身体を炎が包む。
私、フローガにとっては暖かくて心地良いのだが、他の人間は熱いと感じるらしい。
ストレンジレイス
私達能力者を、この施設の大人はそう呼ぶ。
普通の人間と異なり、何らかの異能を持った存在、それがストレンジレイスだ。
私の場合は炎を操る能力。
対象を燃やしたり、炎をボールのようにして投げつけたりなどもできる。
まぁ、そんな事ができても日常生活では特に意味は無い。
冬の寒さが楽とかその程度だろう。
「フローガ、暑苦しいからそれやめてくれません?」
私に文句を言ってきたのはアモスという少女だった。
彼女は私の監視役兼相棒だ。
能力者は精神的に追い詰められたり不安定になると自身の能力が暴走し、周囲に何かしら影響を与えながら息絶える。
記憶に新しいのは風の能力者が暴走した物だろうか
風の能力者、当時七歳の子供だったソレはその特異性から忌み子として扱われた。
唐突に発現したその力により、かつての友人からは避けられるどころか石を投げられる。
それは村の大人や両親も例外では無かった。
そんな環境に晒され続けた結果、能力者は過剰なストレスから精神的に追い詰められて暴走し、巨大な竜巻が発生した。
そこにあった村一つを地図から消し、能力者がその中心で息絶えると竜巻は終息した。
その事件は最終的に私達が所属する組織、『ソテリア』が隠蔽してなんとか事なきを得たが、完全には隠蔽しきれておらず、今でもこの事件を追ってる者も少なくない。
ちなみに、今話した風の能力者とその能力者が暴走した経緯はこの事件の数少ない五人の生き残りから得た情報だ。
私がアモスに監視されるのはつまりそういうことだ。
私は精神的に不安定な状態に陥りやすい。
今は薬で無理矢理安定させているが、万が一の場合を想定して『ソテリア』は私をアモスに監視させている。
「アモス、クッキー取って」
「…それくらい自分で取ってください」
そう言いながらクッキーの入った袋を手に取り、こちらに手渡してくれる。
常に監視されているとはいえ、今ではこの状態に慣れてしまったので気にならない。
「アモス、コーヒー取って」
「わたしは今仕事中です、自分で取ってください」
アモスの方を見るとアモスは少し深刻そうな顔でノートパソコンとにらめっこしていた。
「何見てんの?」
「先日わたし達が襲撃した能力者の犯罪者集団の資料です」
能力に目覚めた人がその能力を悪用する事は珍しくない。
透明になれる人間が覗きや窃盗をしたり、超人的な力を手に入れた人間が人を殺したり強盗をする。
これ以外にも既に能力者による犯罪は起きている。
世の中は都合良くできていない、蜘蛛の力を手に入れた男が自らの正体を隠してヒーローをするなんて夢のまた夢だ。
「こいつらは私達が全員潰したのにまだ何かあんの?」
「全員じゃありません、あの場にいたのは下っ端だけです」
「うへぇー…まだいるのか……」
アモスはテキパキと服を戦闘用に着替える。
「……もしかして今から行くの?」
「そうですよ、あなたも早く準備してください」
返事をする暇も与えずにアモスは部屋を出ていった。
「……めんどくさ」