次話投稿は早めにするように努力するのでこれからもよろしくお願いいたします。
早朝、侵攻部隊はパラディ島勢力が待ち受けるであろうシガンシナ区へと歩を進めた。自ら破滅へと向かっていったのである。
シガンシナの唯一の門は硬く閉ざされていたが、先の中東連合との戦いで鹵獲した連合の新兵器『対巨人野戦砲』と大量の爆薬を使用することで、重厚な門が数十分足らずで破壊することに成功しシガンシナ内へと侵入した。
ここまで来るまでに敵からの攻撃は一切無かった。はっきり言って不気味だとしかいえない。
シガンシナ区の街並みは、マーレの主要都市に同等かそれ以上であった。アスファルト舗装された道にその両側には立派な街灯とレンガの歩道が広がっていた。
「なぁ、ここは本当にパラディ島なのか?間違えて他国の島に着ちまったんじゃないのか?」
「100年遅れた島と言われているが、この町並みは明らかに先進国の町並みよりも凄いぞ?」
マーレ兵は予想と違う街並みに動揺したものの直ぐに作戦行動を開始した。
◇◆◇◆
マーレ国 首都 マーレ軍総司令本部 会議場
首都にある本部は、陸軍省、海軍省の合同庁舎であるため、敷地の広さはニューヨークにあるセントラルパークの8倍もあり、首都防衛軍と首都防衛艦隊の総司令部としても機能している。
また、軍本部には、2個連隊が警備にあたっているため、首都を含め国内でも治安の良さはトップレベルであった。
そんな本部のある会議場では軍上層部たちによる会議が行われていた。
「しかし驚きましたなぁ、まさか、島の連中に遅れを取るとは、」
「えぇ、まったくです。第2師団は我が国の恥と言えるでしょう」
「恥どころか解散させてもいいでしょう、たった数十人に3000人もの死傷者を出したあげく相手に与えた損害がたったの数人、これではまるで話になりませんよ」
彼らの第2師団への評価は最悪であった。1個師団2万人も有しているのにも関わらず少数の敵兵に遅れを取ったあげく、3000人もの死傷者を出したのだからそう思ってしまうのは当然である。
さらには、その後に送られてきた報告書に関しても、「空を飛ぶ相手に銃弾を当てるのは非常に困難である」などと書かれており、彼らの第2師団への不信感は増すばかりであった。
「それと、第2師団から要望書も来ていました、たしかつい先日開発されたばかりの航空機を20機ほど作戦に使用させてほしいとか」
それを聞いた周りは?を浮かべる。
彼らは、武装もついてない航空機を一体何に使うんだ?と、
「なんでも、機体下部に着弾式榴弾爆弾を使用するそうですよ」
「待て、その着弾式榴弾爆弾とは一体何の事だ?」
「それはまだ試作段階ではありますが、機体に設置して敵基地などに上空から爆撃を行うための爆弾です」
「なるほど、それなら立体起動とか言う空を飛ぶふざけたものでも太刀打ちできないわけだ」
「第2師団からの要望に反対の方はいらっしゃいますか?」
その問いにどこらからも反対意見は出なかった。
「では、航空機を20機ではなく、40機と航空機爆弾を1600個ほど爆撃作戦と試験評価として送り込みましょう」
その後の会議ではスムーズに進み数時間後には会議は終了した。
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シガンシナ区 マーレ軍侵攻部隊 第2師団 第61大隊
第61大隊は以前は、第6師団所属であったが部隊運用能力向上を目的とした大規模な部隊再編成が行われた際に、第2師団へと変わったのであった。
そんな第61大隊は現在シガンシナの中心部へと展開していた。
彼らの任務は展開地域の制圧と哨戒任務も兼ねていたものだった。
「分隊長これは、俺たちがやることなんですか?」
「やらなくてはならないことだ、文句を言うな」
そう不満を漏らす新兵に注意しながら、建物を一件一件敵が潜んでいないか確認をしていた。
「後少しだ、あの家を確認すれば俺たちの任務は哨戒をするだけだからな、簡単だろ?」
「そう言われたら何もいえませんよ」
「そういえばさっき無線で聞いたんだが、今回の作戦に航空機が投入されるらしいぞ、」
「上層部の意向ですか?」
「いや、第2師団からの要望らしい」
「何に使うんですか、爆撃とかですかね?」
「多分そうだと思うが、この任務が終わったらさっき言った哨戒任務はやっぱり無しだ、航空機で攻撃するらしいから」
「よかった、これで早く休めますね」
「バカ言え、まだまだ任務は残ってるぞ」
そう言い、分隊長は破壊された門へと視線を向ける。
「ほら見ろ、瓦礫の撤去作業だ」
「はぁ、全然やる気が出ませんよまったく」
「さぁ、そろそろここを出るぞもう少しで攻撃が来るらしいから」
