リリベルの異端児   作:山本イツキ

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前までミズキをミヅキと勘違いしてました。

もちろん、訂正済みです。

クルミもボクらしいけど、主人公の兼ね合いもあり漢字にさせてもらってます。
原作ファンの皆様申し訳ございません。


第六話 Single Mission

 真依奈の護衛以降、リリベルとしての任務も増えてきた春陽。

 営業の最中、ミカに個別で呼ばれた彼はまたしても任務を授かることとなった。

 

 それも、自分を追い出したDAからの依頼だったのだ。

 

 

 「どうしてボクなんかに……………」

 

 「春陽の功績は度々報告してるからな。認められたんだろう。もちろん私も関心しているぞ」

 

 

 本部はそんなことで転属させた人間を救うわけがない。

 わかっていることだが、ミカに褒められると嬉しいのも事実だ。

 

 

 「それで、どのような依頼なんですか?」

 

 「……………あまり話したくないな」

 

 「構いません。教えてください」

 

 

 ミカは渋々と言った感じで自分の携帯を手渡した。

 そこに書かれた内容は簡単に話すとこうだ。

・最近、リコリスやリリベルが狙われる事件が多発しているため、本部は犯人を捕まえたがってること。

・狙われたのは全員単独行動だったこと。

・本部からは人員を出せないため、春陽を囮にし犯人を一網打尽にしようとしていること。

 要は、本部にとって使い勝手のいい人材が春陽で、本部の人間の身代わりになれとのことらしい。

 メールの最後に強制と記されていて拒否権はなさそうだ。

 それは確かに、ミカも容認できないことだが春陽の答えは決まっている。

 

 

 「いいですよ。この任務、引き受けます」

 

 「しかしだな────」

 

 「ボクが拒否したところで誰かが代わりに犠牲になる。それはいけません。それに、タダでやられるつもりはありませんよ?」

 

 

 自信に満ちた顔で話す春陽。

 この短期間でいくつもの依頼をこなし、実力もついてきた。

 "峰打ち" と称して敵に切り傷しか入れられなかったが、今は柄や石突を強打して敵を気絶させる技術を身につけた。

 守る方においても、ここに来て未だ傷ひとつ負わされていない。

 今の彼は攻守共に隙がないと言える。

 

 

 「……………わかった。DAには私から連絡しておく」

 

 「ありがとうございます」

 

 

 和かな表情で返し、厨房へと戻る。

 

 

 「心配、だな」

 

 

 ミカの予感が当たらないことを祈るばかりだ。

 

 

 事件が起きるのは基本深夜。

 公園や街中などかなり目立つところで犯行が行われているが、目撃者は一人としていない。

 その点は犯人もバカじゃないことが窺える。

 今のところ、犯人はリコリスやリリベルたちが着用する制服で見分けているという見解に行き着いており、春陽も今、リリベルの制服を着ている。

 

 そして今日、この任務を知っているのは3人。

 春陽、ミカ、そしてクルミだ。

 

 

 「クルミさん。聞こえますか?」

 

 『どうした?』

 

 「流石に、深夜で路地裏に一人は心細いので話し相手になってくださいよ」

 

 『緊張感がない奴だなぁ。今から犯人に襲われるかもしれないんだぞ?』

 

 

 クルミはドローンを飛ばし、春陽の周辺を常時警戒している。

 誰かが近づこうものなら犯人と断定し、春陽に報告する手筈だ。

 

 

 「夏は怪談話や恐怖映像だとかのテレビが盛んに放送されますよね。あれ、作り物って分かっていてもやはり怖いんです」

 

 『なんだ、怖いの苦手なのか?』

 

 「突然映り込んでくる系はダメですね。あれは一人で見るものじゃありません」

 

 『いつもは落ち着いた様子なのに、見かけによらず臆病なんだな』

 

 「クルミさんは怖くないんですか?」

 

 『常に命を狙われてる身からすれば、そんなもの怖くもなんともない』

 

 「それは怖いのベクトルが違わないですか?」

 

 

