するめ〆   作:星塵《》

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ほぼ今作のスプラトゥーン3から始めたのでそのうち、スプラ2のDLCもやる。
3のヒーローモードと最後のアレは履修済み。
サザエ欲しい。


サザエボン1207話

 潮風が流れるこの町で私は生まれた。街と街を繋ぐための大橋建設のために簡易的に作られた小さな工場に色々と追加された結果、それなりに満足できる生活場所として未だに細々と魚介類が住んでいる。

 大きな体のカニ達がえっせらほいさと鉄筋を担ぐ横でクラゲが補強材の確認をしていたりするのを窓の外から眺めるのが私の日課だった。

 

 そんな娯楽に飢えた子供時代の私が、いつの頃も熱狂渦巻くイカしたバトルに目を輝かせるのは仕方のなかった事なのかもしれない。 

 ナワバリバトル。初めてその熱量を肌で感じたのはマサバの大橋下だった。

 

 海峡大橋にある細長いフロアで行われる4対4のインクの塗り合いは圧巻だった。縦横無尽に飛び交うインクを掻い潜り、塗り直し、相手チームを染め上げる戦いはもとからない語彙力をさらに低下させて「すごい」しか言えなかったし、バトル中に流れる体の芯から高揚させてくれる重厚なサウンドがさらに拍車をかけた。

 

 今すぐにでもやってみたいとわくわくする私を、横で一緒に見ていたお母さんが注意したのを覚えている。そのときの私はお母さんやバトルをしている人のようにカンペキなギタイってやつになれなかったのだ。

 そらそうだ。お兄さんお姉さんのような年齢にもなっていない、子供の私には土台まだまだ難しい年齢であり、年齢制限もそうだが、ルールをしっかり理解するには少しおつむが足りなかった。

 

 「そんなぁ」とショックを受ける私をよそに短くも長い試合が幕を閉じた。甲高い終了の合図が鳴り響くと先ほどまでの圧が嘘のように収まり、たたえ合う談笑が聞こえてくる。 バトルを見ていた魚介類たちに勝ったぜとアピールする者もいればなぜ負けたのかをしっかり考える者もいる。

 

 じっとりとした夏の暑さの中、ひときわ強い風が私の触腕を揺らしたのを今でも覚えている。強い風に目をつむり、次に目を開けた時には知らない青年が横で食事をしていた。 眠そうに見える眼はどこか遠くを見ているようだった。

 じっと見ていたからだろう。青年は私に視線を向けた。

 

「………」

 

 なにも語らないけれどそばに置いていたドリンクをこちらに向けてくる。

 

「くれるの?」

 

 頷いたように見えたから私は透明の袋に詰められた色鮮やかな飲み物をストローで飲んだ。どこか青さがある甘い味が口の中いっぱいに広がる。普段買ってもらえないジュースに私は虜で気がつくと青年はいなかった。

 私の隣には傷だらけのブキが一つ置いてあるだけだった。

 

 

 

***

 

 

 

 懐かしい夢を見た気がした。騒々しい喧噪が聞こえてきだした早朝。雑居ビルの一室に居を構える私の一日が始まるのだ。

 夢の所為か、ベッドから抜け出した私は棚に飾っているブキに目がいった。警戒色の黄色にはあちらこちら擦れたり、削れた傷が色濃く見える。そしてこのブキはルール違反のブキでもある。

 リコイル制御が特段に難しい反面、威力はバトルで使うには荒々しいものだった。

 というのも時は遡り、一ヶ月前の話だ。

 

 混沌の街、というもののそんな荒くれた街でも新人講習がある。ぐらつくようなルール上で成り立つこの街でもニュービーは歓迎されるべき存在らしい。

 一応大人の仲間入りを果たした私が親元を離れて街に繰り出すのは道理だろう。あの白熱したセカイが私を待っていると考えたら止まれない。そそくさとお世話になった魚介の者たちに挨拶して戦場へ旅立ち、講習上でこのブキを見せて説教されるとは露程も思っていなかった。

 

 試合に使うには危なすぎると大柄なイカの教官にこってり絞られて以来、このブキは神棚に飾っている。

 いつかあの人に返すために私はここに来たと言っても過言ではない。

 というのもあって、私の相棒はこの子ではないのだ。私は他のイカ達と違って少し小柄だ。その分身軽だからと進められたのがシューターブキだったが、

 

「ちっとも的に当たんないじゃん!」

 

 なにこれ。トクトクトクと発射されるインクを床にまき散らしながら私は動かざる的と戦った。

 超至近距離なら問題ないがそれなりに、言うなれば一定の距離で引かれた線、2本分離れると途端にしっかり当たらなくなる。銃身がブレて倒しきる前に的のコーティングがインクを弾く。

 

 教官に真面目にやれと言われても私はこれでも真面目にやっているのだ。こんな状態で動く的とかになったら、もはや私のほうが案山子状態である。

 私が不調ではないかと心配をし出した教官がどこかへ連絡を入れてそのまま連れ出されることになった。

 

「いつもお世話になっています、先生」

「ナニ、キニスルコトナイヨ。ソレデコノコ、ミレバイイノネ?」

 

 老年のクラゲがせわしなくファイル整理をしながら教官にそう言った。

 苔むしたビルの一階の部屋。室内は家というより診療所なのだろう。薬品臭さが染みついた室内に私は恐る恐る足を踏み入れた。

 

 私は病院が嫌いというか苦手だ。いつものんびりした気分が一気に緊張させられる独特の雰囲気をもっているからだ。

 そんな私に早く来いと教官が手招きする。出会ったばかりの教官が神妙そうにクラゲのおじいさん先生と会話をしているのをぼーっと聞き流しながら今後について考えていたのだが、小さな咳払いで現実に私は帰ってきた。

 

「キミ。メ、ワルイミタイダネ」

「やっぱりですか」

 

 教官は納得したように相づちを打った。

 

「えぇ、でもそこの文字とか読めますよ?」

「チガウチガウ、ソウジャナイ。キミノメ、キョリカンツカミニクイノヨ」

 

 先生が言うに、私の目は普段生活には支障はなく、視力が低いって訳でもないらしく。いわく、遠くのモノほどゆがんで見えているそうだ。程度で言えばそこまでではないにしろ、ナワバリバトルとなるとその差はそれなりにデカいのは私自身が実証済みだった。

 

 さらに濃い色のインクが混じり合うバトルではさらに遠近を把握しづらい可能性があるかもしれないともおっしゃった。

 つまり、私は憧れのバトルに出てもお荷物イカになってしまうかもしれないということであった。

 

「そんなぁ、困りますよ先生!?」

 

 ここで夢破れるのはイカ生の終わりだ。

 ウンウン唸る先生が教官に「アレ、ツカワセタラ?」と振る。

 

「あれかぁ」

「何でも良いんで! 私その為にここに来たんです! なにも得られずに家に返ったら恥ずかしいじゃないですか!」

 

 なにも得られませんでしたと、絶望の最中みたいな顔で故郷に帰ったらそれこそ優しく迎え入れてくれるだろうが、後悔は拭えないのは明白だ。その為ならどんなブキでも使えるなら使いたい。それにまだあの人にも会えていないのだ。

 渋る教官を説得し、私は何とか頼み込み後日頂けることになった。それが今日、一ヶ月経った現在の事である。

 

 

 

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