかと思い上下左右関係なく見渡す。

 しかし暗くなったドームの中でそれを探し出すことは不可能に近く諦めた。

 

 数十分が経った後、ライブはスタートする。

 

 

 「みんな〜!今日は来てくれてありがとう〜!」

 

 

 真依奈の登場と共に会場が歓声に包まれ湧き上がる。

 観客たちは真依奈に夢中になる中リコリコ一同は犯人探しに努める。

 クルミもドーム内を隈なく探すものの何の成果も上げられない。

 

 本当にただのイタズラだったんじゃないか?

 

 全員の頭にそんなことがよぎった。

 裏で暗躍する奴らがいることを知らずに──────。

 

 

 『準備はできたか?お前たち』

 

 「こっちはいつでも行けるぜ。ハッカー」

 

 『さ〜て、5分で終わらせろよ!』

 

 

 陰に隠れていた武装集団が裏口から一斉にドームへと侵入した。

 武装集団は誰もいない渡り廊下を駆け抜けるが、生憎そこにはリコリコたちはいない。

 途中すれ違った巡回警備員を次々と薙ぎ倒し、ドーム内へ侵入すると絶対に届かない位置から真依奈に銃口を向けボソッと呟く。

 

 

 「アンタの時代はもう終わりだ。大人気アイドルさん」

 

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

 

 メインゲートの警備が終わり、辺りを警戒する春陽。

 彼も皆と同じく、犯人なんて存在しないのではないかと疑問を抱いていたのだ。

 

 

 「クルミさん」

 

 『どうした』

 

 

 個別モードに切り替えクルミに問う。

 

 

 「映像に問題はありませんか?」

 

 『当然だ。僕とミカの二人で監視しているんだぞ』

 

 「ボクの思い過ごしだといいんですが、非常口付近の映像をピックアップすることはできますか?」

 

 『非常口?』

 

 

 そこは、人の出入りがなく緊急時に使用するもの。

 メインゲートからは見えづらい位置にあり、入口は鍵をかけているため侵入は不可能だと思い警備は手薄になっていた。

 春陽はまさに今、ドーム内にある非常口の真前にいたのだ。

 

 

 「正直ここから侵入されることはないと踏んでいました。まさかとは思いますが…………()()()()()()()

 

 『非常口がか?』

 

 「はい」

 

 『ちょっと待ってろ』

 

 

 それが犯人によるものだとすれば一大事だ。

 クルミは非常口付近の映像にのみ目をやり、過去のものも含めて全て洗い直した。

 

 

 『………………ん?ちょっと変だな』

 

 「というと?」

 

 『同じ女が何度も映り込んでいる。普通こんなところをウロウロするか?』

 

 「散歩という線は?」

 

 『ありえないな。老婆ならまだしも若い女だし、犬を連れてるわけでもない』

 

 

 二人の頭に最悪の解答に辿り着く。

 

 

 「『ハッキングされた!?』」

 

 

 今クルミとミカは50近くの映像を監視している。

 全てならまだしも、一つだけなら映像を別のものに切り替えてもバレる可能性は少ないだろう。

 犯人は、その穴を突いたのだ。

 

 

 『少し待ってろ』

 

 

 焦った様子でクルミはパソコンを操作し、再度乗っ取り返した。

 もちろんそのことは犯人たちにも筒抜けだ。

 

 

 『おいっ!僕たちの存在がバレたぞ!』

 

 「気にするな。もうこっちは中に入ってんだ。後は引き金を引いたら作戦は終わりだ」

 

 『……………もうこれ以上は援護できないからな!』

 

 「あぁ、また引きこもってろ」

 

 

 余裕の構えを見せる犯人は、ミズキの監視する西エリアにて陰に潜んでいた。

 もちろん誰ともすれ違っていない。

 本当の意味で闇に紛れているのだ。

 

 

 『映像をハッキングした。……………最悪だな。犯人らしき人物は既にドームに侵入している』

 