 まるでそばにいるかのように会話が弾む二人。

 春陽は歳の近い千束やたきなより、普段はクルミと話すことが多い。

 彼は大人びたところがあり、幼さの残る二人よりクルミの方が話しやすいというのもあるだろう。

 ミカはどちらかと言うと上司という感じがあり、ミヅキは歳が離れ過ぎているため例外だ。

 

 

 『今度ネットに転がっていた恐怖映像を見せてやろうか?』

 

 「勘弁してください」

 

 『安心しろ。その時は千束やたきなも誘って眠れない夜を過ごしたらいいからな』

 

 「はははっ、それは面白そうだ」

 

 「……………………」

 

 

 二人の会話を覗き見る怪しい陰。

 モニターにもそれはしっかり写っており、クルミはそれを見逃さない。

 

 

 『春陽。後方の割れた窓に怪しい人物。隠れてる』

 

 「了解しました。何か動きがあれば捕まえます」

 

 

 さっきまでの楽しい会話を切り、任務に集中する。

 春陽はスッと目を閉じ獲物が近づくのを待つ。

 数十秒数えたところで、その小さな影は姿を現した。

 柄を極端に短くし懐に隠してあった薙刀を振りかぶりその姿を捉えると動きを止めた。

 

 

 『やったか?』

 

 

 クルミから確認の連絡が入る。

 

 

 「………………どうやらボクを見ていたのは、()()()()()()()()ようです」

 

 『人間じゃない?どういうことだ?』

 

 

 春陽は自分に近づいたそれを抱き抱えると、ドローンに見えるように大きく掲げた。

 

 

 『なるほど、野良猫か』

 

 「可愛いですね。体にも変なものはついてませんし、問題ないでしょう」

 

 『すまんな』

 

 「構いませんよ。手助け感謝します」

 

 

 インカム越しに礼を言うと、春陽は野良猫を離し野生にかえす。

 

 

 「狙われたリコリスやリリベルたちは不運ですよね。まさか単独行動中に襲われるなんて」

 

 『そうだな。だが、それをわかっていて春陽を囮に使うDAもどうかしてる』

 

 「ボクの代わりに怒ってくれるんですね。嬉しいです」

 

 『お前にも怒ってるんだぞ。自分の命を粗末に使うな』

 

 「以後気をつけます」

 

 『まったく、お前が死んだらせっかくの美味いスイーツが食べられなくなるからな』

 

 「はははっ。今度また新作出しますよ」

 

 『本当か!!なら、スイカで何か作ってくれ!』

 

 「スイカですね。わかりました」

 

 『楽しみにしてるぞ♪』

 

 

 DAにとって役立たずでも、リコリコでは頼ってくれる人がいる。

 今の春陽にとってこれほど心の支えになっているものは存在しないだろう。

 

 

 『そういえば今、殺された奴らに共通点がないか調べてるんだが…………何か思いつくことはないか?』

 

 「制服以外でですか…………そうですね……………」

 

 『私生活でも接点のない奴らだからなあ。やはり制服で見分けられているのか?』

 

 「その可能性は高いですね。それだと、全てのリコリス、リリベルが対象になります。下手をすれば千束ちゃんやたきなちゃんだって…………」

 

 『何かないかなあ……………うーーん……………』

 

 

 頭を抱えるクルミ。

 春陽も周囲を警戒しながら思考を巡らせる。

 突如、クルミは絶叫を上げ、バタンっと大きい音を立てた。

 

 

 「クルミさん!?どうしたんですか!」

 

 『スマン春陽!話は後だ!まずはミカたちに伝える!!』

 

 「了解しました。お気をつけて!」

 

 『うわあぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 バタバタと声を上げながら走る音を最後にクルミからの連絡が途絶えた。

 きっと、何か分かったのだろう。

 春陽はクルミからの連絡を待つと同時に、ポイントを移動する。

 

 

 (第一被害者は公園。その次はビルの前の道路。その次は陸橋……………共通点といえば、これら全ては半径500メートル以内で起きてるぐらいだけど、たまたまなのかな?)

