リリカルにエロいことしたいんですが、かまいませんね!! 作:He Ike
この世におぎゃー、と生まれ落ちてから早八年。誕生日が四月上旬の俺は、二年のクラスメイトの中で誰にも知られることなく八歳を迎えた。
この季節はいつもそうだ。入学式なりクラス替えなりで十年来の友人でさえもひと月くらい経ってから『ああ、そういや誕生日だっけ? おめでとー』で済ます。
いやいいけどさ! もう慣れたけども。ただ、なんで前世と誕生日が同じなのかね。神様ってば俺で遊んでんじゃね?
……さて、本題だ。ここまでの中であったように俺には前世の記憶というものが存在する。いやもうそれは、完全に完璧に前世で培ってきた十九年分の記憶を覚えている限り覚えている。
あれ、それ完璧じゃないような……?
まあ、それはともかくとして俺には、二週間前の誕生日から前世の記憶が戻ったのだ。突然の事態に慌てはしたが、思ったよりも素直に受け止め、自分が転生したことを自覚した。普通なら発狂ものの出来事な気がするがそれはきっとそういうものなんだろうということで納得しておいた。
死んで神様とやらに聞けば詳しく分かるかもだが。……いや、そもそも前の俺が死んでるから今の俺がいるわけで。その上で俺には、神様転生をした記憶がない。
「つまり神はいなかった!」
「へっ?」
「いやいや、こっちの話。おっと、保健室につくまでに傷口の砂は流しておかないとね」
「……? うん、ごめんね」
「保健係だからね」
肩を貸している栗毛の彼女が、突然の言葉に驚いたようだがすぐになんでもなかったかのように元に戻る。
所詮はただのクラスメイトの意味不明な言葉だ。一々気にするようなことではないだろう。
彼女を蛇口のある所にまで連れて行き患部を流水にあてる。
「……っ、うぅ」
「傷口が大きいからもうちょっと我慢してね」
「……うん」
砂の除去が終わったら、先とは反対の肩を貸し再び保健室を目指す。
余談ではあるが痛みに耐えながらぷるぷると震える彼女につい可愛いという感情を抱いてしまった俺は八歳児としては間違ってはいないだろう。精神年齢的にはアウトだが。
さて思考を再び前世云々に戻す。
前世の記憶があるとは言っても、この体として生きてきた記憶もきちんと残っている。
前世の記憶がよみがえったとはいえ、前世の俺がこの体を乗っ取ったというわけではない。また、この体の俺がただ前世の記憶を手にしたというわけでもない。ついでに言っておくが、ピラミッドパズルを完成させた少年のように人格が二つあるわけでもない。
上手い例えが思いつかないが、感じたままに言わせてもらえば俺は、十九歳の前世と八歳の現世の二つで一つなのだ。つまり超融合なのだ。
もっとも、自意識の差なのかベースは前世の俺なのだが。
と、ここまで思考しておいてなんだが問題なのはこんなことじゃない。こんなものは、せいぜい高校まで勉学がイージーモードになるくらいだ。むしろやり直しが面倒くさい。
あと少しで飲酒、喫煙が解禁だったのに。チクショウ!
ああ、そういや積んでたゲームの消化が……。
閑話休題。
いかんいかん、どうにも思考がよそに流れるクセは前世から健在のようだ。
さっき俺は、問題はこんなことじゃない、と言った。それはつまり他に問題があるということだ。
一つ、ここは地球ではあるが俺のいた地球とは違うということ。
二つ、ここが俺の知っているアニメの世界であるということ。
三つ、俺が今肩を貸している相手は、
「先生、急患です!」
「わわっ、そんな大げさな」
保健室に着くなり、医療ドラマで見るような迫力のある演技をしてみる。
俺の演技に保健室の先生は苦笑いしているが、横の栗毛をツインテールにした彼女は、恥ずかしかったのか肩に手を回していない方の手でぶんぶんと振って否定している。
ふむ、俺の演技力もまだまだか。
体操服に『高町』と書かれた彼女をイスに座らせ少し離れた位置で待機。あとは先生に任せておけばいいだろう。
三つ目、ここは『魔法少女リリカルなのは』の世界であり、彼女が主人公の高町なのはであるということ。
先人は偉大なエロ主を残していきました。
といわけでこんな出だし。R-18でない以上は、まあ微エロ程度で済ませます。