 「数は?」

 

 『6人ほどだ。時間は10分ほど前。すまん、僕のせいで…………』

 

 「気にすることないですよ。必ずボクたちが追い払いますから」

 

 『頼んだぞ。千束たちには僕から伝えておく』

 

 「お願いします」

 

 

 犯人が確実に中にいるとわかり、春陽は小さく収納していた薙刀を組み立て始めた。

 ミカから受け取ったあの薙刀は分解することが可能で、穂と柄、更に柄を三段階まで外すことができる代物だ。

 普段手にしているカバンに立って収納できるため、持ち運び時に警察に見つかることもない。

 ただし、銃のようにすぐさま戦闘を行えるものではないため不利ではある。

 

 薙刀を組み立て終わり、再度周囲を見渡す。

 怪しい人物はいない。

 けど、あの時とは違いそばにいることは確かだ。

 緊張の糸を張り詰め警戒にあたる。

 

 

 『〜〜〜♪〜〜〜♪』

 

 

 何も知らない真依奈は観客と共にこの時間を精一杯楽しんでいる。

 とても自由で、観客を飽きさせない素晴らしい演出の数々だ。

 そして、演出の一環でライトがぐるりぐるりとドーム内を照らし始めた。

 その瞬間、武装した怪しい坊主の男が照らされた瞬間を春陽は見逃さない。

 

 

 (いたっ!距離は40………………いけるっ!)

 

 

 音を立てず猛スピードで走る春陽。

 風に乗り、あっという間に犯人との距離を詰めると気づかれることなくその薙刀を思いきり振り下ろした。

 

 

 「ふんっ!!」

 

 

 力み声を上げ犯人の背中を斬り、血飛沫を上げた。

 

 

 「うわぁぁぁっ!!」

 

 

 すぐさま肩を掴み、床に仰向けにすると口に石突を突っ込み声を抑えた。

 

 

 「あまり騒がないでください。これでも極秘なんですから」

 

 「んっ………………んっ……………!!」

 

 「単刀直入に訊きます。他の仲間はどこにいますか?」

 

 

 その質問に犯人は答えようとせず、苦痛の表情を浮かべながらも反撃とばかりにハンドガンの銃口を春陽に向けた。

 しかし、春陽は口に突っ込んでいた石突を引っこ抜き、そのままハンドガンを振り払い銃は床を滑るようにして犯人の手から離れた。

 

 

 「無駄な抵抗はよしてください。あなたを殺したくありません」

 

 「て、テメェ!」

 

 

 キッと鋭い視線を向ける犯人に血塗られた穂を向けて再度問う。

 

 

 「もう一度問います。他の仲間はどこですか?」

 

 「……………北に二人、南に二人、西に一人だ」

 

 

 どうやら犯人たちはそれぞれに散っているようだ。

 リコリスの二人に偏ったのは不幸中の幸いと言える。

 

 

 「わかりました。ご協力感謝します」

 

 

 犯人から武器を全て取り上げ、カバンに入っていたロープで全身を縛り全体に報告する。

 

 

 「こちら東エリア。犯人を一人確保しました。場所も聞き出してます。今すぐ──────」

 

 『こちら千束〜。二人とも確保したよ〜』

 

 『南エリアもです』

 

 

 どうやらリコリスの二人は既に犯人を確保していたようだ。

 さすが、仕事が早い。

 

 

 「ミズキさんはどうですか?犯人曰く、西にいるとのことなのですが」

 

 『こっちだって必死に探してるよ!でも、どこにもいないんだよっ!』

 

 「わかりました。ボクもそちらに合流します」

 

 『私たちはこのまま警戒を続けるね〜』

 

 「お願いします」

 

 

 春陽は西に向かい、静かに動き始めた。

 

 

 「…………………チッ」

 

 

 犯人がほぼ全員捕まったその頃、闇に潜む主犯の男は苛立っていた。

 

 

 「おい、ハッカー」

 