 

 

 実際、彼がいるのもその範囲内だ。

 これほど人の気配がなければ犯人に狙われると踏んだのだが、外れだったようだ。

 数分もすればクルミは戻ってきたのだが、どうやら正常ではない様子だった。

 

 

 『大変だ春陽!原因がわかったぞ!』

 

 「さすがです、クルミさん!」

 

 『感心してる場合じゃない!とにかく今から送るポイントへ急いで向かってくれ!』

 

 「わ、わかりました!」

 

 

 何が何だか分からず戸惑う春陽だが、クルミの支持するポイントへ走って向かう。

 

 

 「それで、原因ってなんなんですか!?」

 

 『銃の取引でDAが操作していたドローン映像に被害者全員が写っていた。その映像が犯人に流出したんだ思う』

 

 「なるほど、こればっかりは不運と言わざるを得ないですね」

 

 『……………その犯人は僕だ』

 

 「本当ですか!?」

 

 『クライアントに近づくためにハッキングしたんだ。仕方ないこととはいえ、悪いことをしたと思ってる……………』

 

 「クルミさんを責めるつもりはありません。ちなみに、今向かってるとこには何があるんですか?」

 

 『…………千束がいる。犯人に狙われたんだ。流出した映像の中に千束も含まれていた!』

 

 「いよいよまずいですね」

 

 

 その事実を知り、春陽はさらにスピードを上げる。

 クルミの指定したポイントまでは距離があるが、泣き言など言ってられない。

 仲間のピンチのために、彼は限界まで駆ける。

 

 

 『どうやらリコリス側も囮作戦を決行したそうだが、全員返り討ちにあってる。敵も相当な手練れだと考えた方がいい』

 

 「わかりました!」

 

 『今、ミズキとミカ、たきなも現場に向かってる。急いでくれ!!』

 

 (千束ちゃん……………無事でいてくれよ!)

 

 

 祈るようにそう呟き、彼は夜道をひた走る。

 

 

 

………………………

 

 

……………

 

 

 

 春陽がポイントにつくと既に数台の車が停められていて、そのヘッドライトの先には男が誰かをリンチしてる様子が目に入った。

 遠くて断定しかできないが、おそらく千束だろう。

 春陽は敵に見つからないように草陰に隠れ、乱れた息を整える。

 

 

 「クルミさん。ポイントに到着しました」

 

 『反対側でたきなが待機している。奴が発砲して撹乱するから、各個倒してくれ』

 

 「了解しました」

 

 

 春陽は大きく息を吸い、そして吐く。

 呼吸が整ったと同時にたきなが発砲するのを静かに待つ。

 そして───────

 

 

 「うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 敵の悲鳴が上がると同時に春陽は勢いよくスタートを切り、一番近くにいた男を石突で突き気絶させる。

 周辺はたきなが制圧射撃してくれたらしく、敵は地面に転がっていた。

 

 

 (流石はたきなちゃんだ。となればボクのすることは……………)

 

 

 春陽は照準を車へと変え、ヘッドライトを破壊し、タイヤを薙刀で振るいパンクさせた。

 これは彼独自の判断だが、敵兵を一人たりとも逃さないためだ。

 全てを切り終わる頃には、大まかな敵は制圧され千束は車へ向かって走り乗り込んだ。

 それに続き、たきなも乗り込んだのを確認して車は発進されたが残った敵兵たちがミヅキの運転する車に向けて発砲していた。

 

 

 「やらせません!!」

 

 

 車を襲う敵兵たちを戦闘不能にしようと背後から近づき、薙刀を振りかぶった。

 しかしその時、いち早く反応した敵の一人が春陽の顔目掛けて発砲した。

 

 

 パンッ!!

 

 

 「………………くっ!」

 

 

 間一髪のところで躱したが、伊達メガネがパリンッと割れ足元に散らばった。

 敵兵たちはミヅキの車から春陽へと標的を変え、銃口を向けた。

 そして春陽を撃った男、真島はゆっくりと近づき仲間と同様に銃口を向けた。

 

 

 「まだ仲間がいたのかよ。…………あっ?テメェ、リコリスじゃねぇのか。その服は…………」

 

 「何しやがんだ、おいっ」

 

 

 割れたメガネのレンズが顔に数ヶ所刺さり、それを取り払う春陽。

 幸い、目は無事らしい。

 