全ての任務が終わった第61大隊は壁外へと退避を開始した。
それと同時に爆撃を行うために攻撃隊はシガンシナへと向けて飛行を始めた。
シガンシナ上空 飛行爆撃団
シガンシナ区の上空を20機の複葉機が飛んでいた。彼らの乗る機体の下部には今回の作戦に使われる爆弾がついており、爆撃地点に到達次第、隊長機の合図で各機のパイロットがコックピットに取り付けられているレバーを一斉に引き爆弾は眼下の建造物に落下していった。
爆弾の投下から数十秒後には複数の爆発が起き、爆弾が直撃した建物からは火災が発生し周辺の建物に燃え移っていく。
シガンシナの陥落はエルディア側にとっては、痛い損失だろう。いくら、エルディアがこの数年間で急激な発展を遂げようが人々の考えや思想の変化には時間が短すぎたのである。
まず、島の巨人を駆逐したと王政府が発表したときの人々の反応はあまりよろしくはなかった。
というのも、エレン・イェーガー宅の地下室で発見された父親が残した本には『巨人は我々と同じユミルの民である』、『世界は敵であり、世界はエルディア人…ユミルの民の根絶を望んでいる』など、これらの情報が巨人の駆逐以前にすでに広く浸透していたため、壁の外よりも中の方が安全だという認識が一般化された。
だが、先のマーレによる飛行機による世界初の爆撃はエルディアのみならず全世界に衝撃を与えた。
マーレには、以前より運用されている飛行船などがあるが、飛行船でも爆撃は可能なのだが、無垢の巨人を投下した方が効率的と軍部に判断されたため今現在に至るまで単純な爆弾による爆撃は片手におさまる程度しか行われなかったのであった。
しかし、エルディアとてただやられるのを見ているだけではない。彼らの作戦は今まさに開始されようとしていた。
◇◆◇◆
港街パルディン マーレ軍侵攻艦隊 旗艦 戦艦マーレ 司令官室
マーレ軍の艦隊及びその他の艦船は一部を除いてここの一角に集まっていた。普段ならそのような行為は自殺行為と捉えられてもおかしくは無いのだが、エルディアには艦船に対する攻撃手段を持っていないと判断されたためにこのような方法がとられていた。
「いつ見ても素晴らしい、見たまえこの精鋭たる艦隊を!」
「はい、たとえどんな敵が現れようが本艦隊を用いればまさしく敵無しでしょう」
他の部屋とは違って豪華なベッドにソファ暖炉に本棚がある。しかもこれが一部屋では済まない。そんな豪華な部屋で二人は言葉を交わしていた。
しかし、実際の所内心ではうるさい上官だと思っているがそんなことを一言でも言えば後々面倒な事になるので今は黙って置くことにした。
「あと少しで悪魔の連中が浄化されるわけだ、ハハハ、こんなに愉快な事が他にあるかね?」
「いいえ、無いでしょう。しかしだからといって相手を侮るのは戦略上よろしくありませんよ?」
「ああ、わかっとるよそんなことくらい、なんたって我々には鎧に顎が居るからねぇ。我々は無敵だ、そして今我々が乗艦しているのは無敵艦隊の旗艦であるマーレなのだ!」
自信満々に気持ちの悪いほどの笑みを浮かべる侵攻部隊司令官に早く部屋から出たいと思う部下であった。
しかし、彼らの会話は強制的にやめさせられることになる。
突如、艦全体が激しく揺さぶれる、その影響で部屋にあった物があちこちに散乱し、二人も尻餅をついてしまった。
しばらくして、揺れが治まると司令室の扉が勢いよく開き、一人の士官が緊急の報告をしにきた。
「襲撃です!エルディアの反撃です!本艦含め既に数十隻に被害が及んでおり、内何隻は轟沈しました」
それを聞いた司令官は先ほどまでと変わって驚きと怒りに満ちた表情を浮かべる。
「おのれぇぇぇぃぃ!悪魔どもめが、直ぐに各艦に伝達しろ小銃でも艦砲でも何でもいいから連中を始末しろとな!」
「りょ、了解いたしました!」
そう言い残して士官は急ぎ足で通信室へと向かっていった。
「まさか、先手を打たれるとは!とんでもない連中だ!」
「彼らには雷槍があるみたいですし、決して侮れません」
その時不意に窓の方に目を向けた参謀は驚くべき光景を目撃する。
窓の外には全身が黒い服を身につけ両手に複数の雷槍を持った兵士がこちらに向けて放とうとしている瞬間だった。
それに気づいた参謀は司令官に避難するように言おうとするが既に手遅れであった。
彼が最後に見た光景は窓ガラスが割れて雷槍が爆発して自分たちに迫ってくるところで何も見えなくなった。
この日、マーレ軍侵攻部隊の侵攻艦隊は800人のエルディア兵と進撃の巨人によって一部を残して壊滅した。
この知らせは15個師団の全てに行き渡り彼らに衝撃をもたらしたのであった。
だが、これで終わら無いのが彼らであった。
マーレが終わるのも時間の問題ですね。