 『なんだ?』

 

 「俺の仲間が全員捕まった。この責任、どう取るつもりだ?」

 

 

 男は苛立ちの矛先を支援者であるハッカーに向ける。

 

 

 『そっちがさっさと撃たないからじゃないのか!?』

 

 

 ハッカーも苦し紛れに対抗する。

 

 

 「チッチッチ。わかってないなぁハッカー」

 

 『何が!?』

 

 「今、奴はトーク中だ。こんなタイミングで殺してもインパクトに欠ける。殺すなら、奴の1番の人気の曲、それもデビュー曲を歌ってる最中に限る」

 

 『ならそのタイミングで仕掛けろよ!!』

 

 「俺自身、奴の人気の理由を知りたかった。実際に歌を聴いたらわかると思ったが、やっぱわかんなかったわ」

 

 『訳がわからん』

 

 「この世はアンバランスだ。奴のように表舞台で活躍する奴もいれば、地下で細々と活動する人間もいる。不平等だとは思わないか?売れないアイドルは身をも差し出して仕事をもらい、やがて引退する。頑張ってる奴らがバカらしく見えるぜ」

 

 『なんだ?そんなにアイドルが好きなのか?』

 

 「そうじゃねぇよ。たった一人の存在でバランスが保てないなら、そいつを消せばいい。そうすれば、陽の光に当たらなかった人間たちが日の目を見ることになるだろうからな!」

 

 『僕にはよく理解できないな』

 

 「何言ってんだ。お前だってそうだろ?ウォールナットに勝てないハッカーさん」

 

 『あ、アイツは死んだ!今はこのぼ・く・が!!世界一だ!!』

 

 「そう怒るなよ。まあ、とりあえずこの計画は大失敗だ。地下鉄の時といい、上手くいかねぇもんだな」

 

 『ならさっさと帰還しろ。追ってがくるぞ』

 

 「わかったわかった。まあ、また機会があれば殺してやるよ、大人気アイドルさん」

 

 

 そう一人呟き主犯の男は誰にも見つかることなく、ドームを出た。

 この男の名は、真島(まじま)

 かつて電波塔でテロ行為を行った凶悪で残忍なテロリストだ。

 そんな彼が、後にリコリスやリリベルといったDAの総戦力と大戦争を引き起こすのはまだ先の話。

 

 

 

…………………

 

 

…………

 

 

 

 その後犯人から直接的な妨害もなく、真依奈のライブは無事に終演した。

 警備員が数名負傷する程度の被害で済み、観客やスタッフ、真依奈やリコリコの面々は無傷で済んだ。

 もう一人いたはずの犯人は結局、逃亡という見解に至り深追いはしない方針だ。

 真依奈は疲れたから休むということで楽屋に戻り、リコリコの面々は極秘裏に犯人たちを護送していた。

 

 

 「にしても、何事もなく終わってよかったー!」

 

 

 千束は開放的になり、ぐっと伸びをする。

 

 

 「よく見つけましたね」

 

 「ふっ、偶然だよ」

 

 「春陽〜、犯人をあまり傷つけちゃダメだよ〜?」

 

 

 二人は非殺傷弾を使い、敵に外傷は残さなかった。

 春陽の戦闘スタイルだと、それはなかなか難しい。

 初めての実戦ということもあるが、まだまだ実力は乏しいものが目立つ。

 

 

 「峰打ちを狙ったんだけどなあ…………」

 

 「まあ悪人ですし、殺しても良いのでは?」

 

 「だーめだめダメダメだよ!!」

 

 「ボクも早く二人みたいにならないといけないね」

 

 

 犯人たちを見送った後、ミヅキが車で3人を迎えに来て全員乗り込み喫茶リコリコへと戻る。

 途中、千束の提案でコンビニに寄りスイーツを食べたけど、ミカさんや春陽のスイーツの方が美味しいと全員の意見が一致した。

 




ここからもっと戦闘描写を執筆できたらなと思います。

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