 しかし、今までの彼と雰囲気が異なる。

 優しさは一切なく、殺意に満ちた極悪のオーラを身に纏い、逆立った青髪は彼の怒りを表すかのようだった。

 そして鋭い眼光が真島を見る。

 

 

 「テメェか?()()を撃ったのは」

 

 「あん?うおっ!!」

 

 

 春陽は真島の腹部目掛けて思い切り蹴りを入れ、数十メートルある車まで吹っ飛ばした。

 車は原型がわからなくなるほど凹み、その衝撃で真島は口から多量の血を吐いた。

 

 

 「うちの大事な従業員を傷つけやがって……………テメェら全員、皆殺しだ」

 

 

 そう話す顔に笑顔はなく、まるで修羅そのものだ。

 彼の圧倒的な威圧感に、犯人の一人が尻もちをつく。

 その男の腹部目がけて春陽は容赦なく薙刀を振るった。

 派手な血飛沫をあげて、その傷の深さを物語る。

 

 

 「ぐあぁぁぁぁ!!」

 

 

 その痛みに耐えかねた男は腹部を抑え悶絶する。

 その様子を見て、他の敵兵たちも数歩後退する。

 

 

 「次はどいつだ?」

 

 

 真っ白の制服も、返り血を浴び真っ赤に染まっていた。

 穂にもその血がべっとりとついていて、その矛先を敵に向けるとポタポタと雫のように落ち芝生の地面を赤く染める。

 言葉にならない声を発する男たちに痺れを切らしたのか、春陽は薙刀を構えその場で一回転しそれを振るう。

 切れ味鋭いその矛は彼を囲っていた敵兵全員の胸元を切り裂き、血の噴水が噴き上がった。

 バタリバタリと全敵兵が倒れる。

 春陽の服は血で染まりきり、元の色がわからないほど赤く、紅く、朱くなっていた。

 

 

 「クククククッ………………クハハハハハハッ!!!

 

 

 白い歯を見せ豪快に笑う春陽。

 もはや、かつての優しく大人びた彼はいない。

 今目の前にいるのはただの暴君だ。

 

 

 「ぶち殺すぞオラァァァァァァ!!」

 

 

 怒り狂った暴君が次なる標的に狙いを定めた。

 飛び出すと同時に、どこからかワイヤーが飛んできて即座に春陽の腕を拘束する。

 

 

 「んだコラァ!?」

 

 

 全筋力を腕に集中させ引きちぎろうとするが、頑丈なワイヤーは切れる様子がない。

 それを追うように、足、体を拘束され完全に身動きが取れなくなった。

 しばらくすると美月の運転する車が春陽の元まで近づき、千束は薙刀をたきなはハルヒを抱え車に乗り込む。

 狂った春陽はこの状況に腹を立てた。

 

 

 「何すんだテメェら!!」

 

 「うわっ、こっわ。てか血生臭っ!本当にこれが春陽なの!?」

 

 「うるせぇ!!」

 

 「落ち着いてください。次は口も塞ぎますよ」

 

 

 たきなの手には拘束銃が握られていて、自分がやったと自白した。

 

 

 「いい度胸してるなオマエ。オレの邪魔するとどうなるか、今ここで分からせてやろうか!!あぁ!?」

 

 「ちょー、暴れるな!先生!早く綺麗な春陽に戻して!!」

 

 「たきな、これを春陽に」

 

 

 助手席に乗るミカは伊達メガネをたきなに渡し、それを春陽にかける。

 すると、逆だった髪がすぅっと降り見開いた瞳が完全に閉じられフリーズするかのように眠りについた。

 

 

 「どゆこと?」

 

 「また後で説明する。とにかく今はここを脱出だ!頼むぞミずき!」

 

 「私の運転テク見せてやんよ!」

 

 

 クルミのサポートもあってなんとか逃げ切ったリコリコ一同。

 夢の中に堕ちた春陽の功績は大きいが、必要以上に暴れすぎた。

 敵に恐怖を与えると共に、味方すら戦慄させた春陽のもう一つの人格。

 これはDA、そしてリコリコにとって諸刃の剣となるのだろうか。

 のちに全員が彼の過去を知ることとなる。




突如現れたもう一人の春陽。その正体とは!?


次回で明らかに!


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